<彩葉side>
東堂との出会いから1年が経った
あれからほぼ毎日私に付き纏ってくる
でも不思議と迷惑だと思ったことはないしお弁当を作ってきてくれることに感謝すらしている
けどなんか腹立つ!!
なんかこう、言葉にできない腹立たしさがあって素直になれない
そんな日々の中バイトから帰りながら
今日は6時間は寝れる!
と思っている時突然空が光った
「あっ、流れ星!」
「帝様の願いがかないますように!」
近くにいたカップルが願い事をしていた
「願い事…」
こういう時、華の女子高校生は何を願うだろう
人気者になりたい?
巷で噂のカフェに行きたい?
はたまた恋人?
否!酒寄彩葉の脳内に浮かんだのはただ一つ!
「か、かねぇ!」
なんということでしょう
目尻に涙を浮かべながら切実な表情で願ったのが"金"である
このムードもクソもない願い事だがあまりの切実さと悲壮感のせいでこれを聞いた人は何も言えないだろう
そして疲れと睡眠不足のせいでよろけながら家路に着くと
なんと!電柱が七色に光っているじゃありませんか
「はは、なんだ幻覚か」
いつものように幻覚だと思い無視すると電柱が開き始めた
「ふんっ!」
押さえつけた
開くのを見てからなんの躊躇いもなく押し返した
これにはあの判断仮面も『判断が早い!!』と言うだろう
しかし彩葉の細腕では力及ばず開いてしまった
「力づくかい…」
そう力無く諦めたように呟いた
そして開いた電柱の中には──
「うぁあうぅ…かっぺっ」
赤ちゃんがいた
そして彩葉の顔に唾吐いた
それを見て彩葉は
「すまん!しかし私で手いっぱいですので…」
秒で見捨てた
しかしやはりチョロ葉というべきか結局見捨てられず部屋に連れてきてしまった
そして警察に相談してみるが─
「あのすいません。さっき家の前で電柱から赤ちゃん出てきて…あっ、そうですよね…意味わかんないですよね。でも事実で…え?薬物?あぁすいません!やっぱりなんでもないです!失礼します!」
ダメだった
なんならクスリやってると思われた
「えっと、他にどこか頼れるとこ…」
そう思ってあたふたしていると一つの名前が思い浮かんだ
「東堂…」
しかしいくら相手が東堂とは言え夜中にこんなこと相談するのは迷惑だとも思った。
しかしこの時の彩葉はそんなこと考えている余裕はなくやむを得ず電話をかけた…
────────────────────
次の日
「ブラザー来たぞ!」
彩葉の部屋の前には何やら荷物を持ったゴリラがいた
「はーい。ちょっと待って今開ける。」
そう言って彩葉は東堂を部屋の中に入れて赤ちゃんを見せた
「ほう、これが言っていた赤子か」
「そうなの。その子が電柱から出てきた子」
「ならブラザー。一つ問おう…」
「なに?」
「本当は誰との子だ?」
「違うわよ!?隠し子じゃないから!!ほんとに電柱から出てきたの!」
「電柱から出てきたというのと隠し子ならまだ隠し子の方があり得るだろう」
「ぐうの音も出ない正論!!」
「まぁ冗談はさておき「冗談で済ますかは私が決めるわよ?」一通りのベビーグッズは買い揃えてきた」
「ありがとう。ほんとは私がしないといけないのに…。あっお金!ちょっと待って今出すから」
「いらん。それに生憎レシートを捨ててしまってな。金額がわからん以上もらうことができんな」
これが嘘だと彩葉は気づいた。いつもレシートを持って帰って家計簿をつけていたのを知っているからだ
「それでも少しだけでも払わせてよ。巻き込んだのは私なんだから」
「今まさにあの世への片道切符を切るような生活をしている苦学生からこれ以上何を取れというんだ」
「うぅ…ごめん…」
「謝罪の言葉より俺は感謝の言葉の方が嬉しいぞ」
「うん。そうだね…ありがとう、東堂」
「あぁ」
そんなこんなしながら今後どうするかを話し合いこの三連休交代で面倒見ると結論が出た
次の日
「なんかでかくなってない?」
「うむ、なってるな…」
急にデカくなる赤子に戸惑ったり
さらに次の日
ドンっ
「ひっ、壁ドンされた…」
お隣さんから壁ドンされたりしながらなんとか2日を乗り切った
そして迎えた3日目
「やっぱどんどん大きくなってるわね…」
「そうだな、そろそろ離乳食も作ってみるか」
「それにしても明日からどうしよう…学校行ってる間は面倒見れないし…」
明日からどうするかを話し合っていると──
「ねぇねぇお腹すいた〜ミルク〜」
「はいはい。承知でございます。いまお湯を…って、うわぁっ!?」
「うわぁっ、びびった〜」
そこにいたのは中学生くらいのタレ目の美少女だった
それを見て一瞬固まったがすぐに動き出し
「お引き取りください!!」
凄まじい手際の良さで荷物を詰め差し出した
美しい。本気で帰って欲しい動きだ。俺があの域に達したのは20代後半…
そんなことを思っていると──
「得体の知れないものはお断り!!」
「やだ〜!この後いくとこない〜!一回拾ったんだから責任とって!」
「うちは強く育てる方針です〜!」
そう言って取っ組み合いを始めた
「あっ」
「いったあ〜い!頭痛い〜!」
「ごめん大丈夫!?」
派手に頭をぶつけた元赤子その瞬間
ぐぅーーーー
と、大きな腹の音が部屋に響いた
それを見た彩葉の反応に元赤子は勝機を見ぃ出した!
「助けて〜」
目を潤ませながら上目遣いで言った
タレ目に4倍弱点を持っている+上目遣いのお願いに彩葉ダムは崩壊した
「ひとまず俺が何か作ろう。台所を借りるぞ」
「やった〜!」
「はぁ…どうしてこうなった…」
こうして話しているうちにも東堂は何か違和感を感じていた
それは元赤子から自らの推し、ヤチヨの雰囲気を感じることだ
容姿からではなく東堂の魂がそう告げていた
だがこの違和感はまだ確信に至っていないため気のせいとして処理し調理を完了した
「ほら、食べられるか?」
「はむ…っ!?はぐはぐ…すっごい!!なにこれ!?」
「オムライスだ」
「オムライス!大好き!!」
そう言って勢いよく食べ進める元赤子に彩葉が口を開いた
「あなた、どこから来たの?」
そう言うと元赤子は窓の外を指差した
「月?」
「たぶん」
「ならその宇宙人は何をしに地球に来たんだ?」
「そうよ、侵略でもしに来たの?」
「ん〜。あんまし覚えてないんだけど、なんか超つまんなくて楽しいところに逃げた〜いって思った気がする」
「逃げんな〜」
「え〜なんで〜?」
「それとそこのゴリラはこの状況でヤチヨの配信見んな!!」
「何を言っている!ヤチヨちゃんの配信はこの世のどんなことより優先される!」
「後でログで見なさいよ!」
「リアタイとログ両方見るんだよ!常識だろう!」
「それはそうだけど今はやめなさいよ!」
そう言いながらも東堂が言うことを聞かないことはわかっているため彩葉は諦めた
「これに心当たりはない?」
彩葉が見せたタブレットに写っていたのは日本で知らない人はいない竹取物語の画像だった
「何これ?」
「竹取物語。月からやってきた姫が竹から出てきて翁が育てて、結婚迫られたりとか色々」
そう解説している間元赤子の目線は彩葉がチンしたタコライスに釘付けになって涎まで垂らしていた。
あっ掴んだ
そのまま彩葉も抵抗こそしたが最終的に諦め元赤子に奪われてしまった
「えっと、じゃあ彩葉はこのお爺さんな訳?」
「80年後の姿でも見えてるのかな?違うよぉ!?」
彩葉低い気味に反論した。なんならちょっと目がキマってた
「じゃあ葵?」
「俺もブラザーと同い年だ」
「そんであんた絶対かぐや姫じゃない!」
「そんでそのお話どうなるの?」
「えーっと、お迎えが来て翁たちも戦うけど結局姫は羽衣着せられて地球のことは忘れる。で、帰る」
「おぉー、え?…あれ?続きは?」
「これでおしまい、めでたし」
「えぇーー!月に帰っておわり!?何それ〜超バッドエンド〜!!」
そう言ってさっきまでキラキラさせてた目はどこえやら駄々をこねている宇宙人
「バッドエンドやだやだ〜ハッピーエンドがい〜い〜」
「しょうがないでしょ。駄々こねたって決まってることが変わる訳じゃないし…受け入れて覚悟するしかない」
そう淡々とそれでいてどこか芯のある声でそう言った。それに宇宙人はしばらく考える素振りをして言った
「よし!じゃあ自分でハッピーエンドにする!それでハッピーエンドまで彩葉と葵も連れてく!一緒に!」
そう高らかと宣言した。しかしそれに彩葉は──
「ハッピーエンドいらない。普通のエンドで十分です」
一蹴した
「そ、そんな訳なないでしょ〜。ねぇ葵!」
宇宙人は食い下がり配信を見終えた東堂にターゲットを移した
「確かに大抵は普通のエンドで満足するだろう。しかし!!」
「しかし??」
「俺とブラザー!そして月から来たかぐや姫!!これらの状況から考えてIQ53万の俺の脳内GPUが弾き出した結論は──victory!無論ハッピーエンド以外の道など存在しない!!」
「でしょ〜!やっぱり葵ならわかってくれると思った!」
「何であんたは毎度毎度面倒ごとに飛び込んでくのよ…」
こうしてハッピーエンドを目指す3人の日々が始まった
東堂はもううっすらかぐやからヤチヨの気配を感じ取っています。わかった方がキショいと思ったので東堂なら気づくでしょう。さらに大きくなってヤチヨに似るとどうなるのでしょうか