ご当地伝奇百合カードバトル ヤミヨロズ・アーカイブ ―神々の相棒を探そう―   作:Linkscape

5 / 9
弱気な子が強気になるのはとてもゾクゾクするあれ

それからも試合は一方的だった。アキューのパンチがアズサを吹き飛ばす。体格はほぼ変わらないのに、パワー差が明らかだった。アズサは確かにクリーンヒットをぽちぽち出していたが、そうなると肉体のスペック差が顕著に出る。アキューのリードは広がるばかりだった。

 

アーシエル「アキュー選手、圧倒的です! アズサ選手は何もできておりませんが、その瞳の奥に何かを狙っているのを感じます!!」

 

ヨノバル「すみません、伝え忘れていましたがタップすればサレンダー可能です! 相手の了承もいりません! 無理ならサレンダーしていただいて大丈夫です!!」

 

アーシエル「しないということは、何か狙いがあるのかーーー!!?」

 

アズサはボコボコにされながらも立ち上がる。何かを狙っているのは明らかであり、アキューはそれが一番知りたいと思っていたことだった。

 

しかし、アズサが口を開く。

 

アズサ「なんでこんなことするんですか!? あなたが私を指名したのは、いたぶりたいからですか!?」

 

アズサ「私、こんなに弱いのに!!!」

 

アキューは気になっていた。目の前の少女はパワーでは圧倒的な差をつけている。このままでは自分が圧勝するのは目に見えている。そしてもう一つ……。

 

アキュー(そもそもそっちが指名してきたんじゃないのか? しかし可能性が『2つ』ある……。)

 

アキュー(自分の認識がおかしく、実際に自分が指名したのに、相手が指名したと思っている。もう一つはアズサが同様に認識がおかしい可能性。)

 

アキュー(待てよ!? もしかしてこういうことか!?)

 

アキューはヨノバルを見た。彼女は満面の笑みでこちらを見ていた。

 

アーシエル「膠着状態ですがおそらく迷っているのと思われます。アキュー選手の地元での評判は非常に悪いと言わざるを得ません。弱い女の子をいたぶったらさらに問題視されるでしょう。」

 

ヨノバル「そういえばアズサ選手も『いい子だが、地元を守るには弱すぎる』という評判ですね。」

 

アキュー(なるほどな。ゴエティア運営は両方に『相手からの挑戦状』を送っているという可能性か。あくまで可能性に過ぎないが……。)

 

アキュー「アズサさん。同じこと考えてるっすよね?」

 

アズサ「は、はい……。」

 

アキュー「ワタシからの挑戦を『受けた』のは確かっすよね?」

 

アズサ「そうですよ。でもゴエティアで殴られるなら、地元に殴りこまれて殴られるよりマシかなって……。」

 

アキューはどうやってこの状況を丸く収められるか考えていた。

 

アキュー(おそらく、何かあいつは持っている。なら少し考えないといけないが……。ワタシが僅差で勝てば、かなり盛り上がると思える。しかしこのままだと殴り勝ってしまう。あまり面白くないのかもしれない。なら……。)

 

アキュー「アズサさん。あなたは今までの試合、最強の武器を使わずに負けている。違うっすか?」

 

アズサ「いや、そんなことは……。」

 

アキュー「本当っすか?」

 

アズサ「…………はい。実はとっておきの隠し玉があるんですよ。」

 

アーシエル「おっと!? アズサ選手は何かを隠しているようだ!!」

 

ヨノバル「確かにこれまでアズサ選手に圧勝してきた選手たちも『何か舐めプされている気がする』と漏らしていました。その正体が本日明かされるのでしょうか?」

 

アズサ「舐めプと言われればその通りなんですが、普通に発動条件は秘密ですけどややこしいんです。」

 

アズサ「あと、それで勝っても意味がないと私は思っています。」

 

アキュー「うーん……。よくわかんないんすよね。それって『精神的敗北法』じゃないっすか?」

 

アズサ「え?」

 

アキュー「勝ったのに負けた扱いにして、それ楽しいっすか? 全力を出した方が、勝っても負けても楽しいと思うっすよ?」

 

アズサ「…………。正直。怖いんですよ。私弱いんで。」

 

アキュー「…………本人がそう思っているなら否定はしないっす。」

 

アズサ「私、隠し玉があるってずっと言われていて、それをいざ出して弱かったら、本当に『こいつはいじめて大丈夫だ』と思われる。そうすれば私ばかりか、私の街の妖怪たちにも被害が及ぶ。それが怖いんです。」

 

アキュー「んー……。同じ都下なんだから、言われれば助けに行くっすよ?」

 

アズサ「え……?」

 

アキュー「私たち、あきる野市と調布市で全然違うっすけど、さすがに同じ都下で『東京じゃないじゃんwwww』と煽られる立場っすからね。さすがに協力はできるっすよ。都下の治安荒らしてる奴守るのは当たり前じゃないっすか?」

 

アズサ「守ってくれるんですか? 特に私、たい焼きを渡すことしかできないですよ?」

 

アキュー「こうして戦ってるのも何かの縁だし、できる限りのことはするっすよ。だから……。」

 

アキュー「あなたの奥の手が見たい。それが強くても弱くても、気になっているっす。」

 

観客「これもう愛の告白だろ!!!!!!」

 

アキュー「違うっす!!!!!!!!!」

 

アズサ「では……それが嘘じゃないか! もう一度言ってもらえますか!?」

 

アキュー「いいっすよ。」

 

アズサ「私の『目を見て』それは言えますか!?」

 

アズサが力強いまなざしでアキューを見つめる。

 

アキュー「言えるっすよ? 別に挑まれたからやってるだけで、あなたを必要以上に傷つける意思はないっす。」

 

アキューはアズサの眼をじっと見た。

 

アキュー(結構かわいい顔してるな……確かにいたぶりたい奴が結構いるのはわかる。弱弱しくて嗜虐欲をそそる顔をしている気がするが、確かなことは言えな―――)

 

その瞬間、アキューは崩れ落ちた。

 

アキュー「なん……で…………!?」

 

身体の自由が効かない。アズサは笑いながら言った。しかしその笑顔には、明らかに虚勢が含まれていた。

 

アズサ「おめでとう、あなたの勝ちよ。 でも命は私がいただくわ。」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。