武蔵転生記   作:masasoukoku

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第百十回 【指名】

王国との交渉を終えたアルベドは、そのままナザリックへ戻り、玉座の間で報告を行っていた。

 

玉座にはアインズ・ウール・ゴウン。

 

左右にはデミウルゴスをはじめ、各階層守護者が並んでいる。

 

アルベドは一礼し、静かに報告を始めた。

 

「以上。」

 

「我が魔導国とリ・エスティーゼ王国との間で友好条約を締結する運びとなりました。」

 

「国境も正式に画定され、エ・ランテルおよびカルネ村の統治体制も合意しております。」

 

「これもひとえに、アインズ陛下のお力によるものでございます。」

 

守護者たちが一斉に頭を垂れる。

 

「アインズ様、万歳!!」

 

「アインズ様のお導きあればこそ。」

 

その様子を見ながらアインズは内心で頭を抱えていた。

 

(いや、本当に何もしてないんだけど……。)

 

(交渉したのはアルベドだし、まとめたのはエンリさんじゃないか……。)

 

もちろん、そんな本音を口に出せるはずもない。

 

威厳を崩さぬよう、ゆっくりとうなずく。

 

「……うむ。」

 

「ご苦労であった。」

 

アルベドは嬉しそうに頭を下げた。

 

「ありがたき幸せ。」

 

アインズは少し考える。

 

「さて。」

 

「カルネ村共同執政の件だが。」

 

「魔導国側の代理を決めねばならぬ。」

 

「ルプスレギナなら村の事情にも詳しいが……。」

 

一瞬考えたあと、首を横に振る。

 

「……いや。」

 

「少々自由奔放すぎるか。」

 

ルプスレギナは口を尖らせる。

 

「えー。」

 

「ひどいっす。」

 

「ナーちゃんだって暴走したことあるっす。」

 

ナーベラルは冷たい視線を送る。

 

「あなたと一緒にしないで。」

 

「……まあ、一度だけですけど。」

 

小さく付け加えたその一言に、シャルティアが思わず吹き出した。

 

アインズは苦笑をこらえながら続ける。

 

「皆の意見を聞きたい。」

 

アルベドがすぐに一歩前へ出る。

 

「それでは。」

 

「アインズ様の代理として、ユリ・アルファを推薦いたします。」

 

「ユリはプレアデスの長として冷静沈着。」

 

「住民との折衝能力にも優れております。」

 

デミウルゴスも静かにうなずく。

 

「異論ございません。」

 

「カルネ村は人間との接触も多く、感情に流されぬ判断力が必要です。」

 

「ユリ・アルファが最適任でしょう。」

 

セバスも口を開く。

 

「私も賛成です。」

 

「ユリならば住民の信頼も得られましょう。」

 

他の守護者たちも異議はなかった。

 

アインズは満足そうにうなずく。

 

「それでは決定する。」

 

「ユリ・アルファ。」

 

「我が代理としてカルネ村共同執政に当たれ。」

 

ユリは深々と跪いた。

 

「はっ。」

 

「この身に代えましても、アインズ様のお役目を全ういたします。」

 

「うむ。」

 

「期待している。」

 

「ありがとうございます。」

 

こうしてカルネ村共同執政は、

 

アインズ・ウール・ゴウン(代理:ユリ・アルファ)

宮本武蔵

ガゼフ・ストロノーフ

 

の三者体制で進められることとなった。

 

そして誰も気付かなかった。

 

その決定を聞いたルプスレギナだけが、小さく肩をすくめながら笑っていた。

 

「まあ……。」

 

「ユリ姉が行くなら安心っすね。」

 

「でも、そのうちカルネ村でまた面白いことが起きそうっす。」

 

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カルネ村の人事が決まると、アインズは続けて次の案件を口にした。

 

「では。」

 

「エ・ランテルはどうする。」

 

視線はデミウルゴスへ向けられる。

 

デミウルゴスは少し考えた後、静かに眼鏡を押し上げた。

 

「そうですね。」

 

「私としては、セバスチャンを推薦いたします。」

 

セバスは少し驚いたように目を開く。

 

「私、ですか。」

 

アインズも興味深そうに尋ねる。

 

「理由を聞こう。」

 

「はい。」

 

デミウルゴスは淡々と説明を始めた。

 

「エ・ランテルはカルネ村とは異なり、一つの都市です。」

 

「住民も多く、人間社会との折衝が日常的に発生します。」

 

「その点、セバスチャンは人間との付き合いに最も慣れております。」

 

「さらに。」

 

「ツアレを同行させれば、人間側との橋渡し役としても大いに役立つでしょう。」

 

「彼女自身が人間であり、市民の生活感覚も理解しております。」

 

アルベドもうなずく。

 

「確かに。」

 

「セバスならば都市行政も円滑に進められるでしょう。」

 

アインズは納得したように頷いた。

 

「なるほどな。」

 

「セバス。」

 

「どうかな。」

 

セバスは一歩前へ進み、深々と跪く。

 

「はっ。」

 

「アインズ様の仰せとあらば、このセバス。」

 

「一命を賭して、その任を果たします。」

 

「うむ。」

 

アインズは静かに頷いた。

 

「期待している。」

 

「ただし!」

 

その声音が少しだけ真剣になる。

 

「エ・ランテルはカルネ村より遥かに規模が大きい。」

 

「行政、人事、治安、商業……判断を要する案件も多いだろう。」

 

「独断は避けよ。」

 

「連絡は密にするように。」

 

アインズの脳裏には、王都でセバスがツアレを保護した一件が浮かんでいた。

 

あの時は結果的に良かったものの、ナザリック全体を巻き込む事態にもなり得た。

 

だからこその忠告だった。

 

セバスはその意味を理解したように、深く頭を下げる。

 

「承知いたしました。」

 

「今後は逐一ご報告し、ご裁可を仰ぎます。」

 

「それでよい。」

 

デミウルゴスも満足そうに微笑む。

 

「これでエ・ランテルの統治体制も盤石でしょう。」

 

アルベドが最後に確認する。

 

「では、魔導国代表はセバスチャン。」

 

「都市行政の実務は都市長パナソレイと共同。」

 

「必要に応じてツアレも補佐役として同行。」

 

「以上の体制で進めます。」

 

「異議なし。」

 

守護者たちが一斉に応じた。

 

こうして魔導国側の新たな統治体制は定まった。

 

カルネ村

アインズ・ウール・ゴウン(代理:ユリ・アルファ)

宮本武蔵

ガゼフ・ストロノーフ

村長:エンリ・エモット

 

エ・ランテル

魔導国代表:セバスチャン

王国代表:レエブン侯が選任する代表者

都市長:パナソレイ

補佐:ツアレ・イミーナ

 

武力だけではなく、互いの信頼を基盤とする、新しい統治が静かに始まろうとしていた

 

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カルネ村

 

村の広場。

 

出発の支度を整える武蔵は、クレマンティーヌへ声を掛けた。

 

「クレマン。」

 

「わしの代理、お主がやってくれ。」

 

「えぇ~。」

 

クレマンティーヌは露骨に嫌そうな顔をする。

 

「めんどくさい。」

 

「なるべく早く帰ってきてよ。」

 

「先生だけじゃなく、代理までやるなんて聞いてないんだから。」

 

武蔵は豪快に笑う。

 

「はっはっは。」

 

「頼んだぞ。」

 

そのやり取りを見ていたエンリも笑みを浮かべる。

 

「クレマン先生なら安心ですね。」

 

「子どもたちにも人気ですし。」

 

クレマンは少し照れくさそうに鼻を鳴らした。

 

「まあね。」

 

「教えるのは嫌いじゃないし。」

 

こうして武蔵不在時のカルネ村共同執政代理は、クレマンティーヌが務めることとなった。

 

---------------------------------------------------------------------------

一方その頃。

 

王城ではガゼフ・ストロノーフが国王の前に立っていた。

 

「わ、私が……ですか。」

 

驚くガゼフに、レエブン侯が静かに頷く。

 

「うむ。」

 

「カルネ村では住民から大きな信頼を得られたそうですね。」

 

「その実績は大きい。」

 

ガゼフは腕を組む。

 

「しかし。」

 

「私は王国戦士長です。」

 

「本来の業務もございます。」

 

ランポッサ三世が穏やかに微笑んだ。

 

「ガゼフよ。」

 

「これもまた経験だ。」

 

「国を治めるとはどういうことか。」

 

「武だけではなく政も学ぶよい機会となろう。」

 

ガゼフはしばらく考えた後、静かに跪く。

 

「……承知いたしました。」

 

「それでは、お受けいたします。」

 

「ありがとうございます。」

 

国王は満足そうに頷いた。

 

レエブン侯も続ける。

 

「なお。」

 

「エ・ランテル共同執政については、王国側代表に適任者が決まるまで。」

 

「ひとまず私が務めさせていただきます。」

 

「王都との連絡も私が担当いたします。」

 

ザナックも頷く。

 

「それが最も無難だろう。」「国を治めるとはどういうことか。」

 

「武だけではなく政も学ぶよい機会となろう。」

 

ガゼフはしばらく考えた後、静かに跪く。

 

「……承知いたしました。」

 

「それでは、お受けいたします。」

 

「ありがとうございます。」

 

国王は満足そうに頷いた。

 

レエブン侯も続ける。

 

「なお。」

 

「エ・ランテル共同執政については、王国側代表に適任者が決まるまで。」

 

「ひとまず私が務めさせていただきます。」

 

「王都との連絡も私が担当いたします。」

 

ザナックも頷く。

 

「それが最も無難だろう。」

 

こうして双方の代理人も定まり、新たな統治体制はゆっくりと動き始めた

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