武蔵転生記   作:masasoukoku

101 / 102
第九十八回 【結論】

別室。

 

レエブン侯と武蔵は静かに待っていた。

 

やがて扉が開く。

 

「お待たせいたしました。」

 

シャルティアが優雅に一礼する。

 

「どうやら話がまとまったようです。」

 

「再び謁見の間へお越しください。」

 

「承知した。」

 

レエブン侯は立ち上がる。

 

武蔵も静かに腰を上げ、二人はシャルティアの案内で再び玉座の間へ向かった。

 

重厚な扉が開く。

 

玉座にはアインズ。

 

その左右にはアルベド、デミウルゴスをはじめとする守護者たちが整列している。

 

レエブン侯は膝をつき、武蔵は静かに正座した。

 

デミウルゴスが一歩前へ進み出る。

 

「先ほど御提示いただいた提案について、アインズ陛下と協議いたしました。」

 

静かな声が玉座の間に響く。

 

「その結果――」

 

「アインズ陛下のご意思により、貴国との友好関係を結んでもよいとの結論に達しました。」

 

その言葉を聞いた瞬間。

 

レエブン侯の肩から力が抜ける。

 

(助かった……。)

 

(これで王国に希望が残った。)

 

思わず胸をなで下ろした。

 

武蔵も静かに頷く。

 

「よかったの。」

 

デミウルゴスは続ける。

 

「ですが。」

 

「提示された条件には、一つ記されていない事項がございます。」

 

「行政権についてです。」

 

アルベドが言葉を引き継ぐ。

 

「国境線については概ね異論はありません。」

 

「しかし。」

 

「エ・ランテルおよびカルネ村周辺の統治権、税制、司法、住民管理などの行政権につきましては、改めて正式な交渉を行わせていただきます。」

 

レエブン侯は深く頭を下げた。

 

「承知いたしました。」

 

「その件につきましては、王国としても正式な使節団を編成し、改めて協議させていただきます。」

 

アルベドは満足そうに頷く。

 

「結構です。」

 

レエブン侯は恐る恐る尋ねる。

 

「では……。」

 

「交渉場所はエ・ランテルでよろしいでしょうか。」

 

アインズは玉座から静かに口を開く。

 

「うむ。」

 

「エ・ランテルでよい。」

 

「互いの中間地点でもあり、もっとも妥当であろう。」

 

「ありがとうございます。」

 

レエブン侯は再び深々と頭を下げる。

 

これで国へ持ち帰るべき成果は得られた。

 

王国とナザリック魔道国。

 

両国は正式な国交樹立へ向け、次の段階へと進むことになった。

 

その様子を見ていた武蔵は、どこか満足そうに笑う。

 

「やはり。」

 

「刀を交えるばかりが勝負ではないということじゃな。」

 

アインズもわずかに頷いた。

 

「時には言葉で勝つこともある。」

 

武蔵は豪快に笑う。

 

「ははは、それもまた面白いものじゃ。」

 

-------------------------------------------------------------

レエブン侯は深く一礼した。

 

「それでは失礼いたします。」

 

「この吉報、一刻も早く国王陛下へお伝えしなければなりません。」

 

「うむ。」

 

アインズが頷く。

 

レエブン侯は護衛たちと共にナザリックを後にし、王都への帰路についた。

 

一方。

 

武蔵だけはナザリックへ残ることになった。

 

「せっかく来たのじゃ。」

 

「久しぶりに皆の顔を見ていこうと思っての。」

 

最初に駆け寄ってきたのは大きなハムスターだった。

 

「武蔵殿~~!!」

 

ハムスケである。

 

勢いよく飛びつき、武蔵の胸へ顔をこすりつける。

 

武蔵は笑いながらその頭を撫でた。

 

「元気そうじゃの。」

 

「はいでござる!」

 

「聞いてくだされ!」

 

「それがし、ついに武技を習得したでござる!」

 

「ほう。」

 

「見せてみい。」

 

闘技場に用意された木製人形。

 

ハムスケは尻尾に巻いた木刀を構える。

 

「武技――」

 

「斬撃!」

 

シュッ!

 

鋭い一太刀。

 

人形の胴に深い裂け目が入り、そのまま真っ二つに割れた。

 

武蔵は嬉しそうに頷く。

 

「ほほう。」

 

「ちゃんと武技になっておる。」

 

「まだ粗削りではあるが筋は良い。」

 

「精進すれば、もっと威力は上がるぞ。」

 

ハムスケは胸を張る。

 

「任せてほしいでござる!」

 

「武蔵殿に負けぬよう修行いたす!」

 

「うむ。」

 

「その意気じゃ。」

 

続いて武蔵が向かったのは恐怖公の部屋だった。

 

「武蔵殿!」

 

「ちょうどよいところへ!」

 

「新製品が完成したのであります!」

 

「ほう。」

 

「試してみよう。」

 

恐怖公が恭しく皿を差し出す。

 

そこには黄金色に揚げられた幼虫の菓子が並んでいた。

 

「カブト虫の幼虫に各種フレーバーを施した一品であります!」

 

武蔵は一つ摘まみ、口へ運ぶ。

 

サクッ。

 

しばらく噛みしめる。

 

「……。」

 

「ふむ。」

 

「これはなかなか。」

 

「外は香ばしく、中は柔らかい。」

 

「乙なものじゃ。」

 

恐怖公の複眼が輝く。

 

「そうでござろう!」

 

「吾輩が試行錯誤の末に作った新製品であります!」

 

武蔵はさらに一つ口へ入れる。

 

「これは……。」

 

「カルネ村名物として売っても面白いかもしれん。」

 

「!!」

 

恐怖公は感激のあまり震え始めた。

 

「武蔵殿にそこまで言っていただけるとは!」

 

「光栄至極!」

 

少し離れた場所で見ていたルプスレギナは顔を青くする。

 

「えぇ~~……。」

 

「勘弁してほしいっす。」

 

「カルネ村の名物が虫菓子なんてイヤっす……。」

 

武蔵は笑った。

 

「案外食えばうまいぞ。」

 

「遠慮するっす。」

 

その夜。

 

アインズの私室。

 

豪華な食卓を挟み、二人だけの夕食会が開かれていた。

 

もちろん料理を食べるのは武蔵だけである。

 

アインズは椅子に座り、その様子を眺めながら話を楽しんでいた。

 

帝国のこと。

 

カルネ村のこと。

 

王国との交渉。

 

そして旅で出会った強者たち。

 

話題は尽きなかった。

 

武蔵が笑えば、アインズも自然と笑う。

 

「武蔵さんと話していると、不思議と時間が経つのを忘れますね。」

 

「そうか。」

 

「酒でもあればもっと話せたの。」

 

「飲めない体なのが少し残念ですよ。」

 

アインズは苦笑した。

 

夜は更けても、二人の会話は続いた。

 

翌朝。

 

ナザリック正門。

 

見送りに来たのはアインズをはじめ、守護者たち、プレアデス、ハムスケ、恐怖公まで勢ぞろいだった。

 

恐怖公は大きな包みを差し出す。

 

「武蔵殿!」

 

「こちらを!」

 

「新しく焙煎した虫糞茶であります!」

 

「旅のお供にぜひ!」

 

武蔵は嬉しそうに受け取る。

 

「これはありがたい。」

 

「旅には茶が一番じゃ。」

 

ハムスケも目を潤ませる。

 

「また修行の成果を見てほしいでござる!」

 

「うむ。」

 

「さらに強くなって待っておれ。」

 

武蔵は刀を肩に担ぐ。

 

そしてアインズへ向き直った。

 

「ではアインズ殿。」

 

「また会おう。」

 

アインズも静かに頷いた。

 

「ええ。」

 

「武蔵さん。」

 

「良い旅を。」

 

武蔵は片手を軽く上げる。

 

「さらば!」

 

そのまま朝日に向かって歩き始める。

 

背中には恐怖公特製の虫糞茶。

 

行き先は再びカルネ村。




幼虫菓子 なさそうですがガチであります
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。