武蔵転生記   作:masasoukoku

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第二十七話

ガジットは恐れおののいていた もう逃げるしかない 逃げようそれしかない

 

刹那。

 

空気が止まった。

 

カジット・デイル・バダンテールは理解できなかった。

 

背を向けた瞬間。

 

“何かが来る”と気づいた時にはもう遅い。

 

武蔵の刃は、すでにそこにあった。

 

「え?」

 

その一言だけ残して。

 

世界が横に割れる。

 

どちゃ。

 

身体は崩れ落ちる。

 

思考より速い斬撃。

 

終わり方としてはあまりにも静かだった。

 

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残ったのは一瞬の沈黙。

 

そして。

 

クレマンティーヌの瞳がわずかに揺れる。

 

(……まずい)

 

直感ではない。

 

経験だ。

 

“これは遊びじゃない”

 

目の前の男――宮本武蔵。

 

自分より上。

 

そう理解した瞬間、思考は切り替わる。

 

逃げる。

 

ただし。

 

ただ逃げるだけでは終わらない。

 

彼女は笑った。

 

「いいねぇ……」

 

そして全力で“積む”。

 

身体能力強化。

 

疾風走破。

 

不落要塞。

 

能力向上。

 

超能力向上。

 

超回避。

 

流水加速。

 

限界まで重ねた“逃走兼奇襲ビルド”。

 

(あの黒い鎧はパワータイプ……あいつなら一撃入れて離脱できる)

 

標的を切り替える。

 

モモン。

 

彼の背後へ回り込む。

 

風のように消える。

 

地面を蹴るたびに残像が増える。

 

「もらった!」

 

刃が閃く。

 

全力の一撃。

 

それを“置き土産”にして、この場から離脱する――はずだった。

 

だが。

 

モモンは動かない。

 

いや。

 

“動く必要がない位置にいた”。

 

クレマンティーヌの刃が届く直前。

 

空気が重くなる。

 

(――なに、この圧)

 

声。

 

低く、静かに。

 

「ほう」

 

それだけ。

 

その瞬間。

 

彼女は理解した。

 

ここはもう、“逃げられる戦場”ではない。

 

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神殿前の空気が、完全に“死”の温度へ落ちた。

 

クレマンティーヌは確かに速かった。

 

最初の一撃は完璧だった。

 

マスクの隙間を狙い、スティレットを差し込む。

 

電撃。

 

普通ならそこで終わる。

 

だが――

 

相手が違った。

 

モモンは一歩も引かない。

 

むしろ。

 

抱きしめた。

 

「ぐっ……!」

 

拘束されたまま、クレマンティーヌの全力が叩き込まれる。

 

拳。

 

蹴り。

 

短剣。

 

すべてが入る。

 

それでも離れない。

 

「こ、この……離せ!」

 

だがモモンは静かに言う。

 

「すまないな」

 

「私は魔術師なんだ」

 

その言葉と同時に――力が変わる。

 

骨が軋む音。

 

「どうだ」

 

「魔術師に抱きしめられる気持ちは」

 

「ぐ……ぶふぉッ!」

 

血がこぼれる。

 

呼吸が潰れる。

 

関節が折れていく。

 

静かに、確実に。

 

終わりへ向かう圧。

 

そしてモモンは、ゆっくりと顔を見せる。

 

フェイスガードを上げる。

 

そこにあるのは。

 

アインズ・ウール・ゴウンの貌。

 

死そのもの。

 

「ひぃっ……!」

 

クレマンティーヌの理解が崩れる。

 

逃げ道が消える。

 

左右を見ても、もう無い。

 

そこにいるのは。

 

ただ“戦いを見ている男”。

 

宮本武蔵。

 

クレマンティーヌは必死に叫ぶ。

 

「助けて!」

 

「?」武蔵はわしかと言った顔

 

「こいつ アンデッドよ アンデッド!」

 

クレマンティーヌの必死の叫び

 

「アンデッドは敵でしょ!?人間の敵よ!」

 

武蔵は静かに見返す。

 

そして。

 

あまりにも淡々と答える。

 

「わしが人間だとしても」

 

「お前を助ける道理はないな」

 

一歩。

 

距離が詰まる。

 

クレマンティーヌの喉が鳴る。

 

「それに」

 

「そ、それに……?」

 

最後に見たのは。

 

刃。

 

そして静かな声。

 

「もう終わりじゃ」

 

――それが彼女の世界の終点だった。

 

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神殿前に、静寂だけが残る。

 

血の匂いと、圧倒的な“終わり”の気配。

 

そしてその中心に。

 

死の王と。

 

戦いを楽しむ男が立っていた。

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