武蔵転生記   作:masasoukoku

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第六話

燃え残る家々の間を抜け、

 

アインズ・ウール・ゴウン、アルベド、そして宮本武蔵はカルネ村の中心へと戻っていた。

 

すでに生き残った村人たちが集まり始めている。

 

怯えと安堵が入り混じった空気。

 

その中を、村長が震える足で進み出た。

 

深々と頭を下げる。

 

「た、助けていただき……本当にありがとうございます……!」

 

アインズはすでに骸骨の素顔を隠し、異形を悟らせぬため“嫉妬の仮面”を被っていた。

 

低く穏やかな声で答える。

 

「私の名はアインズ・ウール・ゴウン アインズとお呼びください」

 

アルベドはビクとする(モモンガ様がなぜ?)

 

アインズは「お礼などいらないのです」と言った

 

村長が顔を上げる。

 

アインズは周囲を見渡しながら続ける 「その代わり、この村の周りの地勢を教えていただきたいのです」

 

「近隣の村、街道、森、勢力圏――できるだけ詳しく」

 

情報。

 

それこそ今のアインズに最も価値がある。

 

村長は慌てて何度も頷いた。

 

「は、はい! もちろんです!」

 

その横で。

 

武蔵は片手を村長の前へ突き出した。「金」

 

村長が止まる。

 

武蔵は当然のように続けた。

 

「金をくれ」

 

「腹が減る」

 

あまりにも率直だった。

 

村長の顔が引きつる。

 

片や命の恩人らしく礼を辞退し、知識を求める仮面の魔術師。

 

片や同じく命の恩人なのに、真っ先に金を要求する男。

 

「え……あ、その……」

 

村長の目が左右に泳ぐ。

 

どちらを優先すべきかわからない。

 

アインズは内心で整理する。

 

(……わかりやすいな)

 

武蔵の価値観は極めて単純。

 

戦う。食う。生きる。

 

その延長に金がある。

 

アルベドは眉をひそめた。

 

「下品な……」

 

武蔵は鼻を鳴らす。

 

「働けば金をもらう。当たり前だ」

 

それを聞いたアインズは少しだけ感心する。

 

理屈としては筋が通っている。

 

村長は震えながら財布を取り出した。

 

わずかな銅貨。

 

武蔵は中身を見る。

 

「少ないな」「まあ村だからな、仕方なし」

 

あっさり納得して懐に入れた。

 

アインズはその様子を見て思う。

 

(交渉は可能……か)

 

欲がある者は扱いやすい。

 

さらに武蔵は村長に尋ねた。

 

「このあたりで一番強い奴はどこにいる?」

 

村長は青ざめる。

 

質問の方向性がおかしい。

 

だがアインズの眼窩の奥の光が揺れた。

 

その答え次第で、武蔵の進路も決まるかもしれない。

 

そしてそれは、ナザリックへの導線にもなり得る。

 

村長が答えようとした、その時だった。

 

「村長!!」

 

血にまみれた若い村人が駆け込んでくる。

 

息を切らしながら叫ぶ。

 

「生き残りの騎士団が……いえ、違います!

ガゼフ様が来られました!」

 

その名を聞いた瞬間、村長の顔がぱっと明るくなった。

 

「ガゼフ様が!?」

 

絶望の底から救いを見たような表情。

 

周囲の村人たちもざわめく。

 

「助かった……!」

 

「王国最強だ……!」

 

アインズはその反応を静かに観察していた。

 

(……どういう者か。ガゼフとは)

 

ただの騎士ではない。

 

この場の空気が変わった。

 

名だけで安心を与える存在。

 

それだけで価値がわかる。

 

一方、宮本武蔵の興味は別方向だった。

 

(ガゼフ……)

 

目が細くなる。

 

(そいつは強いのか)

 

その一点だけ。

 

名声も地位も関係ない。

 

強ければ会う意味がある。

 

弱ければ、ただの通り過ぎる風景。

 

やがて村の入口から土煙が上がった。

 

馬蹄。

 

金属の軋み。

 

十数騎の騎兵が現れる。

 

その先頭に立つ男。

 

赤みがかった鎧。

 

無駄のない筋肉。

 

歴戦を刻んだ鋭い眼。

 

王国最強の戦士、

ガゼフ・ストロノーフ。

 

彼は村の惨状を見て、即座に状況を読む。

 

焼け跡。

 

無数の死体。

 

そして中央に立つ三人の異様な存在。

 

仮面の男

 

従者と思しきフルアーマープレートを着たもの

 

そして血にまみれた男

 

ガゼフの手が自然に剣へ伸びる。

 

「……何があった」

 

村長が駆け寄る。

 

「ガゼフ様! この方々が村を救ってくださったのです!」

 

ガゼフの目が細まる。

 

特に武蔵へ止まる。

 

その男だけ、空気が違う。

 

獣とも剣とも違う、純粋な“殺し”の気配。

 

武蔵もまた、ガゼフを見ていた。

 

数秒。

 

沈黙。

 

そして武蔵の口元がわずかに上がる。

 

「ほう」

 

今までより、ずっと自然な笑み。

 

「おぬし……少しは斬れそうだな」

 

ガゼフの眉がぴくりと動く。

 

アインズは内心で察した。

 

(まずい)

 

この二人、会って数秒で斬り合いかねない。

 

アルベドは冷ややかに見ていた。

 

「また始まるのですか……」

 

カルネ村の中心で、

 

新たな“強者同士”の気配がぶつかり合い始めていた。

 

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