異世界短編集   作:砂岩改(やや復活)

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とある騎士団長の話

 

 ルベリエ王国第一騎士団の騎士団長の肩書きはルベリエの頂点に立つ騎士に贈られるものだ。

 第一騎士団は精鋭中の精鋭であり、常に最前線に立ち、撤退時には殿を勤める最も過酷で、栄誉ある騎士団。

 

 その騎士団長《ルメリネ・ファームルス》は真っ赤な赤髪が特徴の美しき女騎士団長。

 齢35とは思えぬ美貌を持ち、剣士として頂点に立ち続ける人物、彼女は剣の腕だけでなく、騎士団改革と呼ばれる腐敗していた騎士団を改革した人物としても有名であり、王族から誰よりも信頼されていると言っても過言ではなかった。

 

「……」

 

 そんな栄光の極み等言われるルメリネは騎士団長室で1人、酒を飲んでいた。

 騎士団長の部屋に相応しい豪華な家具で設えられた部屋に囲まれた彼女は密かにため息をつく。

 最近は特に酒量が増えてしまい、酒で無理矢理寝ていると言うのが現実であった。

 

 昔、ルメリネは剣だけでなく酒も強いと言われていたがほとんどがやけ酒なのは誰も知らないだろう。

 

「ルネール…」

 

 齢35とは完全に行き遅れの年齢であり、ルメリネは人生を全て剣と騎士団に捧げたと言われているがそれは違う。

 むしろ、15の頃には結婚し子供もいたのは古参メンバーしか知らない話だ。

 

「過去が私を追いかけてきたのか…いや、来るべき時が来てしまったのか」

 

 酒量の増加の理由はその子供の事であった。

 

 彼女が子供を授かったのは騎士団に入って間もなくの時であった。

 彼女は産まれたばかりの我が子を夫に預け、すぐさま騎士団に復帰、武功を立て続けた。

 夫に子供の事を全て任せ、騎士団から渡される莫大な給金を渡しては魔物や敵を斬る日々、だがルメリネ自身にとって決して子供と夫を無下にしているつもりはなかった。

 むしろ、家で待つ家族がいるからこそ者無二に戦い、勉学に励み、研鑽を続けていた。

 

「離婚しよう」

 

 そう言われたのは子供が5歳ぐらいの頃だったか…。

 

「な、何故だ。給金は十分に渡しているはずだ!ルネールも成長したからな、足りないのだろうか?私も節制するからもう少し待って」

 

「違うんだよ!」

 

 初めて聴いた夫の大声にルメリネは黙る。

 

「お金の事は凄く感謝している、でもルネールが君の事を…顔を覚えていないんだよ…」

 

 泣き崩れる夫を慌てて支え、椅子に座らせれば流石に起きてきたのだろうルネールが駆け寄ってくる。

 

「す、すまない。今はパパとママの…」

 

「パパを苛めないで!」

 

「……いや、あの…」

 

 当時、副団長として名を馳せていたルメリネは5歳の息子になにも言えずに、ただ一言

 

「ごめんなさい」

 

 そう言って家を出ることしか出来なかった。もうこの家には帰れないと思いながら外から家を見つめているとふと気がついた。

 家から持っていくべき荷物が一つもないことに気がついたルメリネは茫然自失となり、帰り道の酒場で飲み潰れ、ケンカをして同期の騎士に回収されたらしいがその事はあまり覚えていない。

 

ーー

 

それから10年経った頃、息子とは顔を一度も合わさずに時が過ぎ、自身が懇願し、夫に支援金を贈り続けていたが手紙でルネールは一人立ちしたのでもう要らないと連絡があった。

 

「ルネール・フォーターです!」

 

 そんな時、毎年依頼される騎士訓練学校の入学式で祝辞を言うために訪れた時、彼女は腰を抜かす思いをした。

 訓練学校の首席として真っ赤な赤髪をした息子が名乗りを挙げていたからだ。

 

 

 

 

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