ヒロアカ世界の烈火に八竜率いた柳が個性として宿った話 作:琴銀河
ズシィィィン!!
ゼロポイントの足が地面を踏み抜き、
近くの建物が大きく揺れた。
「きゃあああああっ!!」
崩れた壁の上部が、
受験生の真上へ――
落ちかけていた。
烈火は反射的に地面を蹴った。
「……っ!」
だが――
(砕波じゃ届かねぇ……!
崩でも威力が足りねぇ……!
一か八か飛び込んで引っ張り出すしか――)
その瞬間。
烈火の肩の上で、柳が鋭く叫んだ。
「焔群(ほむら)! 出ませい!!」
「御意」
低く、しなやかな声が空気を震わせた。
柳の炎から、赤黒い炎が“しなるように”伸び上がる。
刀でも槍でもない。
鞭のように、うねり、揺れ、絡みつく。
烈火は直感で悟った。
(……八竜の一体だ)
焔群は烈火を冷ややかに見下ろし、
初対面とは思えない落ち着きで言い放つ。
「烈火よ。
柳様の命により、貴様に力を貸してやる。
中からずっと見ていたが……
無様を晒すのは許さぬので心得よ」
烈火は内心で舌打ちした。
(崩と砕波より口悪ぃな……)
柳が指示を飛ばす。
「焔群、あの瓦礫を“払い”なさい。
中に人がいます。壊しすぎぬように」
「承知」
焔群の炎鞭が――
ビュンッ!!
空気を裂き、瓦礫へ叩きつけられた。
ドガァァァン!!
だが瓦礫は砕け散らない。
横へ弾き飛ばされるように押しのけられた。
烈火はその隙に飛び込み、
受験生を抱えて転がるように避難させた。
「立てるか!」
少年は涙目で頷く。
「た、助かった……!
本当に……ありがとう……!」
烈火は短く息を吐き、
焔群の炎鞭が自分の腕へ巻きついてくるのを感じた。
焔群が烈火へ向けて言う。
「柳様の命により、貴様の拳を強化してやる。
中距離も、近距離も……我が炎で補え」
烈火は拳を握りしめた。
「……了解だ」
柳が肩で微笑む。
「烈火、これで“中距離”が戻りましたね」
烈火はゼロポイントの方向を睨む。
ズゥゥゥン……!!
巨体がゆっくりとこちらへ迫ってくる。
その一歩ごとに地面が揺れ、空気が震える。
烈火は息を整えた。
「行くぞ。
崩、砕波、焔群――
全部使う」
柳が静かに頷く。
「はい。
あなたの“炎術のすべて”で挑みましょう」
烈火は地面を蹴った。
「――行く!!」
◇
ピンクの子・尻尾の子・漫画の子の三人は、
別の場所で瓦礫に挟まれた受験生を救助していた。
「大丈夫!? 今どかすからね!」
ピンクの子が酸で瓦礫の端を溶かし、
尻尾の子が尻尾でテコのように持ち上げる。
漫画の子が叫ぶ。
「“グググッ!”って持ち上げるから、今のうちに抜けろーっ!」
受験生は震えながら言う。
「で、でも……ゼロポイントが……!」
ピンクの子は笑って言った。
「大丈夫!
忍者くんが引きつけてくれてれば、逃げる時間は稼げるって!」
その瞬間――
尻尾の子の動きが止まった。
「……ん?」
ピンクの子が首をかしげる。
「どうしたの、尻尾の?」
尻尾の子は眉を寄せ、ぽつりと呟いた。
「いや……なんか、変だなって思って」
漫画の子も止まる。
「え、“変”って?」
尻尾の子はゆっくり言葉を選ぶ。
「ヒーローが“逃げる時間を稼ぐ”……?
誰が逃げるんだ?」
ピンクの子は一瞬だけ固まる。
尻尾の子は続けた。
「俺たち?
受験生?
……ヒーローが逃げるのか?」
ピンクの子の表情が曇る。
「……あ」
漫画の子も気づいたように目を見開いた。
「そ、そうだよな……!
ヒーローって、逃げる側じゃなくて……!」
尻尾の子は拳を握る。
「助ける側だ。
逃げる時間を稼ぐんじゃなくて……
“助ける時間を作る”のがヒーローだろ」
ピンクの子は息を呑んだ。
「……忍者くん、逃げるために戦ってるんじゃないんだ」
漫画の子が震える声で言う。
「“ドガァン!”ってロボ倒して……
“バシュッ!”って走って……
あれ全部……誰かを助けるためにやってたのか……」
尻尾の子は静かに頷いた。
「……だからあいつ、迷わず突っ込んでいくんだな」
ピンクの子は唇を噛んだ。
「……私たちも、逃げてる場合じゃないよね」
尻尾の子は力強く言う。
「助けよう。
俺たちもヒーローを目指してるんだから」
漫画の子が叫ぶ。
「よっしゃあああ!!
“ドドドッ!”って助けまくるぞ!!」
三人は走り出した。
◇
烈火は焔群を纏った拳でゼロポイントの足首へ突っ込む。
「――ッらぁ!!」
ドガァァァン!!
だがゼロポイントは微動だにしない。
烈火は舌打ちした。
「……ッチ……
焔群を纏わせて全力で殴ってるのに全然効いてないな。
新キャラ仲間が来たら普通圧倒するもんだろうが」
焔群は冷たく言う。
「物語の都合で勝てると思うな。
我ら八竜は“補助”だ。
奇跡は起こさぬ」
柳が肩で笑う。
「烈火、焔群は正しいですよ」
烈火はゼロポイントの膝裏へ跳び込む。
「崩!!」
赤い火球がぶつかり、動きが止まる。
烈火は砕波を構えた。
「砕波!!」
シュッ!!
だが――
ガギィィィン!!
砕波が弾かれた。
烈火は着地しながら息を吐く。
(……硬ぇ……
でも“通る”場所はあるはずだ)
ゼロポイントが腕を振り上げる。
柳が叫ぶ。
「烈火、来ます!!」
烈火は滑り込むように回避し、
焔に言う。
「焔群、跳躍強化!!」
焔群は脚に炎を集中させる。
「またか。折れても知らんぞ」
烈火は笑う。
「折れる前に終わらせる!!」
烈火は跳んだ。
焔群の炎が脚に巻きつき、
烈火の身体がゼロポイントの胸部へ一直線に飛ぶ。
烈火は拳をひねり、
焔群の炎が螺旋状に巻きつく。
「砕波・焔群纏い――
螺旋撃!!」
ドガァァァァン!!
ゼロポイントの胸部に――
小さな穴が開いた。
烈火は息を荒げる。
「……通った……!」
◇
「忍者くーーーん!!」
ピンクの子が駆け込んできた。
「装甲に穴が開いてさえいれば、
そこにアタシの“酸”を流し込めばいい!!
今の穴に流し込むよ!!」
その横で漫画の子が叫ぶ。
「尻尾の!!
五秒後、三発!!」
烈火は一瞬だけ眉をひそめる。
(……五秒後三発?
なんだその合図……)
だが尻尾の子は迷いなく頷いた。
「了解!!
合わせる!!」
尻尾の子がカウントを始める。
「五!!
四!!
三!!」
ピンクの子が酸を穴へ流し込む。
ジュウウウウウ……ッ!!
内部から白煙が上がる。
尻尾の子が叫ぶ。
「二!!
一!!
漫画の!!」
漫画の子が拳を構え、
肺いっぱいに空気を吸い込む。
「三発!!」
“ドカァッ!!”
“バキィッ!!”
“ガシャァァン!!”
効果音に合わせて尻尾の子の尻尾が三連撃を叩き込む。
烈火は驚く。
(……音で威力が“乗った”!?
いや、尻尾のの攻撃が……
効果音に合わせて“加速”してる……!)
ゼロポイントの胸部が大きく揺れる。
烈火は焔に叫ぶ。
「焔群!! 跳躍強化!!」
焔群が脚に炎を集中させる。
「……柳様、本当に無茶しか言わぬ」
柳は微笑む。
「はい。でも、それが烈火です」
烈火は跳んだ。
焔群の炎が脚に巻きつき、
烈火の身体がゼロポイントの胸部へ一直線に飛ぶ。
烈火は拳をひねり、
焔群の炎が螺旋状に巻きつく。
「砕波・焔群纏い――
螺旋撃・零!!」
ドガァァァァァン!!!
ゼロポイントの胸部が――
完全に破壊された。
巨体が揺れ、
ゆっくりと後ろへ倒れていく。
ズゥゥゥゥゥン……ッ!!
烈火は着地し、息を吐いた。
「……ふぅ……
お前ら……裏でそんな連携してたのかよ……」
ピンクの子が笑う。
「うん!
試験中ずっと一緒だったからね!」
尻尾の子が照れくさそうに言う。
「漫画の“効果音”に合わせると……
なんか、威力が乗るんだよ」
漫画の子が胸を張る。
「“ドカァッ!”って言うと、
ほんとに“ドカァッ!”ってなるんだ!!」
烈火は呆れたように笑った。
「……なんだその個性の使い方……
でも助かった」
柳が肩で微笑む。
「烈火、あなたは一人じゃありませんよ」
◇
《試験終了ーー!!
全受験生はその場で待機してください!!》
アナウンスが響き渡った。
烈火は大きく息を吐いた。
「……終わったか」
焔群が腕から離れ、炎の中へ戻っていく。
「ふん。
まあ、悪くはなかったぞ、烈火」
柳が嬉しそうに言う。
「烈火、お疲れさまでした」
ピンクの子が笑う。
「忍者くん、すごかったよ!!」
尻尾の子が頷く。
「助かった。
本当にありがとう」
漫画の子が拳を突き上げる。
「“ドカァッ!”って最高だったな!!」
烈火は照れくさそうに肩をすくめた。
「……お前らもな」
6月29日22:40 焔→焔群に修正しました。