幼馴染の一人が【泥棒猫】にジョブチェンジしてから、俺の青春が修羅場ってる 作:古野ジョン
「秋乃、今度パフェでも食べに行かないか?」
「え、嫌だけど」
話が五秒で終わってしまった。体育館の端っこにて、バドミントンの授業の合間を縫って秋乃の隣に座ってみたのだが――にべもなし。
「それよりあんたはなんで制服なの。また見学?」
「うん。まあ、分かるだろ」
「あっそ」
運動着姿の秋乃は体育座りをしたまま、コートでシャトルを打ち合うクラスメイトたちをぼーっと眺めていた。心なしか、元気がないようにも見える。
「それでさ、夏のパフェってどういうのなんだろうな? スイカ? メロン?」
「話聞いてた?」
「スイカのパフェってあんま見たことないよな。でも真っ赤で綺麗そうだし」
「パフェなんて今どき千円くらいするでしょ。嫌よ、あんたらと違ってそんなにお金ないし」
秋乃は淡々と答えた。本当に興味がないのか、それともこちらの意図が分かっているということなのか。
「それがさ、商品券を貰ったんだよ。俺だけじゃ使いきれなくて」
「冬雪さんと千夏にプレゼントでも買ってあげなさいよ。喜ぶわよ」
「お前だけ仲間外れに出来ないだろ。いいから食べに行こうぜ」
「……あんたこそ、なんで私なのよ」
しつこく誘ったおかげか、初めて秋乃がこちらを向いてくれた。訝しむような視線を俺に突き刺し、警戒感を露わにしている。
「お前と話がしたいんだ。せっかくなら甘いもんも食べたいし」
「冬雪さんのことなら放っておいて。あんたには関係ない」
「今更関係ないは無理だって。一緒に風呂に入った仲なのに」
「あっ、あんたとは入ってないわよ!」
秋乃が初めて声を張り上げた。しかしすぐにクラスメイトたちの掛け声にかき消されてしまったので、誰も俺たちに視線を向けることはない。
「なんだ、元気じゃん」
「元気って……あんたが変なこと言うからでしょ!」
「やっぱり秋乃に泣き顔は似合わないよ。昨日は悪かった」
「あんたに言われるとなんか腹立つ。何も分かってないくせに」
「何も分かってないって、勝手に『裏協定』なんか決めてたのはお前らじゃんか」
「ッ! ……それは、悪かったわよ」
どうやらそこを突かれると痛いらしい。別に怒りはしないけど、何年も自分の知らない決め事があったってのは驚きではあるからな。
「だからさ、パフェくらい付き合ってくれよ。秋乃も甘いの好きだろ?」
「行くのはいいんだけど、あんたと二人ってのが」
「……」
「なんで黙るの」
「ほら、呼ばれてるぞ。女子は集まって試合するって」
「わっ、分かったわよ! いちいちうっさい!」
秋乃は嫌そうな顔をしながら、ラケットを片手に駆け出していった。とりあえず第一段階はクリアだな。
ゆっくりと立ち上がってから、俺は秋乃のいるコートの方に顔を向けたのだった。