HELLSINGの少佐がミレニアムで教師をしている話   作:海鮮横丁

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トリニティで暇潰し

トリニティの街並みをのんびりと歩く。

 

時折気になった建物があれば、屋上まで勝手に登り、上からの景色を楽しむ。

 

「やっぱ、ミレニアムと全然違うなあ」

 

白い尖塔が幾つも空へ伸びている。

 

ミレニアムならガラスと金属のビルばかりだ。

 

遠くに見える街並みに目を細め、にんまりと笑う。

 

「そういや、セイアっていったけ。ドクが気になってた子」

 

ティーパーティーの場所が分からないが、高そうで古そうな建物を探せばそれだろう。

 

シュレディンガー准尉は適当に移動を始めた。

 

「…古い建物ばっかだなぁここ」

 

何度かそれらしい建物を見つけ、中に入るもそれらしい子を発見できず終わる。

中にはこちらを見つけ、追いかけてきた子もいた。

全く迷惑な話だ。

 

「でも、あのサクラコって子は面白そうだったな」

 

随分と面白い顔をしていた。

きっとからかうといい反応をするだろう。

 

次の暇潰しの相手になってもらおう。

 

「で、君はティーパーティーの場所知ってる?」

 

適当に逃げ込んだ喫茶店で呑気にお茶をしていたら、丁度隣に座った子に話かける。

 

随分と変わった色の髪をした少女だ。

トリニティの制服を着て、気まずそうに紅茶を飲んでいる。

星をちりばめたデザインの小物が多い。星が好きなのだろうか。

 

「へ、わ。私ですか?すいません。ティーパーティーの場所分からないです」

 

随分と小さい声だ。

 

「そっか。じゃあ仕方ない」

 

紅茶を飲む。

 

「君、名前は?ボクはシュレディンガー。呼びにくいなら准尉でいいよ」

 

「わ、私は宇沢レイサといいます!」

 

急にスイッチが入ったように声が大きくなる。

 

ちょっと面白い子かもしれない。

 

「えっと、シュレディンガーさん!私、頑張ってティーパーティーの場所を聞いてきます!!」

 

「いいよ別に。暇潰しだし」

 

さらりと言う准尉の言葉が信じられないのかパクパクと口を開閉させるレイサ。

 

「…特に何も用がないのにティーパーティーの人に用があるんですか?」

 

疑わし気に准尉を見るレイサ。

 

「そうだね。ボクがというよりボクの知り合いが興味がありそうだってだけだからね」

 

「…それって誰か聞いても?」

 

おお、警戒している。

 

「ドクだよ」

 

「ドクって誰ですか!?」

 

店の店主が眉をひそめるのが見える。

そろそろ追い出されそうだ。

 

「ちょっと外出ようか。あんまり騒ぐと怒られるよ」

 

「は!すいません!?」

 

今、自分がいる場所を思い出し、店内に居る人達に頭を下げて回るレイサ。

随分と真面目でいい子のようだ。

 

店から出て、路地に入る。

石壁に手を付き、軽く猫のように壁を登る。

 

「ここまでおいでよ!」

 

下でポカンと口を開けているレイサに笑いながら声をかける准尉。

 

「む、無理ですよ!?」

 

「人ってそんな登り方しませんよ!?」

 

一生懸命に首を振るレイサ。

首が取れそうな勢いだ。

 

「人間て不便だね」

 

レイサの隣に移動する。

 

「どうやって!?」

 

慌てて飛び退き、何度も先程まで准尉が居た屋上を見る。

 

「ボクは何処にでもいて、何処にもいないのさ」

 

自慢するように軽く礼をする。

 

「待ってください!?ちょっと一旦待ってください!!すいません」

 

その場に蹲り、考え込むレイサ。

准尉のいる場所までブツブツと声が聞こえてくる。

 

「どうして人が…そんなわけ…魔法…?」

 

「君、大分面白い子だね」

 

のほほんと昨日の天気の話をする程度の軽さで話す准尉。

 

「貴方は魔法使いですか?」

 

酷く真剣な顔をして、准尉を見詰めるレイサ。

その余りに真剣な顔に思わず吹き出す准尉。

 

暫く笑いが収まらない准尉に不安そうに見詰めるレイサ。

 

「…あー笑った笑った。化け物とはたまに呼ばれるけど魔法使いは初めてだなあ」

 

感心したように何度も頷き、レイサを尊敬したような目で見る准尉。

 

「あの、化け物て何したんですか?」

 

恐る恐る問いかけるレイサ。

 

猫のように笑いかける准尉。

 

「いい子だねえレイサ。気に入ったよ」

 

その笑みに嫌な物を感じたのか更に距離を取るレイサ。

 

「前に居たとこだと撃ってみなっていう場面だけどねえ。トラウマになられても困るから」

 

レイサの横に現る。

 

「その物騒な物を置いて、話をしようよ」

 

レイサが氷の様に固まる。

 

暫く銃を見詰め、諦めたように力を抜くレイサ。

 

「あの、食べたりしませんか?」

 

「魔法使いなら食べないんじゃないかな」

 

近くにあるベンチにレイサを誘導する。

 

何の抵抗もなく座るレイサの横に座り、口が裂けたような笑いを見せる准尉。

 

「君は今、ボクのことが怖いだろうけどね。気にしなくていいよ。ほら野良猫に絡まれたと思ってさ」

 

マジマジと准尉の顔を見て、一度目を閉じる。

もう一度目を開いた時には恐怖が消えていた。

 

「はい!分かりました。シュレディンガーさんのこと怖がるのは止めます!!」

 

「おお、強い」

 

パチパチと拍手を贈る准尉。

 

「それで、ですね!貴方は何者か聞いてもよろしいでしょうか」

 

「うん?もう名前知ってるでしょ?」

 

首を少し傾げる。

 

「あのですね!准尉ということはSRTみたいなところに居るんじゃないかと思うんですが!!」

 

「ああ、そういう話ね。ボクの所属はミレニアムだよ。少佐て人に率いられてる部隊さ」

 

「ミレニアムですね。分かりました!」

 

情報が増えて嬉しいのだろう小さくガッツポーズをするレイサ。

 

「じゃ、今度はボクの番。君って何してたの?」

 

「はい!私は自警団に所属してまして、今は日課のパトロールをしてました!」

 

「おお、立派。それって毎日?」

 

「はい!出来るだけ毎日してますね」

 

「はーすごいね君。ウチの大尉もそうだけどよくできるよ全く」

 

「大尉さんという方が居るんですね!」

 

新しい情報に食いついていくレイサ。

 

「そ。子供好きで結構付き合いのいい人だから、レイサも気に入るんじゃない?」

 

「おお!ならミレニアムに遊びに行ったときに探してみます」

 

「頑張ってね。ビルの屋上とかによくいるから」

 

「無理です!」

 

「そっかぁ」

 

笑みを深くする准尉。

 

「今度は少佐さんのことを聞いてもいいですか?」

 

「お、積極的だね。いいよ。少佐は真っ白いスーツを一年中着てる変な人だよ」

 

「…偉い人なんですよね?」

 

「そこは他人の評価次第かな。ミレニアムに多数の混乱とそれ以上の貢献をしたって前にリオが言ってたけど」

 

「また知らない名前が増えました!」

 

レイサも楽しくなってきたのか笑っている。

 

「リオはミレニアムの生徒会長だね。何かやって帰ってきてないけど、その内帰ってくるでしょ」

 

「心配じゃないんですか?」

 

こてんと首を傾げるレイサ。

 

「心配より何でそんなことで逃げるのか気になるかな。アリスの件だって何とかなったし」

 

「おお、アリスさんは知ってますよ!」

 

「お、知ってるんだ。有名人だねあの子」

 

知っている名前が出て嬉しいのか携帯端末を引っ張り出して画像を見せてくるレイサ。

 

「この子です!ゲーム開発部の!」

 

「この前ミレニアムプライスで何か賞を取ったとか!その時の写真です」

 

画像の中にはゲーム開発部の面々が誇らしげに写っている。

 

「おおー。いい写真だね」

 

「はい!この記事を見てあの人たちが作ったゲームをやってみたんですが…」

 

急に声が小さくなる。

 

「難しかったでしょアレ」

 

「はい」

 

素直にこくりと頷くレイサ。

 

「バグやら何やらは頑張ったみたいだけどねえ」

 

「シュレディンガーさんはよく遊ぶんですか?」

 

「ん?ゲームならたまにするくらいかな。君達見てる方が面白いし」

 

「分かります。ああいう人達見てるとすごいなあて思います」

 

画像に映る彼女達を眩しい物を見るように眺めるレイサ。

 

「君も面白いじゃん」

 

「あんまり褒めてませんよね?」

 

「学習が早いねえ」

 

舌を出し、からかうようにレイサを見る。

 

「あ、今のは分かります!私のことを見る杏山カズサの目です!」

 

「お、友達かい?」

 

その言葉を聞いた途端レイサの動きが綺麗に止まる。

 

「ん?」

 

「違うの?」

 

「今止まったよね?」

 

にやにやと獲物を見つけた猫のようにレイサの距離を詰める。

殆ど息が当たりそうな程に近付く。

 

「ち、違います!」

 

「違わなくもないですけど!」

 

「違うというかその!」

 

わたわたと手を振り、首を振り、面白いように反応するレイサ。

 

「因みにそのカズサてどんな子?」

 

その質問を聞いて途端、大きく息を吸うレイサ。

 

「あのですね!」

 

「杏山カズサはすごいんですよ!」

 

「昔はキャスパリーグて呼ばれて恐れられてた不良なんです!!」

 

「だけど今は更生して普通の生徒としてトリニティの一生徒として学校に通っています!」

 

「おお、大好きじゃん」

 

顔が赤くなるレイサ。

 

「違います!!」

 

「好きとかじゃなくてですね!?」

 

「あの人はその、ちょっと怖いというか!」

 

「でも優しいというか!」

 

「お菓子くれますし!」

 

「いや違いますね!?」

 

「今のなしです!!」

 

ケラケラと笑いながら、ベンチにもたれる准尉。

 

「いい子なんだね。カズサって子」

 

「それは他人によります!」

 

「ですが!毎日楽しそうに学校に通ってますね」

 

「よく見てるねえ」

 

「はい!」

 

「……あ」

 

「いえ違います!」

 

「そういう意味じゃなくてですね!?」

 

「目で追ってるとかではなくてですね」

 

目を白黒させ、手を足をわたわたと動かすレイサ。

 

「はーいいねえ。青春じゃん」

 

眩しい物を見る様にレイサを眺める准尉。

 

いつの間にか結構な時間話込んでいたようで、もう夕日が差し込む時間だ。

 

「もうそろそろボクは帰るよ。今日はありがとうね」

 

「え、あ!もうこんな時間!?」

 

「気を付けて帰るんだよ」

 

「む!貴方もそう年は変わらないでしょう!?」

 

「残念。そんなに若くないんだボク」

 

そういい、ウィンクを一つ飛ばし姿を消す准尉。

 

「あ、え?また消えましたねあの人」

 

キョロキョロと左右をそして周りの建物の屋上に視線を走らせるレイサ。

 

「はー変わった人がいるんですね」

 

「また会えるでしょうか」

 

「今度はスイーツ部の皆さんに紹介したいです」

 

一度肩にかけた銃の位置を直し、夕日の中を駆けるレイサ。

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