『牙狼の…貴様……』
天廻龍は絞り出すようにそう呟くと、地に伏した。
同時に、モミジも力尽きその場に膝を着く。
「……よし」
ヤマトは鯉口を切ったままだった天上天下を納刀し、両手を着き肩で息をするモミジに駆け寄る。
「はぁっ…はぁっ…」
「大丈夫か」
「なん…とか…」
「無理すんな。…飲んどけ、レンの様子を見てくる」
「たのむ…」
モミジに回復薬グレートを二本渡し、ヤマトはレンの元へと向かう。
瓦礫に体を預け、インゴットシリーズの兜を取り回復薬を煽っている彼はこちらに気付くと笑顔を向ける。
「さすがモミジさんですね」
「あぁ。それより、お前は大丈夫か」
「直撃ではありませんでしたので。軽い打ち身で済んでます」
「そっか…ほら、これも飲んどけ」
ヤマトは安堵のため息と共にポーチから黄色の液体が入った瓶を取りだし投げ渡す。
自然治癒力を高める薬、活力剤だ。
レンはそれを受け取ると、助かりますと言って飲み干した。
「さて…と」
そこでヤマトは、天廻龍の方へと向き直る。
モミジの切り札により地に伏したが、殺めてはいない。
警戒を解かずにヤマトはゆっくりとその眼前まで歩み寄る。
「話がしたい。漆黒王」
『…』
「お前は…何に怯えている?」
『…っ』
天廻龍が息を飲む。
━━やっぱりか。
「お前、戦闘中の俺の問いにも動揺していたな。…もう一度問おう。シャガルマガラ、お前を突き動かすのは何だ」
暫くの沈黙の後、諦めたかのような小さい溜息を一つ吐いた金色の龍は話し出す。
『…
「………いや、知らねぇな」
天廻龍の問にヤマトは首を横に振ると、背後の二人にも目を向けるが、答えは同じ。
「…聞いた事さえありんせん」
「僕もです」
『…まぁ……そうであろうな…殆ど人間のテリトリーには姿を見せん奴だ。…やつは二つの頭を持ち、全てを喰らう暴食の古龍。貴様ら人間も勿論、我ら龍でさえ喰われる事がある。そんな奴が、数百年ほど前。シナトを襲った。』
ヤマトの脳裏に、村で見た本の絵が浮かぶ。
シナトを背に翼を広げ、まるで村を守るかのように描かれた黒蝕竜、もとい天廻龍。
そしてそれと対峙する双頭の龍。
「やはりあの本に描かれていたのは、本当に起きた出来事だったんですね」
「で…その双頭の龍…骸龍だったか。そいつから村を守ったんだろう?それと今の状況がどう関係しているんだ」
ヤマトの問に、天廻龍は唸るような声を上げたあとこう言った。
『…守れてなどおらぬ。
あの本に描かれているのは
配下へ…降った…?
ヤマトは驚愕すると同時に、頭の中にひとつの考えが生まれる。
いや…まさか…
「天廻の…まさか…その骸龍」
モミジも同じ事を思ったのだろう。
彼女の問いに、果たして天廻龍は…頷いた。
『…奴は、竜大戦時代の生き残り。
そして、かの煌黒龍が治めた我ら龍の軍をも裏切り、ただ人間の殺戮のためだけにもう一度の竜大戦を望んでいる。』
これが、モミジと旅をするきっかけとなった事件の、真実。
竜大戦を引き起こそうとしているのはこの天廻龍では無い。むしろ彼は、その駒として使われていただけだった。
黒幕は、謎に包まれし双頭の龍、骸龍だ。
『牙狼の』
「なんじゃ」
『兄の…家族の仇をとるならば我を殺せ…だが約束しろ。骸龍を必ず葬ると。…世界を…救うと』
「……」
ほぼ1年。
ここまで旅をしてきた最終目標…否、探していた既に亡き自分の兄の仇が、目の前で頭を垂れる。
モミジは歩み寄り、ゆっくりと腰の覇龍一文字を抜くと大上段に構える。
レンが焦りの目を向けてくるが、ヤマトはそれをただ見つめているだけだった。
「ぁぁぁぁぁぁあああああああああっっ!!」
叫びと共に振り下ろされたその刀は━━━
天廻龍の頭の真横を通り過ぎ、地面に深深と食い込んだ。
『……何故、殺さぬ』
「生きて償え。…多くを殺めたその命、次は他者を生かすために使ってもらう」
『生きて…償う…』
「教えよ。骸龍とやらの場所を」
『…定かでは無いが』
「良い」
『…ここから更に北西。山々が並ぶ地域の付近に存在する古代林という場所のどこかに、恐らく奴はいる。』
「古代林…わかった」
そう言って刀を納めた彼女は、くるりと踵を返すとヤマトの方へ歩き出す。
厳しい表情で向かってくる彼女に対し、ヤマトは僅かに笑って見せた。
それを見たモミジの目尻に一瞬、涙が浮かぶが、彼女は直ぐにそれを引っ込めるとヤマトに話しかける。
「ぬし、古代林とやら、わかるか」
「あぁ。やつの言った通り、ここから北西に気球船を使って一週間ぐらいの所にある狩場だ」
「そうか……。漆黒王」
モミジの呼び掛けに、天廻龍は下げていた頭を上げる。
「わっちらは骸龍の元へ向かう。
貴様は…どうする」
暫しの沈黙。そして、立ち上がり口を開いた。
『先に向かう。…向こうで落ち合おう』
ただその一言だけ残し、シャガルマガラは翼を広げると地平線に向かって飛び去って行った。
「味方になってくれたのでしょうか…?」
「…そうゆう訳では無いと思うが、敵意はもう無いだろう」
レンの問いにヤマトが答え、隣に立つモミジの肩にポンと手を乗せる。
「…帰ろう」
「…うむ」
どこか上の空で答えるモミジ。
その目は、今だ輝く兄の極旋角を見つめていた。
ヤマトも同じ所を見つめ、ポツリと呟く。
「お前の兄貴は…お前の幸せを今でも願ってると思うぞ」
じわ、と目尻に浮かぶ涙。
「…うん」
小さく答え、上を見上げる彼女の表情は白銀の髪と差し込んだ太陽の光に隠れて見えなかったが、その頬には涙が流れていたのだった。
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決戦の後、シナト村へ到着した一行はそのまま倒れるように眠りについた。
今回ばかりはヤマトも身体に堪えたのか、キャラバンの自室に着くなり即寝てしまった。
そして翌朝、勇魚丸甲板にて。
「…てなわけで1日空いちまったが、俺らが知り得た情報を伝える」
ヤマト達三人と向かい合うのは団長含めた我らの団一行。この村の人々には脅威は去ったとしか伝えていない。世界の危機など、態々話す必要は無いだろう。
ヤマトは順を追って、シャガルマガラから聞いた第二次竜大戦の勃発の可能性について話した。
団長以外は、それ以前にまず龍が言葉を話す事に驚いていたが、モミジが獄狼竜の化身だということを話すとソフィアなんかは目眩を起こしていた。
まぁ当然の反応だが。
「━━━てわけだ」
「……」
「竜大戦なんて、御伽噺だと思ってました…ギルドにも資料は残されていないはずです…」
「…世界の…危機…」
「よくわかんニャいけどやばいニャルな」
我らの団のメンバーに続き、そこで今まで黙って聞いていた団長がヤマトの目を見据えて口を開く。
「…行くのか」
「あぁ」
ヤマトの即答を受け、眉間に皺が寄る。
「…あんちゃん達が背負うってのか」
「全ては背負わねぇさ…てか背負いきれねぇよそんなもん。…だから団長、アンタに頼みがある」
「なんだ?」
「ドンドルマのギルド本部へ、この事を説明する言伝を頼みたい。宛先は、管理官のアマカゼって受付嬢だ。…アンタの権力ならその位できるだろ」
「…まったく君は…」
探るような問いに、団長はため息混じりに笑って見せた。
「わかった、直ちに伝書鳩を飛ばそう。それと、あんちゃん達は龍歴院のあるベルナまで送るぜ」
「話が早くて助かる」
そうと決まればのんびりしていられない。
一行はシナトの者達に別れを告げると、勇魚丸へと乗り込み空へ飛び立った。
「進路北西、ベルナ地方。出航だァ!!」
「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
我らの団が、勇魚丸の乗組員が、吼える。
竜と人。互いに争い、時に協力した種族がぶつかり合う日は近い。
どう転んでも、世界は動く。
ヤマトの心の中はその争いを食い止めなければならないという思いと、それに反して傍らで船員達に笑顔を向ける彼女さえ無事ならばそれでいいという思いが複雑に絡み合っていた。
しかしそれでもやらねばならない。
きっと、この戦いの果てには━━━━━━
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「アマカゼ管理官、貴女当ての伝書が届きました」
そう言って駆け寄ってきたギルドの職員が、カウンターで作業をしていたシズクに封書を手渡す。
「ありがとう。…誰からかしら…」
「お?ラブレターか?」
カウンター越しにそんな軽口を叩いてきたのはライキ。そんな彼を睨みつける。
「うっさい。…差出人名は…書いてないか。あれ、でもこの刻印、どこかで…」
刻印の模様には見覚えがあった。
「━━━━あ」
思い出した。というように思わず声を出す。
いやしかし、まさか。
「誰かわかったのか?」
「………」
「シズク?」
無言ですぐさま封書を開く。
中には1枚の手紙。
内容は━━━━
「うそ…………」
彼女の唯ならぬ様子に、ライキも表情が変わる。
「どした」
「…ライキ、狩人仲間を集められるだけ集めて。緊急事態よ」
「ヤマト達か?」
「えぇ。あの子達が危ない」
「わかった、すぐに集める。詳細は後で聞く」
「助かるわ」
「おう」
短く返事をした彼はカウンターに置いてあったレウスヘルムを小脇に抱えると、そのままギルドの外へと駆け出して言った。
シズクはそれを見送ると、もう一度手元の手紙に目を落とす。
その手紙の送り主は、かつてシズクが所属していた古龍観測隊の上官からだった。
『もう一度、キミの力を貸して欲しい。』
「…先生、まさか貴方がヤマトくん達と共にいるなんて」
そう呟き、手紙を丁寧に折り畳んでデスクの上に置くとシズクはカウンターから飛び出し、ある場所へ向かう。
ドンドルマの行政の中心、大老殿へ。
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「…随分と遠くまで来ちまったなぁ」
勇魚丸甲板。月の明かりだけが頼りの夜更けにヤマトは一人、眼下に広がる景色を眺めていた。
最初は慣れなかったこの高さも、こうやって手すりに寄りかかれるぐらいには慣れてきている。
━━モミジと渓流で出会ったのが約11ヶ月ほど前。
そこから数多の出会いと別れを経験しながら、遥か遠くまで旅をしてきた。
その旅路も、もうじき終わる。
骸龍を討てば、恐らく全てが幕引きとなるであろう。
でもその後。無事生還したとして、自分はどうすればいいんだろうか。
ユクモに戻り、再びひっそりと暮らすのか。
モミジと共に宛のない旅を続けるのか。
それとも━━━━。
「姉ちゃん…俺は…どうしたいんだろうな」
思わず、そんな事を言いながら空を見上げる。
今夜は雲がない。そのお陰で、満天の星空が広がっていた。
姉は…ユズカは、一体どの星なんだろう。
そんなくだらないことを考えていると、後ろから小さく足音が聞こえた。
「おや」
「…あんたか」
「悪いな、嬢ちゃんじゃなくて」
振り返ると、団長がいた。
彼は軽口を叩きながら歩いてくると、そのままヤマトの横に並ぶ。手には小さい木のジョッキを持っている。中身は酒だろうか。
「風が気持ちいいなァ…」
「そうだな」
暫しの沈黙の後、団長はかぶっていた帽子をとる。
中の小さなポケットにしまってあった"かの龍"の甲殻を取り出し見つめる。
「まさか、天廻龍の甲殻だったとはなァ」
「なんでおっさんが持ってたんだろうな」
「さぁなァ…コレ、俺の親父の形見なんだ」
「…へぇ、似たところあるもんだな」
「…?」
意味深な言葉に、団長は首を傾げる。
それに対してヤマトが崩竜の腹鱗の付いた首飾りを見せると、団長はなんとなく察しが着いたようで静かに笑った。
そして、再びの沈黙の後。
「…あんちゃん」
「ん?」
「レン君のことなんだが…」
ジョッキの中身を見つめながら、団長はそこまで言って口を噤む。
その先の内容は、言われずともヤマトはわかっていた。
「ベルナに着いたら、あんたに託すよ」
「…聞いたのか」
「いや。何となく察しはつくさ。それに、あいつは俺らについてくるより、そっちにいた方が安全だ」
「そうか。君たちは…それでいいのか」
「…モミジは寂しがるかもなぁ。でも、レンは誰よりも真面目で勉強熱心だ。俺より遥かに年下なのにな。…だから、あいつにはもっと夢を持って欲しいんだよ。」
以前、レンは団長と二人だけで話をしていた。内容は聞いていないが、何となく予想はついていた。
この男━━我らの団の団長は、おそらく古龍観測隊か王立書士隊あたりの重役だ。だからドンドルマにいるシズクへの伝書も簡単に引き受けた。
そんな彼が、レンと話がしたいと言った時からヤマトも思っていた事。
レンを、古龍観測隊か王立書士隊のどちらかに配属させる。
旅の途中、彼本人からも聞いたことがあった。竜や古龍の生態をもっと知るために、いつかそうゆう機関に入りたいと。
だからヤマトは、自分たちの旅からレンを引き離すタイミングを見ていた。それが、今この時なのだろう。
ベルナに到着したら、我らの団ともお別れだ。その時に、レンを団長に託す。本人抜きで話が進んでいるので恐らくこの事を話したら拒否されるだろうが、この先の戦いにどうしても彼を巻き込みたくなかった。
「了解した。なら、責任を持って預かろう」
「あぁ、頼む」
「…そろそろ山岳地帯上空だ。夜は冷えるぜあんちゃん、早めに戻れよ」
「りょーかい」
団長はヤマトの、ふの抜けたような返事に笑って返すと船内に戻って行った。
「━━三人で旅ができるのもあと少しか」
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シナト村を出立してから約二週間。
ヤマト達一行を乗せた勇魚丸は、遂にベルナ地方へと到着した。
「意外と…暖かいの」
「そうだな。俺も、山脈が近いって聞いてたから寒いかと思ってたぜ」
いざ到着したベルナ地方は、ヤマト達が思っていた以上に気候に恵まれた土地だった。
ベルナ村はムーファと呼ばれる小型の草食獣を放牧している村で、名物は彼らから取れるミルクを使ったチーズフォンデュ。米類なども生産しているようで、その気候故なのか作物も豊富だそうだ。
そして村からさらに山脈側、まだ距離はあるが肉眼でもハッキリと見える建物。
「あれが、龍歴院」
レンが目を輝かせて見つめるそれは、各地のモンスターの生態を研究している機関である。
古龍観測隊、王立書士隊に次ぐ組織のひとつだ。
「さァて、んじゃあ俺らの出番はここまでだな。」
遅れて船から降りてきた団長が遠くに聳える山脈を見ながらそう言った。
「…世話になったな、団長。」
「何を言う、君達がいなければ我々もこんなに楽しい旅路は送れなかっただろう。俺らこそ、ほんとに世話になった」
「団長殿」
モミジがレンの背中を押し、そう言った。
何も知らない彼は、え?と言葉を漏らし不思議そうにしている。
「レン坊を…頼みんす」
「あぁ」
「…どうゆうことですか…?」
ここで、ヤマトはレンに裏で話が進められていた事を全て伝えた。
それに対するレンの答えは、やはりと言うべきか。
「━━嫌…です」
「まぁ、そう言うだろうと思ったよ」
「僕では、お二人にとって力不足だったということですか…」
「たわけ、そんな訳がなかろう。今までわっちらが、何度おぬしに助けられたと思うておる」
「では、なぜ…!」
食い気味に声を荒らげるレンの頭に、ヤマトは優しく手を置いた。
「お前は俺らよりまだ若い。そして何より、お前のその頭脳はもっともっとたくさんの事を学んで、それを身につけることができる。だから、俺らについてきて無駄にしちゃいけないんだ。」
「でもそれではまるで、あなた方がいなくなってしまうような言い方では…!!」
「ここから先は、狩りじゃない。戦争なんだ」
「っ…」
「お前はまだ、狩人で居ろ」
ヤマトの言葉を最後に、レンは黙って俯く。
そこに、モミジが声を掛けた。
「わっちらが戻るまでに、ドンドルマの酒が美味い店を見つけておくよう心得ておけ」
その言葉を受けて彼の顔にやっと笑顔が灯った。
「モミジさん、僕はまだお酒飲めませんよ」
「ならば飯が美味い店じゃ。必ず見つけておきんす」
「…わかりました。 」
━━━もう、大丈夫そうだな。
レンの顔を見てヤマトも心の中で安堵の息を漏らした。
「よォし。そうなりゃレン、ここまで来たついでだ、龍歴院もみてくかァ」
「はい、よろしくお願いします。団長さん」
まかせろぉいと意気込んで荷物を取りに行く団長の背中から目を逸らし、レンはヤマトとモミジに向き合う。
「…本当に、ここまでありがとうございました。タンジアの港で助けて下さった恩…いえ、それ以外にも沢山ありますね。今までお世話になった分、いつか必ずお返しします。」
「あぁ」
「くふっ…待っておるぞ」
「どうか…お二人もこの先お気をつけて。必ずまた、お会いしましょう」
「それまでに、もっとでかくなっとけ」
「はい!!」
大きく返事をすると、レンは踵を返して団長達の元に走り出す。
━━暫くして、準備の整った勇魚丸が空へと飛び立つ。
甲板から手を振る勇魚丸の船員、我らの団、そして涙を流しながらも笑顔を向けるレンに、ヤマト達も大きく手を振った。
「あんちゃん!!嬢ちゃん!!達者でなァ!!!!」
「二人とも、お世話になりました〜〜!!」
「また飯食いに来るニャル〜!」
「…」
「どうかご無事でっっ!!またっ…また、必ずっ!!」
レンの言葉の最後は船の音に掻き消されたが、その先の言葉は聞こえずとも分かる。
━━━必ず再会しよう。
それを胸に誓い、ヤマトは手を振り続ける。
隣で僅かに涙を流し、少し控えめに手を振るモミジの肩を抱くと、生意気じゃ。とも言いたげに目を向けてきたが…これは気付かないふりをしておこう。
やがて大きな空飛ぶ鯨は龍歴院の方向、山脈へと消えていった。