朝起きたら隣にヴェリナがいた   作:ぼっちプレイヤー

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アルコール完全耐性の男とアルコールクソ雑魚お姉さんが二人っきりで晩酌した結果

 

 カーテンからこぼれる暖かい西陽にあてられて、意識がゆっくりと浮き上がった。

 起きて最初に感じたのは人肌と柔らかさで、それを無意識に眠け眼のまま起こさないように胸の中に手繰りよせる。心地よい柔らかさと温もりに癒されながら、霞む視界で腕の中に収めた人物を眺めた。

 

 陽光を反射し背中で絨毯のように流れるプラチナブロンドの長髪。

 陶器を思わせる傷一つのない白磁の肌と、それを纏いすらりと伸ばされた美しい手脚。

 十人が十人とも。いや万人が万人、美人だと口にする整い過ぎた顔立ちに、規則正しい寝息を可愛らしくこぼし続ける薄桃色の唇。

 

 ロスカリファ外務計策局総務官、ヴェリナ・エガード。それが一夜を共にした女性の名前だった。

 

 …………どうすっかなぁ、これ。

 

 いや、どうするもこうするも答えはすでに出ているのだが、目の前の光景があまりに非現実的すぎて思考がままならない。

 別に酒の勢いだけというわけではないし一応そういうお言葉も頂いたので、男女が当たり前のことを当たり前にしただけなのだが、如何せん相手が相手である。脳のキャパシティーを超えているというか、咀嚼しようにも一向に呑み込めないというか……

 

 俺もアルコールに弱ければ記憶のフラッシュバックで慌てふためいたりしたのだろうが、生憎身体だけは天然由来の一級品。事の流れも最中も全然バッチリ覚えている。

 だから悩む必要なんてないし、一緒に寝ているのなら抱き締める権利だって当然あるのだ。ただこう、あらゆる面で出来すぎている女性に好意を持たれている事実が自己認識とあまりも解離していて、本当に俺?みたいな疑心に駆られてしまう。

 

 もっとも、じゃあ何もなかったことにしようなんてことは微塵も思わないのだが。昨日のヴェリナ、滅茶苦茶可愛かったなあ。

 

 「ん……」

 

 つらつらとどうでもいいことを考えていると、僅かに身じろぎしたヴェリナが薄く瞼を開く。二日酔いだろうか?彼女は眼をあけるのに苦労しているようで、何度も小さな瞬きを繰り返した。

 

 「……おはよう、ございます。ひいらぎさん」

 

 「おはようさん。大丈夫か?要るなら水あるけど」

 

 「えぇ、いただこうかしら。なれないことはするものではないわね……」

 

 反応に困る呟きに動揺しつつ水を手渡す。普段の凛とした佇まいからは想像できない、鈍い動作で起こした身体からシーツがずり落ちそうになったのを慌てて止めた。

 こっちからしたら眼福ものだけども、流石に凝視するのはちょっと気が引ける。前が隠れるように肩に引っ掻けてやると、俺の小さな葛藤に目敏く気づいたらしいヴェリナが悪戯っぽく微笑んだ。

 

 「あら、昨日はあんなに情熱的だったのに。いいのよ?見ても」

 

 「後が怖いからパス。つーかな、刺激が強すぎるんだよ、ヴェリナは。朝から引かれたくない」

 

 ふくよかとか豊満とかそんな言葉が霞むレベルで彼女の肉体は女性的なのである。ぶっちゃけエロいです。視線を逸らさないと素面かつ発散したはずの今でも勃つくらいには曲線美がヤバい。あと単純に好きな女性の裸は顔が熱くなる。

 

 「見るだけなら別に引いたりしないわ?あとで揶揄う材料にはさせてもらうけど」

 

 「昨日ので充分だろ、お互い」

 

 「ふふ、そうね…………そうね」

 

 意趣返しも含めて素直な言葉を返せば、ヴェリナは頬を朱く染めながらも幸せそうに目尻を垂れさせ、噛みしめるようにもう一度首肯した。

  ……そんなに素直に頷かれると反応に困るんですけど。あの、なんか、あれ?こんな可愛かったっけ?もっとこう、さらりと受け流す余裕があるタイプの性格じゃなかった?あれ?

 

 「裏がないのがそんなに驚き?」

 

 「いや、照れ隠しに揶揄ってくるくらいのことはするもんだと思ってたから、普通に照れるだけなのに動揺してる」

 

 「そのつもりがなかった訳じゃないけれど、貴方が嬉しいこと言ってくれるものだから。他の女性には言っちゃだめよ?」

 

 「ヴェリナ以外に言う予定も相手もいねーよ」

 

 「どうかしら。柊さんは天然で口にするから信じられないわね」

 

 「全く心当たりがないんだが?少なくとも意識するのはヴェリナだけだよ」

 

 そもそも外部からの移住者かつクソ面倒な立場的にまともに話せる人間の方が少ないのだ。俺も積極的に人と関わろうとするタイプでもないので、必然的に人間関係は限られてくる。

 今は関係を持つ彼女だって、お互いに仕事で関わる必要性がなかったら接点すらもなかっただろう。

 

 つまりはいらぬ心配である。

 

 「……はぁ。まぁ、貴方の認識を改めさせるのはこれからね。意識してくれていただけ、良しとしましょうか」

 

 しかし、ヴェリナは納得していないらしく何故か呆れまじりの視線を向けてきた。評価してくれるのは嬉しいが、若干のズレを感じるのは解せない。

 俺みたいのを好きになる物好きなんて早々何人も現れるとは思えないのだが?ヴェリナが好いてくれているのだって、これ以上ない奇跡だといっても過言ではないのに。

 

 「この話はまた今度擦り合わせしましょう。でないと平行線で不毛の時間ね」

 

 確かに。生きる世界そのものが違っていたのだから簡単に纏まる話題でもないか。

 

 「先、シャワー浴びるか?」

 

 「良いならお言葉に甘えようかしら。それとも一緒に浴びる?」

 

 「……コミュ力クソ雑魚弱者にはハードルが高いっす」

 

 「そう。なら柊さんから誘ってくれない限り、次の機会は訪れないわね。残念だわ」

 

 微妙に次回のハードル上げるのやめて?一緒にシャワーなんてどう誘えばいいか分かるわけないだろ。こっちは仕事意外で異性どころか人と喋ることすら少ないんだぞ。

 そんな分かりやすい俺の思考を読み取っているっぽいヴェリナは鈴が鳴るように笑みをこぼして、動きだそうとした身体をぴたりと止めた。

 

 「どうした?」

 

 「……立てないわ」

 

 なんて?

 

 「腰に力が入らないの。どこかの誰かさんが沢山いじめてくれたせいで」

 

 まぁ確かに、昨日は色々とはっちゃけた気がしないでもない。ヴェリナ可愛かったし。

 いやちょっとまて。

 

 「……つまり?」

 

 「貴方が運んでくれないと、ずっとこのままね」

 

 少し恥ずかしそうに、けれどどこか楽しそうに笑うヴェリナは羞恥心を抱くことも俺を揶揄う材料の一つとして扱っているようで、やっぱり余裕あるじゃねえか、と目線で訴えた。

 ただ動けないのは事実みたいなので結局、俺が運ぶしかないのである。

 

 敵わないと悟り、白旗を上げた俺は大人しく従うことにした。彼女の脇と膝裏に腕を回して、ひょいと抱き上げる。

 

 「あんまり揶揄わないでくれよ?いつその気になるか自分でも分からんからな」

 

 「それは困るわね、帰りも柊さんに運んで貰わないといけなくなってしまうわ」

 

 「そんなことしたら翌日には算枢局が軽いパニックだろうな。ただえさえ狭い肩身がさらに狭くなる」

 

 「構わないじゃない。貴方の懐は私一人分で充分だもの」

 

 いやそうなんですけどね?

 ヴェリナ以外を置けるスペースも余裕もないし作る気もないんですけどね?

 ただ、ずっとドキマギさせられるのは心臓に悪いっていうか、理性が破壊されるのはちょっとプライドが許せないっていうかね?

 

 いくら据え膳でも行儀も悪く飛びつくのは流石にブレーキがかかるし。へたれて女性に恥かかせておいて行儀もクソもねえって?それはそう。

 

 浴室に向かいながら気恥ずかしさと男としての本能に悶々としていると、その反応を楽しんでいるヴェリナがくすくすと笑みを浮かべた。

 美しさを連想させる顔立ちとは裏腹に、陽だまりのような柔らかな微笑はあどけなく可愛らしい。

 

 その微笑みを拝むためには本能くらい抑えつけないとな、なんて思いながら二人で浴室に入っていくのだった。





 柊要
 本作の主人公。一般人から産まれた逸般人。愛を知った五条悟。正しい道を歩けた宿儺みたいなイカれたスペックの持ち主。その気なれば片手間で零号ホロウを消滅できる。原作の問題はこいつがいれば大体解決する。勿論いないのだがね。
 エリー都市長のジョーカー的な存在でトップスに対する核弾頭。ただしあまりに強すぎるため存在は非公開で政治的要因もあり、ロスカリファとエリー都の橋渡しを建前としロスカリファに左遷される。エリー都が本当にヤバくなったら呼び出されるが、今のところ出番はない模様。
 普段は単独で空巡局の仕事をこなしているが、所属は外務計策局という絡まったタコ足配線のような状態。人当たりのいい性格とは言えないが、与えられた仕事はきっちりこなすため、引き抜いて戦力にしたい空巡局と渡すわけねえだろ外務計策局の間では度々小競り合いが起きている。なお結果。
 ヴェリナとはロスカリファの案内人をして貰った時からの付き合い。

 ヴェリナ・エガード
 シーズン3のでっけえのだ!が詰まったシゴデキウーマン。デカいです……デカい。
 恐らく柳に代わるロスカリファのママ兼ワーカーホリック。名家の末裔らしく腹芸や政治が得意で、さらに現場指揮も担当している。どこの柳さんなんだ……。
 主人公がロスカリファにきて初期のころはあまりの仕事中毒ぶりにドン引きされた。そのあと纏まった休暇を叩きつけられた。休んでいる間に体制が見直されて仕事効率が大幅に上がっていた。
 実は一度主人公を茶会に誘ったものの、″コーヒーの方が好き″と断られていて、人生で初めて断られたこともありかなりのショックを受けた過去がある。今では事あるごとに蒸し返して揶揄っている。
 ちなみに主人公の事が気になり始めたのはそこからだったりする。
 
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