モンハン小説[紅の舞姫]   作:Momiji712

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今回から物語の舞台はモンスターハンター4のお話へと突入して行きます。
基本的に物語の流れは原作と同様ですが、本来登場する人物がいなかったり、巡っていく村が違ったりと異なる点もありますので予めご了承くださいm(_ _)m
それでは、どうぞ。


第12話 砂の街 バルバレ

 

 

 

「まだ着かぬのかやああああ!!!」

 

突然、隣にいたモミジがそう叫んだ。

 

「うおっ…急にどうしたんだお前」

「もうドンドルマを出てから一週間じゃぞ!?ずっと船の上ではないか!!」

「し、しょうがないですよモミジさん…ドンドルマからバルバレまでは普通にそのくらいの期間掛かるみたいですし…」

 

そう話す三人がいるのはバルバレへ向かう砂上船の甲板。手すりにもたれながらひたすらに続く大砂漠を眺めていたところだった。

 

「むぅ…。そろそろ飽きてきたぞ、わっちは」

 

まぁ無理もないだろう、最初の頃は砂の上を滑る特殊なこの船に興奮気味のモミジだったが、それが一週間ともなると流石に飽きてきても不思議ではない。

━━でも今日中には着くはずだ。

とヤマトがモミジに言おうとした時、知らない声が自分たちに向けて掛けられた。

 

「ガッハハハ、確かに!!そろそろこの景色にも飽き飽きだなぁ嬢ちゃん!!!」

 

三人が声の方を振り向くと、一人の男性が腕を組みながら立っていた。

歳は40代半ば〜後半といったところ。白い口髭を生やし、朱色のカウボーイハットを被っている。

 

「だが安心しろ!!バルバレはすぐそこまで近づいている、あと数時間で着くはずだぜ!!」

 

その勢いのある話し方に全く動じずにモミジが答える。

 

「ほんにか?ならあと少しの辛抱じゃの…」

「おっさん、あんたそういやずっとこの甲板にいたよな?何してんだ?見たところ、ギルドの職員って訳でもないだろう」

 

実はヤマトは、船に乗った日からこの人物を時折目にしていた。常に甲板に出ており、空や砂漠をひたすら眺めていたのだ。

 

「お、気づいていたか兄ちゃん。実はな、ガブラスたちの動きを追っていたのだ。」

「ガブラス?」

「あぁ、この砂漠にはただのモンスターは少ない。だが、古龍と呼ばれる存在は居るからな…奴らがもし接近してくれば、上を飛んでいるガブラスが反応するはずなんだ」

 

なるほど、それでずっと甲板にいたということか。ヤマトの中で合点がつく。

 

「なるほどな…で、あんた何者だ?」

「そうだなァ、【団長】とでも名乗っておこうか」

「団長…ですか…??」

 

名は言わず、団長と答えた彼にレンが思わず首をかしげる。

 

「うむ、俺はキャラバンを率いていてな、その仲間を集めるためにバルバレへ向かっているのだ」

「ぬし、キャラバン…とは?」

 

その単語を聞いたことがないのであろうモミジが、ヤマトに聞いてくる。

 

「うーん、簡単に言えば行商人の集まりみたいなもんだ。」

「行商人の集まり?」

「あぁ、一人で行商をしていてモンスターとかに襲われたら自分も商品も危ないだろ?だから、それを防ぐために何人かで集まって一人のリーダーの指揮の元、共に行動して旅をする…それがキャラバンだ。」

 

簡単にだが、モミジに説明する。

 

「お、兄ちゃんよく知ってんな。その通りだ。俺はそのキャラバンの団長ってわけだ」

 

ガハハっと出会った時のように腕を組みながら団長が笑う。その時だった。

 

━━━ギャアッギャアッギャアッ!!!

 

突然、上空を飛んでいたガブラスが暴れ始めた。

 

「ガブラスが…!!いやまさか、本当に古龍が近くに…!!」

 

団長がそう言い、周囲の砂漠を首から下げた双眼鏡で確認し始める。

 

「…モミジ、どうだ」

「うむ、何かがおかしい……っっ!!!」

 

耳をすませていたモミジの目が、突然見開かれる。

 

「皆構えよ!!来るぞ!!!」

 

彼女の警告に咄嗟にその場にしゃがむ。

刹那━━━

 

━━ゴオオオオォォォォォォォォォ!!!!!!

 

砂を突き破って現れた"それ"は、砂上船など比にならないほど巨大な龍。その名を…

 

「あれは…ダレン・モーラン!?」

 

豪山龍と呼ばれるその龍は、大砂漠の主。

頭部にドリルのような形の巨大な角を持ち、その体長は100mを優に超える。

そんな大きさの龍が船のすぐ横に浮上、船が衝撃により大きく傾く。

 

「みんな船に掴まれ!!叩き落とされるぞ!」

 

手すりに捕まりながら団長が叫ぶ。

 

「ぬし、ここはわっちが!!」

「馬鹿、こんな所で交渉しようもんなら変な疑いがお前にかかっちまう。ダメだ!!」

「しかし…!!」

 

モミジがヤマトに耳打ちをしてくるが、公の場所でモミジが古龍と話しをしようものならどんな疑いを掛けられるか分からない。それはダメだった。

 

「おい団長さん!!この船、武装付きだったよな!?」

「あぁ!!大砲に大銅鑼、それと船首に撃龍槍がある!!!」

 

上等だ。非武装船ならどうしようかと思ったが、撃龍船レベルの武装がこの船にはある。

 

「ならまずは船の体制を立て戻すぞ!!レン!一通りの武装の使い方、タイミングは分かるか!」

「だ、大丈夫です!!!」

「ならお前は船員達と船の防衛を頼む!!」

「了解しました!!!」

「モミジ、船はレン達に任せて俺とお前でヤツの背中に乗り込む。覚悟は良いか」

「問題ない」

「よし。団長!!レンと船のことは頼むぜ!!」

「あぁ任せろ!!」

 

その途端、横を泳いでいるダレン・モーランが船に体当たりをしてきた。凄まじい衝撃が船を襲い、甲板や船内にいる人々から悲鳴が上がる。

 

「しまった!!俺の帽子が!!!」

 

団長の声に振り返ると、彼の被っている帽子が衝撃と風により吹き飛び、ダレン・モーランの背中に引っかかってしまっていた。

「俺が今から奴に直接乗り込んで攻撃するから、そのついでに取ってくる!!!」

「すまん、助かる!!!気を付けろよ!!!」

「あぁ!!! ━━モミジ、船に奴が近づいている今がチャンスだ、行くぞ」

「心得た!!」

「一、二の…今だ!!!」

 

船の側面から二人が飛び出し、ダレン・モーランの腕に着地。そのまま体を駆け上がって背びれを乗り越え、船からは見えない反対側に到着する。

 

「なるほど、ぬしの考え、読めたぞ」

「なら頼むぜ…!」

 

モミジが袴姿から変身、ジンオウU装備を模した戦闘モードへと移行する。

 

「豪山龍!!!わっちの声が聞こえるか!!」

『………』

「豪山龍よ!!聴こえぬのか!!!攻撃を直ちに止めよ!!!でなければこちらも反撃させて貰うぞ!!」

 

しかしモミジの声は届かない。

いつもなら声の聞こえるヤマトにも、返答は聞こえてこなかった。

 

「古龍ならお前の言葉も届くと思ったが…ダメか」

「いや、本来であれば通じたじゃろう…しかしこやつはどうやら既に正気を失っておるようじゃ。残念だが交渉は恐らく無理じゃな」

「くそっ、ならやるしかねぇな」

「うむ。殺めるまでしなくとも、コレを撃退すれば良いのじゃろう?ならば多少痛めつけるだけで良いはずじゃ!!!」

 

そういうと彼女の右脚に龍エネルギーが収束し始める。

 

「衝撃がある!!ぬしは少し離れよ!!!」

 

すかさずヤマトは後ろに飛び、距離をとる。

 

「せぇああぁぁッッ!!!」

 

気合とともにモミジが背びれのひび割れに向かって強烈な回し蹴りを放つ。

ドオオオオンッという爆音とともに一撃で背びれに大穴が開き、一泊遅れて凄まじい衝撃波が周囲に広がった。

 

━━ガアアアアアアアアアアアアアアッ

 

突然の痛撃に驚いたのか、豪山龍が身体をくねらせ自分の背にいるヤマト達を排除しようとする。

 

「くっ、掴まれ!!」

 

振り落とされそうになったモミジの手を握り、ヤマトは天上天下無双刀をダレン・モーランの背に突き刺して何とか落下を免れる。

 

「この程度では効かぬか!!」

 

モミジが少し悔しそうに自分の開けた穴を見る。

 

「いや十分だ、おかげで俺の攻撃のきっかけができた!!」

 

そういったヤマトが突き刺した太刀を引き抜いて鞘に戻し、腰に構える。

 

「今度は俺の番だ。下がってろ」

「頼むぞ」

 

彼女が後ろに下がったのを確認し、ヤマトはその場から一気に加速━━愛刀の鯉口を切る。

 

「東雲流滅龍抜刀術ッ!!!」

 

【滅龍剣舞】━━━━━ッッ!!!!!

 

ダレン・モーランの背中に四本の閃光が走り

、ヤマトが納刀すると同時に背びれの三分の二が吹き飛んだ。

 

━━ガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

 

二度目の、しかも一度目より遥かに強烈な痛みに豪山龍が咆哮し、その場で地面に潜り始める。

 

「ここまでか!!!モミジ、引くぞ!」

「承知した!!」

 

そこでモミジが変身を解いて袴姿へと戻ったのを確認し、背びれに引っかかった団長の帽子をしっかりと回収したヤマトは急いで太刀を納刀すると、モミジの手を握りダレン・モーランから離脱、砂上船に飛び移った。

 

「ヤマトさん!!モミジさん!!ご無事で何よりです!!」

 

船上からバリスタを撃っていたレンがヤマト達を迎え、安堵する。

 

「ありがとなレン。団長、ほらよ」

 

レンにお礼を言った後、ヤマトは団長に帽子を渡す。

 

「すまない助かった。だが油断するなよ、奴はまだ諦めていない。」

 

その通り、古龍があの程度で退却するなどありえない。必ずどこからかまた攻撃を仕掛けてくるはずだ。ヤマト達は一見穏やかになった砂漠に耳を済ませる。

そしてやはり、誰よりも早く感じ取ったのは彼女だ。

 

「右舷後方!!突っ込んでくるぞ!!」

 

その声に全員がその方向を見ると、モミジの言葉の通り豪山龍が浮上し船に向かって突っ込んできた。あの攻撃は大砲程度では防げない。ならば。

 

「レン!!大銅鑼だ!!!」

「はい!任せてください!!!」

 

レンがそう言い、大銅鑼のスイッチの前でピッケルを構える。

 

「ぬし、来るぞ!」

「よし今だ!!!」

 

モミジが耳を塞ぎ、レンがカンッという音を立てて大銅鑼のスイッチを押す。

 

━ドオオオオオオオオオンッ!!!!!!

 

爆音が響き渡り、聴覚の良い豪山龍は悲鳴をあげて怯み、再び砂の中へと潜って行った。

 

「撃退…できたんでしょうか」

「わからん、だがおそらく大丈夫だろう…」

 

先程までの喧騒が嘘だったかのように静まり返っている大砂漠を見つめながら、レンと団長が言った。

 

「…モミジ、まだ感じるか?」

「うむ…遠くには行っておらんようじゃが、警戒して近づいて来ない。大丈夫じゃ」

「よし、わかった。団長さん、もう大丈夫だろう。」

「そうだなァ、あれだけ痛手を負わせれば相手も怯んだだろうが…警戒は怠らぬように甲板員に伝えておこう。」

「あぁ、頼む」

 

少々壊れてしまった船の修復に取り掛かっている甲板員を横目に、一旦船内へ入ろうとしたヤマトをレンの言葉が止める。

 

「ヤマトさん!!あれ!!」

「ん…?」

 

レンが指さした方向を見ると、大砂漠の砂で少し霞んではいるが明らかに人工物であろう建物がいくつも確かに肉眼で確認できた。

砂の街、バルバレだ。

 

「ぬし、あれは!!」

「あぁ、ついに到着だ。」

 

あの距離ならば、もう15分ほどで到着するはずだ。

 

「いやぁ長かったなァ、先程はどうなるかと思ったが…」

 

団長も近づくバルバレを見ながら言い、そしてこちらを振り返った。

 

「そういや兄ちゃん達、あの街には何しに行くんだ?」

「あぁ、えぇと…」

 

話していいものか…と横目でモミジを見ると、彼女は頷く。大丈夫、という事だろう。

 

「こいつの兄さんが二年前、突然消えちまってな。聞く話によりゃある竜を追って行ったそうだ。━━団長さん、ゴア・マガラって知ってるか?」

「ほぉ、ゴア・マガラ。…知ってるさ。近年バルバレ付近でその存在が確認されたが、生態などは一切不明。分かっているのはその竜が狂竜ウイルスなるものを振りまいて各地の生態系を狂わせている…だっけか?」

 

団長が知っている限りの情報を話すと、それにモミジが続く。

 

「その通りじゃ。我が兄は、その竜を追って姿を消した。わっちは…その行方を追っている。」

「そうかァ…それで、お前達。バルバレに着いたところで、アテはあるのか?」

 

団長のその問いにヤマトは苦い顔をする。

バルバレに来るまでは良かったのだが、そこからの手掛かりが一切無いのだ。

現地の人間やギルドに話を聞くとしても、あまりにも手持ちの情報が少なすぎる。

 

「それが…無くて困ってんだ。団長、何かそういう類の情報が手に入る場所知らねぇか?」

 

ヤマトの言葉に、団長は顎に手を当て考えるが…

 

「う〜ん、あまり思いつく所はねぇなァ…」

「だよなぁ…どうするか…」

「…なぁお前さん達、ひとつ提案がある。」

「ん?なんだ」

 

そこで団長は帽子を脱ぎ、中から"何か"を取り出した。

 

「実は俺はなァ、"これ"が何なのかを探すために、旅をしているんだ。」

 

彼が帽子から取り出したのは金色に光るモンスターの甲殻。

 

「それは…竜の甲殻かや?」

 

モミジが目を見開きながら聞く。

 

「モミジ、見覚えが?」

「いや、無いが…そのような体の竜は見たことが無い。」

 

確かに彼女の言う通り、体が金色の竜など殆ど存在しない。

唯一、雌火竜リオレイアの希少種である金火竜は体が金色の鱗に覆われているが、この甲殻は明らかに金火竜のそれでは無い。

 

「だろう?俺はこれが何なのかを知りたい。そのためにキャラバンを率いてここまで旅をしてきた。だがここで一つ問題がある。」

「問題?」

「あぁ、キャラバンは人の作った公道だけでなく荒野に森林、時には狩場を通って旅をする。その最中、モンスターに襲われる事だって少なくはない。だから本来は護衛の狩人を雇って共に旅をするのだが…」

「あぁ、なるほど。」

 

団長の言葉にレンが頷いた。

 

「レン?」

「前に聞いたことがあります。キャラバン等に属するハンターは他のハンター達と違い、モンスターに必ずしも遭遇するとは限らない状況下で長い間旅をします。なので収入が安定していなく、キャラバンの護衛として志願する狩人は極少ないそうなんです」

 

なるほど、とヤマトも納得する。

ハンターはギルドという組織に属してはいるが、その行動は殆ど自分で決める。

あのモンスターの素材が欲しいから依頼を受ける。とか、この位の報酬金が欲しいからこの依頼を受ける…など、自身の要求にあった依頼を受けていくスタイルだ。その為、依頼主の依頼内容をみて「この人はこんなに困っているんだから是非ともこれを受けたい」と思って仕事をこなすハンターは極少ない。

だが、今現在のヤマト達にはそのような思いはなく、報酬よりもモミジの兄を優先している。それを見越して、団長はこの護衛任務を頼んできたのだろう。

確かにこの依頼にモミジの兄へ繋がるという確証は無いが、キャラバンなら各地を転々と回る。ならばこの依頼を受けて共に行動すれば、何か情報が手に入るかもしれない…。ヤマトはそう思い、モミジを見る。

 

「…うむ、わっちも賛成じゃ。」

 

相変わらずヤマトの考えがお見通しの彼女は頷く。

 

「レンは、それでもいいか?」

「勿論です。僕はお二人の【剣であり盾】ですから!どこまでもお供しますよ!!」

「ありがとう。なら決まりだな、おっさん。」

「受けてくれるか。我がキャラバン━━━━【我らの団】の護衛任務を。」

「おう、んじゃあこれから宜しくな。団長。」

 

そう言ってヤマトは手を差し伸べる。

団長もまた、それに応え握手を交わす。

 

「あぁ、頼むぞ……ついてだ。兄ちゃん達、名は?」

「俺はヤマト」

「モミジじゃ」

「レンです」

「ヤマトにモミジ、レンだな。よろしく頼むぜ三人とも。さァて、もうすぐバルバレに到着だ。船をおりたら、俺の今の仲間も紹介しよう。」

 

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「んで、コイツらが今の俺の仲間だ。でっかい方が【加工屋】。キャラバンの乗り物等の整備や、恐らくこれからはヤマト達の武器の整備なんかもやってくれるだろう。口下手で無口だが腕は保証するぜ。次にこの嬢ちゃんが【ギルド派遣受付嬢】のソフィア。なんでギルド職員が仲間なのかっていうとな、我らの団は旅をしながら周辺の生態、環境の調査結果を定期的にギルドに彼女を通して報告する代わりに、その行動をギルド側が追跡して、もしも何かモンスターに襲われるようなことがあった時は救援を出して貰えるようになってるからなんだ。そんでもって、こいつが【料理人】。その名の通りうちの団の飯を作ってくれているアイルーだ。」

「…よろしく」

「宜しくお願いしますっ!!!!!」

「宜しくニャル」

 

バルバレに無事到着し、砂上船を降りたところで団長がキャラバンの仲間を紹介した。

 

「俺はヤマト。見ての通りハンターだ。」

「わっちはモミジ。一応…?狩人じゃ。よろしく頼むぞ」

「レンです!!新米の駆け出し狩人ですが、よろしくお願い致します!!」

 

ヤマト達三人も返すように自己紹介をする。

 

「さァて、仲間も一気に増えたところだし、とりあえず街に入ろう。ヤマト、お前らは先にギルドへ行ってこい。何か情報が手に入るかもしれん。俺らは街に入った入口辺りに居るからよ」

 

そういった団長が街の奥にあるハンターズギルドの建物を指さした。

 

「悪ぃな、そうさせてもらうよ」

 

ヤマトは礼を言うと、モミジとレンを連れギルドへと向かう。

 

「ぬしよ、シズクに貰った紹介状はちゃんと持ってるのかや?」

 

モミジの問いかけに、ヤマトは頷きながらそれを取り出す。

 

「あぁ勿論。この通り、ちゃんと持ってる。…あ、そうだ。モミジ」

「ん?」

「お前、一応ハンターってことになってるから姿変えとけ」

 

シズクの厚意により、モミジもハンターという事で紹介状を書いてもらったため、見ただけで狩人だと判別できるよう戦闘形態になってもらう事にした。

 

「確かに、その方が良さそうですね。…ギルド相手に嘘をつくってのが何とも背徳感がありますけど…」

 

レンがそう言うと、ヤマトとモミジも確かに。と苦笑いする。

 

「よし、では姿を変えてこよう。少し待っていてくりゃれ」

 

そう言い残し彼女は本通りを外れ裏路地へと入っていった。

 

「…なんだか、また大変な冒険の予感がしてきましたね」

 

と、レンがモミジの入っていった裏路地を見つめながらヤマトに言った。

その言葉と裏腹に、少しの期待を目に宿しながら…だ。

 

「…楽しみか?」

 

ヤマトもニヤリと笑いながら問う。

 

「はい、何が起こるかわからないけど…楽しみです。」

「…そっか。そうだな…」

 

狩人など、所詮はそんなものだ。これから始まる新たな冒険の予感にどうしようもなくワクワクしてしまう。

勿論、モミジの兄を探すという最終目標を忘れてはならないが、彼女本人も言っているように焦っても仕方がない。どうせなら、この旅を楽しめばいいのだ。

裏路地の向こう━━建物の影から赤黒い閃光が一瞬だが迸り、程なくしてジンオウUシリーズを纏ったモミジが現れた。

 

「待たせたの」

「いや大丈夫だ。んじゃ行くか」

「はい!!」

 

三人は、ハンターズギルドバルバレ支部へ向かい歩き出した━━。

 

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「こんにちは!!ハンターズギルド、バルバレ支部へようこそ!本日はどのようなご要件でしょうか?」

 

ギルドの受付嬢が、マニュアル通りであろう決まり文句をハキハキと喋る。

 

「俺たち三人のハンター登録をお願いしたい。これが3人の紹介状だ」

「承知致しました、拝見させていただきます!」

 

ヤマトがシズクより預かった紹介状を渡し、受付嬢がそれを開封して読み上げた。

 

「フムフム…おぉ、ドンドルマ本部からの正式書類ですね。……はい、確認しました!!ヤマトさん、モミジさん、レンさん…で宜しいでしょうか?」

「あぁ」

「うむ」

「はい!」

「では登録させて頂きますね!!!」

「あ、そうだ、ひとつ聞きたいんだが…」

 

手元の書類に何かを書き込もうとした受付嬢に、ヤマトが問いかける。

 

「はい?なんでしょう?」

「黒蝕竜ゴア・マガラ…についてなんだが」

 

ヤマトが漆黒の竜の名を口にした途端、受付嬢の顔が強張った。

━━何かあるな

直感でヤマトはそう思った。

 

「えっと…なぜ、その竜のことを?」

 

受付嬢の問いに、いつもの事ながらヤマトが横目でモミジに確認を━━取ろうとしたのだが。

 

「わっちの…兄がな。二年前、奴を追って姿を消した。その手がかりを掴むため、ここまで来た。」

「━━━お嬢さん、その竜が黒蝕竜っていう確証はあるんかい?」

 

モミジの答えに突然、受付嬢では無く横のカウンターにいた竜人族(多分ギルドマスターであろう老人)が問う。

 

「うむ、何よりもこのわっちが渓流で目撃し、実際に殺りあったんじゃからな。」

 

モミジの答えに、ヤマトとレンを除いたその場の全員が驚愕する。

 

「な、なんと…二年前の渓流といえば、ユクモの悲劇か…!!!」

 

ユクモの悲劇━━おそらく"例の"事件の事だろう。

 

「お嬢さん、君はその生き残りか!!」

「う、うむ…そんなところじゃ…」

 

答える彼女の言葉に覇気は無い。

 

「まぁそんなわけで、俺達は恐らく特異個体であろう黒蝕竜ゴア・マガラを追ってるんだ。なんか情報はないか?」

 

ヤマトがすかさずモミジの前に入り、話を戻す。

 

「マ、マスター。」

「…いいだろう。君達が持ってきた紹介状はドンドルマ本部発行の正式なもの。その腕は確かだろう。…それを見込んだ上で、話そう」

 

そうギルドマスターは言い、話し出す。

 

「ここ最近…一年ほど前ぐらいからか。各地から奇妙な報告が多々上がっている」

「奇妙な報告?」

「うむ、倒したはずのモンスターが急に復活し、強さもケタ違いのものとなり暴れだした。とか、温厚なはずの草食竜が人を襲った…等、普通では起こりえないであろう事態が発生しているようだ」

「それって…もしかして」

「間違いない。狂竜ウイルスじゃ」

 

レンの予想にモミジが答える。

ヤマトも勿論そのように考えていた。

そして、今までヤマト達が直面してきた数々の出来事の中には、思い当たる節がいくつかある。

ドンドルマでのラオシャンロン

モガ村近海のナバルデウス

これらの対峙した古龍達は自我を失い人々を襲い、そして口から黒い息を吐いていた。

行き着く結論は言うまでもない。

あの龍達は、やはりゴア・マガラの放つ狂竜ウイルスに感染していたのだ。

 

「で、その根源たるゴア・マガラの位置は今わかってるのか?」

 

ヤマトの問いに、ギルドマスターは苦い顔をし答える。

 

「それがな、全く特定出来ていないのだ。現在古流観測所と王立書士隊、そしてギルドバードが協力して秘密裏に捜索を行っている所だ。」

 

━━行き詰まったか。

ヤマトは心の中でそう言った。

ギルドでも把握出来ていない龍の行動を、一狩人であるヤマトが特定出来る訳もない。

こうなってしまったからには、団長達と行動を共にし、行く先々にあるギルドで事細かに聞くしかないか…

と、ヤマトが思った時だ。

 

「ぬしよ、あのキャラバンにギルドの娘がおったよな?」

 

モミジがヤマトに問いかけてきた。

 

「ん?ああ、確かソフィアとかいったな。あの子がどうかしたのか?」

「あの団長が、娘を通して定期的にギルドへ報告を上げている…と言っていたはずじゃ。ならば、その"逆"も可能なのではないかや?」

「逆…??」

 

モミジの言った意味がすぐには分からず、一瞬考えたヤマトはその答えに行き着く。

 

「なるほどな…。マスター」

「なんだね?」

「俺らは今、【我らの団】っていうキャラバンの護衛ハンターをやってるんだ。そのキャラバンの事は知ってるだろ」

「おぉ、あの団長のキャラバンか。知っているぞ」

「なら話は早い。そのキャラバンから定期的に送られてくる生態環境報告に返信する形で、常に俺らにゴア・マガラの情報を提供してくれないか」

 

ヤマトの問いかけに、マスターはなるほどと腕を組み、暫し考える。

そして…

 

「わかった、いいだろう。君たちとはどうやら暫く縁が続きそうだ。」

 

マスターは了承すると、ヤマトに握手を求めてきた。

その手を握り返し、ヤマトが言う。

 

「頼むぜ、マスター」

「うむ、新しい情報が入り次第、君達には優先して情報を提供しよう」

 

モミジとレンもマスターと握手を交わし、ヤマト達はハンターズギルドを後にした。

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

「ヤマトさん!!依頼ですよ!!!依頼!!!」

 

バルバレに来てそろそろ1週間が経とうかという日の朝、ヤマトはキャラバン所属のギルド職員 ソフィア によって叩き起された。

 

「……ソフィア…」

 

隣で寝ているモミジとレンを起こさぬよう、ヤマトはキャラバンのテントから出る。

 

「はい、なんでしょう!?!?」

「うるせぇ…」

 

キャラバンの仲間となって1週間も経つと、所属している仲間たちの性格も段々分かってくる。

このソフィアという女性は、とにかくハイテンションだ。今のところ落ち込んでいたりする瞬間を見たことがない。

そんな彼女が寝起きのヤマトの眼前に叩きつけてきたのは、一枚の羊皮紙。

内容は…

 

「【ケチャワチャの討伐】…?」

「はい!!この近くの狩場、【遺跡平原】に、奇猿狐ケチャワチャが出現。商人を襲ったようです!!」

 

そのモンスターの名は、ヤマトも聞いたことの無い名だった。

恐らくこの大陸固有のモンスターだろう。

 

「キャラバンへの依頼なのか?」

「いえ、ヤマトさんへの依頼です!!うちの団に新しく入ったハンターさんは超超、腕利きなんだって宣伝しときましたから!!!」

 

この娘…勝手に仕事持ってきやがったな…。

だがこの大陸のモンスター戦に慣れておくという意味でも、この依頼は受けてもいいかもしれない。

 

「…わかった、今日中に出発するとしよう。依頼は俺の名で受ける。」

「りょーかいですっ!!!」

 

ヤマトが羊皮紙にサインを書き込むと、ソフィアは足早にどこかへ行ってしまった。

 

「さぁてと…こっちへ来てから初仕事か」

 

ぐーっと伸びをしてヤマトがテント内に戻ると、モミジが起きていた。

 

「ぬし、仕事か?」

「あぁ。悪ぃ、起こしちまったか」

「そろそろ起きるところじゃったからの、大丈夫じゃ。」

「そっか。」

 

そう言いながらヤマトはバックからモミジの櫛を取り出し、彼女に投げ渡してやる。

朝起きて一番に髪を梳かすのが彼女のルーティンなのを知っているからだ。

 

「ありがと。で、内容は?」

 

朝日を受け、白銀にキラキラと輝く髪を梳かしながらモミジが聞いてくる。

 

「なんでもケチャワチャっていうモンスターの討伐依頼だそうだ。知ってるか?」

「別名は?」

「奇猿狐って言うらしいぞ」

 

その答えにモミジは少し考えこみ、首を横に振る。

 

「すまぬがわっちは知らぬな。」

「まぁそうだよなぁ」

 

あれだけ簡単に持ってきた依頼なら、内容はそこまで危険ではないと思うが…。

何も情報の無いままモンスターと戦うというのは久々のため、気を抜かないようにしなければ。とヤマトは肝に銘じる。

 

「んん…あれ、ヤマトさんにモミジさん…早いですね…」

 

そこでレンが眠そうな目を擦りながら目を覚ます。

 

「レン、朝っぱらからで悪いんだが仕事が入った。」

「仕事…?狩猟依頼ですか?」

「あぁ、詳しくは後で説明する。とりあえず顔洗ってこい」

「あ…はい…」

 

とぼとぼとテントの外に出ていくレンを後目に、ヤマトも着替えて、装備を付け始める。

その間のんびりと髪を梳かしていたモミジは、ヤマトが装備を全て付け終えると同時にベッドから立ち上がり、一瞬で変身して戦闘形態になる。

俺もこれができればなぁ…。

 

「羨ましそうな顔をするでないわ。どうしてもやりたければ竜になってみるかや?ぬしも。」

 

心を読んだのであろうモミジがいたずらっぽい笑みでそう言ってくる。

 

「おいおい、竜ってなれるもんじゃねぇだろ」

 

ヤマトが苦笑いで返すと、モミジは真顔になって答えた。

 

「む?そんな事ないぞ。確かに竜自体になるのは無理じゃが、わっちのような王族の血を飲めば眷属という扱いでレンの様な半竜になれる。」

 

…待て、普通に初耳情報だ。

 

「眷属って…例えばお前の血を俺が飲めば俺は半人半竜になるのか?」

「うむ。」

 

うむって…何でもありだなコイツら。

 

「まぁ眷属を作れば作った側は血が薄まり同じく半人半龍となり寿命も縮むし力も落ちるからの。やろうと試みるやつは居らぬ」

 

なるほど…眷属を作った時は眷属側も龍側も両者共に半人半龍の状態となってしまう…という事らしい。

 

「お待たせしました〜」

 

そこで顔を洗ってきたであろうレンがテントの中に戻ってきた。

 

「よし、レンもちゃちゃっと着替えろよ。朝飯食って出発するぞ」

「了解です」

「モミジ、パンだけ焼いといてくれ」

「うむ、心得た」

 

ヤマトはそう言うと三人分のお茶を入れ始めた。

 

 

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