ヒロアカ世界の烈火に八竜率いた柳が個性として宿った話   作:琴銀河

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第九話 初登校、入学式?まで

A組の教室前。

烈火は扉の前に立ち、見上げる。

 

(……でっか)

 

烈火の右肩に寄り添うように位置した柳が、炎の尾をゆるく揺らしながら言う。

 

「個性によっては身体の大きい人もいますからね。

 逆に小柄な子もいるかもしれませんけど……

 広いほうが、みんなが使いやすいように調整しやすいんですよ」

 

烈火は軽くうなずく。

 

「……なるほどな」

 

柳は小さく炎を揺らして応える。

 

「烈火が使う場所でもありますしね。広いに越したことはありませんよ」

 

烈火は扉を押し開け、教室へ入る。

 

◇

 

すでに何人かの新入生が席に着いていた。

 

お茶子が烈火に気づいて手を振る。

 

「花菱くん!同じクラスだったんだね!」

 

「そうみたいだな」

 

柳は烈火の肩の上で静かに揺れている。

 

◇

 

そのとき、後方で怒鳴り声が響いた。

 

「机に足かけるな!!」

 

飯田天哉が、爆豪勝己に向かって声を張り上げていた。

 

「先輩方に申し訳ないと思わないのか!?」

 

爆豪は椅子にふんぞり返ったまま、飯田を睨む。

 

「……ああ?思わねえよ、端役が」

 

飯田はさらに詰め寄る。

 

「態度悪いな君!ほんとにヒーロー志望か!」

 

爆豪は舌打ちする。

 

「どこ中だてめえ」

 

烈火はそのやり取りを横目で見ながら、お茶子に小声で言う。

 

「……朝から騒がしいな」

 

お茶子は爆豪を見て、素直な感想を漏らした。

 

「うわー、ヤンキーおる。不良だよ不良。

 ナイフみたいな思考回路持ち合わせとって、触るもんみんな傷つけとるんだわ」

 

烈火は苦笑する。

 

「そんなベタな奴今時おらんだろ……」

 

爆豪がガンッと机を蹴る。

 

「聞こえてんぞそこ!!」

 

その瞬間、烈火の周囲にいた数名が肩を跳ねさせた。

お茶子も息を飲んで身を縮める。

 

烈火は肩をすくめる。

 

「……おったわ」

 

◇

 

騒ぎが少し収まったころ、芦戸が烈火のほうへ手を振りながら近づいてくる。

 

「お、忍者くん!……じゃなくて花菱〜、同じクラスだね、ヨロ〜!」

 

烈火は軽くうなずく。

 

「芦戸、だったな。よろしく頼む」

 

芦戸はニコッと笑い、続けて言う。

 

「尻尾の尾白は同クラだよ〜!漫画の吹出はB組だってさ。

 ……尾白ー!ちょっとおいでー!」

 

尾白が「ん?」と振り返り、

話していた男子生徒に軽く手を振ってから、こちらへ歩いてくる。

 

「どうした、芦戸」

 

芦戸が烈火の肩をぽんと叩く。

 

「この子、花菱〜!試験のとき一緒だったっしょー?」

 

烈火は尾白に向き直る。

 

「尾白だな。入試ん時は助かった。改めてよろしくな」

 

尾白はしっかりした声で返す。

 

「尾白猿夫。よろしく。

 試験の時のあの動き、すごかったよ」

 

烈火は軽くうなずく。

 

「……ありがとな」

 

芦戸が楽しそうに言う。

 

「いや〜、あのとき花菱めっちゃキレッキレだったよね〜!」

 

尾白もうなずく。

 

「うん。協力できてよかったよ」

 

柳が炎の尾を揺らしながら前に出る。

 

「三奈ちゃん、猿夫くん。烈火をよろしくお願いしますね」

 

芦戸は嬉しそうに柳を見る。

 

「柳ちゃん、今日もかわいい〜!」

 

尾白も興味深そうに柳を観察する。

 

「炎なのに熱くないんだね……本当に不思議だ」

 

烈火は淡々と補足する。

 

「柳はそういう個性だ。触れても熱くない」

 

柳は炎をふわりと揺らす。

 

「烈火の肩に乗っている以上、熱かったら困りますからね」

 

芦戸は笑う。

 

「なるほど〜!そういうことなんだ!」

 

◇

 

会話が一段落したところで、烈火がふと思い出したように言う。

 

「そうだ。二人に紹介しておく。

 こいつは麗日。中学のときの同級生だ」

 

お茶子が一歩前に出て、明るく頭を下げる。

 

「麗日お茶子です!よろしくお願いします!」

 

芦戸はぱっと笑顔になる。

 

「え〜同中なんだ!いいな〜!」

 

尾白も柔らかく笑う。

 

「よろしく、麗日さん」

 

烈火は続けて、お茶子に向き直る。

 

「それと……こっちが芦戸で、こっちが尾白だ。

 入試の時、一緒にゼロポイントを倒した」

 

お茶子は驚いたように目を丸くする。

 

「えっ、ゼロポイント倒したん!?

 すごいやん……!」

 

烈火は肩をすくめる。

 

「麗日のグループには、パンチ一発でぶっ倒したヤツがいる、つってたじゃん。

 俺らはB組のもう一人含めた四人がかりで、なんとか倒したって感じだからなぁ」

 

尾白がすぐに同意する。

 

「うん、あれきつかった〜。

 てかアレをパンチ一発でとか、ありえなくね?」

 

芦戸も目を丸くする。

 

「マジで!?パンチ一発って何それ〜!」

 

お茶子は苦笑しながら頷く。

 

「ほんまやって……あれ見たとき、うちもビビったもん」

 

烈火は軽く息を吐く。

 

◇

 

そのとき──

後方から、ギラッとした視線が突き刺さる。

 

爆豪が烈火たちを睨みつけていた。

 

(ゼロポイントを倒した……?

 誰がそんなことを……)

 

爆豪の眉間が深く寄る。

 

烈火はその視線に気づき、ちらりと爆豪を見る。

 

(……面倒なやつに目をつけられたか)

 

柳は小さく炎を揺らす。

 

烈火は短く息を吐く。

 

◇

 

勢いよく扉が開き、緑谷が息を弾ませながら入ってくる。

 

「間に……あった……!今日から、よろしくお願いしますっ……!」

 

爆豪の目がギラッと光る。

 

「……は?」

 

爆豪が椅子をガタッと鳴らして立ち上がる。

 

「デク!!

 なんでてめえがここにいるんだ!?他行けっつったろーが!!」

 

怒鳴り声が教室に響き渡る。

 

緑谷はビクッと肩を跳ねさせ、

手に持っていたカバンを落としそうになりながら後ずさる。

 

周囲の生徒たちがざわつく。

 

「やば……」

「止めたほうがよくない?」

「掴みかかるんじゃ……?」

 

烈火は爆豪の様子を横目で見ながら、淡々と言う。

 

「掴みかかるようなら止めなきゃだが……

 そこまででもない。あいつ、大声で怒鳴り散らしてるが冷静だ」

 

柳は烈火の肩で炎を小さく揺らす。

 

お茶子は不安そうに爆豪と緑谷を見比べる。

 

「え、あれで冷静なん……?」

 

烈火は短く息を吐く。

 

「怒鳴るだけで済ませてる。手は出す気ねぇよ、あれは」

 

爆豪はなおも緑谷を睨みつけているが、

確かに一歩も近づこうとはしていない。

 

緑谷は怯えながらも、必死に言葉を絞り出す。

 

「ぼ、僕だって……受験して……!受かって……!

 勝ち取ったって言ってもらったんだ!」

 

爆豪は舌打ちし、椅子にドスンと座り直した。

 

「チッ……気に入らねぇ」

 

烈火は肩の力を抜く。

 

「ほらな。あれで終わりだ」

 

◇

 

お茶子が緑谷の様子を見て、烈火に言う。

 

「入試の時に同じグループだったから、ちょっと行ってくるね」

 

烈火は軽く手を挙げる。

 

「おう、いってら〜」

 

芦戸が驚いたように烈火を見る。

 

「えっ、いいの?男子のとこに一人で行かせて」

 

烈火は首を傾ける。

 

「なんで?俺は別にあいつの保護者な訳じゃないぞ?」

 

芦戸は口を半開きにしたまま固まる。

 

「……うわ、マジで言ってる……」

 

柳が炎の尾をゆるく揺らしながら言う。

 

「烈火は朴念仁の忍者オタクでして……

 青春しろと常々言ってるんですが……」

 

芦戸は妙に納得した顔になる。

 

◇

 

その裏で──

お茶子と話していた緑谷に、飯田も話しかけていた。

 

烈火の位置からは、二人の会話の内容までは聞こえない。

ただ、ひときわ大きな声だけが断片的に届く。

 

緑谷の声。

 

「デクです!」

 

続いて、飯田の驚いた声。

 

「いいのか!?蔑称だろう!?」

 

芦戸が小声で言う。

 

「……なんか大変そうだね、あの子」

 

烈火は淡々と答える。

 

「まぁ、あいつもあの入試を受かって来てるんだ。

 自分でなんとかするだろ」

 

柳は炎をふわりと揺らす。

 

◇

 

そのとき──

教室の前方で、寝袋がもぞりと動いた。

 

「……友達ごっこがしたいなら他へ行け」

 

寝袋の中から、ぼそっとした声が響く。

 

生徒たちが一斉に前を見る。

 

「え……?」

「誰……?」

「寝袋……?」

 

寝袋はそのまま、ずるりと立ち上がった。

 

「ここはヒーロー科だぞ」

 

ざわつきが一気に広がる。

 

「寝袋が立った……」

「え、先生……?」

「何この人……?」

 

烈火は肩の上の柳とともに、自然と背筋を伸ばした。

 

烈火が小声で言う。

 

「……誰だ、あれ」

 

柳は淡々と答える。

 

「抹消ヒーロー、イレイザーヘッドです。担任は彼ですか……

 去年1年間だけで20人以上を除籍しているという記録があります」

 

烈火は一瞬だけ目を細めた。

 

(……随分物騒な肩書きだな、おい)

 

寝袋の人物は、ゆっくりとファスナーを下ろす。

 

ずるり──。

 

ぼさぼさ頭の男が姿を現し、

片手にはゼリー飲料。

 

そのまま、教室のど真ん中で音を立てて飲む。

 

「……ッジュッ」

 

シン──と教室が静まり返る。

 

男は飲み終えると、無表情のまま言った。

 

「はい、静かになるまで8秒かかりました。

 時間は有限だ。君たちは合理性に欠くね」

 

烈火は小さく息を吐く。

 

(……これがイレイザーヘッドか)

 

柳が炎をふわりと揺らす。

 

「烈火。気を引き締めてくださいね」

 

烈火は短くうなずく。

 

「……ああ」

 

 

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