ご当地伝奇百合カードバトル ヤミヨロズ・アーカイブ ―神々の相棒を探そう― 作:Linkscape
膠着する試合。非常に気まずい空気が流れる……。
イヌネル「もういいです、時間停止します!!」
観客「どういうことだ!?」
時間停止し、そこで動く—————犬系キャラが使える最終兵器である。
時間に反応するティンダロスの猟犬と、時間停止系アダルトビデオの中の、1割の本物の中から『動ける犬』を見つけ、交配させる。そうしてできた『最強の雑種』は時間停止能力を持つことになった。
イヌネル「ありがとう……。問題は、これどうするかなんですよね……。」
時間停止して、ナイフをぐさぐさ刺して解除できれば勝てるのだが、あいにくこの時間停止中でナイフなどは刺さらない。理由は単純。血統にアダルトビデオ産の犬がいるからである。刺して殺したらグロビデオになってしまう。
イヌネルは考えあぐねていた。この状況で勝つのは難しい。でも……。
イヌネル「普通に大好きな相手がいるんだから、エロいことすればいいのでは?」
おねロリが始まろうとしていた……。
イヌネル「じゃあ、撮影しようかな……。今日は純愛ものだ!!」
***
時間停止が解除されたとき、イヌネルは会場にいなかった。
観客「逃げた?」
チャバシラ「どこ行った!? イヌネルちゃん!?」
どよめく観客席。しかし会場モニターが切り替わり、イヌネルが映し出される。
イヌネル「聞いてください。みなさん。これはあらかじめ撮影された映像です。私は時間停止ができるのですが、この撮影時は時間停止中です。」
映像の中でチャバシラが固まっている。時間が停止していることは明白だった。
イヌネル「私はこれが解除されたときは恥ずかしくていなくなっているので、逃げた私の負けと言うことで大丈夫です。しかし……勝負には勝っています。」
観客A「どういうことだ!?」
イヌネル「私の身の上を話す必要があります。あれは、1990年代のペットショップでの出来事でした。」
イヌネル「私は近くのペットショップで犬を買ったりしていて、そこの店主と仲が良かったのですが、彼が殺人しているところを目撃してしまい……。」
イヌネル「口封じにボディを透明にされたんです。」
イヌネルはゴムマスクと服を脱いだ。そこには彼女は移っていなかった。彼女は特殊な薬品で透明にされた、透明人間だったのだ。
話し手が映らないまま、配信は続く。
イヌネル「透明になった私は裸で過ごすしかありませんでした。誰からも気にされない、透明な日々。精神がおかしくなりそうでした……。」
イヌネル「しかしある日、チャバシラさんの配信を見つけたんです。犬を熱中症で死なせてしまったが反省しない飼い主の話でした。彼女は『これはいけない!!』と熱弁していました。」
イヌネル「だから私は透明人間を利用して、その人に『怪奇現象』を見せたんです。死んだ犬が化けて出たかのように……。」
イヌネル「こういうことを繰り返しているうちに、チャバシラさんの配信は『炎上すると幽霊に取りつかれる』と話題になって、人気になっていきました。そして私も『悪に鉄槌を下す幽霊』と言われて、やっと形を得た気持ちになりました……。」
チャバシラ「そうだったね……そして私は……。」
イヌネル「チャバシラさんは読者プレゼントと称して、ゴムマスクのプレゼント企画をしました。そもそもゴムマスクは一般人にとって必要ないし、個人情報ばらまく奴に、住所を教える奴はいない。だから私だけが応募して、私がゴムマスクをもらいました。」
アーシエル「おおっと!? チャバシラはイヌネルの恩人だったのかあああああああああああああああ!!!!」
ヨノバル「いや、今は実況しなくてよくなくない?」
イヌネル「形を得た私は、犬を使ってチャバシラさんの『執行役』になりました。チャバシラさんは私の顔を知らなかったけど……それでも名実ともに私は形を得たのがうれしかった! 透明人間が有名人になれた!! だから……本当にチャバシラさんには感謝してもしきれない……!!」
チャバシラ「透明ねえ……。」
チャバシラ「私も昔は人気者になりたかった。宇宙一の人気者に。宇宙に行くための金も欲しかったけど……。文福茶釜を使う才能しかなかった。だから手を染めてしまったけど……。」
チャバシラ「それで救えた人も確かに、いたんだね……!」
イヌネル「という訳で、これは前半です!! 飛ばされるやつです!! これは透明なのでわかりにくいですが!! 透明人間×時間停止のアダルトビデオです!!」
数秒画面が動かない。そしてそのままビデオは終了した。
観客「ん? 何が起こったんだ?」
観客C「くだらん。動画内のチャバシラの位置は完全に今と同じだから、何も触ってないだろう。18禁になるからな。表現の限界か……。」
観客たちは思っていた。「別に何も起こっていない」と。
ところで観客席には、前の戦いで『決着で唇を奪われたもの』と『奪ったもの』が座っていた。
ジャスカ「どうですか? 『ソムリエ』の意見として。」
マヤ「固定カメラは様々なプレイをしたり、時間経過を描写することでエロさを出す手法ですので……。」
マヤ「時間停止しているなら全く意味をなさない手法です。まだまだと言ったところでしょうか。」
マヤ「キスだけしかしないなら、なおさらです。」
ジャスカ「時間停止中でも撮影できるカメラの宣伝としては満点ですね。」
マヤは分かっていた。
そして、チャバシラも――――――――――――
チャバシラ「え、私見せしめでちゅーされたの? 時間停止で?」
キュイイイイイイイイイイイイイイイという音が聞こえる……。
観客A「これはまさか、『文福茶釜の産声』か!?」
観客B「なんですかそれは!?」
観客A「ゴエティアでは間欠泉や水蒸気爆発を使う奴が多々いるが……。それにはすべて前兆がある。やかんでお湯が沸くときのような音だ……。」
観客B「なるほど!?」
観客A「そしてこれが聞こえるということは……。」
チャバシラ「はずかしいいいいいいいいいい~~~~~~~~!!!」
キュイイイイイイイイイイイイイイイ。お湯が沸く音がする。そして―――
ドカアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!
水蒸気爆発が起こった!!! チャバシラの、意味のない奥の手である!
アーシエル「すさまじい爆発です!!! しかしもう決着はついています!!」
ヨノバル「試合放棄をしたイヌネル選手の敗北ですが、チャバシラ選手は試合に勝って勝負に負けたパターンとなってしまいました!!!」
チャバシラ「うう……うう…………。イヌネルちゃん……そんなに私のことを……。」
ヨノバル「これにて本日の試合は全て終了です!! ご覧いただきありがとうございました!!」