ヒロアカ世界の烈火に八竜率いた柳が個性として宿った話   作:琴銀河

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第六話 入試翌日の中学校にて

朝、校門をくぐった瞬間、周囲の空気がわずかに揺れた。

ざわっ、と小さな波紋のように視線が集まる。

 

(……なんだ? 見られてる?)

 

靴箱へ向かう途中、同じクラスの男子が駆け寄ってきた。

 

「おい花菱、昨日雄英の入試だったんだろ? どんなだった?」

 

その声に反応して、周囲の数人も集まってくる。

 

「ロボやばいって聞いたぞ」

「炎龍って本当に使えるのか?」

「点数とかどうだったんだよ」

 

一瞬だけ身構えたが、すぐに理解した。

 

(ああ、話を聞きたかったのか)

 

肩をすくめて答える。

「まあ……色々あったけど、なんとか」

 

「なんとかってなんだよ」「炎龍出したのか?」

質問が飛び交う。

 

曖昧に笑った。

「柳がちょっと手伝ってくれたくらいだよ」

 

「へぇー!」「やっぱすげぇな花菱」

勝手に盛り上がるクラスメイトたちを横目に、教室へ向かった。

 

 

昼休みのざわついた教室に、そっと扉が開く気配がした。

「……失礼しま~す……」と控えめな声がして、扉の隙間から麗日お茶子が顔をのぞかせる。

 

烈火を見つけた瞬間、ぱぁっと表情が明るくなり、そのまま小走りで駆け寄ってきた。

 

烈火は弁当の箸を止め、軽く手を上げる。

「おー麗日。般若心経ちゃんと唱えたか?」

 

「も~、それはいいんだよ」とお茶子は頬を膨らませる。

けれどすぐに表情が和らぎ、心配そうに烈火の顔を覗き込んだ。

 

「……昨日、怪我してない? 炎龍ちゃんも無事だった?」

 

烈火は肩をすくめる。

「まあ、なんとか。柳も元気だ」

 

「よかったぁ……」

お茶子は胸をなでおろし、ほっと息をついた。

 

烈火は逆に問い返す。

「麗日はどうだった?」

 

その瞬間、お茶子の動きが一瞬だけ固まった。

「えっ……あ、う、うん……その……まあ、色々あったけど……」

 

明らかに挙動不審だ。烈火が眉をひそめると、お茶子は慌てて手を振った。

 

「ほ、ほら! ロボいっぱい出たし! 走ったり、避けたり、転んだり……いや転んでないけど!

 とにかく普通だよ普通!」

 

(絶対普通じゃねぇだろ)と烈火は心の中で思ったが、口には出さなかった。

 

お茶子は話題を変えるように、勢いよく言葉を続けた。

「そ、そうだ! 花菱君は!? どんな戦い方したの!? 炎龍ちゃん、どんなふうに動いたの!?」

 

烈火は少し考え、結局いつもの調子で答える。

「……まあ、普通に。走って、避けて、殴って、そんな感じ」

 

「普通じゃないでしょ絶対!」

お茶子は笑いながら、どこか安心したように息をついた。

 

そして、ふと思い出したように表情を引き締める。

 

「ね、花菱君……私ね、試験のあと先生に言いに行ったんだ」

 

烈火は箸を止めた。

「なんかあったのか?」

 

「助けてもらった子がいて……その子、ポイント無いんじゃないかと思って……

 “せめて1ポイントでも”って言っていたから……」

 

烈火は目を瞬かせる。

「助けてもらった? 誰にだよ」

 

「名前は知らないんだけど……」

お茶子は胸の前で手をぎゅっと握りしめた。

「その子ね……ゼロポイントを一撃で吹っ飛ばしたんだよ」

 

烈火は思わず声を上げた。

「一撃? 嘘だろ? 俺らは四人がかりで必死になって、なんとか倒せたってのに」

 

「うん……本当に一撃だったの。すっごい音して……

 でもそのあと倒れちゃって……だから心配で……」

 

お茶子の声は小さく震えていた。烈火はその様子を見て、ふっと息を吐く。

 

「……麗日らしいな、やっぱ優しいよお前」

 

お茶子は照れたように笑った。

「えへへ……」

 

教室のざわめきの中、二人の間だけが少しだけ静かで、温かかった。

 

 

放課後、烈火は方に乗っている柳に声をかけた。

昨日の試験で焔群が現れたことが、どうしても気になっていた。

 

「なぁ柳……昨日のあれ、焔群って言ってたよな。俺の中、まだ他にもいるってことか?」

 

柳は炎の尾を揺らしながら、静かに頷いた。

 

「ええ。あなたの中には“八竜”と呼ばれる八つの炎が宿っています。

 崩、砕波、焔群……烈火のことを気に入って、力を貸そうと言ってくれる子たちです」

 

烈火は息を呑む。

 

柳は続ける。

 

「ただし……危険な思想を持つ子もいます。

 宿主である烈火を害することは――無いとは思いますが……

 敵を排除するためなら、極端な判断をする子もいるんです」

 

胸の奥がひやりとする。

 

柳は優しく言葉を締めくくる。

 

「今は、崩や砕波、焔群を使いこなせるようになることが大事です。

 焦らなくていいんですよ。

 必要なときに、必要な子が目覚めます」

 

烈火はゆっくりと息を吐いた。

自分の中に宿る八つの炎――

その存在を、ようやく真正面から受け止め始めていた。

 

 

試験の翌日から数日が経ったある朝。

烈火の家の郵便受けに、雄英高校からの小さな郵便小荷物が届いていた。

 

中身はまだ開けていない。

けれど、胸の鼓動だけがやけに大きく響いていた。

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