武蔵転生記   作:masasoukoku

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第三十七話

裏路地の陰。

 

娼館の裏口を見張りながら、

セバス・チャンはこれまでの経緯を二人に話した。

 

ツアレを救ったこと。

 

白金貨を払ったこと。

 

それでもなお取り立てが続くこと。

 

背後にいる組織――は八本指。

 

話を聞き終えた

クライムの拳が震える。

 

「許せない……!」

 

若い騎士の目に怒り。

 

「人を物のように扱うなんて!」

 

一歩前に出る。

 

「手伝いましょう!」

 

迷いがない。

 

セバスは少し驚いた。

 

ブレインは腕を組む。

 

「八本指に喧嘩を売ることになるが……」

 

口元を歪める。

 

「まあいいか」

 

どこか吹っ切れた顔。

 

武蔵とセバス。

 

二人の強者を見た今。

 

命を懸ける場所が欲しかった。

 

セバスは静かに頭を下げる。

 

「ありがとうございます」

 

その時――

 

上空。

 

「やっと面白くなってきた」

 

三人が見上げる。

 

屋根の上から飛び降りる影。

 

ドスン。

 

軽い着地。

 

宮本武蔵だった。

 

腕を組み、

 

ニヤリと笑っている。

 

セバスが眉をひそめる。

 

「武蔵様」

 

「これは私個人のことです」

 

「あなたまで巻き込むわけには」

 

武蔵は鼻で笑う。

 

「面白いことから外されては困るな」

 

当然のように言う。

 

セバスは苦笑した。

 

やはり止まらない。

 

クライムは呆然としている。

 

「あ、あの方は……?」

 

ブレインが横でぼそり。

 

「あれは」

 

少し考えてから。

 

「人外だ」

 

武蔵が聞いて振り向く。

 

「おう、褒めるな」

 

ブレインは真顔。

 

「褒めてない」

 

四人。

 

奇妙な即席の共闘。

 

王都の闇。

 

八本指。

 

その巣穴へ向かう準備が整った

 

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娼館の裏口。

 

扉はすでに吹き飛んでいた。

 

中では悲鳴と怒号。

 

床には転がる下っ端たち。

 

だが全員、生きている。

 

宮本武蔵は肩を回しながらぼやいた。

 

「まいった」

 

「本気のホの字も出すわけにいかんな、これは」

 

四人は裏口から一気に殴り込んだ。

 

だがその前に

クライムが言ったのだ。

 

「できれば捕縛したい」

 

証拠。

 

証言。

 

八本指を根から断つには必要。

 

それは理解できる。

 

だが武蔵にとってはやりにくい。

 

無刀。

 

素手。

 

それでも少し力を入れれば、

 

相手は肉片になる。

 

「まいった、まいった」

 

言いながら。

 

バコン。

 

一人を平手で壁にめり込ませる。

 

ドゴッ。

 

膝で鳩尾。

 

気絶。

 

ゴキッ。

 

肩関節を外す。

 

生かすための加減。

 

これが逆に難しい。

 

武蔵の顔は不満げだった。

 

「手加減のほうが難儀じゃ」

 

一方。

 

セバス・チャンは正確無比。

 

急所だけを打ち抜く。

 

一撃失神。

 

静かで美しい。

 

ブレイン・アングラウスは剣の腹で打つ。

 

無駄がない。

 

クライムも必死についていく。

 

まだ荒い。

 

だが真っ直ぐだった。

 

数分後。

 

一階制圧。

 

武蔵が周囲を見る。

 

倒れた男たち。

 

泣き叫ぶ女たち。

 

隠し扉を見つける

 

床下へ続く階段。

 

武蔵が鼻を鳴らす。

 

「さて」

 

「上は片付いた」

 

その階段を見下ろす。

 

腐臭。

 

血。

 

欲望。

 

もっと濃い闇。

 

「あとは下か」

 

セバスの目が細まる。

 

そこにいる。

 

スタッファン。

 

そして八本指の連中。

 

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地下へ続く階段の前。

 

湿った空気。

 

血と欲望の臭い。

 

その闇を見下ろしていた

宮本武蔵が、ふっと息を吐いた。

 

「どうやら」

 

「ワシの出番もここまでじゃな」

 

三人が振り向く。

 

武蔵は肩を鳴らしながら言う。

 

「あとはお主たちでやってくれ」

 

セバス・チャンが目を細める。

 

「……よろしいのですか?」

 

武蔵は笑った。

 

「少し飽きた」

 

「酒を飲んでくる」

 

そのあまりに自由な理由に、

 

ブレイン・アングラウスは呆れ、

 

クライムは口を開けた。

 

セバスだけが深く頭を下げる。

 

「ありがとうございます」

 

武蔵はふとクライムを見る。

 

「ところでそこの坊」

 

「クライムと言ったか」

 

クライムは背筋を伸ばす。

 

「は、はい!」

 

武蔵は顎でセバスを示す。

 

「セバスの教え、忘れるでないぞ」

 

クライムは強くうなずく。

 

「はい!」

 

次にブレインへ目を向ける。

 

「それとブレイン」

 

「あ、ああ」

 

武蔵がニヤリと笑う。

 

「また立ち合おう」

 

その言葉。

 

ブレインの背筋に電流が走る。

 

恐怖ではない。

 

歓喜。

 

「……ああ」

 

「その時までに、もっと強くなっておく」

 

武蔵は満足そうに笑った。

 

「よし」

 

「セバス殿 下には強者がいる ブレインとクライムにはいい修業じゃ」

 

「ふたりが手に負えないときは手助けしてやってくれ」

 

「わかりました」

 

セバスが再び 頭を下げる

 

踵を返すと

 

壊れた壁から夜の王都へ出ていく。

 

「では酒場へ行って」

 

「あとでお主らの武勇伝でも聞くとするか」

 

そう言い残して、

 

闇へ消える。

 

残された三人。

 

セバスは地下へ目を向けた。

 

「行きましょう」

 

クライムとブレインがうなずく。

 

今度は彼らの戦いだった。

 

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