武蔵転生記   作:masasoukoku

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第十一話

光の裂け目から現れた

威光の主天使。

 

巨大。

 

眩い六枚翼。

 

手には神々しい神杖。

 

その降臨だけで大地が震え、陽光聖典の術者たちが歓喜の声を上げる。

 

「おお……!」

 

「成功した!」

 

ニグン・グリッド・ルインは高笑いする。

 

だが。

 

アインズはそれを見上げて肩を落とした。

 

「な~んだ」

 

「主天使か」

 

少しがっかりした声音。

 

第七位階相当。

 

この世界では規格外。

 

だがナザリック基準なら中堅程度。

 

脅威にはならない。

 

その横で宮本武蔵が聞いた。

 

「アインズ殿」

 

「ありゃ強いのか」

 

アインズは少し考える。

 

自分基準なら雑魚。

 

だが武蔵基準はまだ測れない。

 

「まあ」

 

「このあたりでは強いんじゃないですか」

 

武蔵は頷く。

 

そしてニグンへ向き直る。

 

「おい」

 

「そいつは強いか」

 

ニグンは勝ち誇ったように笑った。

 

「うははは!」

 

「驚け!」

 

「この主天使一体で国が滅びるだけの力があるのだ!」

 

武蔵の口元が、にまあ、と裂けた。

 

「ほお」

 

その目が光る。

 

久しぶりに見つけた。

 

少しは斬る意味のある相手。

 

ニグンが腕を振り下ろす。

 

「主天使よ!」

 

「奴らに善なる極激を浴びせてしまえ!!」

 

威光の主天使が錫杖を掲げる。

 

膨大な聖光が収束する。

 

大技。

 

放てば周囲一帯ごと聖魔法で焼き払う。

 

その瞬間。

 

武蔵が消えた。

 

「――!?」

 

ニグンの目が追えない。

 

踏み込み。

 

一瞬。

 

主天使の懐へ入り込んでいた。

 

速い。

 

アインズすら少し驚く。

 

(また速くなった?)

 

武蔵は剣を振り抜く。

 

ただ一言。

 

「斬」

 

音がない。

 

遅れて空間が割れる。

 

主天使の身体に一本の線。

 

次の瞬間。

 

神々しい巨体が真っ二つに裂けた。

 

光が吹き出す。

 

そして崩壊。

 

塵となって消える。

 

沈黙。

 

ニグンの顔から血の気が引く。

 

「…………は?」

 

理解が追いつかない。

 

国を滅ぼす力。

 

その切り札。

 

それが一太刀。

 

武蔵は剣についた光の粒を払った。

 

「なるほど」

 

「確かに、そこそこ強かった」

 

アインズが静かに呟く。

 

「……物理で第七位階召喚を斬るか」

 

アルベドですら眉を上げる。

 

ニグンの膝が震え始めた。

 

ここでようやく理解した。

 

自分が喧嘩を売った相手が何なのかを。

 

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武蔵は、斬り終えた剣を見下ろした。

 

刃全体に細かなひび。

 

熱で焼け、歪み、今にも砕けそうだ。

 

威光の主天使の神聖な力を受け止めた代償。

 

武蔵は軽く振ってみる。

 

ミシ、と嫌な音。

 

「……もうだめだ」

 

ぽい、と無造作に捨てた。

 

地面に刺さった瞬間、剣は砕けた。

 

その光景を見た陽光聖典の召喚士たちは、完全に戦意を失った。

 

「も、もうだめだ……」

 

「あんなの勝てるか……!」

 

「逃げろ!」

 

隊列が崩れる。

 

統制も何もない。

 

蜘蛛の子を散らすように逃げ出そうとする。

 

だが。

 

ザッ。

 

武蔵の足音。

 

気づけばニグン・グリッド・ルインの目の前に立っていた。

 

「ひっ……!」

 

見えなかった。

 

一瞬。

 

距離が消えた。

 

ニグンは腰を抜かし、そのまま武蔵の足元に平伏した。

 

額を地面に擦りつける。

 

「も、申し訳ありません!!」

 

「い、命だけは……命だけはお助けを!!」

 

声が裏返る。

 

先ほどまでの尊大さは跡形もない。

 

武蔵は冷たい目で見下ろした。

 

そこには興味も怒りもない。

 

ただ観察。

 

「で」

 

「どうする」

 

その一言。

 

ニグンは必死に考える。

 

生きる。

 

とにかく生きる。

 

「わ、私は!」

 

「あなたのしもべになります!」

 

「役に立って御覧に入れますぅ!」

 

涙と鼻水を垂らしながら命乞い。

 

武蔵は無言。

 

しばらく見下ろす。

 

その横で

アインズが静かに歩み寄る。

 

内心では考えていた。

 

(スレイン法国の情報源として使えるな)

 

生かす価値はある。

 

武蔵に任せれば斬るだけ。

 

アインズは口を開いた。

 

「武蔵殿」

 

武蔵が横目で見る。

 

「その男、少し借りても?」

 

武蔵は鼻を鳴らした。

 

「構わん」

 

「つまらんしな」

 

命が繋がった。

 

ニグンは涙を流して何度も頷く。

 

「ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます!!」

 

だがアインズの仮面の奥の眼は冷たかった。

 

(さて)

 

(どこまで吐くかな)

 

逃げ場はない。

 

陽光聖典の壊滅。

 

そしてニグンの運命も、今ここで大きく変わった。

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