『君には雄英に入ってもらいたいんだ。できるかい?』
「……」
『沈黙は肯定と受け取るよ、永井くん』
「黙れ腐れ金玉」
『おお、怖い怖い……でも僕は君より強い』
「チッ」
永井とは、俺のことだ。
個性は”亜人”。単純明快、死んでも生き返る。ただそれだけ。
それで、この電話越しに話してる人はオール・フォー・ワンと呼ばれる、ヴィランと思われる存在。
裏社会の、さらに奥深くで暗躍してきた存在らしく、俺はこの個性のせいで捨てられたところをこの金玉に拾われた。金玉になったのはつい数年前の話だが。
「先生、いいのか?」
横にいる死柄木弔とは友人だ。気が合うというわけではないが、嫌でも顔を合わせる。
『ああ。弔にはまた別の役割があるからね』
「そーかよ」
「……わかった、雄英に行こう」
「気ぃつけろよ、永井」
「ああ」
『では、よろしく頼むよ』
「……意外にも楽で助かった」
3種の仮想敵を”行動不能”にすればいい。必ずしも壊すわけじゃないので、そのあたりは少し助かった。気味悪がられずに済む。
「……あれが、0ポイント」
ビルよりデカい図体を持つ機械が、試験会場を破壊しながら練り歩く。
(俺には到底倒せないな)
踵を返す。入試なんだ、落ちてアイツに個性を奪られたらそれこそ人生終了だ。
「うう……」
(……うめき声?)
ふと、誰かの声がした。多分、女の。
「どこだ」
「右!右向いて!見えないけどいるから!」
「右……?」
右を向いても、あるのは受験生とロボットの破壊した瓦礫ばかり。
「……本当に見えないのか」
「うん!個性が透明化で……!」
ああ、不自然に浮いた瓦礫がある。位置はわからないが、声はある程度鮮明に聴こえる。くぐもってない。
「ひゃあっ!?」
「……首?」
「ちょ、くすぐった……!」
「悪い」
「大丈夫だよ!」
瓦礫に圧し潰されかけている……苦しいだろうに。
「それじゃあ、瓦礫を持ち上げる。出る準備をしておけ」
「わかった!」
……敵のはずなのに、何やってんだろ。アイツに個性を奪われたくなくて、無意識に力を使った時から……。
俺はずっと、人に興味なんてなかったのに。
今こうして、ヒーローというものになるために雄英に出向いている。
いや、違う。アイツの命令だろ。何考えてる。
「助けてくれてありがと!私、葉隠透!」
「……永井
「永井くんね!それじゃ、お互いに頑張ろ!」
「……ああ」
葉隠とやらと別れた直後に終了のアナウンスが鳴った。
(……受かっただろうか)
やれることはやった。それでいい。
(ヒーロー)
俺が出逢うことのなかった、民を守る存在。
(もしも出逢えたら、サインでも貰おうか)
くだらない思いを抱えて、アジトに戻った。
永井生助
個性”亜人”
この個性で、近隣住民に気味悪がられ、面子を気にした両親に捨てられる。後にオール・フォー・ワンに拾われ。弔と黒霧と共に暮らしている。
個性にこの名前を名付けたのは、両親から言われ続けた言葉によるもの。
彼の名前は「長生き」から持ってきてます。絶対死なないから長生きできるね、良かったね。