武蔵転生記   作:masasoukoku

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第二十八話

神殿の外は、戦闘の余韻だけが残っていた。

 

血の匂い。崩れた石材。沈黙する墓地。

 

モモンとナーベが神殿から出ると、そこには一人の男が立っていた。

 

宮本武蔵。

 

先ほどまでの狂騒が嘘のように、ただ風に立っている。

 

どこか――満たされていない顔。

 

戦いの後に残る、いつもの静けさ。

 

「終わったか」

 

武蔵は短く言った。

 

その声には興奮も余韻もない。

 

ただ事実だけ。

 

モモンは少しだけ間を置き、それから口を開く。

 

「武蔵さん」

 

「ナザリックに来ませんか」

 

戦力として、ではない。

 

危険人物として、でもない。

 

“同類”として。

 

その瞬間だった。

 

空気が割れるように伝言が入る。

 

ナザリックからの強制リンク。

 

アルベドの声は、明らかに焦っていた。

 

「アインズ様!!」

 

「緊急事態です!!」

 

「シャルティア・ブラッドフォールンが――反逆しました!!」

 

一瞬。

 

完全に時間が止まる。

 

モモンの思考が空白になる。

 

「は?」

 

それだけが、漏れた。

 

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ナーベも固まる。

 

武蔵は首をかしげる。

 

意味を測っている顔。

 

だがモモンの中では、すでに別の回路が走り出していた。

 

(シャルティアが反逆?)

 

(いや、ありえない)

 

(制御……いや、精神干渉?洗脳?)

 

視線が一気に遠くなる。

 

墓地の静寂が、別世界の音になる。

 

モモンはゆっくり息を吐いた。

 

そして短く言う。

 

「……すぐ戻る」

 

武蔵を見る。

 

一瞬だけ。

 

その目は、さっきまでの“戦士の顔”ではなかった。

 

“王の顔”だった。

 

「武蔵さん」

 

「すみませんが、これは少し厄介なことになりました」

 

そして転移の魔力が広がる。

 

ナザリックへ。

 

戦いの舞台は変わる。

 

武蔵はその背中を見送る。

 

「……忙しい男じゃな」

 

ぽつり。

 

そして少しだけ笑う。

 

「まあいい」

 

「次の面白い戦いは、向こうにあるかもしれん」

 

墓地には再び静寂。

 

だがこの夜はまだ終わっていない。

 

ナザリックでは“反逆”が始まり。

 

地上では“剣鬼”が残る。

 

そしてそれぞれの戦場が、次の段階へ動き出していた。

 

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エ・ランテル墓地アンデッド大量発生事件は、その夜のうちに終息した。

 

遅れて駆けつけた冒険者たちが、残っていたアンデッドを掃討。

 

街は救われた。

 

だが真相を知る者は少ない。

 

神殿の奥で何があったのか。

 

知るのは――

モモン、

ナーベ、

そして

宮本武蔵だけ。

 

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ハムスケとナーベは、そのままナザリックへ。

 

ンフィーレア・バレアレも保護され、アインズの中でその価値は大きく跳ね上がった。

 

「マジックアイテム全てを扱える才能……」

 

「これは大きい」

 

さらに。

 

カジット・デイル・バダンテールの傍らに落ちていた

死の宝珠も回収。

 

アインズにとっては収穫の多い夜だった。

 

だが。

 

奇妙なこともあった。

 

クレマンティーヌとカジットの死体。

 

遺体保管庫からいつの間にか消えていた。

 

「……回収されたか」

 

アインズはそう判断した。

 

裏にまだ何かある。

 

そう確信する。

 

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数日後。

 

冒険者ギルドにて。

 

今回の功績が正式に認められた。

 

モモンには――

 

ミスリル級プレート。

 

ギルド中がざわめく。

 

「異例の昇格だ……」

 

「黒の戦士、化け物か」

 

一方。

 

武蔵にも呼び出しがかかる。

 

ギルドマスターが少し困った顔で言う。

 

「あなたにも功績があります」

 

差し出されたのは。

 

ゴールド級プレート。

 

武蔵はしげしげ見る。

 

「ほう」

 

「小判か」

 

「いや違います、階級です」

 

「金じゃないのか」

 

周囲が苦笑する。

 

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その夜。

 

エ・ランテルの門前。

 

武蔵はひとり立っていた。

 

腰にはモモンから借りた刀。

 

風が吹く。

 

街道は遠くへ続く。

 

「この街も終いか」

 

強者はいた。

 

モモン。

 

ナーベ。

 

賢王。

 

クレマンティーヌ

 

だが。

 

まだ足りぬ。

 

もっと上。

 

もっと強いものがいるはず。

 

その匂いが、この世界にはある。

 

武蔵は笑う。

 

「さて」

 

「次はどこじゃ」

 

そして歩き出す。

 

エ・ランテルを後にして。

 

その背を、遠くから見ている影があった。

 

黒い影。

 

シャドウデーモン。

 

デミウルゴスの命で監視を続ける存在。

 

武蔵は振り返らない。

 

だが知っている。

 

「ついて来るなら来い」

 

「そのうち斬るかもしれんがな」

 

影が揺れる。

 

そして旅が始まる。

 

――次なる舞台へ。




ノベル第2巻 エ・ランテル編をもとにしたお話は終了
次回から 第3~7巻をもとに王都編を始めます
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