ご当地伝奇百合カードバトル ヤミヨロズ・アーカイブ ―神々の相棒を探そう― 作:Linkscape
アズサ「…………釣り合うかどうかわかりませんが、私の過去はこうです。」
戦後ではあるはずだが、いつかは覚えていない。アズサ(当時は別の名前だった)はイギリス妖怪の中でもかなり弱かった。バッグベアードの進化元と言えるバグベアにも負けるぐらい弱かった。特にバッグベアードの中では「催眠を使わずに勝つのがスマート」という風習があったのは知っての通りだ。
アズサはとにかく肉体で勝つのは無理なので、知力を得たかった。イギリスの中でも有名な大学を出て、BBCに就職した。といっても妖怪が住む場所は固まっているので、いびりは増えていく。その中でアズサはタルパ(イマジナリーフレンド)を生み出した。彼女の名前はティアラ。男勝りで自分を元気づけてくれる存在。大学のテストの時も脳内の自分の知識を横で引き出してくれた。賢く強い存在。喧嘩にも少しずつ勝てるようになってきた。ティアラはアズサの希望だった。
ティアラ「日本に潜入取材しに行くんだって!? あたいもついていくからな!! 日本の妖怪は強いからな、本場の妖怪が見られるんだぜ?」
アズサ「小豆洗いに化けるのが無害そうですかね。どこに住んでいてもおかしくない。小豆からあんこを使って、たい焼き屋をやってみたかったんですよね。」
ティアラ「我がイギリスにはマーマイトがある。そして住むのは東京都調布市だ。味の素スタジアムがある。何が言いてえのかわかるだろ?」
アズサ「味で無双できる!」
ティアラ「アズサは賢いな! じゃあ日本へ出発だ! あとブリティッシュジョークは仲悪くなるからやめろよな!」
アズサ「もちろんです!」
日本にやってきたアズサは日本妖怪に擬態することにした。小豆洗いとしてたい焼き屋をやることにしたが、当然日本でもやっている妖怪はいる。そしてその中でもブランドが格別で、「妖怪の指導者」と称される小豆洗いに挨拶をすることにした。
ティアラ「なんだ……すごく嫌な予感がする……。」
アズサ「一応イギリスと日本で違っていても、同じ妖怪なんですから仲良くできますって。」
????「待たせたな!? お前がアズサか!?」
アズサ「えっ…………!?」
ティアラ「妖怪の街、鳥取県境港市にようこそ! あたいはティアラ! 日本妖怪のリーダーとも言われているたい焼き屋だ!!」
自分が想像していたタルパと全く同じ少女が立っていたのだ。
アズサ「えっ、ティアラさん日本にいたんですか?」
ティアラ「そりゃ日本にいるだろ! ティアラは一族で襲名性だが年はほぼとらない! そこはまあ、うまくやってんだ! ちなみに漢字で書くと『手洗』になる!!」
アズサ(私の心の中のティアラさん、返事して、この人は偽……?)
アズサ(声が、聞こえない……ティアラさん……現実にいたから消えてしまったの……?)
ティアラ「日本のマナーとかはあたいに聞け! たい焼き屋のやり方も教えてやる! まあ本家の味を超えないことが条件だがな!! はははははは!!」
アズサは複雑な気持ちだった。自分の長年の相棒が現実に顕現したとも、吸収されて消えてしまったとも言える。ただアズサはティアラに頼って生きていく以外の道は存在しなかった。そしてティアラは面倒見がよかった。
ティアラ「ぬりかべの対策法は足元をくすぐることだったりするが、それは人間の場合だ。妖怪同士の場合は『この先は危ないから進むな』の意思表示だから、迂回した方が良い。」
アズサ「なるほど……。」
ティアラ「お前の住んでいる調布市も妖怪がたくさんいるが、境港もいいものだぞ、ゲゲゲの鬼太郎の街だからな! 妖怪が街に溶け込んでいる!」
アズサ(BBCは東京23区に近いところに住んで、ヤミヨロズとして神となり、調査してくれと言うものだった……。どうしたらいいんでしょうか?)
アズサ(そして妖怪のリーダーになった方が有利だとも言われた。ティアラさんはいい人だけど、越えなければいけない壁。)
アズサ「ティアラさん!!」
ティアラ「なんだアズサ?」
アズサ「あなたのたい焼きを超えます!」
ティアラ「やれるもんならやってみろ! まあ伝統を超えるのは、難しいだろうけどな!! はははは!!!」
アズサは苦難の道のりを想像していたが、死ぬほど楽に終わった。
料理人「マーマイトと味の素をぶち込みまくったアズサのたい焼きの方が旨い!!」
美食家「どう考えても素朴の味なティアラの方が良いだろう。伝統と言うことではなく、アズサのものは現代的すぎる。化学調味料ドバドバなものを有難がっても意味がないだろう。」
大物タレント「マーマイトってこんなうまいんや!? しかもマーマイトって陰謀論で語られてるん? まるで味の素と全く同じ立ち位置やん! 世界は広いわー。」
普通にアズサが勝ってしまった。BBCのコネで、滋賀県のBBC(琵琶湖放送)にたい焼き対決の特番を組んでもらった。圧勝と言うほどではないが、観客投票も圧倒的にアズサだったので、3-1と言った具合だろうか。
ティアラ「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
ティアラはとても悔しそうにしていた。今まで守ってきた味が化学調味料のマーマイトと味の素という、体に悪そうな物体2つの、味の暴力に負けたのだ。
妖怪サイドの心境は複雑だった。「勝者のアズサと敗者のティアラ、どちらにつけばいいのか」は皆が独自に判断するしかなかった。そして「アズサは日本生まれではない」という噂は広がっていた。もしかしたら西洋妖怪の侵略者かもしれない。皆迷っていた。
しかしここではティアラが1枚上手だった。
ティアラ「妖怪の皆! 聞いてくれ!! 境港市と調布市、どっちが妖怪の町おこしに成功していると思う?」
妖怪たちは皆思った。
妖怪たち「どう考えても境港市の方が観光に成功しているだろう!!!」
ティアラは最後の意地を見せたのだ。もちろん調布市に移住した妖怪たちも多かった。お互いにノーダメージではなかったのだ。
1ー1で引き分けかと思ったが、アズサは思っていた。
アズサ「私が境港市に移住したら、終わりじゃないかしら……?」
そう。アズサVSティアラではアズサが勝っており、調布市VS境港市なら境港市が勝っているので、アズサが境港市に移住すれば妖怪の指導者になれるのだ。それでティアラを叩き潰せるなら戦略的にはやるべきである。
アズサ「でも……それをしたら負けな気がする!! 私は調布市を妖怪の街として盛り上げればいいんだ! それに……。」
アズサ「鳥取が東京に勝てるわけないじゃない!」
そもそもイギリスは複数の国の連合体なので、地方煽りは日本の比ではないのである。都道府県争いなど彼女にとっては児戯に等しいのだ。
アズサ「でも、ティアラとはもう話せないわね。ここまで対立してしまったし、彼女の魂であるたい焼きで勝ってしまったから……。」
アズサ(心の中のティアラは……もういないか。)
アズサ「さようなら……。」