HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話   作:海鮮横丁

34 / 54
大型遊具

わいきゃいと大尉の周りでミレニアム生が騒ぐ。

珍しくソファに座り休憩していた大尉を発見したユウカが面白半分にモモトークに画像付きで共有した結果である。

 

「大尉立ってるときも思ってたけど大きいねぇ」

 

「お姉ちゃんあんまり近付くと迷惑だと思うよ」

 

「えー大尉なら気にしないよ」

 

「………」

 

ソファに深く腰掛けたまま、大尉は呆れ半分に肩を竦める。

しかし逃げる様子もない辺り、本気で嫌がっている訳ではないのだろう。

 

その瞳にははっきりと困惑の色が浮かんでいるが、抵抗しようという素振りは見られない。

 

「写真で見るよりガタイあるな……」

 

「腕とか太っ」

 

「軍人ってみんなこんな感じなの?」

 

「いや絶対この人が規格外」

 

そんな言葉が飛び交う中、ノアは少し離れた位置から苦笑している。

 

「だから言ったでしょう。面白がって拡散するとこうなるって」

 

元凶であるユウカは視線を逸らした。

 

「いやだって……休憩中にソファでぼーっとしてる大尉とかレアだったし……」

 

「盗撮を正当化しないでください」

 

そこへ好奇心に負けたマキがずいっと顔を近付ける。

 

「大尉ちょっとごめんね」

 

ソファによじ登り、そのまま大尉の肩に何とか座る。

バランスを崩さないように何とか安定させてにんまりと笑って周囲を眺める。

 

「おぉ」

 

「乗った」

 

「すご」

 

妙な歓声が上がる。

 

マキは大尉の肩の上で得意げに笑いながら、まるで高台にでも立ったように周囲を見下ろしていた。

 

「わはー。景色いいねここ」

 

「えーいいなーマキ」

 

私も座ると言いながら無遠慮に反対側の肩を登るモモイに大尉は半ば諦めた気持ちで首を横に振る。

危ないから降りて欲しいと思っているのだろう。

残念ながら気持ちは届かないようだが。

 

軍服の肩を掴みながら何とか体勢を整え、そのまま「おぉー」と嬉しそうな声を上げた。

 

結果。

 

ソファの中央で大尉が両肩に女子生徒を乗せたまま虚無の顔をするという、なんとも言えない光景が完成した。

 

「すっご。安定感やば」

 

「でしょー?」

 

何故かマキが誇らしげである。

 

「………」

 

本当に疲れたようにがっくりと首を落とす大尉を周囲のミレニアム生は面白そうに観察し、写真撮影まで始める始末。

 

落ちないように両手で二人の足を軽く支える。

抵抗を諦めた結果、完全に事故防止へ意識が切り替わっていた。

 

「大尉、肩幅広すぎて椅子みたい」

 

「ねー案外安定感ある」

 

「お姉ちゃんあんまりやると怒られるよ」

 

いつの間にか腰に張り付いたミドリが心配そうに声を上げるが、その実自分も乗りたいだけだと顔に書いてある。

すっかりアトラクション扱いだ。

 

「………」

 

ミドリの方に視線を向ければ、面白いように明後日の方に顔が逃げる。

 

だが腰にしがみついた手は離れない。

 

「いやでも、その……ちょっとだけなら……」

 

「三人乗りいけるかな」

 

「流石に潰れるでしょ」

 

「でも大尉なら……」

 

「大尉半固体説か」

 

「流動体で粘性もあるのかな」

 

周囲の評価に半ば諦めたように目を閉じる。

嵐が過ぎ去ってしまえば、またいつもの日常が戻ってくるはずだ。

 

肩の上ではマキとモモイが完全にくつろぎ始めていた。

 

「いやー高い高い」

 

「見晴らしいいねー」

 

「アリスちゃんクエスト中で残念だったね」

 

「大丈夫アリスにもケイにもモモトーク飛ばしたからその内来るって」

 

肩の上から聞こえてきた声に嫌な予感がしてくる。

あの勇者ならこの状態の自分を見れば楽しそうに突撃してくるに決まっている。

その光景をありありと思い浮かべ、何度目か分からない溜息を吐く。

 

「送った私が言うのも違うけどすっかり大型遊具ね」

 

「ユウカちゃんも座ったらどうです?大尉の膝空いてますよ」

 

「うっ…遠慮するわ。普通に恥ずかしいし」

 

ユウカが真っ赤になって反論する。

周囲からは面白がる声が飛び交った。

 

「ほらほらユウカも行けー」

 

「セミナー会計、搭乗!」

 

「絶対嫌よ!」

 

大尉は本当に頭を抱えたくなった。

この子たちは最初自分たちのことを遠巻きに眺めていただけのはずだ。

自分も積極的に関わった記憶はない。

何故ここまで好かれているのか。

 

肩の上のモモイがにやにやしながら下を覗き込む。

 

「ユウカってこういうの絶対照れるよね」

 

「照れるに決まってるでしょ!?」

 

「えーでも大尉優しいし安全だよ?」

 

「そういう問題じゃないの!」

 

わいきゃいと騒ぐ子どもたちを半ば無視して周囲で騒ぎながら撮影しているミレニアム生を恨めし気に眺める。

いつの間にか結構な人数がこの場に増えている。すっかり見世物だ。

 

大尉が本気で居心地悪そうに顔をしかめる。

 

廊下から大尉の耳にどたどたどたっ!!という勢いよく近付いてくる足音が聞こえてくる。

 

「あ! 本当にいました!」

 

元気な声。

続いて現れたのは、クエスト帰りらしいアリスと、その隣で露骨に嫌そうな顔をしたケイだった。

 

そして二人は、目の前の光景を見て止まる。

 

ソファ。

虚無顔の大尉。

両肩に乗るマキとモモイ。

腰に張り付くミドリ。

周囲で写真を撮るミレニアム生。

 

数秒の沈黙。

 

「……何ですかこれ」

 

ケイが素で呟いた。

 

「アトラクションです!」

 

アリスが目を輝かせる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。