ヒロアカ世界の烈火に八竜率いた柳が個性として宿った話   作:琴銀河

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第九話 初登校、入学式?まで

A組の教室前。

烈火は扉の前に立ち、見上げる。

 

(……でっか)

 

烈火の右肩に寄り添うように位置した柳が、炎の尾をゆるく揺らしながら言う。

 

「個性によっては身体の大きい人もいますからね。

 逆に小柄な子もいるかもしれませんけど……

 広いほうが、みんなが使いやすいように調整しやすいんですよ」

 

烈火は軽くうなずく。

 

「……なるほどな」

 

柳は小さく炎を揺らして応える。

 

「烈火が使う場所でもありますしね。広いに越したことはありませんよ」

 

烈火は扉を押し開け、教室へ入る。

 

 

すでに何人かの新入生が席に着いていた。

 

お茶子が烈火に気づいて手を振る。

 

「花菱くん!同じクラスだったんだね!」

 

「そうみたいだな」

 

柳は烈火の肩の上で静かに揺れている。

 

 

そのとき、後方で怒鳴り声が響いた。

 

「机に足かけるな!!」

 

飯田天哉が、爆豪勝己に向かって声を張り上げていた。

 

「先輩方に申し訳ないと思わないのか!?」

 

爆豪は椅子にふんぞり返ったまま、飯田を睨む。

 

「……ああ?思わねえよ、端役が」

 

飯田はさらに詰め寄る。

 

「態度悪いな君!ほんとにヒーロー志望か!」

 

爆豪は舌打ちする。

 

「どこ中だてめえ」

 

烈火はそのやり取りを横目で見ながら、お茶子に小声で言う。

 

「……朝から騒がしいな」

 

お茶子は爆豪を見て、素直な感想を漏らした。

 

「うわー、ヤンキーおる。不良だよ不良。

 ナイフみたいな思考回路持ち合わせとって、触るもんみんな傷つけとるんだわ」

 

烈火は苦笑する。

 

「そんなベタな奴今時おらんだろ……」

 

爆豪がガンッと机を蹴る。

 

「聞こえてんぞそこ!!」

 

その瞬間、烈火の周囲にいた数名が肩を跳ねさせた。

お茶子も息を飲んで身を縮める。

 

烈火は肩をすくめる。

 

「……おったわ」

 

 

騒ぎが少し収まったころ、芦戸が烈火のほうへ手を振りながら近づいてくる。

 

「お、忍者くん!……じゃなくて花菱〜、同じクラスだね、ヨロ〜!」

 

烈火は軽くうなずく。

 

「芦戸、だったな。よろしく頼む」

 

芦戸はニコッと笑い、続けて言う。

 

「尻尾の尾白は同クラだよ〜!漫画の吹出はB組だってさ。

 ……尾白ー!ちょっとおいでー!」

 

尾白が「ん?」と振り返り、

話していた男子生徒に軽く手を振ってから、こちらへ歩いてくる。

 

「どうした、芦戸」

 

芦戸が烈火の肩をぽんと叩く。

 

「この子、花菱〜!試験のとき一緒だったっしょー?」

 

烈火は尾白に向き直る。

 

「尾白だな。入試ん時は助かった。改めてよろしくな」

 

尾白はしっかりした声で返す。

 

「尾白猿夫。よろしく。

 試験の時のあの動き、すごかったよ」

 

烈火は軽くうなずく。

 

「……ありがとな」

 

芦戸が楽しそうに言う。

 

「いや〜、あのとき花菱めっちゃキレッキレだったよね〜!」

 

尾白もうなずく。

 

「うん。協力できてよかったよ」

 

柳が炎の尾を揺らしながら前に出る。

 

「三奈ちゃん、猿夫くん。烈火をよろしくお願いしますね」

 

芦戸は嬉しそうに柳を見る。

 

「柳ちゃん、今日もかわいい〜!」

 

尾白も興味深そうに柳を観察する。

 

「炎なのに熱くないんだね……本当に不思議だ」

 

烈火は淡々と補足する。

 

「柳はそういう個性だ。触れても熱くない」

 

柳は炎をふわりと揺らす。

 

「烈火の肩に乗っている以上、熱かったら困りますからね」

 

芦戸は笑う。

 

「なるほど〜!そういうことなんだ!」

 

 

会話が一段落したところで、烈火がふと思い出したように言う。

 

「そうだ。二人に紹介しておく。

 こいつは麗日。中学のときの同級生だ」

 

お茶子が一歩前に出て、明るく頭を下げる。

 

「麗日お茶子です!よろしくお願いします!」

 

芦戸はぱっと笑顔になる。

 

「え〜同中なんだ!いいな〜!」

 

尾白も柔らかく笑う。

 

「よろしく、麗日さん」

 

烈火は続けて、お茶子に向き直る。

 

「それと……こっちが芦戸で、こっちが尾白だ。

 入試の時、一緒にゼロポイントを倒した」

 

お茶子は驚いたように目を丸くする。

 

「えっ、ゼロポイント倒したん!?

 すごいやん……!」

 

烈火は肩をすくめる。

 

「麗日のグループには、パンチ一発でぶっ倒したヤツがいる、つってたじゃん。

 俺らはB組のもう一人含めた四人がかりで、なんとか倒したって感じだからなぁ」

 

尾白がすぐに同意する。

 

「うん、あれきつかった〜。

 てかアレをパンチ一発でとか、ありえなくね?」

 

芦戸も目を丸くする。

 

「マジで!?パンチ一発って何それ〜!」

 

お茶子は苦笑しながら頷く。

 

「ほんまやって……あれ見たとき、うちもビビったもん」

 

烈火は軽く息を吐く。

 

 

そのとき──

後方から、ギラッとした視線が突き刺さる。

 

爆豪が烈火たちを睨みつけていた。

 

(ゼロポイントを倒した……?

 誰がそんなことを……)

 

爆豪の眉間が深く寄る。

 

烈火はその視線に気づき、ちらりと爆豪を見る。

 

(……面倒なやつに目をつけられたか)

 

柳は小さく炎を揺らす。

 

烈火は短く息を吐く。

 

 

勢いよく扉が開き、緑谷が息を弾ませながら入ってくる。

 

「間に……あった……!今日から、よろしくお願いしますっ……!」

 

爆豪の目がギラッと光る。

 

「……は?」

 

爆豪が椅子をガタッと鳴らして立ち上がる。

 

「デク!!

 なんでてめえがここにいるんだ!?他行けっつったろーが!!」

 

怒鳴り声が教室に響き渡る。

 

緑谷はビクッと肩を跳ねさせ、

手に持っていたカバンを落としそうになりながら後ずさる。

 

周囲の生徒たちがざわつく。

 

「やば……」

「止めたほうがよくない?」

「掴みかかるんじゃ……?」

 

烈火は爆豪の様子を横目で見ながら、淡々と言う。

 

「掴みかかるようなら止めなきゃだが……

 そこまででもない。あいつ、大声で怒鳴り散らしてるが冷静だ」

 

柳は烈火の肩で炎を小さく揺らす。

 

お茶子は不安そうに爆豪と緑谷を見比べる。

 

「え、あれで冷静なん……?」

 

烈火は短く息を吐く。

 

「怒鳴るだけで済ませてる。手は出す気ねぇよ、あれは」

 

爆豪はなおも緑谷を睨みつけているが、

確かに一歩も近づこうとはしていない。

 

緑谷は怯えながらも、必死に言葉を絞り出す。

 

「ぼ、僕だって……受験して……!受かって……!

 勝ち取ったって言ってもらったんだ!」

 

爆豪は舌打ちし、椅子にドスンと座り直した。

 

「チッ……気に入らねぇ」

 

烈火は肩の力を抜く。

 

「ほらな。あれで終わりだ」

 

 

お茶子が緑谷の様子を見て、烈火に言う。

 

「入試の時に同じグループだったから、ちょっと行ってくるね」

 

烈火は軽く手を挙げる。

 

「おう、いってら〜」

 

芦戸が驚いたように烈火を見る。

 

「えっ、いいの?男子のとこに一人で行かせて」

 

烈火は首を傾ける。

 

「なんで?俺は別にあいつの保護者な訳じゃないぞ?」

 

芦戸は口を半開きにしたまま固まる。

 

「……うわ、マジで言ってる……」

 

柳が炎の尾をゆるく揺らしながら言う。

 

「烈火は朴念仁の忍者オタクでして……

 青春しろと常々言ってるんですが……」

 

芦戸は妙に納得した顔になる。

 

 

その裏で──

お茶子と話していた緑谷に、飯田も話しかけていた。

 

烈火の位置からは、二人の会話の内容までは聞こえない。

ただ、ひときわ大きな声だけが断片的に届く。

 

緑谷の声。

 

「デクです!」

 

続いて、飯田の驚いた声。

 

「いいのか!?蔑称だろう!?」

 

芦戸が小声で言う。

 

「……なんか大変そうだね、あの子」

 

烈火は淡々と答える。

 

「まぁ、あいつもあの入試を受かって来てるんだ。

 自分でなんとかするだろ」

 

柳は炎をふわりと揺らす。

 

 

そのとき──

教室の前方で、寝袋がもぞりと動いた。

 

「……友達ごっこがしたいなら他へ行け」

 

寝袋の中から、ぼそっとした声が響く。

 

生徒たちが一斉に前を見る。

 

「え……?」

「誰……?」

「寝袋……?」

 

寝袋はそのまま、ずるりと立ち上がった。

 

「ここはヒーロー科だぞ」

 

ざわつきが一気に広がる。

 

「寝袋が立った……」

「え、先生……?」

「何この人……?」

 

烈火は肩の上の柳とともに、自然と背筋を伸ばした。

 

烈火が小声で言う。

 

「……誰だ、あれ」

 

柳は淡々と答える。

 

「抹消ヒーロー、イレイザーヘッドです。担任は彼ですか……

 去年1年間だけで20人以上を除籍しているという記録があります」

 

烈火は一瞬だけ目を細めた。

 

(……随分物騒な肩書きだな、おい)

 

寝袋の人物は、ゆっくりとファスナーを下ろす。

 

ずるり──。

 

ぼさぼさ頭の男が姿を現し、

片手にはゼリー飲料。

 

そのまま、教室のど真ん中で音を立てて飲む。

 

「……ッジュッ」

 

シン──と教室が静まり返る。

 

男は飲み終えると、無表情のまま言った。

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。

 時間は有限だ。君たちは合理性に欠くね」

 

烈火は小さく息を吐く。

 

(……これがイレイザーヘッドか)

 

柳が炎をふわりと揺らす。

 

「烈火。気を引き締めてくださいね」

 

烈火は短くうなずく。

 

「……ああ」

 

 

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