HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話 作:海鮮横丁
退屈しのぎ
「何じゃまた来たのか」
山海経。
竜華キサキの執務室。
門主であるキサキは招かれざる客を迎えた。
部屋の中央、複雑な模様が縫い込まれた絨毯の上を軍靴で軽やかに踏みしめる猫耳の少年。
シュレディンガーである。
「や、久しぶり」
「息災そうじゃな。どれ、茶でも出そう」
「キサキが淹れたお茶美味しいから好きだよ」
「よく言う。どうせまた下らぬ話を持ってきたのじゃろう」
口元に小さく笑みを浮かべて軽口を叩きながら、お茶を用意する。
茶器を並べる度に小さな音が部屋に溶けていく。
「えー。この前食べた饅頭結構好きだったのに」
「あれはお主が勝手に取っていったものじゃろう」
「あ、今日のお茶ボクが好きな奴じゃん」
「知らぬ。今日はそういう気分だっただけじゃ」
「へーそう。ま、いいや。お土産持ってきたんだ」
シュレディンガーの言葉に眉をひそめる。
こやつの言う「土産」で碌な物だった試しがない。
この前持ってきた爆発する懐中電灯は面白かったが、直ぐに取り上げられた。
「取り敢えず茶でも飲め。そしてその物騒なものを持って帰れ」
「えー酷い。折角面白いもの持ってきたのに」
クスクスと猫のように笑いながら、茶を啜る。
美味しそうに目を細めて笑う様はただの童のようだ。
もっとも、その童をここまで案内した者は誰一人として存在しないのだが。
山海経の警備網は今日も正常に機能していた。
にもかかわらず、この少年は今こうして目の前で茶を飲んでいる。
だからこそ面白い。
「じゃ、外のお話をしてあげるよ。キサキも好きでしょ」
「まあ、そうじゃな。おお、そうじゃ。この前玄武商会にお主のところの伊達男が入ったと聞いたぞ」
「え、そうなんだ。あの人も今好き勝手動いてるからね。今、少佐殿が大人しいから」
「ミレニアムの先生か。一度会ってみたいとは思うがの」
「何なら連れてこようか?それともキサキが来る?」
「誘惑するでない。お主らと違って暇ではない」
「へー。じゃあ今ボクとお茶飲んでるのは仕事なんだ」
ケラケラと笑いながら目を細める。
まるで珍しい品でも眺める見物客のような視線だった。
「まあ、こっちで騒ぎ起こしても大した被害出なかったからねえ」
「前にも言っておったな。雷帝とやらかと思ったが、時期が合わぬし」
「そこら辺は秘密かな。少佐殿はこっちであんまり騒ぎたくないみたいだし」
「…今はね」
にんまりと童話に出てくる悪魔か何かのように笑う。
すぐさま表情を変え、ポケットをゴソゴソとまさぐる。
「あったあった。これ、キサキと一緒に遊ぼうと思って」
取り出したのは明らかにポケットに入りきらない大きさの箱だ。
キサキは慣れた調子で鼻を鳴らす。
「今度はなんじゃ。この前持ってきた玩具なら捨てたぞ」
「え、酷い。あれ結構好みだったのに」
「ここを遊び場にするでないわ」