拓銀令嬢世界で女神転生のデビルサマナーをするのはちょっと大変 作:一宮 千歳
パジャマパーティが終わり、冬も本番な翌月曜日。
「ずるい!」
明日香ちゃんがずるい呼ばわりしてきた。
「え、ええ?」
「瑠奈ちゃんの家にお泊まりしたんでしょ! ずるい!」
瑠奈お嬢様の方を見ると手を合わせている。ふーん、自爆したのか。
「明日香ちゃんもお願いしたら?」
「もうした! 蛍ちゃんと一緒に今度の金曜日!」
ねー、と明日香ちゃんが瑠奈お嬢様の方を見る。
瑠奈お嬢様はにっこりと笑っているが、目が助けてと訴えてきている。
しかし助けようがなかろうこんなもの。むしろ煽って差し上げよう。
「瑠奈ちゃんのお家、すごかったよ。」
「そうなの? とっても楽しみ!」
見ればいつのまにか蛍ちゃんも現れており、明日香ちゃんとぺったりくっついてふんすふんすと鼻息荒くしている。二人とも楽しみらしい。
つまり、瑠奈お嬢様の詰みである。
「私は行ったらダメ?」
「あずさちゃんは2回目になるから、だめ!」
ダメらしい。頑張れお嬢様。崩れ落ちる姿が見えた気がするが、気のせいだろう。別に可愛い女の子がうちに来るだけだぞ。
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年が明け、春になり。夏が近づき、そして参議院選挙が来る。
前世では選挙なんざ投票して終わりだったが、今世では事情が異なる。
というのも、瑠奈お嬢様の交友関係に
瑠奈お嬢様にくっついて動く私も、うっすらと交友関係はあるわけで。
「遊びに来たわよ!」
「おい! 瑠奈! 手を引っ張るな!!」
「お邪魔します」
「……子供が入って大丈夫なのかな?」
「選挙活動するわけじゃなし、大丈夫!」
瑠奈お嬢様の先導で、帝亜栄一くんと後藤光也くんを連れて、参議院議員比例代表候補者、泉川太一郎事務所にやって来ていた。
私要る?とは思うが、しかし瑠奈お嬢様の護衛なので要る。だが表の身分が無いようなものなので、こういう公的な場所はすごく肩身が狭い。
単に友達というだけでは、入るのは憚られるのだが。そこは瑠奈お嬢様がゴリ押しで侵入した。いや、後ろ暗いことは何もやってないんだけどね?
瑠奈お嬢様の声を聞いてか、裕次郎くんが人の隙間をすり抜けてやって来た。
「わざわざ来なくても良かったのに」
「手伝っている友達を応援に来たんだ。何が悪い事がある!」
男同士のツンデレだ。青臭くてニッコリしちゃうね。
そして私達……というか、瑠奈お嬢様を見付けた秘書が、泉川太一郎候補者を連れてくる。
「よく来てくれた。君たちが来てくれたことは絶対に忘れないよ」
「お気になさらず。友達の応援ですわ」
がっしりと瑠奈お嬢様の手を取って握手する太一郎氏と瑠奈お嬢様にカメラのフラッシュが焚かれる。
気にするに決まってんだよなあ。瑠奈お嬢様が裏で動いた話を、私は知っている。
太一郎氏がこそこそと瑠奈お嬢様に何事か呟いている。
「護衛なので、私にも聞かせてもらっても?」と言いたいところだが、ごっこ遊びと思われて終わりなので、黙っている。
しょうがないので、こそっとお嬢様に確認を取る。
「お呼び出しですか」
「うん。本命の、泉川辰ノ助議員から。悪いけど、外、見張ってね」
「はい」
今なら頼りになるナイト三人もいますよ、とは言わないでおいた。
泉川議員は、瑠奈お嬢様と何を話すのか。
『拓銀令嬢』を作品として読んだ転生者である私は、大まかな内容は頭に入っている。
たしか、泉川議員の副総理就任のための後押しだったか。
戻ってきた瑠奈お嬢様に、駆け寄る。
「どうでした?」
「本命の話はできたんだけどね、警告をされたわ。
これからは悪魔にも気を付けろ、ですって」
泉川議員も、悪魔の存在に気づいている。
何故。どうして。しかし、考えても結論は出ない。
ただ、悪魔が政治利用されている可能性が、ある。
「返事は、なんと?」
「頼れる護衛がいます、と返しておいたわ」
頼られてるのは嬉しい、けど、なんかもうちょっと根掘り葉掘り聞いて欲しかった……
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で、さらに秋。運動会、なのだが。
「悪魔が来ない! なんで!」
頭を抱える私に、瑠奈お嬢様がさらりと言う。
「いいことじゃない」
「そうなんですけど……1年間張っててコレは、ちょっと拍子抜けにも程があるというか……」
「それだけ護衛が優秀に見えてるって事じゃない?」
にへ、と笑いかけて表情を元に戻す。
「護衛がいるのはバレてるってことですか?」
「少なくとも、学内にツテがあるなら、いつも私に貼り付いてる女の子が居る、ってのはバレてると思うわよ」
「……そうかあ。」
バレてるなら、実力を測られてるかな。それで、その実力を上回る人員を手配してる頃とか?
「まずくないですか?」
「まずいと思うなら、実力を磨きましょう?」
「えーん……わかりました。やります。」
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父、
具体的には、土日の護衛休みは意図的に異界化したままにされている山林などで、悪魔との殺し合いをやることになった。
「こんなところで死んでたまるかー!」
「死んでも
父の若干呑気な声が苛立たしい。
「私そのアイテムのこと信じてないから!」
今も【妖魔コッパテング】の群れと対峙してると言うのに。
『キキッ!ニンゲン、オンナ!』
『コロシテ、クウ!』
放たれた【羽ばたき】が私のいた場所を襲う。
遅い。【破魔矢】を投げる。【メギド】という魔法と同効果を発揮するらしい、マジックアイテムだ。実戦投入ははじめて。
ずどん、と爆発。コッパテングは、木っ端微塵に消滅していた。
「……すご」
支給品で、数は少ない。とはいえ、威力は今見た通り。切り札になるアイテムだった。
「あずさ、今使う必要あったか?」
「一回も使ったことないんだからどんな威力か試す必要はあるでしょ!」
ただ、威力は特筆すべきものがあるものの、汎用性、学校での護衛で使えるか、は否だろう。だって爆発だよ。
「私は多分使わないかな。街中で使えないでしょ、コレ」
「そうだなあ……けど、異界化してたり、海外では使えると思うぞ」
「海外ぃ?」
海外でもなんの後ろ盾もない少女がぼんがぼんが爆発起こしていい理由はないだろう。
「さ、次行くぞあずさ」
「はーい……」
死を厭わないスパルタ修行は続く。