HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話   作:海鮮横丁

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割といい大人してそうな少佐殿


かくれんぼ中なんです。信じてください

「あ、少佐を発見しました。レアエネミーです」

 

「おや見つかってしまったな。これは退治されてしまうなぁ」

 

廊下の角からひょこりと顔を出した少女が、獲物を見つけた猫みたいな目でこちらを見る。

窓際に立っていた少佐は肩を竦め、大袈裟に両手を上げてみせた。

 

「困った。私は隠密行動には自信があったのだがね」

 

「開始三分で見つかってる時点で才能ないとアリスは思いますよ」

 

「辛辣だな君は」

 

くすくすと笑いながら少女が近付いてくる。

コツ、コツ、と軽い靴音が静かな廊下に響いた。

 

「何を見ていたのですか?」

 

「今日はいい夜だと思ってね」

 

少佐の視線の先を追う。

窓の外には静かな夜空が広がっていた。黒い天幕の上に星が瞬き、校舎の明かりがガラスに淡く反射している。

 

アリスは少し背伸びをして窓を覗き込んだ。

 

「……確かに綺麗です」

 

「だろう?」

 

少佐は満足そうに微笑む。

いつもの飄々とした笑みではなく、どこか穏やかな顔だった。

 

「少佐は星を見るのが好きなのですか?」

 

「嫌いではないね。こういう静かな夜は色々と思い出す」

 

「思い出?」

 

「昔のことだよ。随分と遠い昔だ」

 

冗談っぽく笑ってみせるが、その声は少しだけ柔らかい。

アリスはぱちぱちと瞬きをしてから、少佐の隣に並んだ。

 

「アリスはよく分かりませんが」

 

「うん?」

 

「少佐がこうしてぼーっとしている時間、結構好きですよ」

 

少佐が少しだけ目を丸くする。

 

「ほう。それは意外な評価だ」

 

「いつも変なことばかり言ってますから。こうしてるとちょっとだけ格好良く見えます」

 

「ちょっとだけなのかね?」

 

「はい。ちょっとだけです」

 

即答だった。

 

少佐は堪えきれないように笑い出す。

その笑い声につられて、アリスも小さく笑った。

 

「それで、勇者は何人のエネミーを発見したのかな」

 

「まだ少佐だけです!」

 

「何と!これはいかんな。もっと皆が早く見つかるよう指導せねば」

 

「相変わらず魔王のようなセリフを言いますね」

 

「だろう。私はラスボス適性が高い男だからね」

 

少佐は得意げに胸を張る。

アリスはじっとその姿を見上げてから、ふるふると首を横に振った。

 

「違います」

 

「む?」

 

「少佐は隠しボスです」

 

「ほう」

 

「変な場所にいて、条件を満たしたら急に出てきます」

 

「随分と面倒な仕様だな」

 

「しかも無駄に強そうです」

 

「“そう”なのかね」

 

「実際に戦ったことはないので」

 

アリスが真面目な顔で答えるものだから、少佐はまた喉を鳴らして笑った。

 

「それで、勇者アリスはどうするのかな」

 

「もちろん討伐します」

 

「容赦がない」

 

「でも」

 

アリスはそこで少しだけ言葉を止める。

窓の外へ視線を向け、夜空に瞬く星を見上げた。

 

「今日は綺麗な夜なので」

 

「うん」

 

「討伐はまた今度にします」

 

少佐は一瞬きょとんとして、それから静かに目を細めた。

 

「それは助かった」

 

「代わりに見逃し料を要求します」

 

「おや。勇者というより商人だな」

 

「アリスは合理的なのです」

 

ふんす、と小さく胸を張る。

少佐は楽しそうに肩を揺らした。

 

「それで、私は何を差し出せばいい?」

 

「ホットココアです」

 

「なるほど。なかなか重い要求だ」

 

「あとクッキーも欲しいです」

 

「流石は勇者だ。容赦がない」

 

「勇者はお腹が空くものです」

 

真顔で言い切るアリスに、少佐は降参するように両手を上げる。

 

「分かった分かった。では買収されるとしよう」

 

「えへへ。交渉成立です」

 

アリスは満足そうに笑うと、少佐の袖を軽く引っ張った。

 

「行きましょう少佐」

 

「どこへ?」

 

「自販機です。ラスボスにも補給は必要ですから」

 

少佐は小さく吹き出しながら歩き出す。

並んで歩く二人の影が、夜の廊下に長く伸びていた。

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