ヒロアカ世界の烈火に八竜率いた柳が個性として宿った話   作:琴銀河

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第五話 試験終了後、治癒の炎

《試験終了ーー!!

 全受験生はその場で待機してください!!》

 

アナウンスが消えたあと、

広場には疲れ切った受験生たちが座り込んでいた。

 

烈火もその場に腰を下ろし、

脚の震えを隠すように深呼吸した。

 

柳が肩で心配そうに揺れる。

 

「烈火、脚……限界に近いですよ」

 

烈火は苦笑した。

 

「……まあな。

 焔の強化、思ったより負担デカいわ」

 

そこへ芦戸三奈が駆け寄ってくる。

 

「忍者くん! 大丈夫!?

 さっきめっちゃ跳んでたけど!」

 

吹出漫我も興奮気味に言う。

 

「“ドカァッ!”って最高だった!!

 あれ絶対脚に来てるだろ!!」

 

烈火は肩をすくめた。

 

「まあ……ちょっとな」

 

尾白猿夫が烈火の脚を見て、ぽつりと言う。

 

「……足、震えてるぞ」

 

芦戸がすぐに食いつく。

 

「ほんとだ!

 プルプルしてるー!」

 

吹出も笑い転げる。

 

「“プルプルッ!”ってしてる!!

 生まれたての小鹿かよ!!」

 

烈火は顔をしかめた。

 

「やかましいわ……

 これから大丈夫になるんだよ。

 柳、頼む」

 

柳は小さく頷き、烈火の脚に向けてふっと息を吹きかけた。

 

ボッ!!

 

淡い橙色の炎が烈火の脚に燃え広がる。

 

芦戸が叫ぶ。

 

「うわーーー!?

 なにやってんのこのトカゲ!!」

 

吹出も跳び上がる。

 

「燃えてる燃えてる燃えてる!!

 “ボワァッ!!”って燃えてる!!」

 

炎がすっと収まり、烈火は立ち上がった。

 

「大丈夫だ。

 疲労回復の“治癒の炎”だ」

 

烈火は軽く息を吐き、

その場で トン、トン、トン と軽く跳んでみせた。

 

芦戸が目を丸くする。

 

「えっ……もう跳べるの?」

 

吹出も驚く。

 

「“ピョンッ!”ってしてる!!

 さっきまでプルプルだったのに!!」

 

烈火はニッと笑い、

地面を強く蹴った。

 

ドンッ!!

 

一気に高く跳び上がる。

 

空中で軽く体勢を整え、

ふわりと着地した。

 

「ほらな。

 ちゃんと効くんだよ」

 

三人はぽかんと口を開けたまま烈火を見つめた。

 

烈火は手を軽く上げる。

 

「お前らも疲れてんだろ。

 ちょっと分けてやるよ」

 

柳も息を吸い込む。

 

「では、皆さんにも――」

 

芦戸と吹出が同時に後ずさる。

 

「いやいやいやいや!!

 燃えるのはちょっと!!」

 

尾白も眉をひそめる。

 

「……ほんとに大丈夫なんだよな、それ」

 

烈火は呆れたように言う。

 

「大丈夫だって。

 ほら、ちょっとだけ――」

 

芦戸が慌てて話題を変える。

 

「そ、そうだ忍者くん!!

 名前! 名前の話しよう!!」

 

吹出も乗っかる。

 

「そうそう!!

 名前!!

 “ドカァッ!”って名乗れ!!」

 

烈火はため息をついた。

 

「……お前らな」

 

芦戸はにこっと笑う。

 

「忍者くんさ、

 やっぱり名前は入学後まで内緒にするつもり?」

 

烈火は少しだけ目をそらす。

 

「……まあ、そのつもりだったけどな」

 

芦戸は指を立てて言う。

 

「でもね、君の名前はもうわかってるよ」

 

烈火は固まる。

 

「……は?」

 

芦戸は得意げに言った。

 

「“れっか”君でしょ?

 トカゲちゃんがそう呼んでたし」

 

柳が肩の上で跳ねる。

 

「烈火は烈火です。

 隠す理由などありませんよ」

 

烈火は額を押さえた。

 

「……お前、普通に呼んでたのかよ……」

 

吹出が笑い転げる。

 

「聞こえてたぞ!!

 “れっかー!”って!!」

 

尾白も頷く。

 

「……まあ、聞こえてたな」

 

烈火は観念したように息を吐いた。

 

「……烈火だ。

 花菱烈火。

 よろしくな」

 

芦戸がぱっと手を挙げる。

 

「じゃあアタシも!

 芦戸三奈!

 個性は“酸”!

 よろしくね、烈火くん!」

 

吹出が勢いよく胸を張る。

 

「オレは 吹出漫我!!

 個性は“漫画”!!

 擬音が出るやつ!!

 “ドカァッ!”ってやつ!!」

 

尾白は落ち着いた声で言う。

 

「……尾白猿夫だ。

 個性は“尻尾”。

 よろしく頼む」

 

烈火は三人を見回し、

少しだけ笑った。

 

「……よろしくな」

 

 

広場の向こうから、

杖をついた小柄な影がゆっくりと歩いてくる。

 

「はいはい、怪我してる子から順番に診るよー。

 動かない動かない」

 

リカバリーガールだ。

 

周囲の受験生たちがざわつき、

次々と彼女の前に並び始める。

 

烈火たちのほうへも、

その小さな影が近づいてきた。

 

「次は……そこの坊やだね。

 派手に跳んでたあんた」

 

烈火の前でぴたりと止まり、

見上げるようにして言った。

 

烈火は姿勢を正す。

 

「脚が限界だったけど……

 治癒の炎で治った」

 

リカバリーガールは烈火の脚を触り、

驚いたように目を細める。

 

「……筋肉の張りも疲労も残ってない。

 体力も満タンじゃないかい」

 

柳が胸を張る。

 

「烈火の炎は“生命力の循環”を促します。

 治癒と回復を同時に行えます」

 

リカバリーガールは烈火をじっと見つめた。

 

(……もしこの炎が本物なら……

 あの子の治療にも……)

 

(……いや、ダメだよ。

 あれは極秘中の極秘。

 今は言えない)

 

彼女は思考を切り替えた。

 

「ま、元気ならいいさ。

 治療の必要なし」

 

烈火は頭を下げた。

 

「ありがとうございます」

 

 

診察が終わると、芦戸が急に叫んだ。

 

「……っていうかさ!

 心配なのアタシらじゃない!?」

 

烈火が眉を上げる。

 

「お前ら?」

 

芦戸は吹出と尾白を指さす。

 

「アタシら三人がかりで倒したロボって、

 ほとんど1点ロボじゃん!

 写真で見たやつそのまんま!」

 

吹出が頭を抱える。

 

「そうなんだよ!!

 オレら1点ロボ15機倒したけどさ……

 15点ってギリギリじゃねぇ!?

 “ドカァッ!”って倒したつもりでも、

 実質“ドカッ(1点)”なんだよな……!」

 

尾白も唸る。

 

「……2点ロボ3機、3点ロボ1機。

 全部合わせて19機だが……

 点数的には微妙だな」

 

芦戸は地面にしゃがみ込み、

頭を抱えてぐるぐる回る。

 

「うわー!

 アタシら全然稼げてない可能性あるじゃん!!

 うわー! 不安になってきたー!!」

 

吹出も回る。

 

「オレもだ!!

 “ドカァッ!”って倒したつもりが、

 実は“ドカッ(1点)”ばっかりだったとか!!

 やべぇ!!」

 

尾白はため息をつく。

 

「……配点方法、もっと詳しく聞いとけばよかったな」

 

芦戸が叫ぶ。

 

「リカバリーガールに聞けばよかったー!!

 絶対教えてくれないだろうけどー!!」

 

烈火は吹き出した。

 

「お前ら……

 さっきまで元気だったのに急にどうしたんだよ」

 

芦戸が烈火の腕を掴む。

 

「だって烈火くんはさ、

 3点ロボも倒してたし、

 絶対受かってるじゃん!」

 

吹出も詰め寄る。

 

「そうだぞ!!

 烈火は“ドカァッ!”って倒してたけど、

 オレらは“ドカッ(1点)”だぞ!!

 差がやべぇ!!」

 

尾白も静かに言う。

 

「……正直、不安だな」

 

烈火は肩をすくめた。

 

「結果は帰ってからのお楽しみだろ。

 今考えても仕方ねぇよ」

 

三人は渋々頷き、それぞれ帰路についた。

 

烈火もゆっくりと歩き出す。

 

 

家に帰り、玄関を閉めた瞬間、

静けさが押し寄せた。

 

烈火は布団に倒れ込み、

天井を見つめたまま呟く。

 

「……受かってる、よな」

 

試験中は考える暇もなかった。

芦戸たちの前では強がっていた。

 

でも今は――

逃げ場がない。

 

「……25体。

 1点22、2点2、3点1……

 これで足りるのか?」

 

胸の奥がざわつく。

 

柳が肩の上で揺れた。

 

「烈火。

 あなたはよくやりましたよ」

 

烈火は目を閉じる。

 

「……そうか?」

 

「はい。

 あなたは“誰かを救うために動いた”。

 雄英が最も重視することです」

 

烈火は小さく呟いた。

 

「……受かりてぇな」

 

それは今日初めて漏れた本音だった。

 

柳は優しく言う。

 

「大丈夫ですよ。

 あなたは前に進んでいます」

 

烈火は息を吐いた。

 

「……あとは、待つだけか」

 

その夜、烈火はなかなか眠れなかった。

 

 

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