拓銀令嬢世界で女神転生のデビルサマナーをするのはちょっと大変   作:一宮 千歳

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ハチャメチャに難産でこまる


パジャマパーティというにはちょっと世知辛い

 

 

ひとしきり泣いた後。

 

「それで、サマナー業が血生臭くて、話から明日香ちゃんと蛍ちゃんを外したい、というのはわかるんだけど……それだけ?」

 

「あの太陽と月みたいな素晴らしくかわいい二人の前で血生臭い話をしたくないでしょう?」

 

「……うーん」

 

なんか瑠奈お嬢様は納得いってなさそう。

 

「いや、明日香ちゃんは地方議員の娘だし、泥臭いのには理解があるわよ? 蛍ちゃんは……わからないけど」

 

「オカルトは巻き込む人を少なくするべきです。ピクシーの存在ひとつとっても、解剖研究したい、なんて言い出す科學者が溢れるのは目に見えてるでしょう」

 

「それいったら蛍ちゃんはすでにオカルトなわけで」

 

「……あー。」

 

「だから、この二人にオカルトで気を使うのはなしでいいんじゃないかと思うのよね」

 

「でも、血生臭い現場には近寄らせたくないですよね?」

 

「当たり前じゃない」

 

二人で悩む。

 

「……橘さんに聞いてみる?」

 

「え、なんで橘の名前が出てくるのよ」

 

我ながら名案ではなかろうか。

 

「あの人、瑠奈ちゃんのおじいちゃん時代からの人でしょ?それならオカルトにも通じてておかしくないと思うんだけど」

 

「確かに。今呼ぶ?」

 

「パジャマで会うのは恥ずかしいかも」

 

「何言ってるの、あずさ。橘はそう言うの気にしないわ。」

 

瑠奈お嬢様が内線電話を手に取り、「私の霊的防衛の件で」と橘さんを呼び出す。

 

----

 

「いつ出番になるかとは、思っておりました」

 

「……橘」

 

「霊的防衛も管轄でして。そこについては本家とは連絡を取り合っております。」

 

「聞いてないわよ」

 

ジト目の瑠奈お嬢様。対して橘さんはさらりと返す。

 

「お嬢様自身が気づかれるまで、お待ちするようにとお祖父様が」

 

「……お祖父様が?」

 

瑠奈お嬢様が訝しむ。だがそれは過去の話だ。どちらかと言うと私たちは未來の話をしなくてはならない。

 

「目先のオカルト関係で、瑠奈お嬢様に関係するのは?」

 

「……大原あずさ様。お嬢様に劣らぬ才気があると見える」

 

お世辭はいいので。と促すと、橘さんは衝撃的なひと言を口にした。

 

「今のところは、何も」

 

「「噓よね」です」

 

瑠奈お嬢様と私はほぼ同時に噓を指摘した。

 

「噓なら橘、わざわざこの部屋に来る必要がないじゃない。」

 

「……ええ。春日乃明日香様が、ダークサマナーに狙われていることを突き止めています。悪魔を用いた誘拐。それのターゲット、ですね」

 

私が、そして瑠奈お嬢様が立ち上がる。

 

「それなら!」

 

しかし橘さんは表情を崩さない。

 

「ですが、狙われているのはお嬢様ではありません。」

 

「……橘、私に、友達を見捨てろ、って言うの?」

 

そういうことを言いたいんじゃないとは思うけど、そういう言い方にはなってしまうよなあ。

 

「いいえ。ただし、桂華院本家から、人は出さない、という判断が下されています」

 

「そんな……!学校はともかく、放課後や休みの日も、私の護衛に、大人のサマナーが付いているんでしょう?」

 

「その人員は割かない、という指示が出ています。本家にとって、明日香様は『瑠奈様のただの友達』ですので。」

 

冷たい言葉だった。冷たすぎる。

 

「ここに非番のサマナーがいます」

 

腹が立った私の言葉に、橘さんが、眉を顰める。

 

「あずさ!?」

 

「あなたの護衛が必要ない、今夜と土日、そこで決著をつけると?」

 

困惑する瑠奈お嬢様。橘さんの確認。

 

「そう言ったつもりです」

 

「戦力が足りません。未成年の駆け出しのサマナー一人で、何ができますか?」

 

それは、そうだ。ダークサマナーの力量がわからない。私一人では返り討ちに合うかもしれない。下手に動けば、被害は増える。それはわかる。

 

考えろ。なぜ、橘さんは明日香ちゃんが狙われてることを告げた?

 

「じゃあ、橘さん。もし私たちが、明日香ちゃんが狙われてることを教えられてなかったら。橘さんが、助けてたんですよね?」

 

「ええ。秘密裏にダークサマナーを始末して、その後は元通りの日常に。」

 

なるほど。

 

「じゃあ、橘さんはその通りに明日香ちゃんを助けてください」

 

「……あずさ?」

 

「ゲームや小説じゃない。手に負えない敵は出てくる。でも、橘さんという対処方法はある。それなら、橘さんに任せるしか、ない」

 

そのはずだ。悔しいが。

 

「はい。あずさ様は理解しておられる。……お嬢様は、どうですか?」

 

「もとより私の手の及ばないところではあるからね……お願いできる?」

 

瑠奈お嬢様も、悔しいが力が及ばない、という気持ちでいっぱいのようだった。

 

「承知しました。ですが、今すぐに、ではありません」

 

「「……なんで?」」

 

私と瑠奈お嬢様の聲が揃う。

 

「早過ぎれば逃げられ、遅過ぎれば手遅れになります。

仕掛ける瞬間を狙う、それだけです」

 

「……でも、私に告げなくてよかったじゃない?」

 

「本家は人を出さないと言い切りましたからね。本家の判断を覆す要素が必要でした。『お嬢様の友人を救うため、サマナー派遣を要請する』ことができるようになりました」

 

「……担いだわね?」

 

橘さんは首を振った。

 

「お嬢様の決定、が必要だったのですよ。手足が勝手に動いてはいけないでしょう?」

 

----

 

橘さんが退室し、私は自分の実力不足を痛感した。

 

「……今の実力じゃ、何もできない、よねえ」

 

「まあ、私としてはあずさが筋肉ムキムキの手足であってもらわないと、困るということがわかったわ。収穫よ」

 

そういう瑠奈お嬢様の手は、震えていた。狙いはわからないものの、ダークサマナーの手が近くまで伸びてきていること。それが震えの原因なのは明白だった。

 

「はい、ぎゅー」

 

そういう私の手も、震えていた。

 

橘さんが対処できると言い切った案件だからよかった。でも、そうじゃなかったら?私は、瑠奈お嬢様は、友人を失っていた可能性がある。

 

「私、強くなるから。……初対面の時も言ったけど、橘さんの手を借りなくて済むように、強く。橘さんよりも」

 

「うん。我が手足により一層ののトレーニングを命じます。……あと、頭も、目も、心臓も強くしないとね」

 

頭と、心臓。瑠奈お嬢様の言うところが、いまひとつ飲み込めない。説明を求めた。

 

「どうしてか、橘は明日香ちゃんが狙われてることを知ってたじゃない? それは、目の性能。情報収集力。それが足りてない」

 

「あー、そっかあ……」

 

「心臓はまあ、心の強さ。頭は、判断力、発想力、作戦立案能力、諸々」

 

がんばらないとね、と言う言葉に、頷いた。

 

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