魔法少女育成計画2-o-H ―La Pucelle: Alive Chronicles 3― 作:神谷萌
~Theme of "La Pucelle: Alive Chronicles"』
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管制室。
グリムハートは憤っていた。
管制室はひどい有様だ。大地の被検体と風の被検体が悪あがきに放った爆発の魔法で、あちこち破壊され、機器の半分が完全に破壊されていた。
幸い、メインサーバ2台と操作用のPCは無事だったが……
『
先程はプリンセス・クェイクとプリンセス・テンペストの2人だけで撃った。最低限の威力だったが、それでも本来なら、この室内がすべて吹き飛んでいるぐらいの威力のはずだった。
クェイクとテンペストがすでに魔力切れに陥りかけていたことと、包囲していたシャッフリンが肉壁になったこと、これらで、室内全体に行き渡る衝撃波と爆炎はだいぶ削がれた。
そこに加えて、グリムハートは咄嗟に、シャッフリンジョーカーを投げるようにして己ごとメインサーバの前に移動し、自ら爆風を防いだ。
爆炎が晴れた後にトランプ兵が突撃してきた。流石に多勢に無勢で、たちまちに集中攻撃を食らって霧散したが、シャッフリンにも相応以上の損失が出てしまった。
グリムハートの苛立ちは止まらない。
残った被検体2体は捉えた。身動きがとれないよう魔法のロープで縛り上げてあるが、それ以前にぐったりして動けないようだった。
せっかく、フリーランスを名乗る魔法少女の片割れを贄にしたと言うのに、早くもシャッフリンはほぼ半減してしまった。
グリムハートは、被検体2体を見る。
そもそも、人造魔法少女、なる計画が、自分達以外の手にあってはならない。それも、 “魔法の国” から支配され隷属する魔法少女の分際で、自分達の手により魔法少女を生み出そうなど思い上がりも甚だしく、到底許されるものではない。
ミクセリクサー、あれは例外だ。従来のホムンクルスに無理矢理魔法少女の情報を被せる以外の手段で完全な人造魔法少女を建造するのが、本当に可能なのか、それは
結果は失敗。出来たのは
ドガッ!!
グリムハートは、メインサーバの前まで自分の為の玉座を運んできて、
グリムハートの怒りは止まらない。
よもやミクセリクサーが、あれ程の性能を示すとは。
本来であれば、 “人造魔法少女” の存在を知った魔法少女も人間もすべて抹消し、再び
だが ──── この研究所のデータは回収できそうだ。被検体2体も得た。学者連中も文句の言えない成果のはずだ。すでに披露された内容だけでも、一時的な
だが、この場で人造魔法少女の存在を知るものの抹消、それは果たせそうにない。
ミクセリクサーがいる時点でそれが困難になることは解っていた。だが、ここまで一方的に、屈辱的に敗北するとは思えなかった。試験段階では魔法の自発励起すら出来なかった失敗作が。
だが、それでも可能な限り、この場の魔法少女を狩り出さなければならない。そのために隔壁をすべて下ろし、地上への出入口にもロックをかけた。袋のネズミだ。ミクセリクサーもまったくの無消耗というわけには行くまい。残り4体の魔法少女、必要であれば被検体も1・2体投じれば、充分な戦果を得られるだろう。
グリムハートは、自らの傍らに立っている、スペードのエースのシャッフリンを見た。無表情、無感情で、ただ前を見て突っ立っている。
有能な魔法少女だ。手持ちの最強の切り札のはずだった。それがどうだ。ミクセリクサーのハートの2の前に無様に転がり、逃げ回っていた。
グリムハートはさらに苛立ちを昂ぶらせた。手加減はしつつも、スペードのエースを小突いてしまっていた。
「言っておかなければならないことがひとつあるぽん」
ミクセリクサーの左肩の上で、ネドが言う。
「このトレーニングルームに入ったあたりで、外部との通信が途絶したぽん」
「えっ」
ファニートリックとプリズムスプリントが、同時に小さく声を上げた。
「LTE波、マジカルフォン、どちらも検出できないぽん。ネドのネクとのリンクも途切れてるぽん。FMラジオ局94.6MHzも拾えないぽん」
「多分、通信ジャミングを起動したのかと」
インフェルノが言う。
「ジャム……ジャム?」
プリズムスプリントは、単語の意味が理解できず、眉を
「妨害のことだぽん。通信妨害」
「わ、わかってらぁ!!」
ネドに言われて、プリズムスプリントはぶっきらぼうな声を出した。
「私達はスマートフォンが使えないのが不便で、今まで切っていたんですが……」
「それを起動したっていうわけですね」
インフェルノの言葉に、ファニートリックが続いた。
「
カフリアが言うと、ネドはカフリアの方を向き、
「管制室突入前の状況をラ・ピュセルのマジカルフォンに転送しておいたぽん。ひょっとしたら
と、言った。
「私達の安全としては、気休めねぇ」
カフリアは、苦笑した口を見せつつそう言うものの、
「忘れ去られるってことだけは、心配しなくていいかしら」
と、付け加えた。
「では、出発しましょうか!」
ぴょん、と、跳ねるように、ミクセリクサーが立ち上がった。
「大丈夫か?」
プリズムスプリントがミクセリクサーに声をかけた。
「はい! もうしばらくは大丈夫です!!」
すっかり元気を取り戻した様子のミクセリクサーだったが、それを見たファニートリックは、顎に手を当てて、
「もうしばらくは、ですか……」
と、小さく呟いた。
「お願い、みんな!」
ミクセリクサーが、ハートのキング、クィーン、ジャック、10と、クラブのキングとクィーン、それぞれのトランプ兵を
「それでは、ブリーフィングルームに向かいましょー!」
そう言って、ミクセリクサー達3人に、カフリア、デリュージとインフェルノの計6人が、移動を開始した。
名深市沿岸地帯を模したトレーニングルームを、反対側の壁に向かって歩く。
川の河口にかかる橋を渡っているときだ。
「ちょっと、いいかしら?」
ハートのクィーン、10とともに最後尾を歩いていたカフリアが、インフェルノの肩を軽く叩きつつ、後ろから声をかけた。
「どうか、しましたか?」
インフェルノが振り返り、訊き返す。
その分、カフリアやインフェルノ達が、デリュージより少し遅れた。
「
「!!」
カフリアの言葉に、インフェルノが目を
「わ、私が、ですか!?」
インフェルノは、目を剥いたまま、両手を自分の胸に当てる仕種をして、訊き返す。
「いいえ、薄水色のお嬢ちゃんの方」
「デリュージが……」
カフリアの言葉に、インフェルノは反射的にデリュージに向かいかけるが、
「ただ、ちょっと待って」
と、それをカフリアが制した。
「え?」
インフェルノが、再びカフリアを振り返って訊き返す。
「私の魔法ってね、死亡日時まではわからないのよ」
「それは、つまり……」
「単純にこの中で一番先に死ぬ、ということしかわからないの。90年後にベッドの上で死ぬとしてもね」
「…………ッ」
インフェルノは、カフリアの言いたいことは理解した。それを伝えても、デリュージに余計な緊張を与えるだけだと言うことだ。
やがて一行は、ブリーフィングルーム側の扉までたどり着く。
やはり、通常の扉を分厚い隔壁扉が覆っていた。
また、ファニートリックが、Amaz◯nのダンボール箱と自分の魔法を使って、扉のロック部分を切り取ろうとする。
そこで、インフェルノがミクセリクサーに近寄った。
「あの、ちょっと相談が……」
「はい!? なんでしょう!?」
声をかけられたミクセリクサーが反応すると、その耳元にインフェルノが囁く。
「デリュージ様がですか!?」
「しっ、声が大きい!」
ミクセリクサーの反応に対し、インフェルノが慌てて、口の前に指を立てる。
そして、2人してデリュージの方を見た。
デリュージは、こちらの会話には気づいていないようだった。疲労した様子を隠せないまま、なにか思いつめたような表情をしている。
「ただ、ここでデリュージが真っ先に死ぬって、確定したわけでもないそうですから……」
「解りました! ちょっと気をつけておきます!」
「お願いします」
ミクセリクサーとインフェルノの会話が終わったところで、
「みなさん、次の部屋に進みましょう」
と、ファニートリックが言ってきた。ハートのキングが構えている中、プリズムスプリントとハートのジャックが扉を開けた。
市営ダム近くの雑木林を模したトレーニングルームを歩く。これを越えると、次が、オーソドックスな体育館のようなトレーニングルームがあり、その次がブリーフィングルームだ。
室内に入ったところで、
「お願い! ハートの4、ハートの3!」
と、ミクセリクサーがトランプ兵を追加で喚び出す。
「何かありましたか? ミクセリクサーさん」
「いえ! なんでも!」
ファニートリックの振り返りながらの問いには、そう答えたミクセリクサーだったが────
「……………」
インフェルノは誤魔化すような苦笑をする。追加で喚び出されたハートの4と3のトランプ兵は、あからさまにインフェルノとデリュージの左右を固めるように歩いていた。
少し歩いた感じがあるものの、特に何事もなく、ブリーフィングルーム寄りの扉まで辿り着いた。
やはり、ファニートリックが隔壁扉のロック部分を、空きダンボール箱とすり替えて切り取った。
そして、やはり同じようにハートのキングが正面に構えたまま、プリズムスプリントが扉をあける。だが、特にシャッフリンは出現しなかった。
扉をくぐる。ここは障害物もなく、見通しが効く。
「結局ここまで、襲撃はなかったようですね?」
室内を見回しつつ、少し緊張が緩んだ様子で、ファニートリックが言った。
それに対して、プリズムスプリントが、
「ああ、ちょっと拍子抜けだ。こっちは ────」
と、後ろを振り返るようにしながら、言う。
「── この状態だから、助かったがな……」
プリズムスプリントが振り返った先には、比較して消耗が激しいのか、デリュージがインフェルノに肩を貸されている。
特に何かが邪魔をするわけでもなく、隔壁扉に覆われた、ブリーフィングルームとの間の出入口に辿りついた。
「さて、それではいよいよ、といったところかしらねぇ」
カフリアが言う。
ミクセリクサーとファニートリック、プリズムスプリントがお互いに顔を見合わせ、うなずく。
ファニートリックが、やはりロック部分を切り取って、扉が開けられる状態にしようとする。ただし、今回はクラブのトランプ兵が隔壁扉を押さえ、いきなりは開くことが出来ないようにした。
ゴトン……
扉のロック部分だった金属塊が床に落ちる。
ハートのキングとジャックが槍を構え直す。ファニートリックとプリズムスプリントも扉に向かって
「そーれっ!」
そう言って、ミクセリクサーが一気に扉を開いた。
ハートのキングとジャック、クラブのキングとクィーンのトランプ兵、それにファニートリック、プリズムスプリントが、一気にブリーフィングルームになだれ込んだ。
「この野郎!!」
バキーッ!!
とりあえず真正面に、パソコンをなんとかしようとしているダイヤのシャッフリンが目に入った。間髪入れずに加速したプリズムスプリントがそれをぶん殴った。それが開戦の狼煙になった。
中にいたのは、ダイヤとクラブのシャッフリン。いずれも7以下の低ナンバーだった。
高ナンバーのハートのトランプ兵が見えた時点で、自分達では敵わないと見たのか、散らかったブリーフィングルームの調度品に隠れようとする。ハートのトランプ兵はそれを追うが、チョロチョロとされてしまって仕留められない。
「お願い! スペードの2、スペードの……」
ミクセリクサーが追加のトランプ兵を喚び出しかけたところへ、クラブの6のシャッフリンが組み付いた。
「このっ!」
バキッ! ズシャッ!
ミクセリクサーはシャッフリンを振り払い、顔面に容赦なく一撃を入れる。その直後、スペードの2のトランプ兵が、上から下へとクラブの6のシャッフリンを串刺しにした。
ジュースサーバーの裏に、2体のクラブのシャッフリンが隠れた。
ドガァッ! ベチャァッ!!
ハートのジャックのトランプ兵と、プリズムスプリントが、2人してジュースサーバーにタックルをかける。ジュースサーバーと壁の間から、潰れたシャッフリンの血が爆ぜた。
ドスッ! ドシャッ!!
通路へ逃げようとしたダイヤのシャッフリン2体を、スペードの2とエースのトランプ兵が追い、背中から槍で容赦なく貫いた。
「出る幕がなかったわねぇ」
カフリアが、インフェルノとデリュージの後ろ、
「あー……なんとか動くっぽいけど」
ジュースサーバーを調べていたプリズムスプリントが、言い、ファニートリック達の方を見た。
「なんか飲む?」
「いや、流石にそれは……」
ファニートリックは引き
「わたし、メロンソーダが飲みたいです!!」
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