転生した先は少し不思議な世界でした。   作:ひみつ道具職人

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どうしようこれ…

 

 

 

 

 とてつもない衝撃が俺の体を襲った。

 恐怖で体が硬直していた俺はなすすべもなく吹き飛ばされ、廊下の壁にたたきつけられた。

 くッ⁉一体何が起きたんだ?……いや、さっきのドカンという声はまさか…

 

 

 

 「大丈夫ッ⁉2人とも!」

 

 

 俺があまりの衝撃で動けないでいると、窓からドラえもんが飛び込んできた。

 おそらく窓の外から状況を察したドラえもんが、とっさに空気砲を撃って助けてくれたのだろう。

 

 

 

 「おやおや、せっかく盛り上がっているところに邪魔が入ってしまったな。」(まさかこのタイミングで子守り用ロボットが乱入してくるとは…。ガキ1人の始末に時間をかけすぎたか)

 

 

 黒マスクはそう言って、何事もなかったかのように平然としていた。

 一応不意打ちで空気法を食らってたハズだけど、ピンピンしてやがる……ッ。

 

 

「大切な商談中なんだよ。邪魔をしないでくれないか?」

 

 

「お前は何者なん……⁉…その恰好、まさか…」

 

 

「ほう…気づいたか。さすが22世紀から来ただけはあるな。タヌキ型ロボット君」

 

 

「僕はタヌキじゃないッ!未来人がなんでこんなところにッ⁉」

 

 

 そういって黒マスクを問い詰めるドラえもん。

 

 

「こいつッ!ピー助を狙ってるッ!」

 

「⁉なんだって!」

 

 

 そうのび太から聞かされたドラえもんは驚きを露わにした。そして空気砲を構えなおすと、黒マスクに照準を向けた。

 

 

「おいおい、そんな言い方は語弊があるよのび太君…。私はただ、公正な取引に来たんだ。」

 

 

 そういって飄々とした態度で佇む黒マスクの男。

 

 

「だがまあ、こちらとしても騒ぎを大きくするつもりはない。今日のところは引き上げさせてもらうよ。」

 

 

 そういった黒マスクは、空間に空いた裂け目、おそらくタイムマシンの入口に入り、去っていった…。

 

「ピー助は諦めないよ…」

 

 

 最後にそう言い残して言い残して…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?ここ、のび太の部屋…?」

 

 

「あ、起きた」

 

 

 目を開けると、そこは自分の部屋ではなくのび太の部屋だった。

 なんでのび太の部屋に…。…ああそうか、のび太にプリントを届けに来たら恐竜ハンターと鉢合わせたんだ。状況から察するに、その後気絶してしまったらしい。

 

 

「大丈夫?守」

 

「ああ、大丈夫。身体に異常はないよ」

 

「ほんと!?よかったぁぁ~」

 

 

 俺がよほど心配だったのか、無傷だと分かった途端そういい脱力するのび太。

 …ん?俺が気絶していて、その間2人が付いていてくれたってことは……ッ⁉ヤバイッ!

 

「なあドラえもん!。俺はどのくらい寝てたんだ!?」

 

「いま6時だから、2時間半くらいかな」

 

 

 6時だとッ⁉ヤバイ、もうすぐ公園でピー助の捜索が開始されてしまう。おまけに先ほどあんなことがあったからか、公園のことについて2人はすっかり頭から抜け落ちているらしい。早くピー助を助けに行かなければ。

 だがピー助のことを知らない俺がそんなことを言いだすのは不自然だ。何とかそれとなく2人に思い出させなければ。

 

 

「そういえば……」

 

「ん?どうしたの?」

 

「ああいや、そういえばニュースで7時から公園の池が捜索されるって言ってたのを思い出して」

 

「公園……?…ッ!?ああ!」

 

「そうだ!?ピー助!」

 

 よしッ!思い出してくれたようだ。

 

「近頃公園の池に怪獣が棲みついてるってもっぱらの噂だからね。それがいよいよ解明されるって思うとワクワクするよ。まあまずありえないと思うけどね」

 

「そ、そうだね。そんなことあり得ないよね。アハハ…

  と、ところで、僕とのび太君は急用を思い出したから出かけてくるよ」

 

 

「そう。わかった。じゃあ俺は家に帰ってるよ」

 

 

 思わぬトラブルがあったけど、俺は今回は介入しないって決めたからな。部外者は素直に引っ込んでいるべきだ。これ以上本筋からそれるのも困るし。

 

 

「ちょっと待って」

 

 

 そう思って帰ろうとしたとき、ドラえもんが呼び止めてくる。

 …?なんだ?

 

「なに?」

 

 

「……ここにいた方がいい」

 

 

「?なんで?」

 

 

 ドラえもんにここにいるように言われるが、俺はその意図がわからず思わず聞き返す。

 もうあんまり本筋に関わるのはごめん被るんだけどな……。なんでそんなこと……ッ!?…そうか、そういうことか。

 

 

「…あの黒マスクの男がまた狙ってくるから?」

 

 

「そうだ。僕やのび太君ならともかく、君は目撃者であり完全な部外者だ。あいつがもし時間犯罪者なら、君の口を封じに来る可能性が高い」

 

 

 そういうことか…。確かに言われてみればそうだな…。

 俺の安全を考えた場合、ドラえもんの言うとおりにした方がいいだろう。というかそうしなければ俺は死ぬ。

 だがその場合、俺は恐竜ハンターが逮捕されるまでドラえもんに付きっ切りである必要がある。すなわち、本筋への介入を余儀なくされるのだ。

 いやまあもうそれしか選択肢はないわけだし、腹を括るしかないけど……。

 

 

「はぁ~…。」

 

「何?どうしたの?」

 

「いや何でもない。うんそうだね、ドラえもんのいうとおりにするよ。」

 

 

 

 もう避けられない運命ならば、潔く受け入れるしかない。

 

 けど…。一発目ぼ敵が恐竜ハンターとは、冷静に考えればかなりのハードモードだな。

 ドラえもんに登場する敵キャラや異なる文明の技術水準は、ざっくり言えば現代日本以上、22世紀以下であることがほとんどなのだ。つまり、ひみつ道具を適切に運用できれば最短でかつ犠牲なく終わらせることもできる。

 だがそれにも例外はある。……そう、未来人の存在だ。

 未来人の敵キャラは、皆明確にドラえもんのひみつ道具の性能を上回る武器や道具を持っている。ひみつ道具のアドバンテージがほとんど存在しないのだ。実際に未来人相手に、ひみつ道具の効果を無効化された描写もある。俺の人生において最大の難敵がこの未来人たちなのだ。

 おまけにこの後すぐ、のび太たちがピー助を白亜紀の海へ返しにタイムマシンに乗るが、そこでも恐竜ハンターは襲ってくる。つまりもう猶予がないのだ。

 俺という存在が旅路に同行する以上、完全に映画通りに事が進むとは思えない。ましてや恐竜ハンターが俺を狙ってくると考えられる以上、映画とは逸脱した流れになると考えていいだろう。

 

 どうするか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どれくらいかかりそう?」

 

「まだまだかかるよ。何せ1億年前だからね」

 

 

 

 

 現在、のび太とドラえもんと一緒にタイムマシンで現代へと向かっている。

 結局、対策らしい対策は思い浮かばなかった。一応備えはしてきたが……。

 

 

「ぴゅーい?」

 

「いいところに連れて行ってあげるからね。ピー助」

 

 

 ピー助については、2人が返ってきた後に説明された。

 こうしてピー助を生で見てみると、やっぱり果てしなく感動する。このあと待ち受けていることを知っているため気が滅入っているが、それでもあのピー助が目の前にいるという事実に俺は歓喜していた。本来ならもうちょっと触れ合ってみたいし、エサを上げたりもしてみたい。

 まあそれは後のお楽しみにとっておこう。そんなことを考えていると…

 

 

「?誰かくるよ?」

 

「え?まさかこんな超空間に…」

 

「そのまさかだよ。どんどん近づいて…」

 

 

 そうのび太が言う。

 !?ついに来たか…

 

 

「ッ!?あいつだ!黒マスクの男!」

 

 

「!?なんだってッ!?」

 

 

 ドラえもんも気づいたようだ。

 

 

「待ちなさい、のび太君。…待て。止まれぇぇッ!」

 

 

「逃げてぇッ!ドラえもん!」

 

 

 そういって追いかけてくる恐竜ハンター。ドラえもんも追いつかれないようにスピードを上げるが、機体の性能があちらの方が上であり、追いつかれてしまう。

 俺が介入したことで流れが変わり、ここでは襲ってこないんじゃないかとか考えていたけど、そううまくはいかないか…。

 

 

 だが、こういう時のために持ってきたのさッ!

 

 

「スモールライトッ!」

 

「!?なんでそれを…」

 

「あとで説明するッ!」

 

 

 そう、スペアポケットをねッ!

 あらかじめ戦闘に有効な道具があるかどうか確認し、すぐ取り出せるようにしておいた!

 スペアポケットはドラえもんのポケットとつながっている。だから、ドラえもんのポケットに入っていない道具はこっちにも入っていない。…それじゃあ持ってくる意味ないだろと思われるかもしれないが、ドラえもんはピンチになるとすぐにパニクり道具を出すのに時間がかかる。そんなドラえもんよりは、まだ俺の方が道具を有効に使える自身がある。

 …このまえどこでもドアを思いつかなかったやつが言えるセリフじゃないな…

 

 

「やはり反撃してくるか…。当然、こちらも想定済みだよ」

 

「だが私はツイているようだ。ピー助の奪取と君の始末、同時にこなせるなんて。無駄な手間がかからなく済んで感謝しているよ。」

 

 

 恐竜ハンターがそう言った後、タイムマシンを覆うようにバリアのようなものが展開された。スモールライトの光がバリアに阻まれて届かない。

 …やっぱり対策はしているな。だが俺の真の狙いはあいつ本体じゃない。

 

 

「フフ…。逃がさないぞ!」

 

 そういってタイムマシンから2本のアームを展開する黒マスク。

 ここだッ!

 

 

「スモールライトッ!」

 

 

 俺はアームへ照準を合わせ、スモールライトを照射した。アームはスモールライトの光に当てられ、どんどん小さくなっていく。

 よし!思った通りだ!タイムマシンを中心にバリアを展開しているのならば、アームにはスモールライトの光は届く。

 映画では、タイムマシンが壊された原因はこのアームの攻撃によるものだった。

 これで引いてくれればいいんだが…

 

 

「ほお。思っていたより知恵があるらしいな。お子様にしてはよくやったと褒めてヤロウ」

 

 

 そう言って恐竜ハンターはアームを格納すると、新たな武装を展開した。だが、こちらとしてもあれだけで終わるとは思っていない。

 …それに時間稼ぎは終了だ。

 

 ピーッ!ピーッ!ピーッ!

 

 

 

恐竜ハンターの頭上から、大きな目玉のついた丸いボールが複数出現した。

 

 

「チッ!監視エリアに入ったか。…いずれまた!」

 

 そう言って恐竜ハンターと目玉のついたボールは消えていった。

 そう、このシーンではピー助が奪われそうになるところでタイムパトロールのパトロールロボが出現し、恐竜ハンターは撤退せざるを得なくなるのだ。だからこの場面では、時間稼ぎに徹するだけでいいのだ。

 

 だがこれで、完全に映画の本筋から逸れてしまったことは間違いないだろう。なにせタイムマシンが故障していないのだ。このままピー助を日本まで送り届けることもできるだろうし、わざわざ歩いてアメリカから日本まで向かう必要もなくなる。

 ピー助を故郷に返すという点で見ればこれでいいんだけど、このままだと恐竜ハンターが捕まらないんだよな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一面に霧が立ち込めている。あたりには見たことないような植物が生い茂り、その反対方面には青い空と海が果てしなく広がっている。どうやらここはビーチのようだ。

 …白亜紀の世界か。人間が生まれるよりはるか以前の時代。いま俺は、その大地に立っているんだ。なんかこう、感動するというか、感無量というか、とにかく言葉で言い表せない気持ちだ。

 

 

「ここが日本なの?」

 

「いや、この時代は日本列島はまだできてないから、近くの島に降りたんだ」

 

「なるほど。確かにいきなり足場がないところで出たら大変だもんな」

 

「そういうこと」

 

 

 俺がドラえもんからそう説明されている間、のび太とピー助はまっすぐ海を見ている。…ピー助としてはやっぱり感じ入るものがあるんだろうか。

 

 

「…ピー助。ここが、お前の世界なんだよ…」

 

「ここで…ッ。ここで…幸せに暮らすんだよ」

 

 

 そう言ってタイムマシンの入り口に向かうのび太。すると、

 

 

「ぴゅーい!」

 

 

 ピー助が付いてきた。のび太はそんなピー助を拒絶し、向こうに行くように言い聞かせている。

 …不謹慎かもしれないが、この感動的なシーンに居合わせることができたのは幸運だった。当初の俺の方針のままだったら、今俺はこの場にいない。その点はケガの功名というべきかな。

 

 

「行こう、ドラえもん…」

 

 

 そう言ってピー助~離れていくのび太。その後、タイムマシンの入り口が閉じきるまで、ピー助はのび太を呼んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後現代に帰ってきて、俺はのび太の家で止まることになった。さすがにのび太の部屋に2人は狭いということで、壁紙ハウスを使わせてもらっている。ちなみにスペアポケットは事情を説明した後、ちゃんと返した。

 あの黒マスクはどうする?とドラえもんに尋ねたが、明日タイムパトロール本部まで行き相談し、対策を講じてもらうとのことだ。

 

 …当面の問題は、恐竜ハンターをどうするかだ。ピー助は映画通り無事に白亜紀の日本へ送り届けたが、恐竜ハンターも、依頼人のドルマンスタインも捕まっていない。このままこちらから動かなければなにも解決しないだろう。タイムパトロールだけでは、その2人を逮捕するのは難しいだろうし、放置した結果身の回りに危害が及んだり、他の映画のストーリーなどに影響する可能性もある。

 …まあすべては明日タイムパトロールへ行ってから考えよう。話はそれからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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