北海道侵攻 1991 ― 赤い波濤   作:陽HARU

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第9話 函館の死闘と地下の炎

 

 

1991年8月15日、午前4時30分。

函館防衛線最前縁・七飯町~大沼国定公園。

 

大地が咆哮していた。

 

ソ連軍と極東ロシア人民共和国軍(民間軍事会社の兵が多数)は、札幌占領の勢いをそのままに、函館への総攻撃を開始した。T-80UとT-72の混成戦車連隊が夜明け前の霧を切り裂きながら前進。後方から2S19自走砲とBM-21ロケットが集中弾幕を降らせ、函館山麓を地獄に変えた。

 

米海兵隊のM1A1エイブラムスが初めて真正面から応戦した。

120mm徹甲弾がT-80の正面装甲を貫通し、誘爆の火柱が次々と上がる。自衛隊の87式対戦車誘導弾と米軍のTOWミサイルが交互に夜空を白く染めた。

 

高橋拓也は、負傷を押して後方火力支援陣地に就いていた。

右肩の痛みを無視し、75式155mm自走榴弾砲の照準補正を手伝う。隣で佐々木美咲が弾薬を運び続け、汗と煤で顔を真っ黒にしていた。

 

「高橋さん! 左翼が崩れそうです!」

 

「知ってる! でもここを死守するんだ!」

 

突然、ソ連軍のSu-25フロッグフットが低空侵入。23mm機関砲が陣地を薙ぎ払う。

高橋は美咲を突き飛ばし、二人して溝に伏せた。すぐ横で米海兵の一人が上半身を失い、倒れた。

 

米軍A-10サンダーボルトIIが即座に駆けつけ、GAU-8アヴェンジャー30mm機関砲でSu-25を蜂の巣にした。

しかし戦線は膠着し、双方に膨大な死傷者が出ていた。

 

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**同時刻 占領下・札幌市地下**

 

北海道庁舎から数キロ離れた旧地下鉄連絡通路では、抵抗運動が密かに組織されつつあった。

 

元自衛隊員、警察官、学生、漁師の生き残り約120名が「北海道解放戦線(仮称)」を結成。

指導者の一人は、札幌で避難中に取り残された美咲の幼馴染・小野寺遥(20・女性)だった。

 

「赤い政権など認めない。札幌を、北海道を返すまで戦う」

 

彼らはソ連軍の巡回ルートを監視し、夜間に補給物資を狙ったゲリラ攻撃を開始した。

手製の火炎瓶、奪ったAK-74、そして隠し持っていた猟銃。

帯広方面でも同様の動きが広がっていた。十勝の農民たちが森と畑を利用した遅滞妨害を行い、ソ連軍の補給線を断続的に寸断していた。

 

「極東ロシア人民共和国」の宣伝放送が街中に流れる中、壁には落書きが急増していた。

「赤い札幌を許すな」「函館が持てば、勝てる」。

 

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**函館・米自衛隊共同指揮所(元函館市庁舎地下)**

 

米海兵隊准将と北部方面総監、自衛隊幹部が地図を囲んでいた。

 

米准将:「我々はあと48時間以内に反攻作戦『Operation Northern Dawn』を開始する。

第一段階は函館防衛線の死守。第二段階で千歳・新千歳空港の奪還を狙う。

空母『インディペンデンス』と『ミッドウェイ』からさらに航空戦力を増強。陸上では第25歩兵師団の残余も投入予定だ」

 

自衛隊側は頷きながらも表情は硬い。

 

「しかし、極東ロシア人民共和国という『傀儡政権』ができてしまった以上、これは単なる軍事作戦ではなく、政治戦も並行せねばなりません。

占領下での抵抗運動を支援し、国際世論を味方につける」

 

高橋と美咲も、負傷者としてではなく「現地経験者」として簡易ブリーフィングに参加していた。

高橋は地図を指さした。

 

「帯広周辺の農村部は、まだ抵抗が続いています。そこを拠点にゲリラ支援を……」

 

美咲は静かに言った。

 

「札幌の地下に、知り合いが動いています。連絡を取れれば……」

 

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**午後2時45分 函館山東麓**

 

戦闘は最高潮に達していた。

ソ連軍の歩兵が波状攻撃を繰り返し、米海兵隊と自衛隊の混成部隊が銃剣と格闘戦でこれを迎え撃つ。

高橋は再び前線に上がっていた。美咲と共に掩体から89式小銃を撃ち続け、ソ連歩兵の突撃を何度も押し返した。

 

一時、ソ連軍の戦車が防衛線を突破しかけたが、米軍のAH-64アパッチ攻撃ヘリがTOWミサイルで次々と撃破。

函館湾上空ではF-14トムキャットがSu-27を2機撃墜し、制空権を徐々に取り戻しつつあった。

 

死傷者は双方で数千に達しようとしていたが、ソ連軍の進撃は明確に止まっていた。

 

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**夜 占領下・帯広郊外**

 

農村部の抵抗組織は、ソ連軍の補給 convoy を待ち伏せ攻撃。

トラック数両を焼き、燃料を奪取した。

「極東ロシア人民共和国」の旗を掲げた兵士たちも、夜になると不安を隠せなくなっていた。

本国ソ連のクーデター状況も、予断を許さない状況にあった。

 

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