武蔵転生記   作:masasoukoku

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第十話

カルネ村の集会所。

 

血まみれのガゼフ・ストロノーフを見届けたあと、

アインズ・ウール・ゴウンは静かに呟いた。

 

「では、私も」

 

転移魔法が発動する。

 

黒い光が身体を包み――

 

次の瞬間。

 

先ほどまでガゼフが立っていた野原の中心へ降り立った。

 

そこにはすでに

アルベドと

宮本武蔵がいた。

 

武蔵は剣を肩に担ぎ、退屈そうに立っている。

 

アルベドはニグンたちを冷ややかに見ていた。

 

そして、その正面。

 

ニグン・グリッド・ルインは、突然現れた三人を見て顔を歪めた。

 

「貴様ら……!」

 

天使たちの包囲の中心。

 

標的のガゼフが消え、その代わりに現れた異質な存在たち。

 

状況が完全に崩れた。

 

ニグンは怒鳴る。

 

「お前たち、何者だぁ!!」

 

アインズは一歩前へ出る。

 

仮面の下から、静かな声。

 

「私の名はアインズ・ウール・ゴウン」

 

「そして隣は従者のアルベド」

 

武蔵はあくび混じりに片手を上げた。

 

「わしか」

 

「わしは宮本武蔵」

 

ニグンの顔が怒りで赤くなる。

 

ここまで完璧だった作戦。

 

ガゼフは追い詰めた。

 

あと一歩だった。

 

それを、この得体の知れぬ連中にひっくり返された。

 

「貴様らぁ……!」

 

杖を握る手が震える。

 

「お前たちを始末して!」

 

「ガゼフどもも始末し!」

 

「ついでに生き残った村人どもも皆殺しにしてやる!!」

 

その言葉。

 

その瞬間。

 

アインズの内側で何かが切り替わった。

 

「……なんだと」

 

声が低く落ちる。

 

冷たい。

 

空気が一変した。

 

殺気ですらない。

 

もっと深く、もっと暗い何か。

 

アルベドが即座に理解する。

 

アインズが怒った。

 

本気で。

 

武蔵も横目で見る。

 

「ほう」

 

今までと違う。

 

アインズから漂う圧が変わった。

 

ニグンはまだ気づいていない。

 

自分が何に火をつけたかを。

 

アインズはゆっくりと一歩進む。

 

「村人を殺す?」

 

「私が助けた者たちを?」

 

その声音に温度はなかった。

 

ニグンの背筋に、初めて悪寒が走る。

 

空の天使たちも揺らいだ。

 

武蔵は口元を吊り上げる。

 

「……ようやくか」

 

退屈な戦場が、ようやく面白くなり始めた。

 

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アインズ・ウール・ゴウンは静かに、だが怒気を押し殺した声で言った。

 

「お前たちのようなクズが」

 

「私が助けた者を殺す?」

 

一歩。

 

踏み出す。

 

地面が軋む。

 

「ほお」

 

「出来るものならやってみろ」

 

その声音に込められた怒りは、言葉以上に重かった。

 

ニグン・グリッド・ルインの喉が鳴る。

 

本能が警鐘を鳴らしていた。

 

危険。

 

目の前の存在は危険すぎる。

 

だが引けない。

 

ここで退けば任務失敗。

 

ニグンは叫ぶ。

 

「お、お前たち!」

 

「奴らにかかれ!!」

 

空を埋める上位天使たちが一斉に突撃する。

 

槍が光り、剣が唸る。

 

だが――

 

アルベドが前へ出た。

 

「雑魚が」

 

ハルバードを一振り。

 

それだけ。

 

轟音。

 

衝撃波。

 

次の瞬間。

 

上位天使たちはまとめて霧散した。

 

跡形もない。

 

陽光聖典の召喚士たちが凍りつく。

 

「なっ……」

 

「ニ、ニグン様!」

 

ありえない。

 

上位天使群を一撃。

 

理解不能。

 

ニグンも顔を引きつらせる。

 

だが叫んだ。

 

「落ち着け!!」

 

杖を掲げる。

 

「監視の権天使――行けぃ!!」

 

光の柱。

 

そこから現れたのは巨大な天使。

 

全身鎧に身を固めた、監視の権天使。

 

ニグンが使える最高位。

 

第四位階召喚術。

 

人間としては十分に上位。

 

この世界では英雄級ですら脅威。

 

ニグンは叫ぶ。

 

「うはは 怖いか そうだろう」

 

だがアインズは見上げて、吐き捨てた。

 

「権天使か」

 

「……つまらん」

 

右手を上げる。

 

指先に黒い粒が生まれる。

 

闇。

 

重力。

 

存在そのものを呑み込む圧縮された虚無。

 

「ブラックホール」

 

ぽつり、と。

 

黒い点が空へ浮かぶ。

 

次の瞬間。

 

権天使の身体が歪んだ。

 

悲鳴すらなく。

 

そのまま一瞬で吸い込まれ、消滅した。

 

沈黙。

 

ニグンの顔色が失われる。

 

「……!?」

 

ありえない。

 

第四位階最高の召喚を。

 

一瞬で。

 

しかも詠唱なし。

 

だが。

 

ニグンの口元が歪んだ。

 

「ふ……ふふ……」

 

震えている。

 

恐怖か。

 

それとも狂気か。

 

「まだだ」

 

懐へ手を入れる。

 

取り出したのは、光を宿す巨大な水晶。

 

アインズの目が細まる。

 

「それは――」

 

嫌な予感。

 

ニグンは狂気じみた笑みで叫ぶ。

 

「見よ!」

 

「いでよ!!」

 

「威光の主天使!!」

 

水晶が砕ける。

 

空が裂ける。

 

これまでとは比較にならない神聖な光が戦場を包み込んだ。

 

武蔵が初めて目を細める。

 

「……ほう」

 

ようやく。

 

少しだけ、興味が湧いた。

 

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