北海道侵攻 1991 ― 赤い波濤   作:陽HARU

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第12話 北方奪還作戦と世界の審判

 

 

1991年8月18日、午前6時00分。

国連本部 ニューヨーク。

 

緊急安保理会合は、異例の早朝から始まっていた。

アメリカ合衆国国務長官ジェームズ・ベーカーは、厳しい表情で演説した。

 

「これは明白な侵略行為であり、ソビエト連邦の一部勢力による無法行為です。

我が国は自衛権を行使する日本国を全面的に支援する。

極東ロシア人民共和国などという傀儡政権は、国際法上一切認められません」

 

ソ連代表(非常事態委員会派)は激しく反論したが、議場は冷ややかだった。

イギリス、フランス、ドイツが相次いで非難声明を出し、中国さえも「遺憾の意」を表明。

湾岸戦争で疲弊していたアメリカが、意外なほど迅速に動いたことで、世界は一気に「反ソ連」ムードに傾いた。

 

同時に、モスクワではゴルバチョフが解放され、エリツィンが議会でクーデター派を糾弾する演説を行っていた。

非常事態委員会の崩壊は時間の問題となっていた。

 

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**午前7時30分 北海道・新千歳空港南方 米自衛共同軍集結地**

 

「Operation Northern Dawn」第二段階――**北方奪還作戦**が開始された。

 

米第25歩兵師団主力と追加の海兵隊、航空戦力が増強され、自衛隊第5師団・第11師団残存部隊と合同で北上を開始。

M1A1エイブラムス、AH-64アパッチ、F/A-18、F-15Jが一体となって進撃した。

 

高橋拓也二等陸曹と佐々木美咲は、先遣偵察部隊に志願参加していた。

高橋の傷はまだ完治していなかったが、彼は89式小銃を握りしめ、米軍のハンヴィーに同乗していた。

 

「国際社会が動いたな……これでソ連も限界だ」

 

美咲はヘルメットの下で頷きながら、帯広方面の森を指差した。

 

「あそこに、抵抗運動の皆さんがいます。連絡が取れれば内側から崩せます」

 

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**午前9時15分 千歳~札幌間 国道36号沿い**

 

ソ連軍(極東ロシア人民共和国軍)は、モスクワからの撤退命令を無視し、頑強に抵抗した。

ノヴィコフ大将はハバロフスクから「死守せよ」と繰り返し電命を送っていた。

 

しかし現実は残酷だった。

米軍のA-10と自衛隊F-1の対地攻撃で補給線が寸断され、S-300対空ミサイル陣地も次々と破壊された。

T-80の残存部隊は巧みに市街地を利用して遅滞戦を試みたが、M1A1の圧倒的火力と夜間戦闘能力の前に次々と撃破されていった。

 

高橋と美咲の部隊は、江別市付近でソ連歩兵と交戦。

近接戦闘の中で美咲が敵兵一人を倒し、高橋が負傷した米兵を背負って後退する場面もあった。

 

「もう少し……札幌まであと少しだ!」

 

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**同時刻 占領下・札幌市内**

 

「北海道解放戦線」は、奪還作戦開始の報を受け、大規模蜂起に打って出た。

小野寺遥は地下鉄南西線駅付近で約200名を率い、ソ連軍の装甲車に火炎瓶と鹵獲したRPGを浴びせた。

 

「今がチャンスだ! 自衛隊と米軍が来ている!

札幌を、取り戻すぞ!」

 

市内各所で銃声と爆発が響き、赤い星の旗が次々と引きずり下ろされた。

極東ロシア人民共和国の「政府」建物は混乱に包まれ、政治将校たちは逃亡を始めた。

 

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**午後4時 モスクワ 緊急首脳会議**

 

ゴルバチョフは、極東軍管区に対し最終命令を発した。

 

「即時停戦し、全兵力を撤退せよ。

ノヴィコフ大将は解任する。

これは国家の存亡にかかわる」

 

非常事態委員会の主要メンバーはすでに逮捕されつつあり、クーデターは事実上失敗に終わろうとしていた。

世界中が衛星中継でこの歴史的瞬間を見守っていた。

 

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**夕刻 札幌市近郊・厚別付近**

 

高橋と美咲は、丘の上から煙る札幌の街並みを見下ろしていた。

遠くに赤い旗がまだいくつか残っているが、米軍の照明弾と自衛隊の89式小銃の射撃音が、解放の足音を刻んでいた。

 

「やっと……ここまで来た」

 

高橋の声はかすれていた。

美咲は彼の肩にそっと寄りかかり、涙を堪えながら微笑んだ。

 

「根室から始まって、函館で耐えて……今、取り返す番です」

 

米軍の戦車部隊が横を通過し、北へ向かう。

国際社会の圧力と、地上の血を流した抵抗が、ようやくソ連の野望を押し戻し始めていた。

 

しかし北部の一部、特に旭川・稚内方面では、まだ孤立した強硬派の抵抗が続いていた。

 

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