拓銀令嬢世界で女神転生のデビルサマナーをするのはちょっと大変 作:一宮 千歳
私、大原あずさは1990年生まれの7歳のょぅι゛ょであり、いわゆる施設育ちである。
そしてこの夏、ごく最近新たな親……養父母を得た。大原というのは養父母の苗字で、元々の苗字は……なんだったかな。興味がない。
私が養子として引き取られることになった理由は、私の特異性によるものだ。
人ならざる存在が見える。それが"私"の特異性。
特異性といえば"日本で20XX年まで生きた、大原あずさではない大人の女としての記憶を持っている"という現状もまあ特異性といえるのだが、これは養父母との顔合わせの時にはじめて発現した事象であるので、養子になるには関係がない話だ。
さて、人ならざる存在が見えるとなぜ養子に取られるのか。
答えは養父母が
「でびるさまなあ? ってなんですか」と、記憶を得る前の私が問うに、養父母は「わるい悪魔をたおして、いい悪魔とは仲良くなる人のことだよ」と仰られた。
何が何だか、今の私でもわからない。そもそも悪魔っているのか。前世では存在を証明されていなかったように思うけど。
「目が覚めたようだね」
「ああ、良かった……」
ベッドサイドから声をかけてきたのは養父、ついで養母。名前は何だったかな、義直(よしなお)とみちる、だっけ。心配させて、横でついてたみたい。大変申し訳ない。
「おはようございます」
挨拶はだいじ。ニンジャの出るweb小説もそう言っている。
さて、突然気を失ったと思われる私を心配してくれた2人に、急に大人の女としての記憶を得た事を言うべきか言わざるべきか。
悪魔とか言うオカルト存在を臆面もなくマジ語りする点。
"あずさ"としての記憶からして、人ならざるものの実在は事実である点。
この2点からすると、前世の記憶持ち、というオカルトは信じられる素地があるのではないか、と思うのだ。
言わない理由としては「平穏無事な人生を送りたいから」というのが考えられる、というかその通りのことを思っているからなのだが。
おそらく現実に存在する悪魔への対抗手段として、人ならざる存在が見える子を養子に取るという手段を取る夫婦(夫婦だよね?)の元で平穏無事な人生があるとは思えない。
あれ、もしかして人生ハードモード? と思い、頭を抱えたら義父母はさらに心配してくれた。
優しいけど……原因もアンタたちなんだよ……!
まあそれを口に出して言うのはあんまり良くないと思うので言わないけど。
「だいじょうぶ、気にしないで。でも、倒れたのと関係あるんですけど……」
きょとんとした顔のふたり。
「大事な話を、します」
かくかくしかじか。なんだかよくわからないけど、今のより未来の、自分じゃない人として生きた記憶が私にはあります、と。
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記憶については受け入れられた。
「別の生の記憶を得るのはあり得ないことではない」だとか。オカルトの世界に生きてる人ならそういう事例の記録とかがあるんでしょうね。
しかし、このことは公言しない方が良い、と。私もそれは同意。
見た目と中身の差が激しいことになるし、この1997年でロリババアばんじゃい! ってなる人も少ないだろうし。そこは当たり前と言えば当たり前。
差し当たって表向きは普通のこどもとして見られる努力をする、ということに。
ただ、表の顔に対する裏の顔として、将来的にデビルサマナーになってもらう、という計画があった事が私に明かされ、さらに、計画の実行は早まることになった。
女子小学生の時点で界隈に通用するデビルサマナー……界隈ではサマナーと略すそう……を目指してもらうそうです。
いや、誰がなるかって言うと私なんだけど、実感がそもそもない。
魔法少女ものかな? ぐらいの気持ち。
さてサマナーとは、「悪魔を用いて目的を成す」という、影の存在であるらしい。
そもそもサマナーの指す悪魔とは、"超自然的な存在"の総称であり、一般的に精霊や天使、神と呼ばれるような存在も含まれる。なんで? と思ったが昔からそうらしいのでツッコミは野暮っぽい。
で、その悪魔が人間の住む世界に干渉して、トラブルを引き起こす。これを「悪魔の仕業」と気取られないうちに解決する役割を担っているのが養父母たち、だそうだ。
あと、サマナーにも良くない奴がいて、むしろ悪魔を利用して自己利益を貪る奴がいる。
代表的なのはファントム・ソサエティという組織で、悪魔を使った殺人をやったり、公権力に取り入ってよからぬことを企んでたり、人身売買してたりするらしい。
実は個人的にはそっちの方にも興味はなくはないけど、まあ養父母がすごい苦虫を噛み潰した顔でファントム(と略すらしい)の悪行について言うもんだから、親になってもらった恩を考えるとナシ寄りかなあ、と思った。
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さて、あずさサマナー計画(と勝手に名付けている)の話を聞かされた一週間後。
大原の家から足を伸ばし、横浜に寄港しているという豪華客船に養父と共に見に行くことになった。
船をみてたのしー!とするわけではない。
豪華客船というのは表の顔で、サマナー御用達の施設という裏の顔を持つ、のだそうだ。
「業魔殿にヨーソロ……」
裏の顔、業魔殿で私たちを出迎えてくれたのは業魔殿の主人である、真っ赤なマントが印象的なヴィクトルさん(年齢不詳)と、ちょっとびっくりするくらい肌の青白いメイド服姿の女の子、メアリちゃん(年齢不詳)だった。
「今日はあずさの造魔を作らせていただきたくてね」
「……素材は……ふむ、問題ないだろう」
造魔。文字通り人工の悪魔で、特徴としては基本的にサマナーの命令を絶対に守るという点が挙げられる。えっ! えっちなこと命令してもいいんですか!
あとは素体となるドリー・カドモンと呼ばれる呪物と悪魔を合体させて作る、とか。
それに関連して悪魔の合体は設備がある程度あればどんな人間でも行えるが、業魔殿の主人、ヴィクトルさんに任せるのが1番合体事故率が低くて良い、とかなんとか。
「個人的にはかわいいのが良いんですけど」
と要望を伝えてみるも、造魔は基本的には素材にした悪魔の影響を強く受けるため、希望があってもほとんどの場合思い通りにはならないそう。ちぇー。
悪魔合体は見学できるそうだが、パス。
結果にしか興味がない……わけじゃないが、なんかグロテスクだったりすると困るので……。
結果。全体的に金属質で、羽のようなものが生えてふわふわ浮いてる小さな人、というべきモノが私の造魔とあいなった。
大別するなら天使型、だそうだ。
「名前をつけてやりなさい」と促され、えーネーミングセンスないんだけどなあ、と思いながら"カシオペア"と名付けた。
「ギリシア神話か、または星座か……悪くないのではないか」
ヴィクトルさんからは可不可なしの評価。まあでも、ケチつけてくる人居たらビックリする。
あわよくば名前負けしないように可愛い感じか美しい感じに育ってくれー。と思っているけどどうかな。
そう思っていると、カシオペアがフワフワと寄ってきた。
「私は、造魔、カシオペア……
マスター、今後ともよろしく」
「はい、よろしく」
カシオペアに挨拶され、ぺこりとおじぎをされた。やだこの子かわいいんですけど! 口らしきものが見当たらないものの、発声は可能ってどうなってるんだ。
「これであずさもサマナーだな」
「あっ、一体でも連れてればサマナーって言っていいの…?」
あとサマナーの使役する悪魔のことは仲魔って言うんだって。初めての仲魔、けっこう嬉しいな。
「さて、そのカシオペアだが、悪魔召喚プログラムを用いて格納/召喚を行いたまえ」
「悪魔召喚プログラム?」
悪魔召喚プログラムとは、プログラムによって誰でも簡単に悪魔召喚を実行できる画期的なモノであるそうな。
「でも……召喚するだけ?」
「最初期のものはそうだ。故に高位の悪魔が召喚されて大惨事、と言うこともありえた」
と言うこともありえた。じゃねえんですよヴィクトルさん。
じゃあ今の悪魔召喚プログラムはどうなんですか、というと、これはむしろ契約済みの悪魔との対話、指示を出す補助に主眼を置いたものらしい。
「最初期の物騒なプログラムはどこに行ったんですか」
「最初期の物騒なプログラムはもうすでにその時点である意味完成しているからね。それを補助するためのプログラム、と変化し、『そもそもすでに人間界にいる悪魔に対処できれば良いのでは?』となったんだよ」
これは養父の言。
というわけで、ハンドヘルドコンピュータで「TALK」「RETURN」「SUMMON」のうちから実行プログラムを選ぶと、それぞれ
・野良を含めた悪魔との会話の翻訳、
・契約済みの悪魔(仲魔って言うのまだ慣れないな)をコンピュータのメモリ上に保存(非実体化)、
・メモリ上の悪魔を召喚(実体化)
の3機能が実現できるらしい。ふつうにすごい。
まあもらったハンドヘルドコンピュータ、カシオペア一体でメモリがほぼいっぱいになってるみたいなんですけど。増設メモリとか……あるかな……。
あ、基本的に電池をバリバリ食うらしく。
もしかして単三電池たくさん持ち歩かないといけない? と思ってたら一応家の中でならACアダプタが使えるらしい。電気代は覚悟しておけ、だそう……。せちがらい。
あと、けっこー重い。あのあの、この重たいヘッドマウントディスプレイ、身長に悪影響でたりしません?
腕につけてるコンピュータもなんか、たとえば傘型とかのぷりちーな感じに……え、傘はダメ? イメージが悪い?
なんでー。
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さて、朝のテレビでニュースを見ていたら、こんな報道があった。
「北海道開拓銀行と道内大手地銀との合併交渉が実質的に破局」
一見
拓殖銀行じゃなくって開拓銀行? と思った私の頭に電流走る。
「お父さん、ちょっと聞きたいんだけど」
「なんだい、あずさ」
「桂華院家、ってご存知?」
ああ、と言うふうに義直おとうさんが「ご存じも何も、その本家筋が私たちの雇用元だね。拾ってもらった恩があるが、最近……どうかしたのかい?」
私は頭を抱えた。
拓銀令嬢世界だこれ。
え、拓銀令嬢世界に悪魔とかいるの!? いたわ。
お稲荷様とか原作web版で関与しとるわ。
うそーん。なんか原作よりハードめ世界なのに私はそこに実質異世界転生したってわけ?
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