「…困ったな」
「…困ったの」
「どうしたもんかな」
「どうしたものかの」
ベルナ村にて、ヤマトとモミジはテーブルで向き合いながら険しい表情をしていた。
レン達と別れて一週間。
ひとまず宿を取り、荷物の整理やら消耗品の買い出しやらに追われた生活をしており現在やっと落ちついたところだったのだ。
そして二人が座るテーブルの上には、少し大きめの鍋。その中にはここら一帯の名産品であるチーズがグツグツと音を立てている。
そう、二人が直面している問題。それは…
「初めて食ったが…このチーズフォンデュ…」
「うむ…………美味すぎる」
この料理を考え出した人に会えるのならば土下座して御礼をしたい。
…いやほんとに。
さっきからパンにチーズをつける手が止まらねぇ。
「……」
「ん?どした?」
しかし突然、食事をするモミジの手が止まった。
不思議に思い彼女を見ると、店の外に広がる街並みを見ている。
「ここの者達は…危機が迫っていることを知らぬのだろうか。」
その言葉に促されて流れゆく人々の顔を見ると、確かに新たなる竜大戦が起きるかもしれないなんて事はまるで知らない、穏やかな表情だった。
「恐らく、ギルドや龍歴院が情報規制を行っているんだろう。…知らせてもパニックにしかならねぇだろうしな」
「……それならば尚のこと、食い止めねばな」
「…そうだな」
「…さて、それではぬしよ」
「なんだ」
「残りのパンはわっちがすべていただこう」
「待て」
重い空気を打ち消すようにモミジがそう言うので、ヤマトも気持ちを切り替えて返事をするのだった。
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「━━━以上が古代林での報告になります」
「なるほど、ありがとう」
ヤマトは話していた龍歴院の隊員に礼を言うと、踵を返して入口の壁にもたれかかっているモミジの元へ歩き始めた。
「話は聞けたかや?」
「あぁ。どうやらここの所、調査のため古代林上空を通過中の気球船が相次いで行方不明となる事例があったそうだ」
「…ギルドはそれでも動かぬのか?」
「まさか。特務扱いで手練のギルドナイト数名を送り込んだらしい。だが…」
「死んだか」
「あぁ、後日別の依頼で狩場に入ったハンターが、一名の下半身を見つけた。装備がギルドナイトの物だったらしいから間違いないだろう」
「他の連中は生死不明か?」
「いや、すぐ側で人の見分けもつかねぇような肉塊も発見されてるらしいからな、死んだだろう」
「…惨いの」
モミジが苦虫を噛み潰したような顔をする。
今の話を聞けば、当然だろうが…。
「さて、ひとまず現地に行ってみない事には情報が足りない。行くぞ」
「承知」
モミジの返事に頷くと、ヤマトはベルナのハンターズギルドに向かって歩き出した。
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古代林とは、ベルナから海を隔てて少し距離のある広大な島の南半分のことを指す。ヤマトとモミジは出発から約半日、龍歴院の気球船に乗ってようやっと狩場へと辿り着いた。
「気候はモガの島に似てんだな」
「うむ、これならば本来多くの竜が暮らしておるじゃろうに…」
「…一匹も居ねぇな」
二人がベースキャンプを出発し歩き始めてから約一時間ぐらい経つはずだが、未だに小型のモンスター一匹でさえ見かけない。
古龍などの出現で一帯のモンスターが軒並み居なくなることがあるが、この場合はやはり骸龍が関係しているのだろうか…。
━━━と、不意にモミジが足を止める。
「どした」
ヤマトの呼び掛けにも応じず、その場で獄狼竜の耳を出してしゃがみこみ地面に手をついた。
「ぬし、僅かじゃが地鳴りがする。」
「地鳴りだと…?」
「うむ……━━━いや待て、これは…」
しばらく耳を澄ませていたモミジが弾かれるように顔を上げる。
「これは足音じゃ…それも数え切れん程の…!」
「竜か」
「恐らく…北東からこちらへ向かってきておる」
モミジの言葉を聞くや否やヤマトは腰の天上天下無双刀を抜刀。
モミジも袴姿からジンオウUシリーズへと姿を変え、愛刀の覇龍一文字を抜き放った。
暫くすると、ヤマトにもわかる程地面が振動し始め、追い掛けるようにドドドという音が耳まで響いてきた。
恐らく音からして小型モンスターの大群が迫っている。
「用意は?」
「聞かれるまでも」
短い会話を交わし終えるとほぼ同時に、目先の森林を突き破って音の主達が現れた。
ジャギィ・フロギィ・マッカォ・ブルファンゴ・リノプロス━━━パッと目に入っただけでもそれだけの竜が奇声に近い鳴き声をあげながら突っ込んでくる。
「東雲流滅龍抜刀術…!!」
「牙狼式滅龍一刀道…!!━━四ノ撃!」
━━「禍津連斬ッッ!!」
━━「旋風ッッ!!」
ドパァッと血飛沫の華が咲く。
ヤマトとモミジの攻撃により戦闘を走っていた集団は一瞬で絶命する。
しかし、それを踏み越えて更に大群が押寄せてきた。
「ちぃっ…!!」
「ぬし!これではキリがないぞ!!」
飛びかかってくるもの全てを切り伏せながらも舌打ちをするヤマトにモミジが叫んだ。
「モミジ!!俺が引き寄せるから一気に吹き飛ばせ!!」
「承知…!」
そう言ってモミジが大きく後方に跳ぶと、ヤマトは腰につけて合った角笛をおもむろに吹く。
ブォォォという低い音に反応した残りの残党が一斉にヤマトめがけて押し寄せる。
「今だ!!」
ヤマトが合図を送るとモミジは左手を前に突き出す。同時に、周囲には幾つもの蝕竜蟲弾が展開した。
「穿て」
淡々とした声に反応するように、高速で射出された深紅の閃光がヤマトの周囲の敵群に次々と着弾し、確実に葬ってゆく。
一通りの攻撃が止むと、襲ってきた一団は跡形もなく地に伏していた。
「…片付いたか」
「うむ…しかし、何事じゃ。漆黒王を退けた今、あのように小型が暴走することは無いはずじゃが…」
足元に横たわるジャギィの亡骸を見下ろしながらモミジが言う。
確かに、狂竜ウイルスに侵されていた様子は無かった。それに━━━
「彼奴等、わっちらに対して意志を持って襲ってきおった」
「…そのとおりだ。ウイルスに侵されている訳でも無いのに肉食も草食も入混ざって俺らを襲ってくるのはおかしい。普通、違う種族同士があそこまで統率の取れた行動をするか…?」
「否じゃな。まず有り得ぬ。」
「一体何が…」
━━━まさか、すでに竜大戦の火蓋は…
「とりあえず、奥へ進もう。こいつらが来た方角に、何かあるかもしれねぇな」
「そうじゃな」
そういうと二人は納刀し、古代林の奥地へと歩みを進めた。
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暫く歩みを進めると、広大な草原へとたどり着いた。地図上ではエリア6となっているそこは、周りに大きな木々はなく、島の中心近くに位置する活火山がしっかりと視認できた。
「古代林はこの島の南半分のことを指すのじゃろう?北側はまた別の狩場扱いなのかや?」
「いや、北側は足場が悪く地形も入り組んでいて狩りができるような環境じゃ無いらしい。」
「ほう…ならば骸龍とやらがいるとすればそちら側か」
「まだなんとも言えねぇな。とりあえずは古代林自体をもう少し見て回って━━━━━」
「ぬし」
ヤマトがなにか違和感に気づき言葉を止めるのと、モミジが話を遮るタイミングが重なった。
「あれは…」
「…間違いあるまい」
視線の彼方、上空の太陽を遮るような影…いや、光。
金色の龍が、此方へとゆっくり降下してくる。
「貴様…」
「モミジ、よせ」
「……わかっておる」
髪の毛からパシッと龍光を迸らせたモミジを制すと、目の前にその龍は降り立った。
『ようやっとの到着か』
「お前と違って翼がないんでね、シャガルマガラ」
『ふん…』
天廻龍はヤマトの冗談を軽く鼻笑いであしらうと、モミジの方を見る。
『…どうした。別に撃ってきても構わぬのだぞ』
棘のある言い方。だがしかし、以前のかの龍のような挑発的な口調とは異なる言い方だった。
「貴様の姿を見ると腹は立つ…が…もう終わった事じゃ」
『そうか』
これまでは間見える度に一触即発だった為、ヤマトは二人のやり取りを聞いて心の中で安堵のため息を漏らした。
「それで、ただ顔を出しに来たわけではあるまい?」
『あぁ。一足先にこちらに到着した後、島の上空を一頻り飛んでみた。その報告だ』
「どうだった?」
『…島の奥は随分と悲惨な状況だった。人間の乗り物が幾つも墜落し、燃えていた。生き物が焦げた臭いもしたからな。おそらく全員死んでいる』
「そうか。まぁ予想はしていた。」
「原因はやはり古龍か?」
『いや…それもあるかもしれぬが、大型の獣や竜が蔓延っているのも確認した。大方の人間たちはそ奴らにやられたのであろうな』
ヤマトは足元に視線を落とし考える。
大型モンスターの集結…やはり既に、戦争は始まっているのだろうか。
だとすると、ドンドルマからの増援が間に合うかどうか…。
「ぬしの考えている通りかもしれぬ」
『…来たか』
モミジとシャガルマガラの声に顔を上げると、エリア6の彼方、島の奥側の森林が大きく揺れている。━━━━と同時に、地鳴りが起こった。
「ぬし…!」
「偵察だけのつもりだったんだがな…!!」
『今は我らだけでやるしかあるまい』
「手ぇ、貸してくれんのか」
『そう約束した』
「…ありがとう」
ヤマトの礼にフンと鼻で笑いあしらったシャガルマガラは大きく羽ばたき上空へと舞い上がる。
そして、揺れていた木々を押し倒し現れたのは多種多様な大型モンスター達だった。
ディノバルド、セルレギオス、ライゼクス、リオレウスにリオレイア。ナルガクルガ、ロアルドロス……その他にも数え切れないぐらいの竜たちが、各々咆哮を上げながらこちらへ突っ込んでくる。
「おいおい…こりゃあヤベェな…!!」
「ぬし、いちいち相手をしていてはキリがないじゃろう。まとめて吹き飛ばす。よいな」
「わかった」
モミジは切り札を使うつもりだろう。ならば、こちらは時間を稼ぐ。
ヤマトはモミジを置いて走り出し、上空を飛ぶ天廻龍に叫ぶ。
「シャガルマガラ!時間を稼ぐ。合わせろ!」
『心得た』
腰の天上天下無双刀を抜刀、間合いを一気に詰める。
━━絶技発動
「東雲流滅龍抜刀術…」
━━ 獄の狼に仕えし下僕達よ、牙狼の姫が…今その力を解き放つ。
ヤマトはそのまま敵陣を突き抜けるように敵を切り刻みながら進む。途中避けきれない攻撃が体を傷つけるが、怯むことなく集団を抜けると納刀。ここまで1秒にも満たない一瞬。
ヤマトの背後でドパァッと血の花が咲く。
「彼岸花」
━━ 情け無き我が暴状を許したまえ。
しかし仕留める事までは叶わない。
が、それで良い。何故ならば━━━
『巻き込まれるなよ、人間』
上空から紫電色をした極太の光線が迸る。
それはヤマトの攻撃で傷ついた数十の竜達を穿ち、弱っていたものを消し炭にする。
先頭集団だった数多の竜は、その攻撃でほぼ壊滅。だがそれを乗り越えてこちらに迫る後方の竜達。
━━そして滅びよ
だが、ここまでだ。
『牙狼の!!』
「かましてやれモミジ!!」
━━ 全てを喰らう、紅蓮の龍
バチバチバチバチという轟音とともに、後方━━モミジの手元より巨大な紅蓮の龍が顎を開きながら現れた。
「
天地が引き裂かれるほどの音と共に、地面を抉りながら進むその龍が消えた後には、もう何も残っていなかった。
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その後、現地に残ると言ったシャガルマガラを置いてベルナへと帰還したヤマトとモミジは、直ぐに異常事態の発生を報告した。
「━━━━以上だ」
「………」
「………」
ここは龍歴院の会議室。中央に大きな世界地図が広げられている円卓を囲み、各部署のトップが集まっている。その中でも一番の権限を持つベルナのギルドマネージャーと、龍歴院の院長でさえ、今の報告に思わず黙り込んでしまう。
しばしの沈黙の後、口を開いたのはハンターズギルドベルナ集会所の受付嬢だった。
彼女にはヤマト達もここに来てから何度も世話になっており、聞く話によるとドンドルマのシズクの後輩らしい。
「とにかく、周辺の全地域に応援要請をするべきかと。」
淡々とした口調で述べた意見に上層部の人間もそうだなと頷き、ギルドマネージャーが指示を飛ばした。
「タンジア、ロックラック、ミナガルデ、ドンドルマの各方面にハンターの支援要請を送りなさい。…どこも距離があるから間に合うかわからんがの…」
「了解しました。直ちに伝書鳩を飛ばします」
バタバタと動き出す人々を見ながら、隣にいるモミジがヤマトに声を掛ける。
「…ぬし」
「ん?」
「援軍など…間に合うのかや」
「正直、厳しいだろうな。一番近い大きな街からでも気球船で4日ってところだ。それまで古代林で何も起こらないとは思えねぇな」
「ならば━━」
「だからもう手は打ってある」
「…え?」
モミジが驚きの声をあげるのと、会議室の両扉がバンと開かれるのは同時だった。
二人が振り返ると、そこにはもはや懐かしさを感じる人物━━━━━
「シズク!!」
「久しぶり、モミジちゃん。」
「来たか」
「ヤマト君…ごめんね、時間がかかっちゃって」
「いや、大丈夫だ。わざわざすまん」
突然現れたドンドルマハンターズギルド本部の受付嬢と、その背後に立つ完全武装のギルドナイト達を見て先程まで会議に参加していた面々は驚いている。その中で唯一、それに動じていないヤマトにギルドマネージャーが話しかけた。
「ヤマト殿、お前さんが呼んだのかい?」
「俺が…というより、知り合いに呼んでもらったんだ。こうなってからじゃ遅いと思ってな」
「そうか…すまないねぇ。助かるよ。━━受付嬢殿、事態は既に?」
「ある程度把握しております。既に集会所にドンドルマからのハンターと、武装気球船が五隻、到着しています。」
シズクの報告に、皆の口からおぉ━━という声があがる。
これで、ひとまず基盤の戦力は整った。
なんと言っても大都市ドンドルマからの援軍なのだ。シズクの事だから、結構な人数のハンターを集めてきたに違いない。
あとは他の街からの援軍が到着すればかなりの量になるはずだ。
「ヤマトくん、ライキも来てるわよ」
「お、そうか。ちょっくら顔でも出してくるかね」
「案内するわ」
以前ドンドルマでの老山龍戦の時にも共に戦ったライキも来ているようだ。シズクに連れられてヤマトとモミジはギルドの集会所へと向かう。周りをギルドナイトに囲まれているので少し緊張しながらも到着するが━━━。
「…すげぇ…こんなに…?」
そこに集まっていたハンターの数を見てヤマトは驚愕する。
シズクが連れてきたハンターの数は百人程度だと思っていたのだが、実際目の前にいる人数はその三倍…いや、四倍近いか。
「皆、あなたたちの為に来てくれたのよ」
「…そうか」
「まぁ俺が集めた奴もかなりいるけどな!!」
シズクとの会話に割って入るように背後から声がかかる。
聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはレウスXシリーズに身を包んだ狩人がいた。兜は外していたので直ぐに誰かわかる。
「ライキ」
「よう、シノノメ。」
「来てくれてありがとう」
「いいんだよ、元気そうでなによりだ。モミジさんも、久しぶりだな」
「うむ、助太刀感謝する」
気づけばライキの背後にも見知った顔がいくつもいた。ドンドルマにいた頃、共に戦い酒を酌み交わした狩人達だ。
「おお!!モミジちゃんだ!!!」
「モミジちゃああああああああああああ」
「おいうるせえぞ!!」
「モミジさんお久しぶりです」
「まぁたこの子と酒が飲めるのかァ〜!!おじさんがんばっちゃうぞー!!」
…お前ら…
そういえばドンドルマにいた頃は夜酒場に行くといつもこんな感じだったっけ。
ヤマトそっちのけで、モミジの周りにはいつも人だかりができていたのだ。
「皆も元気そうでなによりじゃ。わざわざ来てくれてありがとう」
そう言いながら彼女がニコッと笑うと、これまた男どもの暑苦しい歓声があがる。
少し離れたところで見ているヤマトとライキ、そしてシズクは呆れた顔をしてそれを見つめていた。
「おいシノノメ、どうにかしてこいよ」
「やだよ、俺が首突っ込もうものなら乱闘騒ぎになる」
「ホントやめてねそれは。」
シズクが顔を片手で覆いながら、もう片方の手で傍らに立つギルドナイト達に向かって手招きする。
「お願い出来る?」
「承知しました。艦長。」
短いやり取りをするとシズクの周りを囲んでいたギルドナイト五名がモミジの取り巻き達を確保して連行していく。
「あ、おめぇ!!何すんだこの!」
「おい俺もかよ!?」
「あああああそんなああああ」
「不覚です…」
「まぁた後でなぁ〜」
ギャーギャーと騒ぐ男達がズルズルと連行されていく様はそれはもう面白かった。
━━ところで。
「シズク、艦長って?」
先程ギルドナイトがシズクに向かって言った呼び方が気になったヤマトは問うてみる。
「あぁ、今回私が武装気球船の旗艦長をする事になっちゃってね」
「あぁ、それで…えらく出世したな」
「やめてよね、その言い方」
「おぉ怖ぇ」
ヤマトの冗談にシズクが睨みつけてくるので、思わず苦笑いするしか無かった。
すると、先程まで連行される男共に手を振っていたモミジが近寄ってきた。
「相変わらずの人気っぷりだな」
「くふ、嫉妬かや?」
「今更アイツら相手にするかよ」
「なんじゃ残念」
カカカ━━と笑うモミジにヤマトが苦笑していると、シズクが「さて」と手を叩きながら空気を切替える。
「大まかな事情は手紙で聞いたけど、改めて詳しい状況を聞こうかしら」
「…わかった。俺らが古代林の様子を見に行った時━━━━」
ヤマトはそこで古代林で起きている異変について詳しくシズクやライキに説明した。
「なるほど……本当にあの竜大戦が繰り返されようとしてるのね」
「俺ァ、そんなものは御伽噺だと信じてこなかったが…実際に起こっちまうとはな」
ヤマトの話に二人は驚きつつも落ち着いて反応していたが、同時に実感もあまり湧いていないようだった。
「とにかく、もう時間が無い。本当なら他の街からの援軍を待っていたいところだが…」
「そんな事をしていてはこちらが後手に周りんす」
「そうね…やるしかないか」
「あぁ…だが、どうする?迎え撃つモンスターがどれぐらいの規模なのかもわからねぇのに、ドンドルマの連中だけで援軍が来るまで凌げるとは思えねぇな」
「いや、それならある程度予想はつくさ」
「…どうゆうこと?」
ヤマトの言葉に、シズクが眉間に皺を寄せて問う。
「古代林が存在するのは洋上に浮かぶ一つの島だ。いくら相手が大群でも、島に生息できる生物には限りがある。」
「まぁ、そうだろうけど…飛竜は海を越えてくるんじゃないかしら?」
「あの島は気球船でも陸地から半日はかかった。いくら飛竜種でも、その距離を休み無しで飛ぶことは出来ないだろう。」
「…援軍が来るまで持ち堪えることは可能…か」
「だが…どちらにしろ厳しい戦いになる事は間違いねぇ。シノノメ、逆に言えばお前だって半日戦い続けることは━━」
「やってやるさ」
「━━っ」
「ヤマトくん、いくらあなたでもそれは無茶よ」
「誰が決めたよそんな事。俺は、半日だろうが1日だろうが戦い抜いてやる」
ヤマトの眼光が決意の光を帯びる。
ユクモ極天の隙間から除くその眼は、誰に何と言われようと揺るがぬ意志を示していた。
そして、それは彼の傍らに立つモミジも同じであり━━━
「…はぁ…わかったわ」
「シズク、お前」
「仕方ないじゃない。ライキも知ってるでしょ。こうなったらもう誰にも止められないわ……姉にそっくりよ」
「だがよ…」
「ライキ、頼む。力を貸してくれ」
ヤマトが頭を下げると、ハンマー使いの彼はその赤い短髪をポリポリと掻きながらため息をついた。
「わあったよ。元々そのつもりで来たんだ。こうなりゃヤケだ、とことん付き合ってやる」
「…悪いな。ありがとう」
「おいおいもうやめろって、いつからそんなに腰が低くなったんだよ」
ヤマトが再び頭を下げると、苦笑いしながら彼はレウスアームに包まれた無骨な手を肩に置いた。
「さぁて、久々のでかいヤマだ。シズクよぉ、ちゃんと報酬は出るんだろうな」
「…現金なヤツね全く。まぁ期待しときなさい。なんたって世界を救うんだからね」
ライキの冗談にシズクが呆れた顔で返す。
━━世界を救う…か。
とんでもない響きだな。とヤマトが笑う
するとモミジが一歩前に出て、振り返り手を差し伸べてきた。
「ぬし」
「あぁ。やり遂げてやろうじゃねぇか」
その透き通ったような華奢な手を握る
「うむ。共に。」
戦いの火蓋は、切って落とされた。