ご当地伝奇百合カードバトル ヤミヨロズ・アーカイブ ―神々の相棒を探そう― 作:Linkscape
それからも試合は一方的だった。アキューのパンチがアズサを吹き飛ばす。体格はほぼ変わらないのに、パワー差が明らかだった。アズサは確かにクリーンヒットをぽちぽち出していたが、そうなると肉体のスペック差が顕著に出る。アキューのリードは広がるばかりだった。
アーシエル「アキュー選手、圧倒的です! アズサ選手は何もできておりませんが、その瞳の奥に何かを狙っているのを感じます!!」
ヨノバル「すみません、伝え忘れていましたがタップすればサレンダー可能です! 相手の了承もいりません! 無理ならサレンダーしていただいて大丈夫です!!」
アーシエル「しないということは、何か狙いがあるのかーーー!!?」
アズサはボコボコにされながらも立ち上がる。何かを狙っているのは明らかであり、アキューはそれが一番知りたいと思っていたことだった。
しかし、アズサが口を開く。
アズサ「なんでこんなことするんですか!? あなたが私を指名したのは、いたぶりたいからですか!?」
アズサ「私、こんなに弱いのに!!!」
アキューは気になっていた。目の前の少女はパワーでは圧倒的な差をつけている。このままでは自分が圧勝するのは目に見えている。そしてもう一つ……。
アキュー(そもそもそっちが指名してきたんじゃないのか? しかし可能性が『2つ』ある……。)
アキュー(自分の認識がおかしく、実際に自分が指名したのに、相手が指名したと思っている。もう一つはアズサが同様に認識がおかしい可能性。)
アキュー(待てよ!? もしかしてこういうことか!?)
アキューはヨノバルを見た。彼女は満面の笑みでこちらを見ていた。
アーシエル「膠着状態ですがおそらく迷っているのと思われます。アキュー選手の地元での評判は非常に悪いと言わざるを得ません。弱い女の子をいたぶったらさらに問題視されるでしょう。」
ヨノバル「そういえばアズサ選手も『いい子だが、地元を守るには弱すぎる』という評判ですね。」
アキュー(なるほどな。ゴエティア運営は両方に『相手からの挑戦状』を送っているという可能性か。あくまで可能性に過ぎないが……。)
アキュー「アズサさん。同じこと考えてるっすよね?」
アズサ「は、はい……。」
アキュー「ワタシからの挑戦を『受けた』のは確かっすよね?」
アズサ「そうですよ。でもゴエティアで殴られるなら、地元に殴りこまれて殴られるよりマシかなって……。」
アキューはどうやってこの状況を丸く収められるか考えていた。
アキュー(おそらく、何かあいつは持っている。なら少し考えないといけないが……。ワタシが僅差で勝てば、かなり盛り上がると思える。しかしこのままだと殴り勝ってしまう。あまり面白くないのかもしれない。なら……。)
アキュー「アズサさん。あなたは今までの試合、最強の武器を使わずに負けている。違うっすか?」
アズサ「いや、そんなことは……。」
アキュー「本当っすか?」
アズサ「…………はい。実はとっておきの隠し玉があるんですよ。」
アーシエル「おっと!? アズサ選手は何かを隠しているようだ!!」
ヨノバル「確かにこれまでアズサ選手に圧勝してきた選手たちも『何か舐めプされている気がする』と漏らしていました。その正体が本日明かされるのでしょうか?」
アズサ「舐めプと言われればその通りなんですが、普通に発動条件は秘密ですけどややこしいんです。」
アズサ「あと、それで勝っても意味がないと私は思っています。」
アキュー「うーん……。よくわかんないんすよね。それって『精神的敗北法』じゃないっすか?」
アズサ「え?」
アキュー「勝ったのに負けた扱いにして、それ楽しいっすか? 全力を出した方が、勝っても負けても楽しいと思うっすよ?」
アズサ「…………。正直。怖いんですよ。私弱いんで。」
アキュー「…………本人がそう思っているなら否定はしないっす。」
アズサ「私、隠し玉があるってずっと言われていて、それをいざ出して弱かったら、本当に『こいつはいじめて大丈夫だ』と思われる。そうすれば私ばかりか、私の街の妖怪たちにも被害が及ぶ。それが怖いんです。」
アキュー「んー……。同じ都下なんだから、言われれば助けに行くっすよ?」
アズサ「え……?」
アキュー「私たち、あきる野市と調布市で全然違うっすけど、さすがに同じ都下で『東京じゃないじゃんwwww』と煽られる立場っすからね。さすがに協力はできるっすよ。都下の治安荒らしてる奴守るのは当たり前じゃないっすか?」
アズサ「守ってくれるんですか? 特に私、たい焼きを渡すことしかできないですよ?」
アキュー「こうして戦ってるのも何かの縁だし、できる限りのことはするっすよ。だから……。」
アキュー「あなたの奥の手が見たい。それが強くても弱くても、気になっているっす。」
観客「これもう愛の告白だろ!!!!!!」
アキュー「違うっす!!!!!!!!!」
アズサ「では……それが嘘じゃないか! もう一度言ってもらえますか!?」
アキュー「いいっすよ。」
アズサ「私の『目を見て』それは言えますか!?」
アズサが力強いまなざしでアキューを見つめる。
アキュー「言えるっすよ? 別に挑まれたからやってるだけで、あなたを必要以上に傷つける意思はないっす。」
アキューはアズサの眼をじっと見た。
アキュー(結構かわいい顔してるな……確かにいたぶりたい奴が結構いるのはわかる。弱弱しくて嗜虐欲をそそる顔をしている気がするが、確かなことは言えな―――)
その瞬間、アキューは崩れ落ちた。
アキュー「なん……で…………!?」
身体の自由が効かない。アズサは笑いながら言った。しかしその笑顔には、明らかに虚勢が含まれていた。
アズサ「おめでとう、あなたの勝ちよ。 でも命は私がいただくわ。」