武蔵転生記   作:masasoukoku

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休日なので区切りがいいところまで


第三話

アルベドは、反射だけで身体を捻った。

 

刹那。

 

斬撃が鼻先を掠める。

 

「ぐうっ……!」

 

ほんの紙一重。

 

あと指一本でも遅れていれば、首が飛んでいた。

 

着地したアルベドは目を見開く。

 

(この私が……避けた?)

 

守るのではない。

 

受けるのでもない。

 

“避けねば死ぬ”と、本能が判断した。

 

そんな経験は、ナザリックに来てから一度もない。

 

一筋、汗が伝う。

 

(汗 ですって!)

 

それは恐怖でも疲労でもない。

 

純粋な緊張。

 

自分より下等な存在と見なしていた“人間”に対して。

 

「……ありえぬ」

 

指先が震える。

 

武蔵は剣を肩に担ぎ、愉快そうに笑った。

 

宮本武蔵の目は、飢えた獣そのものだった。

 

「よい」「それだ」

 

武蔵は剣先をアルベドへ向ける。

 

「さあ――本気を見せてくれ」

 

その声音に挑発はない。

 

純粋な期待。

 

強者が強者に向ける、ただそれだけの願い。

 

アルベドの瞳が怒りで燃える。

 

「……侮るな」

 

黒い瘴気が溢れ始める。

 

大気が軋む。

 

地面が沈む。

 

守護者統括としての真の威圧。

 

村の周囲の木々が悲鳴のように軋んだ。

 

森の奥で見守るアインズも、その出力上昇を感じ取る。

 

(アルベドがここまで本気を……)

 

アルベドはハルバードを構え直す。

 

「貴様はここで終わる」

 

武蔵の口元が裂けるように笑う。

 

「そうか」

 

剣を正眼に戻す。

 

「ならば斬ろう」

 

次の瞬間。

 

黒き守護者と、剣豪。

 

二つの怪物が、真正面から激突した。

 

黒き稲妻のように激突した瞬間だった。

 

アルベドのハルバードが唸りを上げ、

 

宮本武蔵の剣が閃光のように走る。

 

互いの一撃は、確実に届いていた。

 

武蔵の刃はアルベドの肩口へ深々と喰い込み――

 

アルベドのハルバードもまた、武蔵の脇腹へめり込んでいた。

 

止まらぬはずの致命の交換。

 

その刹那。

 

「――そこまで!」

 

低く、絶対の命令が空間を貫いた。

 

時間が止まったかのようだった。

 

空気が凍る。

 

二人の間へ、漆黒の法衣をまとった存在が現れる。

 

アインズ・ウール・ゴウン。

 

その声には、戦場そのものを支配する重みがあった。

 

アルベドの瞳が揺れる。

 

「し、しかし……モモンガ様!」

 

怒りと焦り。

 

あと一押しで、この無礼者を討てる。

 

だが、主命は絶対。

 

武蔵もまた動きを止めた。

 

ハルバードが脇腹に喰い込み、血が滴る。

 

それでも眉一つ動かさない。

 

代わりに、目の前に現れた骸骨の王を見て笑った。

 

「おぬしか」

 

その声には納得があった。

 

先ほどから森の影で感じていた、底知れぬ気配。

 

それがこの男。

 

アインズは静かに二人を見る。

 

アルベドのハルバードは武蔵を捉え、

 

武蔵のなまくら剣はアルベドの肉に届いている。

 

あと一瞬遅ければ、どちらか、あるいは両方が深手だった。

 

(……危険だ)

 

アインズは理解していた。

 

この男、ただの異邦人ではない。

 

レベルという尺度で測れるかすら怪しい。

 

武蔵は剣を抜き、肩に担ぐ。

 

「止めるとは惜しい」

 

「ようやく熱くなってきたところだ」

 

アルベドもハルバードを引き抜きながら、なお殺気を消さない。

 

「モモンガ様、お許しを。今すぐ首を――」

 

「よい、アルベド」

 

一言で止まる。

 

武蔵はアインズを見据えた。

 

「お前が一番強いな」

 

その言葉に、アインズの眼窩の光が揺れた。

 

武蔵の笑みが深まる。

 

「ならば次は――おぬしだ」

 

カルネ村の焼け跡で。

 

ついに、“死の支配者”と“剣の怪物”が真正面から向き合った。

 

 

 

 

 

 

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