モンハン小説[紅の舞姫]   作:Momiji712

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第11話 旅立ちの風

 

 

 

ナバルデウスとの戦いから一週間。

モガ村を離れたヤマトとモミジ、そして新たに旅の仲間として加わったレンの三人はドンドルマへと帰還した。

 

「うわぁ…ここがドンドルマ…」

 

初めて大都市ドンドルマを訪れたレンは、感嘆の声を上げる。

 

「レンはここまで大きな街を見るのは初めてなのかや?」

「そうですね…今までは大きな街といえばタンジアだったので」

「ふふん、ならばこの街にはさぞかし驚いたじゃろう」

 

レンの答えに対し、モミジは自分は知っているんだとばかりに胸を張る。

…以前似たようなセリフをモミジに言った覚えがあるのだが。

 

「ぬしよ、気のせいじゃ」

「あ、テメ、また心読んだな」

「や、ヤマトさん!!ここの鍛冶屋ってあんなに大きいんですか!?」

 

二人がいつもの掛け合いをしていると、一人周りを見ながら歩いていたレンがドンドルマの中でも一番賑やかな鍛冶屋を指さして聞いてくる。

 

「ん?あぁ、ほかの村や街とは比べ物にならないくらい大きいぞ」

「凄いなぁ、さすが大都市…僕、そろそろ装備を新調したかったのでちょうど良かったです」

「お、そうか。ならついでに寄ってこうぜ」

 

本来なら今から酒場へ行ってハンターズギルドのシズクにナバルデウスに関しての報告に行こうと思っていたのだが、そう急ぐ必要もなかったので三人はレンに付き合い先に鍛冶屋へ寄ることにした。

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

「で?何にすんだ?」

 

鍛冶屋に到着し、店主から装備のカタログを貰い真剣に悩んでいるレンにヤマトが問う。

 

「そうですね…自分が気になるのは、コレかなぁ…」

「お、インゴットシリーズか。素材はあんのか?」

「えぇ、揃ってます」

 

レンが選んだのは主に鉱石を使用して作られる中級者ハンター用の装備。素材も比較的揃えやすく、顔面全てを覆うフルフェイス型の装備なので安全面も完璧な装備だ。

 

「武器の方はどうするんだ?」

「武器は…これとかどうでしょう」

 

レンはそう言うとヤマトにカタログを見せてくる。

それは、煌びやかな刀身をもつ美しい片手剣。

 

「セクトセロルージュ、火属性武器だな。派生元のセクトセロは持ってるのか?」

「はい、幾つか片手剣は作ってあって、その中の一つです」

「良いんじゃないか。予算も足りそうだしな」

「はい、これにします!!━━えと、注文に少し時間が…」

「大丈夫だよ。テキトーにその辺見てるから」

 

店主のオヤジに装備の注文をしているレンを残し、ヤマトは外で待っているモミジの元へ戻る。

その彼女はというと、店外のガラスのショーケースを眺めていた。

 

「モミジ、レンが今注文中だからもうちょい待って…って、何見てんだ?」

「うむ、ぬしよ、これはなんじゃ?」

 

そう言ってモミジが指をさしたのはショーケースの中の装備。

 

【ジンオウUシリーズ】

 

「あ…えと、これはな…」

 

その名を口にして良いものか少し悩む。

 

「む?どうした?珍しく口篭るなど…」

「いや、これはな、━━━お前と同じジンオウガ亜種の素材から作られた装備なんだ」

 

同族の角や皮を加工したもの…となれば、モミジはいい思いをしないだろうとヤマトは苦い顔で答える…が。

 

「ほぅ。わっちらの身体でここまでのモノを作り出せるのか…やはり人間はすごいの」

 

ヤマトの予想とは裏腹に、モミジは感心している。

 

「え、お前大丈夫なのか?」

「なにがじゃ?」

「だって同族だぜ?嫌じゃないのか」

 

ヤマト言葉にモミジは少し考えると…

 

「うむ、確かに主の考えも一理ありじゃ。いたってわっちはその同族を全て失った身じゃからの。じゃが…」

 

彼女はそこで一旦言葉を切り、続ける。

 

「ぬしら人間と違い、わっち達の世界は弱肉強食じゃ。【狩った】者が強く、【狩られた】者が弱い。そんな世界を生きていると、このような物に感情が芽生えたりなどはせん。」

 

そうゆう…ものなのか。

ヤマトは心の中で安心感と、少しだけ悲しい気持ちに駆られる。なぜか、それを語る彼女が寂しそうに見えたからだ。

 

「くふっ、そんな顔をするで無い。わっちは少しだけ、人間は羨ましいなと…うむ、ヤキモチしただけじゃよ。」

 

ずっとケースの中の装備を見ていたモミジがこちらを振り返り、困ったように笑った。

 

「俺の考えてる事は何から何までお見通し…か」

 

ヤマトもその顔を見て苦笑い。

 

「当たり前じゃ。何年生きてると思うとる!…それで、ぬしよ。」

「ん?」

「この装備は強いのかや?」

 

そう言ってモミジはジンオウUシリーズを指さす。

 

「防具に強弱はあんまりないと思うけど…まぁ、ハンターの中でも上級者が身につける装備だ。そうゆう意味では強いのかな」

 

ヤマトの答えを聞いたモミジは、ふむ…やはりの…などとブツブツ言いながら顎に手を当て考え込む。

そして暫くすると、うむ。と頷いた。

 

「どうしたんだ?」

「ふむ…どうせならぬしにも見せておくかの。わっちの力の一つを。」

「え?━━あ、おい!」

 

ヤマトがどうゆうことか聞き返す前に彼女はヤマトの手を引き人目につかない裏路地に入る。

そして…

カッッ!!!

突然赤黒い光が彼女を包み込んだ。

これはモミジが変身する時の光…!

どうしてこんな所で!?

ヤマトはそう思いながら眩しさに目を瞑る。

そして━━━

 

「ぬしよ、どうじゃこれ?」

 

目を開けるとそこには……

頭装備以外のジンオウUシリーズを身につけたモミジが立っていた。

 

「…へ?」

 

驚きのあまりヤマトの口から変な声が出る。

 

「ど、どうゆう事だ?」

「わっちはな、見た物の素材や形などがある程度わかれば、それを自分の体で見た目と強度だけに限るが作り出せる。いつも戦闘の時甲殻を身に纏うじゃろ?あれの応用じゃ」

 

たしかに、これまで戦闘の際モミジは本来の姿がそのまま人間化したようにその甲殻や体毛を鎧のように形成して身に纏っていたが━━まさかそんなこともできるとは。

 

「てことは…お前、さっき見てたジンオウUを自分の身体で再現したってのか?」

「流石ぬしじゃ、理解が早いの。」

 

理解が早い…というか、理解せざるを得ない…という表現の方が正しい気がするが。

まぁ、びっくりするぐらい似合っているから良しとしよう。

 

「……ぬしよ」

「ん?なんだ?」

「そう言うことは口に出して言って欲しいの」

 

頬を少し膨らませながらモミジがヤマトに文句を垂れるので、思わず苦笑いする。どうやらまた心の中を読まれたようだ。

 

「えぇと…うん、まぁ、似合ってるよ。ビックリするぐらいな。写しただけとはいえ一応装備だし、形成してるものがお前の体ってことなら戦闘も出来るんじゃないか?」

「うむ、これならば動きやすいからの。これからわっちの戦闘形態はこれじゃな」

 

そういったモミジは少し嬉しそうに笑う。

そして、あっ。

と何かを思い出したような素振り。

 

「それとな、さっき店の外で待っておる時に随分と綺麗な格好をした女が歩いておったから、それも写してみたんじゃが…」

 

もしかすると、自分に見てもらいたいのだろうか。そう考えたヤマトは笑顔で答えた。

 

「そうなのか?見せてくれよ」

 

するとやはり予想は的中で、モミジはいいじゃろうと胸を張ると再び赤い光に包まれ、光が消えるとそこには━━━

 

「どうじゃ?綺麗かや?」

 

和服だ。

極東に住む人々の文化が産んだと言われる、他にあまり類を見ない服装。大きな布を縫い合わせて刺繍などで花や葉の模様をつけ、羽織るように着込み最後に帯で縛って着る文化的な服装。それが和服だ。

モミジが身にまとっている和服は、黒の生地が主体となり、紐や袖の細かな部分は紅色。生地には彼女の名の由来である紅葉が描かれ、下半身は深紅色の動きやすい馬乗り袴だ。

そんな事を考えながらも同時にヤマトは、今まで見たことの無いモミジのその姿に目を奪われていた。

綺麗だ…

そんな感情が芽生える。

 

「…ぬし?どうしたんじゃ?…わっちに見蕩れたかや?」

 

ぼうっとモミジを見つめるヤマトに、彼女がいたずらっぽく笑いかけた。

 

「…あぁ、すっげぇ似合ってる。綺麗だ」

 

思わず素直な感想を述べると、途端にモミジが赤面し視線が泳ぎ始めた。

 

「そ、そうかや?な、なら良かったぞ」

 

柄にもなく照れるモミジを見たヤマトは思わず吹き出す。

 

「なぁっ!?笑うでないわこのたわけ!!」

「ごめんごめん、珍しくお前が照れるもんだから可笑しくってさ」

「うぅ…。仕方なかろう…ぬしが突然変なことを言うからじゃ…」

 

口を尖らせるモミジの頭をポンと叩きながらヤマトは手を引き、表路地へと戻る。

 

「悪かったよ、だけどホントに似合ってる。前の格好よりもずっといいぞ」

 

以前街で買い揃えたクリーク装備に似た服装も綺麗だと思っていたが、それ以上に今の姿の方が断然モミジの雰囲気にはあっていると思った。

 

「そうかや…?ならばこれからは普段の服装の方もこっちに新調しようか。それに、これならばいちいち服を脱ぐ手間も無いからの」

「あぁ、そうすると良いかもな。」

 

これまでモミジが戦闘形態や本来の獄狼竜の姿へ変身する時は、身に纏っていた服が破けないようにその都度服を脱いでいたが、"これ"ならばその心配もいらないようだ。なにより毎回目の前で脱がれてはヤマトの心身が色々と大変だったのでとてもありがたい。

そんな会話をしている内に表へと出ると、ちょうどレンも装備の注文を終えたところだった。

 

「あ、ヤマトさん、モミジさん!お待たせし…!?!?!?」

 

そしてモミジを見て固まる。

 

「む?どうしたんじゃ?」

「い、いえ!…その、お綺麗です…モミジさん…」

 

モミジの大人っぽい格好に緊張したのか、固まったまま変な笑顔でレンが言う。

その状況にヤマトは吹き出し、モミジは少し顔を赤くしながら礼を述べる。

 

「ありがとう、レン。嬉しいぞ」

「いえ、その、ごちそうさまです」

 

何がだよ!!とヤマトは再び吹き出し、レンは自分でもよくわからないですと笑い、モミジもまた、二人を見て笑う。

気付けば空には、星が見え始めていた。

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

「そういえばレン、装備はいつ出来るんだ?」

 

改めて酒場に向かいながら、ヤマトはレンに問いかける。

 

「はい、鍛冶屋のご主人がちょうど手が空いているみたいで、明日の夕方には出来るそうです!!」

「お、そうか、早くてよかったなぁ」

 

装備の注文は、混み合っている時期だと最悪完成に1ヶ月ほど時間が掛かってしまう可能性がある。

そう考えると、レンはちょうどいいタイミングだったのだろう。

そうして新しい装備の完成が早いということで少し興奮気味のレンの話し相手をしている内に酒場に到着し、受付カウンターで相変わらず書類に目を落としているギルド本部給仕長のシズクに声をかける。

 

「シズク、ただいま」

「ん?あっ、ヤマト君!!おかえり!モガ村の村長さんからもう話は聞いてるわよ。ナバルデウス討伐おめでとう。大変だったみたいねぇ…って、あれ?」

 

いつものテンションでヤマトに祝いの言葉を捲し立てていた 見た目詐欺20代女性 は、そこで後ろに立つレンの存在に気付く。

 

「あぁ、こいつは"向こう"で知り合ったハンターのレン。下位クラスだが、腕前は上位の連中とそう変わらん。」

 

シズクにヤマトがそう説明すると、レンが慌てふためく。

 

「や、ヤマトさん!?そんな大袈裟な…」

「ん?大袈裟も何も、その通りじゃないか」

「そう…ですか?…ありがとうございます…」

 

どう反応していいのかわからないという感じでレンが礼を述べると、シズクがレンに笑いかける。それはギルド用の営業スマイルでは無く、普段のシズクの笑顔で…だ。

 

「レン君…だっけ?そんなに不安にならなくても、この人がそう言うんだったら間違いないよ。ハンターズギルド ドンドルマ総本部は、君を歓迎します」

 

よろしくね。と握手の手を差し伸べるシズク。

レンは少し躊躇ったが、意を決した用にしっかりと目を見据え、その手を握り返した。

 

「…はい、よろしくお願いします!!」

 

もはや癖なのか、90°近く頭を下げるレンに向けたシズクの視線が、ヤマトとモミジを見てウィンクする。

 

「ええと、じゃあ今ハンター登録の書類持ってくるからちょっと待っててね!!お二人はそこら辺で一杯どうぞ」

「分かりました!」

「悪いな、頼むぜシズク。」

「はぁい!任せて〜」

 

カウンターで待つレンを置いて、比較的近い席にヤマトとモミジは座るが━━━━━

 

「お、ヤマトにモミジちゃんじゃねぇか!久々だなぁ」

「どこ行ってたんだ二人で〜??」

「くっそぉ…ヤマトの野郎また独り占めかよ」

「モミジちゃあああん!!!今度一緒に一杯飲まねぇかぁ!?」

 

━━━━途端にこれである。

周りにいたハンター仲間達がすっかり馴染んでしまったモミジ(とヤマト)に声を掛けてきた。

 

「うるせぇなぁお前ら…まだ夕方だってのにどんだけ飲んでんだ」

「うるせぇ!!!ヘタレはだぁってろ!!」

「ヘタ…!?……テメェ…」

「まぁまぁぬしよ、良いではないか。奴らも悪気がある訳では無いじゃろ」

「甘ぇなぁ…俺には厳しいのに」

「あーたーりーまーえーじゃ!!」

 

相変わらずの二人やり取りに煽りの口笛が飛び交い、そこにハンター登録を終えたレンも戻ってくる。

 

「なんか…凄いことになってますね」

「ほっとけ、ここじゃいつもの事だ」

 

なんだかんだ言いながらも少し楽しそうなヤマトの顔。既にモミジは周りの注目の的となりビールをイッキしている。

今夜はまた一段と楽しくなりそうだな…

初めての大都会の夜にレンも内心、感情が高まるのだった。

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

「バルバレ?」

「あぁ、この近くから船出てたよな?」

 

昨夜、周りの煽りのせいでしこたま飲んで気持ち悪くなったモミジを、レンと二人でなんとかハウスまで運んだ翌日の午前。

ヤマトは部屋でぐっすり寝ているモミジと、抱き枕にされていたレンを残して酒場へと来ていた。理由は、次の旅の目的地である 砂の街【バルバレ】への経路についてだ。

バルバレは、砂の街の名の通り広大な砂海に面しており、移動には砂上船という砂上を走る特有の船を用い、尚且つかなりの日数をかけて行くことになる。その出航日程について、シズクに尋ねているのだ。

 

「ちょっと待ってね。えぇと…確か……」

 

そう言い書類を漁るシズクを待っていると、直ぐに彼女は一枚の紙を取り出した。

 

「あったあった!!えっとね、一番早い出航予定日が……明日の夕方!」

「明日か…到着は?」

「砂嵐の状況にもよるけど、予定だと一週間後の朝かな〜」

 

ヤマトは腕を組み考える。

やはり、それくらいはかかるか…

だがモミジの兄が消えたのは二年前だ。早く動ける時は動いておくべきだろう。

 

「よし、わかった。ここで予約とかできるか?」

「できるけど…」

 

そこでシズクの瞳がまっすぐとヤマトを見据える。

 

「ヤマト君、そろそろ教えてよ。君たちは何を目的として旅をしてるの?」

 

━━そりゃあ、そう聞かれるよなぁ

そろそろだとはヤマトも思っていたが、果たしてどう理由を話すべきだろうか……

否。下手に隠せばボロが出るだろう。

 

「実は、モミジ━━彼女の兄さんが二年ぐらい前に急に姿を消しちまったみたいでな。成り行きでそれを聞いた俺も付き添ってその兄を探してるんだ。あいつの話によれば、兄はある竜を追ってバルバレの方まで言った可能性がある」

 

シズクは少し驚いて考えた後、うんと頷く。

 

「…なるほどね〜。それで急にあんな遠い街まで行くんだ…そっか、モミジちゃんそんな事があったんだね。…わかった。それなら〜っと、これ!」

 

そう言った彼女が何かを渡してくる。

見れば、それはハンターズギルドドンドルマ本部正式発行の狩人紹介状、しかも三人分。

 

「シズク、これは…?」

「ウチの正式発行の狩人紹介状。バルバレにはね、結構大きなギルドがあるの。それがあった方が色々と行動しやすいよ!!…本当は何か任務がないと発行出来ないんだけど、君たちの場合向こうで何があるかわからないから、特別サービス!」

「でも俺やレンはまだしも、モミジはハンターの資格ねぇんだぞ?」

「わかってる。ただあの子…本当は凄く強いんじゃない?」

 

ビクッと、一瞬だがヤマトの肩が跳ねる。

 

「…何故そう思う?」

「前の老山龍迎撃作戦。あの時、実は変な報告が一部の偵察班からあがってたの。」

「…どんな?」

「ヤマト君と一緒に行動してた女の子が、人間とは思えない速さで山の中を駆け抜けて行ったって。そして、その後やって来たラオシャンロンが傷を負ってたって。」

 

…バレてたか。と、ヤマトは内心焦る。

が。

 

「そんな顔しないでよ。大丈夫、キミとあれだけ仲がいい子だもん。問題は無いだろうってあたしが判断して、その情報は有耶無耶にしておいた。」

「そっか…悪いなシズク。その、また機会があったら全部話すよ。アイツのこと。」

「わかってる。…お、噂をすれば来たよ!キミの奥さん」

「お、そっか…ってそんなんじゃねぇ!」

 

カウンターから振り返ってモミジの姿を確認したヤマトはしっかりとシズクにつっこんでおく。

 

「おーい、ぬし、昨日は悪かったの…ってどうしたんじゃ?変な顔をして」

「あ、いや、何でもねぇよ」

 

モミジには何事も無かったかのようにいつも通りの顔で振舞う。

…とりあえず後ろで顎に両手をあてニヤニヤしているシズクは後でシバく。

 

「モミジ、前話したバルバレは覚えてるか」

「うむ、次の目的地じゃろ?」

「あぁ、そこへ向かう船の手配が取れた。出発は明日の夕方、大丈夫か?」

「問題無い。すまぬな、手配など全て任せてしまったようじゃの」

「気にすんな、…で、レンは?」

「まだ寝とる」

「まぁそれなりに疲れてるだろうしな…わかった。ここでなんか飲んでくか?」

「…二日酔いに効くもの」

「シズク、林檎の絞り汁1つ。」

 

もはや慣れきってしまったこの会話。

シズクもやり取りに苦笑いしながらハイハイと答え、喫茶カウンターの方に入っていった。

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

夕方━━。

 

「どうですか?お二方!!!」

 

新装備、インゴットシリーズを装備したレンがテンション高く二人に聞いてきた。

 

「そ、そうだな、似合ってる」

「う、うむ、カッコイイではないかレン」

 

確かにインゴットシリーズはデザインでも人気のある装備なのだが…なんというか、フルフェイス装備のゴツイ人間がテンションMAXでぴょんぴょんと跳ねてる光景には、中身がレンだと分かっているヤマト達も少し引き気味だ。

 

「ママー、あの人何〜?」

「見ちゃいけません!!!」

 

「…ぬしよ」

「な、なんだ」

「わっちは時折こやつが天才なのか阿呆なのか分からなくなる」

「奇遇だな、俺もだ」

「あれ、どうしたんですか二人とも…?」

「…レン」

「はい?」

「後でシバく」

「なんで!?!?」

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

出発の日の夕方。

ドンドルマから竜車で一時間ほどの地点にある大砂漠入口、砂上船発着地にて。

 

「気をつけてね、長い旅なんだし」

「すまぬなシズク、わざわざ見送りまでしてもらって」

「いいのよ、手が空いてたから。…ヤマト君」

「ん?」

「たまには、戻ってきてね」

「…あぁ、また顔出すよ」

「うん。…レンくんも。頑張ってね」

「はい!!ありがとうございます!」

 

━━ドオオォォォォン!!

出発の合図の大銅鑼が鳴った。

 

「それじゃ、行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい!!」

 

シズクと別れの握手を交わし、ヤマト達三人は船内へと入っていく。

やがて船と港を繋ぐ桟橋が外され、砂上船は遥か彼方"バルバレ"へと進路をとった。

 

「どうか、無事で。」

 

地平線へと消えて行く船を見つめるシズクは、一人静かに呟いた。

 

 

 

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