拓銀令嬢世界で女神転生のデビルサマナーをするのはちょっと大変 作:一宮 千歳
何やってたかというとPSP版デビルサマナー再プレイしてました
vitaストアからメーカー別アトラスで検索したら買えます2420円。
訓練の合間、父に言われたのが。
「練気の剣と悪魔を合体する?」
「ああ。もういいだろう。練気の剣からは一般的に【霊鳥スパルナ】を合体させて『小狐丸』、女サマナーはさらにそれに【霊鳥フェニックス】を合体させて『雷神剣』にするのが昔からの定番だな」
「小狐丸って、太刀じゃなかった? 持てないよそんなの!」
「はっはっは。伝承に残る実際の刀はそうだが、練気の剣の剣合体はおおむね『のようなもの』だ。『小狐丸』も『雷神剣』も、完成品は今の短刀型とそう変わらんはずだ」
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というわけで電車を乗り継ぎやって来ましたヨコハマ業魔殿。
「業魔殿にヨーソロ……」
「……」
ヴィクトルさんとメアリちゃんは見た目が変わらないなあ。
悪魔がメガテン由来なら、この二人もお嬢様の言ってた『メガテン』に出てくる人物なんだろうか。人間じゃなかったりして。
さておき、ヴィクトルさんとお話。
「剣と悪魔を合体したいんですけども」
「ふむ、剣合体を行う時が来たか……時が経つのは早い」
と言っても一年なんだけどなあ。
でもヴィクトルさん曰く、その一年の間に帰らぬ人になるサマナー、引退するサマナーも少なからずいるとのことだ。
私はそーゆーふうにならないようにしないと。最低でも高校卒業まで。
ぐいんぐいんと悪魔合体用の魔法陣がうなる。
練気の剣に、スパルナだったものが絡みつく。
「ところでこれ、悪魔合体時に人が混ざったらどうなるんです?」
「人×悪魔の合体か……精神力が強ければ人の意識を保ったまま力を得る。合体結果はランダムだな」
「……間違っても魔法陣内に入らないようにします」
「それが良い……さておき、これが小狐丸だ……続けて合体するのだな?」
「おー、本当に短刀だ。はい、よろしくお願いします!」
「まずはフェニックス作成からだな。時間がかかる、メアリと話しているがいい……」
「はい!」
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はい、と意気揚々と返事したものの、メアリちゃんとお話し……何を?
共通の話題で盛り上がるか?共通の話題ってなんだ。
「メアリちゃんは、普段何してるの?」
「清掃と、業務補助を」
無機質に返事され、話が終わった。ええい、話題は尽きておらんよ!
「この広さの掃除って大変じゃない?」
「それが与えられた仕事なので、やるのみです」
「そうかあ。えらいんだね」
「それが与えられた仕事なので」
くっ、話が広がらない!
「仕事以外には、興味ない?」
「……考えたこともありませんでした」
よし。ここだ。ここから話を広げる。
「業務補助と、清掃だけなら、外に出ることはないの?」
「外、ですか?」
メアリちゃんが首を傾げた。
「そう、外。きっと何か、仕事以外にも楽しいことも見つかるかもしれないよ」
「私はそのように命じられていないので……」
「でも、外にでちゃダメ、って命じられてる?」
「それ、は……」
「たまに出てみてもいいんじゃないかな。ね?」
今日出ろ、というわけではない。外に出るという可能性をメアリちゃんに植え付ける。それで十分だ。
「それにね、外にはこんな美味しいものもあるよ。はいこれ」
「……?」
メアリちゃんの手を無理やり取り、油紙に包まれたワッフルを押し付ける。ピクシーへの貢ぎ物の残りだが、冷めても香るほのかなバターと砂糖の甘い匂いが、陰鬱な空気を弾き飛ばす。
本来の業務と何ら関係がないおやつを手渡されたことで、メアリちゃんはフリーズした。そうだろうそうだろう、客からお菓子を手渡される体験なんてしたことなさそうだからな。
「あの、これは」
「食べて」
「……食べるとは」
「口に含んで、噛んで、舌で味わって、飲み込んで、『美味しい』を実感してください。冷めてるけど。」
二度目のフリーズ。
すると奥からヴィクトルさんがやってくる。
「待たせたな。フェニックスの作成、および第二段階の剣合体が完了した……メアリ、手のそれは?」
「あずさ様から、いただきました」
「お菓子です!メアリちゃんに食べてもらいたいなって!」
私がそう主張すると、ヴィクトルさんがぴくりと反応した。
「食べる、か。私は人間の創造を考えておきながら、食べることを教えていなかった」
ヴィクトルさんはそんなことを言い、メアリに指示を出した。
「構わない。食べなさい、メアリ」
「いま、ここで、ですか」
ぱちくりと目を瞬かせるメアリちゃん。
衆人環視でワッフルを食べるというのも変な話だと思うが、そうかヴィクトルさん赤マントを着込んでるような変人だった。変人が変なことを言い出しても何ら問題はない。
主人の命令に格上げされたことで、メアリちゃんがワッフルを口に運ぶのは既定事項となった。
もふ。メアリちゃんの一口は小さかった。
「糖分と脂質の味とはこういうものですか」
「言い方」
「美味しい、を理解できた気がします。ありがとうございます」
「どういたしまして」
「ふむ、実に興味深い。さてあずさ、メアリの教育もいいが、本題を忘れないように」
そうだ、雷神剣。
ヴィクトルさんが差し出してきた剣は、長さこそ30cmほどで大して変わらないように見える。が、オーラが違う。まだ鞘に収まっているのに、そのまま敵を切れそうな迫力がある。
「受け取るがいい、これが『雷神剣』だ」
両手を差し出し、受け取る。
黒塗りのシンプルな鞘から、少しだけ刀身を引き抜く。
音もなくすらりと抜けた刃に、ぱちぱちと電流が走る。
まるで剣が意思を持つかのように。よろしく、と言われているような気がした。
「よろしく、雷神剣」
電流による火花が大きくなった。
ところで、これ目立ちませんか?
「目立つな。」
普段の隠匿方法を考えないといけなくなった。マジかよ。