拓銀令嬢世界で女神転生のデビルサマナーをするのはちょっと大変 作:一宮 千歳
幸い相手はこちらの位置を察知できていない。その距離、10メートルほど。
私はカシオペアに【タルカジャ】をかけることを指示した。
「……静かにね」
『了解しました、マスター』
そして、父にお願いを出す。
「……もし戦闘音で他の悪魔が寄ってきたら、そいつらは父さんが始末する。それでいい?」
『ああ、それがいいだろうな。戦闘途中の別の敵による襲撃を警戒しないサマナーは愚かだ……ふふふ、どちらが父親だかわからんな?』
ぎりりと歯を噛み締める父を見て、私はデカラビアに文句を言う。
「父さんへの挑発はよしてよ」
『身の安全は保証するとも……さて、そろそろ気づかれるぞ。私に』
スパルナを見れば、立ち止まってこちらを向こうとしているその最中だった。
猶予はない。突撃する。
「カシオペア!」
「【アギラオ】、実行します」
二つの火球が螺旋を描いてスパルナに襲いかかる。命中。
突然の火炎魔法の直撃でパニックになるスパルナ。そのまま駆け寄り、手にした『
硬い。いや、魔法的な抵抗がある?
『今気づいただろうから補足するが、スパルナには斬撃抵抗能力がある。親父殿は力任せに切り倒していて、気づかなかったようだがな?』
デカラビアからの言葉。「口を出すなって言った!」
【タルカジャ】込みでの斬撃でも、スパルナの翼は断てなかった。なら。
「【タルカジャ】の重ねがけなら!」
『【タルカジャ】、実行します』
【タルカジャ】は攻撃力を増す魔法。一般的に、3回までなら重ねがけが効くとされている。
視界が揺らぐ。脳のアドレナリン分泌によるものか?
構わず、スパルナの翼にもう一度斬撃を叩き込む。ずくり、と刃がスパルナの翼を傷つけた。
『貴様らァァァ!』
スパルナが叫ぶ。構うか。もう一度、と構えたところで、狙いは私ではなくカシオペアであることに気がついた。
『ターゲットからの敵視感知』
『まずは鬱陶しい小蝿からだ!』
どうする。逃がす? どうやって? ここで取れる最適手。
『【ザンマ】!』
「ごめん、カシオペア!」
カシオペアへの打撃は、受ける。そして。
「【タルカジャ】、実行します」
中位衝撃魔法、【ザンマ】による衝撃がカシオペアを襲う。COMPの表示を見るまでもなく、カシオペアのHPは全損しただろう。
同時、カシオペアが粒子となってCOMPに回収されつつも、最大限に重ねがけされた【タルカジャ】により、私の攻撃力は爆発的に上昇する。
「食らえッ……!」
三度、斬撃。果たしてその刃は、スパルナの右翼を一刀両断した。
『グアアアアッ!』
スパルナが叫ぶ。チャンスだ、奴は痛みで行動できない!
「もう……かた……ほう!」
返す刃で切り上げ、スパルナの左翼を叩き切る。
叫び声に、悪魔が寄ってくる。当然だろう、仲魔の危機なのだから。
しかしその増援は、父が一刀両断に成敗している。
息も絶え絶えな、私が相対したスパルナに、私は刺突を繰り出した。
『……無様だな』
「講評は後で聞く。お父さんのサポートをしなきゃ」
『しかし【タルカジャ】を使える造魔は壊れたぞ』
私はふるふると頭を振る。
「講評は後って言ったでしょ。今スパルナを倒したおかげで、力量が上がった気がする。」
『気がする、ではないな。……親父殿の増援掃討も、終わったようだ。』
近寄ってきた父が、私を気にかけてくれる。
「……あずさ、無事か。」
「うん。カシオペア、戦闘不能になっちゃったけど」
「格上狩りなんて、する必要が……」
父の言葉に、反論する。
「あったよ。デカラビアの機嫌を損ねたら、どうなってたと思う?」
『契約は契約だ。貴君らに危害を加えることはなかったよ』
「それなら、なんで格上狩りなんて」
『なんでも問うな。意図はある。考えろ』
デカラビアはふよふよと先に行ってしまった。
「……本当に、得体が知れないな」
「ええ」
「奴の狙いは本当に、面白いから、だけか……?」
父の言葉に、私は回答を返せなかった。
言えない。「教育されている気がする」だなんて。
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COMP保有MAGが父と合わせて2000になったころ、父に提案した。
「エンジェルと、交渉したい」
「……ふむ」
『私と言うものがあるにもかかわらず、下級天使を引き入れる交渉を?』
「貴方は仲魔契約してないでしょ」
『ハハハ。……冗談ではなく、この寄り合い所帯は属性がCHAOSに偏っている。LAWそのものである【天使エンジェル】を引き入れるのは、難しいと思うがね」
きょとんとする私に、父が説明をしてくれる。
「あずさにはまだ説明していなかったが、悪魔には属性というものがある。法とそれがもたらす秩序を重んじるLAW、力による弱肉強食、混沌を愛するCHAOS、そしてどちらにも属さないNEWTRAL。……デカラビアの言うことは事実だ。天使の勧誘は難しいだろう。ちなみに、霊鳥もLAWだ」
思わずジト目になる。「使役できるかもって、デカラビアは適当言ったわけ?」
『力量の点だけで言えば、に決まっている。属性を把握していないとは思わなかったものでな』
「性格悪……」
デカラビアがくるくる回る。
『さておき、掃討はかなり進んだのではないか?もう撤退も視野に入れていいかと思うが』
「……カシオペアが戦闘不能というのもある。確かに撤退は視野だ」
父が脱出魔法【トラエスト】の籠った石、トラエストストーンを握りしめていう。
「しかし、ここまでの数の天使、霊鳥を率いる首魁を確認したい、という気持ちはある。……あずさ、どうする?」
「……帰る方が安全で確実だよね。首魁と思しき悪魔も、LAWであることが想定でしょ?交渉は決裂するだろうし、戦闘に不安が残るのも事実。見ていく、にしても見るだけじゃ済まないでしょ」
頷く父。
「同意見だ。試して悪かった」
「いいよ。初陣だもん」
父が、トラエストストーンを地面に叩きつけて割った。
……一瞬の後、私と父は地下上水道の入り口にいた。
「……あれ、デカラビアは?」
「仲魔ではないからな。【トラエスト】の範囲外だ」
「……なるほど」
「急ぎ電話で連絡を入れねば。【堕天使デカラビア】なる高位悪魔が現場にいた、とな」
「デカラビア、どうなるの?」
「わからん。桂華院のサマナーで手に負える相手ではないように思える。『
「『
「凄腕のサマナーの血脈だ。国家機関に属する者もいれば、探偵なんぞをやっている者もいる。」
「凄腕、かあ……」
「さしものデカラビアといえど、『
「へえー」
「まあ、再会はないだろう。二度と見たくもない顔だがな」
私はもう一度くらいなら会ってもいいかも、と思ったのは内緒にし、私たちは地下上水道を後にした。
ちなみに想定レベルですが
葛葉-???
デカラビア-56前後
義直(父)-35前後
アークエンジェル-18
スパルナ-15
あずさ- 6->9
ハンサ-5
エンジェル-4
あたりを想定しています。