武蔵転生記   作:masasoukoku

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第二十三話

森の空き地。

 

賢王が鼻息荒く身構える。

 

「次はお主でござるか!」

 

「いくでござる!」

 

地面を蹴る。

 

巨体とは思えぬ速度。

 

一直線。

 

モモンへ飛びかかる。

 

ガギィィン!!

 

モモンは双剣を交差して受け止めた。

 

だが。重い。

 

純粋な膂力で押してくる。

 

(この重量でこの速さ)

 

アインズは内心で感心する。

 

賢王が叫ぶ。

 

「魅了!」

 

魔術発動。

 

視線に魔力が宿る。

 

だが。

 

効かない。

 

モモンは微動だにしない。

 

拳王が目を見開く。

 

「某の魅了が効かぬとは!?」

 

当然だった。

 

相手はアンデッド。

 

精神系無効。

 

横で見ていた武蔵が声を飛ばす。

 

「そのまま投げよ!」

 

モモンは即座に反応。

 

踏み込み。

 

腰を入れる。

 

ぐるり。

 

そのまま賢王を持ち上げ――

 

ドゴォッ!!

 

バックブリーカーのように叩きつける。

 

「へげ!」

 

地面が揺れる。

 

賢王は転がる。

 

だが即座に一回転して着地。

 

態勢を整える。

 

「某を投げるとは」

 

「お主やるなでござる!」

 

武蔵が感心する。

 

「よい」「丈夫じゃ」

 

賢王が再び突っ込む。

 

「いくでござる!」

 

今度は尻尾。

 

高速の鞭。

 

バシィィッ!

 

モモンは剣で流す。

 

かわす。

 

捌く。

 

「うぬぬ!」

 

賢王が苛立つ。

 

「では!」

 

跳躍。

 

全体重をかけて押し潰す。

 

「そのまま潰してやるでござる!」

 

だが。

 

モモンは冷静だった。

 

一歩。

 

半身。

 

回避。

 

そして後ろを取る。

 

手を股下から回し。

 

腰を持つ。

 

そのまま――

 

ブン!!

 

大外刈りのように投げ飛ばす。

 

ドシャア!!

 

賢王がひっくり返る。

 

腹を見せる形。

 

無防備。

 

モモンは剣を向ける。

 

だが。

 

(んー……)

 

(倒すのは簡単だが)

 

(従えられれば便利だな)

 

そう判断した。

 

ほんの少しだけ。

 

ほんのわずかだけ。

 

絶望のオーラを漏らす。

 

空気が変わる。

 

世界が凍る。

 

賢王の全身の毛が逆立つ。

 

本能が叫ぶ。

 

勝てない。

 

絶対に。

 

武蔵も横で目を細めた。

 

ほう)

 

これがアインズの底か。

 

賢王は震えた。

 

汗だく。

 

「こ、降伏でござる!」

 

「あ、あっさり降参でござる!」

 

ナーベが鼻で笑う。

 

「当然」

 

モモンは剣を下ろした。

 

「賢明ですね」

 

賢王は腹を見せたまま震えている。

 

武蔵が歩み寄る。

 

しゃがむ。

 

ふわっと頭を撫でる。

 

「よい戦いじゃった」

 

賢王は硬直した。

 

(撫でられたでござる……)

 

モモンはそれを見て思う。

 

(懐柔が早いな……)

 

こうして。

 

森の賢王――は。

 

モモンと武蔵という異常な二人に出会い。

 

その生き方が大きく変わることになる。

 

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森の奥。

 

腹を見せたまま震えていた

賢王が、ぴしっと姿勢を正した。

 

「それがし!」

 

「これからは殿たちの家臣でござる!」

 

「何でも言いつけてほしいでござる!」

 

頭を下げる。

 

完全降伏。

 

モモンは少し考える。

 

(理想的だ)

 

未知の魔獣。

 

知性あり。

 

戦力として優秀。

 

情報源にもなる。

 

一方。

 

武蔵はその頭をぽんぽん叩く。

 

「よい」

 

「よい家臣になれ」

 

賢王は嬉しそうに目を細めた。

 

「ありがたき幸せ!」

 

そして。

 

ぐるりと身体を向ける。

 

「殿!」

 

「どうぞでござる!」

 

しゃがみ込む。

 

どうやら。

 

自分を馬代わりに使えということらしい。

 

ナーベが眉をひそめる。

 

「……乗るの?」

 

武蔵は即答。

 

「乗る」

 

迷いがない。

 

ふわりと背に乗る。

 

毛がふかふか。

 

武蔵が少し感心する。

 

「おお」

 

「よい座り心地じゃ」

 

モモンも続く。

 

ナーベも仕方なく乗る。

 

こうして。

 

巨大ハムスターに三人乗り。

 

異様な光景が完成した。

 

「では行くでござる!」

 

ダンッ!

 

賢王が駆ける。

 

速い。

 

木々を飛び越え。

 

地を蹴り。

 

風のように外縁部へ。

 

その頃。

 

漆黒の剣と

ンフィーレア・バレアレは不安になっていた。

 

ペテルが腕を組む。

 

「遅いな……」

 

ニニャが心配そうに言う。

 

「やっぱり何かあったんじゃ」

 

ルクルットが苦笑する。

 

「武蔵さんとモモンさんなら平気だろ」

 

だが声には不安があった。

 

その時。

 

森の奥から轟音。

 

ドドドドドド!!

 

「来る!」

 

ダインが身構える。

 

全員武器を抜く。

 

そして

 

飛び出してきた巨大なハムスター

 

その背に

 

武蔵、モモン、ナーベが乗っている。

 

沈黙。

 

全員、固まる。

 

ぽかん。

 

ンフィーレアが口を開ける。

 

「え……?」

 

ルクルットが指差す。

 

「なんで増えてる!?」

 

ペテルも理解不能。

 

「しかも乗ってる!?」

 

ニニャは青ざめる。

 

「森の賢王ですよね……あれ……?」

 

武蔵は降りながら言った。

 

「捕まえた」

 

モモンも静かに言う。

 

「仲間です」

 

ナーベは補足する。

 

「下僕よ」

 

ハムスケは胸を張る。

 

「家臣でござる!」

 

ルクルットが頭を抱えた。

 

「意味がわからねえ……」

 

武蔵は笑った。

 

「よい拾い物をした」

 

モモンも同意した。

 

本当にそうだ)

 

こうして彼らに。

 

新たな戦力が加わった。

 

しかも、とんでもなく目立つ戦力が。

 

 

 

 

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