1991年8月16日、午前5時10分。
函館防衛線・大沼国定公園西方。
「Operation Northern Dawn」第一段階、開始。
米海兵隊と自衛隊の混成部隊が、夜明けと共に総反攻に移った。
M1A1エイブラムス戦車群が土煙を上げて前進し、75式自走榴弾砲とM270多連装ロケットが一斉に火を噴いた。函館山から見下ろす夜景は、まるで火の海だった。
高橋拓也は松葉杖を捨て、89式小銃を手に前線に戻っていた。右肩の傷はまだ疼くが、痛み止めと興奮で感覚が麻痺していた。
佐々木美咲は彼のすぐ後ろに付き、弾倉と手榴弾を担いでいた。
「高橋さん、無理は絶対にしないで!」
「わかってる。けど、ここで止めたら札幌は永遠に戻らない」
前方で激しい戦闘音が響く。
米軍A-10が低空を旋回しながらGAU-8機関砲を連射し、ソ連軍のT-80列を薙ぎ払う。対空から降り注ぐ曳光弾が夜空を赤く染めた。
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**同時刻 占領下・札幌市地下鉄連絡通路**
「北海道解放戦線」は、反攻の開始を知るやいなや行動を起こした。
小野寺遥が率いる約150名のグループが、札幌市内数カ所で同時蜂起。
北海道庁舎近くのソ連軍補給基地に火炎瓶と手製爆弾を投げ込み、燃料タンクを炎上させた。
「今だ! 赤旗を引きずり下ろせ!」
若い学生たちが闇に紛れて赤い星の旗を切り裂き、代わりに日の丸を掲げた。
ソ連軍の反応は迅速で、即座に掃討部隊が送り込まれた。銃声と爆発が地下道にも響き、抵抗運動は瞬時に市街戦の様相を呈した。
帯広郊外の農村部でも動きがあった。
農民を中心とした抵抗組織が、ソ連軍の補給 convoy を地雷と待ち伏せで壊滅させ、T-72一台を鹵獲することに成功。
「極東ロシア人民共和国」の支配は、表向きの「勝利」から一転、ゲリラの火種に包まれ始めていた。
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**函館前線 七飯町南方**
ソ連軍(極東ロシア人民共和国軍)は予想外の猛反撃に動揺していた。
ノヴィコフ大将から「絶対に後退するな」と厳命が下る中、戦車部隊は米軍エイブラムスと自衛隊74式の集中射撃を受け、次々と炎上した。
高橋の小隊は、米海兵隊と共に廃墟となった集落で近接戦闘に突入した。
AK-74と89式小銃の乾いた射撃音が交錯する。
美咲が角から身を乗り出し、ソ連歩兵二人を連続で撃墜した。
しかし即座に返された弾丸が彼女の左腕を掠め、血が噴き出した。
「美咲!」
高橋が彼女を庇いながら連射し、敵を制圧。二人して壁際に身を寄せ、荒い息を吐いた。
「まだ……いける?」
「もちろん。根室からここまで来たんだもの」
二人は血まみれの手を一瞬だけ握り合い、再び前へ出た。
その瞬間、上空から米軍AH-64アパッチのヘルファイアミサイルが飛来し、ソ連軍の指揮車を直撃。爆炎が夜を明るく照らした。
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**米自衛共同指揮所(函館)**
米海兵隊准将が拳を握りしめた。
「新千歳空港方面への突破を確認! 第二波を投入せよ。
第25歩兵師団の主力が明日朝までに到着する。
占領下の抵抗運動とも連絡を取り、札幌同時解放を目指す」
自衛隊北部方面総監は深く頷いた。
「政治的にも重要だ。『極東ロシア人民共和国』を一刻も早く崩壊させねば……」
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**ハバロフスク 極東軍管区司令部**
ノヴィコフ大将の顔は蒼白だった。
「函館で押し返されているだと? 札幌でもゲリラが……。
モスクワのクーデターはどうなっている!」
参謀長が震える声で答えた。
「同志大将、モスクワからの連絡が途絶え気味です。
ヤゾフ元帥ら非常事態委員会の支配も、揺らいでいるという情報が……」
ノヴィコフは地図を叩きつけた。
勝利の夢は、急速に悪夢へと変わりつつあった。
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**午前8時45分 函館南方高台**
高橋と美咲は、朝焼けの中で前線を進む味方の波を見ていた。
炎上するソ連戦車、撤退を余儀なくされる赤い星の兵士たち、そして遠くに続く千歳への道。
「取り戻すぞ……全部」
「ええ。一緒に」
二人の声は小さかったが、確かに希望を帯びていた。
しかし戦争は、まだ終わっていなかった。
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