地球、それは廻り舞台だ。
生命、非生命、果ては神格まで、ありとあらゆるものが舞台で懸命に自身に与えられた役を演じている。
しかし、どんなものにも終わりというものは訪れる。
"この地球"の場合それは唐突に、そして酷く理不尽に訪れた。
世界の"崩壊"は色んな要因が絡み合って起きた。地球の外から化け物どもが攻め込んできたり、逆に地球の内側、海底の地獄の釜から巨人族だか何だか知らないが化け物どもが沸いて出てきたりもした。
どこぞのカルト教団がどさくさ紛れにロシアから持ち出した生物を醜い肉の化け物に変えるウィルスを放ったお陰で阿鼻叫喚の地獄が造られた。
挙句の果てには都市伝説だった筈のビッグフットまでもが参戦した。
それも馬鹿みたいに強い。
だがコイツらは普通の攻撃が(効くかどうかは置いておいて)当たるだけまだ良い。
人類の火が効かない奴だってわんさかいた。指一本も動かさず百戦錬磨の精鋭を殺せる奴を数えるのには両手の指を後何本か増やす必要がある。
大戦争が起きた、教科書や映画で見た第一次世界大戦、第二次世界大戦なんていうのはお茶会のようにも思えた。実際に当時を生き抜いた奴らがそう言っていた。
人類、化け物、神、カルト…皆が地球の所有権を訴え、奪われまいと戦いに参加した。
それとは関係なく、騒ぎに乗じて収容から脱して暴れ回った奴もいたが…
その戦争も先程終結した。
突如として地球が花で包まれたのだ。
地球上の全ての生命には24時間の束の間の平穏が与えられた。
実の所、世界の"崩壊"と世界の"終わり"、この2つは全く無関係だった。
あの戦いの全ては無意味だったとでも言うように。
ある男は一面の花畑の上に大の字で寝ていた。
快適そのものだ、この辺りは血と硝煙の匂い、土煙の匂い、不快な匂いが支配していたはずだが今は久しく嗅いでいなかった花のいい匂いが鼻腔をくすぐっている。
男とその''息子達"も数時間前に"財団"から名誉退職を言い渡されたのだった。
最後に一度馬鹿騒ぎをやったがそれも終わってしまった。
あと2〜3時間ほどといったところだろうか?もう少しで全てが終わる。
これから何が起こるのか男は知らない。
何の所為で、何のために、何がこの世界を終わらせるのか、男は知らない。
ただ世界が終わるということは理解る。
これから何と戦えばいい?何に抗えばいい?男は自問自答の末に漠然ともはや無駄であることを悟った。男は敵を知らないのだ。
男は己の、人類の無力さに、不甲斐なさに、打ちひしがれていた。
そして、男の中に怒りが起こった、これから起こるはずの理不尽な破滅への怒りだ。
ふざけるな
俺たちが命を賭して戦ったのは何だったんだ!何の為にアイツらは死んでいったんだ!
全ての暴力性が大幅に低下している中で男は拳を振るわせ、唇を噛み締め、それを噛みちぎった。もはや八つ当たりだった、しかしこれが男なりに実行できた唯一の運命への抵抗だった。
「ばーか!滅びろ運命!」
幼稚だが男にはこう叫ぶことしかできなかった。
怒りに任せてポケットをまさぐる、男にまだ名前なんていう贅沢でまさに人間らしいモノがあった頃からの癖だ。
気が昂るとありもしないタバコを求めて、ついやってしまうのだ。
すると何かが指先に触れた。ある筈のないモノが在った。
葉巻だ。
いつだったか放棄されたどこぞのサイトで拾ったものだ。
銘柄も分からないが、この世界ではもはや何でも高級品だった。
丁度良い、正真正銘最後の一服と洒落込もうじゃないか。
キューバ産、それもハバナの葉巻だったら良いな…
最後にそんな我儘を願ってみる。だが、その願いは無慈悲にも叶えられなかった。
その代わり、その葉巻は今まで一度も吸ったことのない味がした。
数分後、驚くべきことが起きた。
葉巻が口から離れない…迂闊だったと顔を覆った。
最後の最後になんともまぁ馬鹿なことをやってしまった…我ながらなんて無様なんだ、情け無い…
男は苦笑した。自分の間抜けさに、最後だからまぁいいかと開き直れたことに。
とりあえず最後まで吸いきることにした。
どうなるのだろうか?ここまで来ると好奇心があった。
異常な方法を用いて身体から触手を生やし、その先端に目を付けた。
これで全身を観察できる。
その目にはもはや服とは呼べない、オレンジ色のボロを纏った男が映っていた。
葉巻の燃焼部が唇へと到達する。
すると男の口が葉巻と同様に燃焼し、どんどん灰になっていくではないか。
熱さも、痛みも、自身の身体が灰になっていくというのに恐怖心も感じない。これがこの葉巻の異常性なのか、己が世界の終わりという状況で精神がおかしくなってしまっているのか、男には分からなかった。
参った。これでは世界と自分、どっちが先に消えるかの競争になってしまうじゃないか。
男は笑った。何故笑っているのかは誰にも分からない。
人は時々、意味も分からず笑うものだからだ。
もしかしたら、最期に地球という巨大な競争相手を見つけたからかもしれない。
間も無く終焉が訪れた。
どっちが勝ったのかはこの際誰にも分からない。
どちらにせよ男の存在も消える…筈だった。
その男は未だ朧げな意識の中で、
産声を上げた。
女の笑い声がする。
廻り続けろ、新しい舞台で。
舞台を廻せ。
楽しませろ
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某所
「ふぁぁーよく寝たぁ」
カーテンの隙間から差し込む陽光を浴びて、伸びをしながら少年は目を覚ました。
「月曜の朝にしては良い朝だな…」
少年はふと壁に掛けてある時計に目をやった。
「なんだもう10時か、通りで目覚めが良い訳だぜ。」
完全に遅刻である。
だが少年は焦る素振りを一つも見せない。シャワーで寝ている間にかいた汗を流し、ワックスで髪を整える。冷蔵庫を開け、スパークリングワインに手を伸ばしそうになるのをぐっと堪えてジャムを取り出し、パンに塗り、齧り付いた。
眠気覚ましに淹れたコーヒーが身体に沁みる。
スマホで世界の情勢を探る、何処かに前の世界のような異常の欠片が存在しないかと、その異常をひた隠しにする存在の気配がないかと。
かれこれ数年続けているが未だ見つからない。
"財団"の様な存在が裏で活躍しているのか、はたまたどこかで聞いたポータルの先の世界のように異常すらこちらには存在しないのか…
絶対に後者の方がいい、少年はそう願った。
「今から行けば3限の途中か、4限の授業も出なくてまだ問題はないが…アレをからかいに行ってやるか」
少年はぐいとコーヒーを飲み干し、家を出た。
全身に当たる陽光が暖かい。
清々しい朝だ。
まるで機関車のように紙タバコの紫煙を立ち昇らせながら往く。
もう誰にも縛られない自由な世界を、非異常のありふれた世界を、男は闊歩していた。
あーあ、財団世界滅んじゃったよ
タイトル: SCP-2501-JP - 廻り舞台
著者: kyougoku08
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タイトル: SCP-2846 -大イカと船乗り
著者: djkaktus
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タイトル:SCP-1000-ビッグフット
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タイトル: リリーの提言 - うつくしい世界へ
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タイトル: SCP-2624-JP - 延命の灰-エクステンドアッシュ -
著者: Tsukiyomizuku
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