武蔵転生記   作:masasoukoku

65 / 65
第六十三回

朝日が平原を黄金色に染めていた。

 

濃い霧が晴れると、その先に巨大な石造りの建造物が姿を現す。

 

「おお……。」

 

「でかい……。」

 

「これが新発見の遺跡か。」

 

ワーカーたちから感嘆の声が漏れた。

 

幾重にも連なる石壁。

 

静まり返った巨大な入口。

 

長い年月、人の手が入った様子はない。

 

誰の目にも、古代の秘境そのものだった。

 

「よーし!」

 

ヘビーマッシャーの一人が拳を握る。

 

「お宝はいただきだ!」

 

「負けてられねぇ!」

 

龍狩りの面々も士気を高める。

 

フォーサイトも例外ではなかった。

 

ヘッケランが笑う。

 

「俺たちも頑張ろう。」

 

「これが最後の大仕事だ。」

 

アルシェもうなずく。

 

「帰ったら妹たちとゆっくり暮らせます。」

 

3人の元奴隷エルフも期待に目を輝かせていた。

 

その時だった。

 

「お主たち。」

 

武蔵が静かに声を掛ける。

 

「少しよいか。」

 

その声音があまりに真剣だったため、7人は顔を見合わせた。

 

人気のない場所へ移動する。

 

武蔵は全員の顔を一人ずつ見回した。

 

そして静かに言った。

 

「この遺跡。」

 

「生きておる。」

 

「……え?」

 

ヘッケランが聞き返す。

 

武蔵は続けた。

 

「この遺跡の名は。」

 

「ナザリック。」

 

その名を聞いても誰も反応できない。

 

武蔵はさらに続ける。

 

「そして。」

 

「王の名は。」

 

「アインズ・ウール・ゴウン。」

 

一瞬、空気が凍った。

 

「ど、どういうことですか、武蔵さん!」

 

アルシェが思わず声を上げる。

 

イミーナも眉を寄せる。

 

「遺跡に王?」

 

ロバーデイクも困惑していた。

 

「意味が……。」

 

武蔵は短く答える。

 

「だから。」

 

「この遺跡にあるもの。」

 

「金貨。」

 

「宝石。」

 

「武具。」

 

「装飾。」

 

「一切触るな。」

 

「……。」

 

誰も言葉を返せない。

 

ヘッケランがようやく口を開く。

 

「し、しかし。」

 

「依頼は調査と回収ですよ。」

 

武蔵は首を横へ振る。

 

「この依頼、罠じゃ。」

 

「!!」

 

全員の顔色が変わる。

 

武蔵は静かに告げた。

 

「帝国とナザリック。」

 

「双方が仕組んだ罠。」

 

「お主たちは一人残らず生きて帰れぬ。」

 

沈黙。

 

風の音だけが聞こえる。

 

イミーナが震える声で尋ねる。

 

「ま、待って。」

 

「なんで。」

 

「武蔵さんがそんなこと知ってるの?」

 

武蔵はゆっくり目を閉じた。

 

「……。」

 

「それは聞かないでくれ。」

 

それ以上は答えられない。

 

アインズとの約束。

 

それだけは守らねばならない。

 

武蔵は再び彼らを見渡す。

 

「わしはアインズと約束した。」

 

「お主たちを助けるため。」

 

「ナザリックの者と立ち会う。」

 

ヘッケランが息を呑む。

 

「立ち会うって……。」

 

武蔵は静かにうなずく。

 

「勝てば。」

 

「お主たちは無事に帰れる。」

 

「……。」

 

「負ければ?」

 

アルシェが小さく尋ねる。

 

武蔵は下を向いた

 

「負けたら・・・」

 

「お主たちは死ぬ」

 

「か、勝てば帰ることが出来るんでしょう 武蔵さん強いんだから」

 

7人の表情が少しだけ緩む。

 

武蔵は続けた。

 

「ただし、わしは。」

 

「勝とうが負けようがアインズの家臣となる。」

 

その一言で、全員が固まった。

 

「……え。」

 

ヘッケランの声が震える。

 

イミーナは目を見開いたまま動かない。

 

アルシェの顔から血の気が引く。

 

ロバーデイクは祈ることすら忘れていた。

 

短い旅だった。

 

それでも彼らには分かった。

 

武蔵は本気だ。

 

自分たちを生かすためだけに、自らの自由を差し出そうとしている。

 

誰も言葉を発せない。

 

重苦しい沈黙だけが、一行を包み込んでいた。

 

-------------------------------------------------------------

武蔵の言葉は、フォーサイトの胸に重くのしかかっていた。

 

――アインズの家臣となる。

 

その意味は誰にでも分かった。

 

命令一つで。

 

仲間である自分たちを斬らねばならない立場になる。

 

ヘッケランは拳を握り締める。

 

(そこまで……。)

 

(俺たちのために。)

 

イミーナは唇を噛んだ。

 

アルシェは目を伏せる。

 

ロバーデイクはただ静かに祈っていた。

 

逃げるという選択肢もある。

 

しかし武蔵は首を振った。

 

「逃げても無駄じゃ。」

 

「ナザリックの者は追って来る。」

 

「誰一人逃がさん。」

 

「ならば。」

 

武蔵は刀の柄へ手を添えた。

 

「勝つしかない。」

 

その一言に、誰も反論できなかった。

 

-------------------------------------------------------------

巨大な石門が開く。

 

ギギギギ……

 

重苦しい音を立てながら、未知の遺跡――ナザリックへの道が開かれる。

 

「行くぞ!」

 

誰かの号令でワーカーたちが一斉になだれ込む。

 

その光景を見ながら、武蔵だけは眉をひそめていた。

 

内部は神殿だった。

 

天井は高く。

 

巨大な柱が幾本も立ち並ぶ。

 

床は磨き上げられた白い石。

 

黄金の装飾。

 

宝石。

 

精巧な彫刻。

 

壁を彩る絵画。

 

どれ一つ取っても国宝級。

 

「すげぇ!」

 

「金貨だ!」

 

「こっちには宝石箱!」

 

「早い者勝ちだ!」

 

ワーカーたちは我先に飛びつく。

 

飾りを剥がし。

 

壺を抱え。

 

装飾品を袋へ放り込む。

 

その姿を武蔵は静かに見つめた。

 

「……。」

 

自分は聖人じゃない俗物だ

 

だがあの姿浅ましい。

 

命を賭けてまで欲しがるものなのか。

 

そんな思いもあった。

 

その横でヘッケランたちは誰一人手を伸ばさなかった。

 

アルシェも。

 

イミーナも。

 

ロバーデイクも。

 

3人のエルフも。

 

誰も宝に興味を示さない。

 

武蔵の言葉を信じていたからだ。

 

それを見た武蔵は、微笑した。

 

「うむ。」

 

「それでよい。」

 

そして静かに言う。

 

「わしの後ろにおれ。」

 

4人はすぐに武蔵の背後へ集まった。

 

3人のエルフも続く。

 

「来るぞ。」

 

武蔵がそう呟いた。

 

その瞬間だった。

 

床全体が青白く輝く。

 

「!?」

 

「これは!」

 

巨大な魔法陣。

 

神殿いっぱいに広がる転移陣だった。

 

「武蔵さん!」

 

アルシェが叫ぶ。

 

光が視界を覆う。

 

足元の感覚が消える。

 

身体が浮く。

 

世界が反転する。

 

――転移。

 

次の瞬間。

 

光が消えた。

 

「ここは……。」

 

ヘッケランが辺りを見回す。

 

広い。

 

あまりにも広い。

 

円形の石造り。

 

高い観客席。

 

中央の闘技場。

 

巨大な円形闘技場だった。

 

「帝国の……。」

 

イミーナが呟く。

 

「闘技場?」

 

武蔵も周囲を見渡した。

 

「ほお。」

 

「帝国の闘技場によく似ておる。」

 

しかし違う。

 

観客席には誰もいない。

 

静寂だけが支配していた。

 

まるで。

 

この場所で誰かが現れるのを待っているかのように。

 

武蔵は静かに刀の柄へ手を掛ける。

 

「来るぞ。」

 

その声だけが、広大な闘技場に響いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ようこそ骨の実力至上主義の教室へ(作者:ok.ko)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

サンズをようこそ実力至上主義の教室へ、の中に放り込みました。初めての作品です。設定ガバガバです。それでもよかったら…見てってください…▼感想どんどんお願いします。アドバイスもガンガンください。▼サンズ以外のキャラを登場させるかは未定です。


総合評価:1018/評価:8.03/連載:25話/更新日時:2026年08月06日(木) 20:00 小説情報

【完結】クレマンティーヌを愛でるだけ(作者:鵲一号)(原作:オーバーロード)

1から100までタイトル通り。▼オーバーロードの中ではクレマンティーヌが一番好きです、というもの好きのための短編。


総合評価:2363/評価:8.3/完結:10話/更新日時:2026年06月02日(火) 00:47 小説情報

剣豪の英雄譚(作者:二天一流)(原作:落第騎士の英雄譚)

▼──褒められたい、認められたい、憧れられたい…!▼──敵も味方も誰も彼もが放っておいてくれない存在になりたい…!▼──逃げも隠れもできない存在になりたいッ!▼承認欲求の鬼のようなそんな男がいずれ最強へと至る物語。


総合評価:2456/評価:8.35/連載:3話/更新日時:2026年08月05日(水) 16:49 小説情報

ぼっち、ナザリックに飛ばされる(作者:NewSankin)(原作:オーバーロード)

▼【挿絵表示】▼奉仕部の複雑な人間関係に疲れ果て、自室で眠りについたはずの比企谷八幡。彼が次に目覚めたのは、見知らぬ豪華な一室──凶悪な怪物たちが闊歩する『ナザリック地下大墳墓』だった。▼混乱する八幡は、自分が異世界に転移した人間だと思い込む。だが、その正体は、かつてナザリックを創造した至高の存在の一人が戯れに創りし、レベル88を誇る暗殺者系NPCだったのだ…


総合評価:1227/評価:6.84/連載:125話/更新日時:2026年08月20日(木) 11:00 小説情報

よく聞け、いいか、ここをローマ帝国とする!(作者:とくめいのネロ)(原作:コードギアス)

Fate/シリーズより、ネロちゃまをブリタニア皇族にINさせてみたお(^ω^)▼っていう、小説。▼


総合評価:3433/評価:8.66/連載:4話/更新日時:2026年08月20日(木) 23:35 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>