HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話 作:海鮮横丁
「何かアンタの部屋編み物増えてない?」
「ん。やっぱそう思う?」
ゾーリンの部屋に久しぶりに訪れたリップヴァーン・ウィンクルは目を丸くした。
元は武骨でトレーニング用品で埋まっていた部屋が、手編みのコースターや手袋擬きで溢れていた。
ベッドの端には編みかけのマフラー。
本来ダンベルが置かれていた棚には毛糸玉が積まれている。
壁に掛けられたネットにも色とりどりの失敗作がぶら下がっていた。
「…どうしたのこれ」
「ヒマリに言われてねえ。チマチマ作ってたらこうなった」
「はー真面目」
適当な床に座り、ゾーリン作であろう雑巾のような何かを眺める。
「楽しい?」
「分からんから作ってる」
チマチマと編み針を動かしながら、リップヴァーンの持っている作品擬きをちらりと見る。
「コレ何?」
「マフラー」
「嘘でしょ」
「本当だ」
「どこの世界に幅十五センチのマフラーがあるのよ」
「作り直した結果だって」
ふうんと気のない返事を返して、冷蔵庫を漁る。
「ビール減ってるじゃん」
「買うの面倒だからねえ」
「分かる。そういや、ご飯食べた?」
「まだー」
冷蔵庫の中身はビールとソーセージ。
野菜のやの字もない。
「何もないんだけど」
「昨日買いに行く予定だった」
「昨日?」
「何かした記憶ないんだけど、夜になってた」
「ちょっと分かるわあ」
缶ビールを一つ取り、パタンと冷蔵庫の扉を閉める。
「私の分は?」
「え、いるんだ」
「この何かよく分からんもの持って帰っていいから」
「ゴミを押し付けてこないでよ」
嫌々ながらコースターやらを受け取る。
「はーアンタも変わったねえ」
プルタブを開け、ビールを喉に流し込む。
「私も飲むわ」
今まで作っていた物を適当に捨て、冷蔵庫に向かうゾーリン。
「そういや、昨日ヒビキがたまには顔を出せって言ってたよ」
「んー?何で?」
「アンタの能力また見たいんじゃない?最近、作ったの大尉に壊されてたし」
「あーなんか聞いた気がする」
缶を適当に合わせ、乾杯の代わりにする。
「ゾーリンが趣味ねえ?」
床に転がった作品を眺める。
形が歪な物が多い。
ゴミ箱にもいつくか放り込まれている。
「多分、もう直ぐ飽きるんじゃないかねえ」
勢いよく缶を傾け、中身を干す。
「分かるわぁ。前にハマった映画も直ぐ捨てたしねえ」
「捨ててないよ」
「どこにあるの?」
「知らない」
「捨ててるじゃない」
ケラケラと笑い合う。
「そういやご飯どうする?」
「あーどうしようか。今日、軽くしか身体動かしてないしねえ」
「どっか食べにいく?」
「そうする」
立ち上がりながら、リップヴァーンが編み針に目を向ける。
「何?」
「え、持ってかないの?」
「何で?」
「…まあ、そんなもんか」
「おや、ゾーリンとリップヴァーンではないですか」
「アンタ何してんの?」
「バイトです。優秀なメイドはバイトも完璧なのです」
ピースピースと無表情でアピールしながら、二人の席に座るトキ。
「今日はヒマリの相手をしなくていいのかい?」
「はい。今日は休日です」
「はー、まあいいや。おすすめとかある?」
「今日はエビチリがおすすめです」
「ほう、いいですね。それにします」
「てか、何で座ってるの?バイトじゃないのかい?」
「は、そうでした」
素早く立ち上がり、完璧な接客態度を始めるトキ。
「ゾーリンは何にします?」
「んー。じゃあ同じので」
「はい。エビチリ2つですね。飲み物は何にします?」
机の上のメニュー表に目を向ける二人。
ミレニアムは今日も平和だ。