ご当地伝奇百合カードバトル ヤミヨロズ・アーカイブ ―神々の相棒を探そう―   作:Linkscape

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棺桶と脳缶?

二人はずっと位置取り合戦を続けていた。キダリイの刃をかわし、モエウタが踏み込むが踏み込み切れない。煽り合いだけが続く。

 

キダリイ「あなた遠州だから富士山関係ないですよね?」

 

モエウタ「あなたは!! 郡内じゃないじゃないですか!!!」

 

キダリイ「そもそも富士山より私のことが気に入らないのでしょう?」

 

モエウタ「そうですよ!!! リニアの駅貰えるなんて!!!! 静岡の水を犠牲にしてそんなに欲しいですか!? ひどいですよ!!!!」

 

キダリイ「あなたは新幹線の駅がたくさんあるではないですか。」

 

アーシエル「煽り合いからも分かる通り、この二人スタミナはほぼ無限だが冷静さが全く違う!!! モエウタ選手は頭に血が上っているううううう!!!! キダリイ選手のクールさが際立つ!!」

 

観客A「どういうことだ!??????」

 

観客B「どうした? 何か不満なのか?」

 

観客A「山梨と静岡って富士山以外でも対立しているのか!? あと国中とか郡内って何!?」

 

観客B「まず2県はリニアモーターカーでも立場は違いますね。山梨はかなりリニアモーターカーを愛していますが静岡は嫌がっています。やはり水源が失われるリスクを恐れているようですね。郡内や遠州というのは山梨と静岡の地域の話ですね。愛知県でも尾張や三河地域があるのはご存じでしょうか? こういうのは実は歴史的に別の国だったり、山が邪魔で別の地域だったりします。同じ県でも対立している地域があるんですね。」

 

観客A「なるほど……。」

 

そして戦いは新たな局面を迎えようとしていた。

 

アキュー「どう見えるっすか?」

 

アズサ「うーん、動体視力はいい方だけどこれは……。」

 

アズサ「膠着がもう破れるわね。」

 

試合場ではモエウタが活路を見出していた。

 

モエウタ「ここだっ!!!!」

 

モエウタは拍子木の紐を、キダリイの爪の根本に絡めた。そして両手に絡めたことで振り回すことも、回転させることもできなくなった。

 

キダリイ「なるほど…………。まあやりようはありますよ。」

 

キダリイは余裕であった。

 

観客はどよめいていた。

 

観客B「どういうことだ!!?」

 

観客A「気になったことがあるのか?」

 

観客B「回転するミキサーの刃に対して、拍子木の紐など無力のはず!! からめとって動きを止めるなんてできるのか!?」

 

観客A「おそらく狙う位置によるものだと思われる。鋼鉄の爪の刃は手から広がっているから、手に近いほど半径が小さくて、回転しても破壊力が小さい。だからモエウタは手元を狙って投げつけて絡めたんだ。そうすれば切れにくく手錠のような効果を得られるはずだ。」

 

観客B「なるほど……。」

 

アーシエル「やはり戦いは熾烈なものとなっていきます!!」

 

アーシエル「彼女たちが取り合う、その1枚のカードには表と裏がある!!!」

 

アーシエル「山梨も静岡も、自分から見える面を表と言い張っている!!」

 

アーシエル「『富士山』というカードを手にするのは、どちらだああああああああああ!?」

 

二人の戦いは続いていく。

 

キダリイ「では爪を外しましょう……。あなたも拍子木はいらないでしょう?」

 

モエウタ「…………。」

 

モエウタの拍子木にも、キダリイの爪にも当然予備があった。しかしお互い使わない方が適切だと感じた。二人ともボクシングスタイルで構える。

 

アーシエル「二人の第二形態ともいえる状態です!!! ここからどうなるのでしょうか!? リニアのように展開が伸びていく!!」

 

二人は相手へと突撃していき、シンプルな殴り合いになった。

 

キダリイ「この形態を見せるのは初めてなんだよね……。」

 

モエウタ「キダリイちゃんも、裏ある感じ? おもろ!」

 

観客C「口調をころころ変えても、それは小手先の個性だな。」

 

観客D「いや、おそらく人格が変わっている……。」

 

キダリイ「殴り合ってもいいけど、汚染されていくよ……? いいの……?」

 

モエウタ「ふうん? うちも『削れる』けど、なんか無事そうだね。じゃあ……やっちゃうか!!」

 

二人の殴り合いはまさに竜巻のようだった。武器無しでここまでの凄まじさを見せるのは難しい。

 

観客A「どうでもいいけど、ヤミヨロズの身体能力って人間の何倍だったか?」

 

観客B「平均値2.7倍ぐらいとされています。」

 

観客A「微妙だけど人間にとって絶望的すぎる……。」

 

戦闘している二人はなぜか疲れているようだった。無限のスタミナがあるはずなのにである。

 

モエウタ「ぜえ……ぜえ……おかしいな……。」

 

キダリイ「…………難しいね。使いこなせないよ……。」

 

モエウタ&キダリイ「宿主の体は!!!」

 

アーシエル「どういうことだ!? 宿主とは何だ!? この二人は何者かに乗っ取られているのかああああああああああああ!!?」

 

二人は押し黙った後、会釈をして会場の皆と対戦相手に自己紹介をした。

 

モエウタ「自己紹介です。私はミ=ゴと言います。モエウタさんの体に侵食している菌類…………まあ平たく言えばクトゥルフの神話生物です。」

 

キダリイ「私はミヤリ。いうなれば山梨で過去に虐殺されたミヤイリガイの怨念です。キダリイさんの体に乗り移っています。あとの解説はヨノバルさんがやってください。呼吸整えるので。」

 

ヨノバル「わ、わかりました……!!」

 

ヨノバル「彼女たちから預かっているプロフィールによりますと……。」

 

モエウタの住む静岡県掛川市は、クトゥルフ神話RPGに登場する七伏市と姉妹都市を結んでいる。ヤミヨロズの世界では「姉妹都市」は非常に強い意味を持ち、姉妹都市に住むヤミヨロズ同士は姉妹として扱われる。もちろん本人たちの意思は関係ないため、問題もよく起きるが「お姉さま」文化は都市同士でも成立するということである。とにかく掛川市はクトゥルフと姉妹なので、クトゥルフ関係の力を使えてもおかしくないのである。

 

そしてキダリイ。彼女の住んでいる山梨県笛吹市を流れる笛吹川流域はとある「地方病」が蔓延していた歴史がある。その名前は「日本住血吸虫」。寄生虫として山梨の人間を悩ませていたそれは、100年近い人々の戦いによって根絶された。そしてその犠牲は人ばかりではなかった。寄生虫の宿主とされたミヤイリガイは大量に殺害され、ほぼ絶滅したに等しかった。おそらくミヤイリガイの怨念がキダリイに何らかの理由で乗り移っていると考えられる。

 

ヨノバル「とりあえず私の口から言わないといけないことは、どれだけ屈強な肉体を持っていても、人格交代などで使い慣れていないと無駄にエネルギーを消耗してしまう、ということです!! ミ=ゴだろうがミヤイリガイだろうが本人以上に身体を使いこなせる人はいない!!」

 

モエウタ「これは痛いミスだったな!」

 

キダリイ「そういうこともあるよね……。」

 

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