ルベリエ王国の王都、その一角に彼の工房兼販売店がある。店と言っても店舗に人が来ることはほとんどない、1階の奥にある工房に居ることがほとんどであるが仕事がないわけではない。
彼はこの世界で唯一と言っても良いほどの人形技師であったからだ。
人形と言われて皆さんはどんなものを想像するだろうか。幼子が遊ぶ可愛いぬいぐるみや手のひらサイズの人を模した物等が想像されるだろうが彼の作っている人形とはすこし違う。
彼の作り出す人形は本物の人間のように見えるほど精巧に作られた物だ。かなりの存在感を持つ人形たちを生み出すことが彼の技術であり、唯一の才能とも言うべき物であった。
「レクト!」
店のドアが開かれ、そこに備え付けられたベルがけたたましく鳴ると共に青年の名が呼ばれる。
「フェーレ、ドアが壊れる」
フェーレと呼ばれた同い年の少女は慣れた手付きで店の椅子に座ると食事を広げる。騎士団で貰ってきたサンドイッチを食べながら置いてあったティーポットの紅茶を飲む。
「人形は繊細なんだ、君と違って」
「酷いな、私だって1人の女性として傷ついてしまうぞ。特に君に言われるとね」
二人分のサンドイッチを見てレクトは遠慮なく食べるとフェーレがティーカップを渡してくる。
「失礼、勇者様も人間でいらしたものですね」
「勇者なんて…農民の慰めみたいな肩書きに意味はないよ。それより、祭りには行けるんだろうね?」
「祭りの御披露目ために作ってるんだ。今度は仕事を言い訳にしない」
「国母たる女王陛下を象った人形か…本当に出世したな」
二人とも辺境の田舎村の出身の身分であったが18にもなって王都で暮らしているのは想像もしなかっただろう。泣き虫だったフェーレを励ますために人形劇が身を立てる手段になるなんて思ってもなかった。
「宝石は?」
「店に置いてあるわけないだろう。装飾は城内の部屋を貸して貰う予定だよ」
権力者は全てを手にすることが出来る。金銀財宝が山のようにあると考え出すのは権力の象徴を生み出すことだ。
歴史を振り替えれば大きな絵画や銅像等々、枚挙にいとまがないだろう。
そしてその権力の象徴として今度選ばれたのがレクトの人形と言うわけだ。
全身に装飾される予定の宝石だけでも目が眩むような額になる。ある種の国営事業なため給与も待遇も抜群だ。
貴族相手に同じことをしてきてこうして王都に店を構える程になったがここまで来るとは。
「このまま城お抱えの人形士になったり?」
「なんとも言えない気持ちになるな。人形が大切に扱われるのは嬉しいが」
ティーポットから紅茶を注ごうとするが最後に残った一滴が虚しく空のティーカップを濡らす。
すると置くから音もなく近づく影、ドレス、帽子、手袋を身に纏い肌が一切見えない女性が沸々と煮えたぎる湯が入ったポッドを持ってきてくれる。
「ありがとう、シオン」
「……」
シオンと呼ばれた女性は軽く会釈すると同じようにゆっくりと置くの部屋に戻っていく。
「会釈出来るようになってる」
「そっちの方が人間らしいと思ってな」
っとこんな感じで書き出してみたがどうだろうか?