HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話 作:海鮮横丁
くるくると手の中でトランプを回す。
山を二つに分け、両手で持ち上げる。
指先で弾きながら交互に噛み合わせる。
「これが、リフルシャッフル」
ミチルが目を輝かせて伊達男の手元で踊るカードを見詰める。
「やっぱこういうの自然に出来るとかっこいいよね!」
「部長。というかこの人は?」
「あ、忘れてた!この人面白そうだから連れて来たの!」
「…えぇ。そんなご迷惑じゃ」
「何、構わんよ。忍者というものに私も興味があってね」
カードを裏返し、扇のように瞬時に広げる。
綺麗な半円状に並んだ五十二枚。
「「「おおー!」」」
「忍術みたい!」
感動したように身体を震わせながら、ミチルが呟く。
「さて、次は何を見たいかね?」
「あ、イズナあれ見たいです!あの何か滝みたいな奴!」
「おお、ウォーターフォールか」
ポンと軽く手を打ち、デッキを持ち直す。
「え、何それ」
「…滝?」
カードを空中へ放り投げる。
指先から指先へ。
滝のように流れ落ちるカード。
「「「おおおおー!」」」
「すごいです!」
「どういう原理!?」
「修行はどれくらい必要なんですか!?」
「半年もあれば出来るよ」
「半年!?」
「いや、君達ならコツさえ掴めば一月もいらないかもしれないね」
「部長!イズナはやってみたいです!!」
「…私もやってみたいです!」
「私もやる!」
「Good!それではカードを持ちたまえ」
3人の少女の前にデッキを置く。
真剣な表情でカードを掴む。
教えを乞う弟子の姿だ。
「それでは、ざっとしたコツを教えよう」
「まずカードは力を入れて握らない」
「はい!」
「はいです!」
「……はい」
「指先で支えるように持つ」
3人が構える。
ボロボロボロボロ。
十数枚のカードが床へ落ちた。
「「「あっ」」」
「よろしい。今のが初心者の正しい反応だ」
「正しいんですか!?」
「私も最初はそうだった」
穏やかに頷く。
安心したような顔になる3人。
「ちなみに私はカードを全部暖炉へ飛ばした」
「何やってるんですか」
「若気の至りだね」
シニカルに笑いながら帽子で目を隠す。
「見事に炭になってしまってね。流石にあれは使えなかった」
「…誰も怒らなかったんですか?」
「何、修行中の弟子にはよくあることさ」
「イズナ達も燃やすべきでしょうか部長?」
「いや、それは違うかなーって」
「…暖炉なら百夜堂にありますけど」
「成程。ならそこに行って練習するかね」
「はい!疲れたらあんみつもわらび餅も出してくれます」
「抹茶もあります」
「それは素晴らしい」
「何で話が進んでるの!?」
「で、ウチに来たの?いやお金払ってくれるなら別にいいけど」
「すまないね。シズコ君。割とスペースがあって騒いでもいい場所は貴重でね」
「暖炉もありますしね!」
「暖炉?何でカードの練習に暖炉?」
「修行です!」
「修行です」
「修行だね」
「いや三人同時に言われても」
シズコが頭を抱える。
「説明するとだね」
伊達男が帽子を軽く持ち上げる。
「私は昔カードを暖炉に飛ばした」
「うん」
「弟子達も暖炉へ飛ばそうと」
「待って」
「何か問題でも?」
「問題しかない」
頭を抱えて、暖炉を守るためだろう。そこまで歩いていくシズコ。
それを半笑いで眺めて注文を伺うウミカ。
「何か食べます?今なら試食のフルーツ乗せ百鬼夜行風のティラミスがありますよ」
「師匠!まずは糖分補強を提案します!」
「実にいいね。私も一つもらおう」
「…楽しみです」
にこやかに応じ、奥に消えるウミカ。
「…暖炉は絶対使わせませんから!」
「え、燃やしたちゃダメなの?」
「シャー!!」
「シズコ殿が威嚇を!」
「…本当に暖炉が修行に必要なんですか?」
静かに、いつの間にか師匠になった伊達男にツクヨが問いかける。
楽しそうに首を振って、指を一本立たせる。
「修行とは辛く険しいものだ」
指をもう一本立てる。
「だが、面白さも必要だ」
指を握り、カードを指に挟む。
カードを軽く指で弾く。
ツルのようにカードが宙を舞う。
「「「おお!」」」
一枚だったはずのカードが二枚、三枚と増える。
「青春とは面白いものだ」
カードの数がどんどんと増えていく。
シズコの周りで人型がカードで形作られる。
「え?」
シズコが振り返る。
カードが肩ほどの高さで舞う。
腕が出来る。
胴体が出来る。
頭が出来る。
そして最後の一枚が額へ張り付く。
「完成だ」
パチン。
指を鳴らす。
「「「おおおおー!!」」」
席を立ち、興奮気味に拍手喝采を送る。
「…何で私?」
「一番君の位置が目立つからだよ」
「私は道化か!」
「おおーいつの間にかこんなにカードが。皆さん。注文の品ですよー」
歓声が百夜堂に響き渡る。