王国街道。
リ・エスティーゼ王国の中心――
王都リ・エスティーゼへ向かう道。
宮本武蔵は気ままに歩いていた。
目的はない。
ただ一つ。
強者を探す。
「人が多ければ、強いのもおるじゃろう」
それだけだった。
腰には借り物の刀。
足取りは軽い。
その後ろ。
相変わらずぴたりとついてくる影。
シャドウデーモン。
武蔵はちらりと振り返る。
「お前、しゃべれんのか?」
沈黙。
「……そうか」
「つまらん」
だが追い払わない。
もう半ば野良犬のような扱いだった。
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その頃。
ナザリック地下大墳墓。
玉座の間。
アインズ・ウール・ゴウンは深く椅子に沈んでいた。
つい先日。
洗脳された
シャルティア・ブラッドフォールンとの死闘。
勝利した。
だが。
復活コスト5億。
その数字が頭を離れない。
「高すぎる……」
指で額を押さえる。
胃があるなら痛んでいた。
(ワールドアイテム……敵の存在……)
脅威は現実になった。
慢心は禁物。
ナザリックの守りを強化しなければならない。
その時。
前に並ぶ守護者たち。
コキュートスが頭を下げる。
アインズは静かに命じる。
「リザードマン集落を攻略せよ」
場がざわつく。
アウラが首をかしげる。
「え?」
デミウルゴスはすぐに意図を読む。
「なるほど……」
実戦訓練。
統率訓練。
他種族支配の試験。
そして敗北からの再起確認。
コキュートスは深々と頭を下げた。
「ハッ」
「必ずや」
アインズは頷く。
だが。
心の片隅では別のことも考えていた。
武蔵。
あの規格外の人間。
今どこにいるか。
何をしているか。
「……放っておくには惜しい」
だが今は手が離せない。
シャルティア事件の余波が大きすぎた。
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一方その頃。
街道の途中。
武蔵がふと足を止める。
前方の馬車が
盗賊に襲われている。
女の悲鳴。
男の怒号。
武蔵は目を細める。
「……さて」
「強いか?」
それだけを基準に、また歩き出した。
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街道の脇。
馬車を囲む盗賊たち。
下卑た笑い声。
その中心で、怯えるふりをする金髪縦ロールの令嬢――
ソリュシャン・イプシロン。
その隣には老執事姿の
セバス・チャン。
王都任務の途中だった。
盗賊たちは何も知らない。
目の前にいるのがナザリックでも屈指の捕食者だとは。
「グヘヘ……嬢ちゃん、痛くしねえよ」
「まず服を――」
ソリュシャンの目が細くなる。
(不快)
(でも食料としては悪くありませんね)
口元がぴくりと緩む。
体内の酸液がわずかに泡立つ。
セバスも限界だった。
この手の外道は嫌いだ。
「……ソリュシャン」
「もうよろしいかと」
「はい」
その瞬間。
後方から猛烈な速度で近づく気配。
ザッ!!
砂煙の中から
一人の男が現れる。
宮本武蔵。
盗賊たちの前で止まる。
武蔵は盗賊たちを見渡し――
ため息。
「……弱いな」
盗賊たちがキレる。
「なんだテメェ!」
「死にてぇか!」
セバスの目が細くなる。
この男……)
(ただ者ではない)
ソリュシャンも気づく。
(強い……)
(セバス様級……いえ、それ以上?)
武蔵は馬車の中を見る。
ソリュシャンと目が合う。
「ふむ」
「美人じゃな」
ソリュシャン、一瞬固まる。
ナザリックでも珍しい反応だった。
セバスは内心少し面白がる。
盗賊の頭が怒鳴る。
「無視してんじゃねぇ!」
斧を振り下ろす。
武蔵。
見ずに一歩。
スッ。
盗賊の腕が落ちる。
遅れて血。
「ぎゃあああ!」
誰も見えなかった。
セバスの目が見開く。
(抜刀した……?)
(いや、抜いた気配すらない)
盗賊たちは恐怖する。
武蔵は言う。
「命を賭けるなら」
「もう少し強くなってからにせい」
盗賊たちは一斉に逃げ出した。
ソリュシャンが舌打ちする。
「逃がしましたか」
武蔵が振り返る。
「おぬし、追うか?」
その問いにセバスが一歩前へ出る。
「いえ、十分です」
「助太刀、感謝いたします」
武蔵はセバスを見る。
そして目が変わる。
「……ほう」
セバスも感じる。
武蔵の中の“獣”。
強者同士だけが分かる気配。
武蔵は笑う。
「おぬし」
「強いな」
セバスも静かに微笑む。
「あなたほどでは」
馬車の中でソリュシャンが興味深そうに見ていた。
(また面倒な人間が増えましたね)
影の中。
シャドウデーモンも、この邂逅をじっと見ていた。