モンハン小説[紅の舞姫]   作:Momiji712

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第9話 砕竜の子

 

 

 

ヤマトとモミジは、その光景に言葉が出なかった。

それもそのはず、今の今まで目の前にいたはずの少年━━レンがいきなり『姿を変えた』のだから。

姿を変える直前、レンは「あなたがた二人に言わなければいけない事がある」といい、すぅ。と息を吸いこんだ。

その刹那、彼の装備しているハンター装備の所々が黄緑と紺色を合わせたような不思議な色の光に包まれ、人間の手や足ではない何かの甲殻に変わったのだ。

 

「…レン、おぬし…まさか」

「…はい。僕は普通の人間ではありません。」

 

一息ついてから、彼は言った。

 

「僕は…砕竜 ブラキディオスを祖先に持つ……半竜人です」

 

【半竜人】

それは伝説として語られている、人間でありながら竜の力を持つ人々のこと。

はるか昔、ある一人の人間と竜が結ばれた。

それを機にいくつかの種類の竜と人々が結ばれ、そこから生まれたのが半竜人だった。

彼らは人の姿でありながら鱗を持ち、親の竜の能力を受け継ぐという普通の人間とはかけ離れた力を持っていた。

しかし彼らはその強大な力ゆえに、忌み子だと周囲から恐れられ、その殆どが処刑されてしまった…

そんな話を、ヤマトは幼い頃ユズカから聞いたことがあった。

 

「あの話は…本当だったんだな…」

「まさか…半竜人がまだ残っておったとはの…血は薄まっているが、引いている血が砕竜の血となると…例え僅かでも強大な力じゃ」

「んじゃあ…レンの言ってた恩師って…」

「はい、僕を育ててくれたのはこの島に住んでいたブラキディオスです。実母には…生まれた時にここに捨てられたそうです」

 

レンの言葉を聞いたモミジの顔が歪む。

先程まで家族を失った話で号泣していたのだ。自分の体験もふまえ、レンが可哀想なのだろう。

 

「そんな顔しないでください、モミジさん。僕は大丈夫ですよ」

 

そう言ってニコリと笑うレン。

 

「んで?その育ててくれたブラキディオスはまだここに…?」

「いえ、彼は僕を拾った時点でかなり年老いていましたので…僕が7歳になる頃に亡くなりました」

「そうか…ならここに来た目的は墓参りか?」

 

そこでレンは半竜の姿から再び人間に戻り答える。

 

「まぁ…お墓と言っても僕が作った即席のお墓なので…大したことはないんですけどね」

 

そういって苦笑いしながら頬をかく。

その様子にモミジは優しい笑みを浮かべ、

 

「そう言うことならば…ぬしよ、ハクとの約束の日まではまだ時間がある。明日にでも森へ行かぬか?その砕竜の墓参りにの」

 

確かにモミジの言う通り、白海竜と共に大海龍を追う作戦決行の日はまだ少し先だ。

その間、特にやることもないので賛成する。

 

「そうだな。レン、その墓参りに俺らも同行していいか?」

「勿論大丈夫ですけど…いいんですか?」

「ん?何がだ?」

「いえ…僕個人の事なのにお付き合いいただいても良いのかと…」

 

そう言って不安そうな顔をするレン。

しかしすぐモミジに頭をわしゃわしゃと撫でられる。

 

「うわぁ!?モミジさん!?!?」

「何を言うとるかお前は。レンのお世話になった奴なのじゃろう?ならば挨拶くらいしておかねばの。それに、わっちもあの森をまわって見てみたい。ダメかや?」

「いえ…!わかりました、そうゆうことであれば是非一緒に来てください!!父も喜びます!!」

 

父、と自分で言ったあと

あっ…

とレンが赤面する。

どうやら育ててくれたブラキディオスを父親同然に慕っていたのだろう。

思わず口に出してしまったのが恥ずかしかったのか、赤面しているレンの背中をヤマトはポンと叩きながら立ち上がる。

 

「さぁ、なら明日の朝一番で孤島に行くぞ。そろそろ寝よう」

「はい!!」

 

タタタと駆けていくレンの背中を見送りながら、後にまだ腰掛けているモミジのほうを振り返る。

 

「さ、モミジ。帰ろう」

「…うむ」

 

その目にもう迷いは無い。

過去を打ち明けたことで色々な決心がついたのだろう。

まっすぐとモミジから差し伸べられた彼女の手を、ヤマトもかたく握り返した。

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

翌朝、孤島 エリア3番。

 

「この先の…あの小さな洞穴を潜るとエリア4番、モンスターの近づけない安全地域に入ります。といってもブナハブラ程度はいるんですが…そこに父の墓があります」

 

そう言ってレンがエリア4へ続く小さな穴を指さす。

 

「安心せい、虫けら程度ならわっちの下僕(しもべ)けでも容易く追い払える」

 

モミジが軽くそう答え指をパチンと鳴らすと、彼女の頭上に下僕…もとい触龍虫が漂い始めた。

 

「すごい…綺麗ですね」

 

赤黒く輝くその虫たちを褒められたモミジは少し顔を赤くする。

 

「そ、そうかや…?こ奴らを褒められたのは初めてじゃ……ヤマトは綺麗などと言ってはくれなかったからの」

 

最後に嫌味を言われたヤマトは困った顔をする。

 

「いや…あん時はお前と出会って間も無かったからな…そんな余裕なかったんだよ…悪かったって」

「ふん、どーだかの」

 

そう意地悪そうに笑いながら言ってくるモミジに、ヤマトはただ苦笑いするしか無かった。

そんなやり取りをしながら進んでいくと、少し開けた場所に出る。

すぐ横の壁には奥から明るい光の漏れる洞穴が一つ。中からニャーニャーと鳴き声が聞こえるので、おそらく野生のアイルー達の住処なのだろう。

そして━━

 

「ここです」

 

レンの目の前にあったのは、首飾りがかけられた大きな石。これが、レンの育て親の墓なのだろう。

 

「父の骨全て埋めるのは無理だったので…爪をふたつだけ貰って、一つはこの土の中に。もう一つはその首飾りに使ったんです」

「そっか…」

 

ヤマトは墓の前にしゃがみ、太刀を横に置く。すると、モミジも横に正座してきた。

 

「レンを育ててくれてありがとな…後は俺らに任せろ」

「…砕竜よ、貴殿の子の命はこの渓流の姫が守ろう。安らかに眠りんす」

 

2人で気持ちを伝え、立ち上がる。

レンはその間、ずっと頭を下げていた。

 

「さ、お前の番だぞ」

「はい」

 

次にレンが墓の前に座る。

 

「…父さん、お久しぶりです。僕は…まだまだ未熟ではありますが…何とか頑張ってます。今挨拶されたお二人は僕の事を認めてくれて、その上で一緒に行動してくれている…仲間です」

 

最後の言葉を少し照れながら言ったことは…まぁ見なかったことにしよう。

その後、しばらくレンは手を合わせ目を閉じていたが、決心したように一息吐くと立ち上がる。

 

「お付き合い頂きありがとうございました。では、行きましょう」

 

ふふっと穏やかな笑みでヤマト達に語りかける。

 

「よし、なら泳ぎの練習ついでに海の方でも行くか!!」

「え"っ…」

 

ヤマトの提案に、モミジが心底嫌そうな声を出す。

 

「モミジ…お前泳げないんだろ」

「…優しくしてくりゃれ」

「善処しよう」

 

まさか自分が今日海で泳がされるとは思っていなかったのだろう。さっきまで穏やかに笑っていた渓流の姫は、今は死んだような暗い顔をしていた。

 

「さぁ、行きましょうモミジさん!僕もお手伝いしますから!!」

 

人間よりはるかに生きているモミジからすれば、産まれたての赤子のようにしか見えないレンからもそんなことを言われ、彼女はぐぅ…と唸るのだった。

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

「モミジいいぞ!そのままそのまま!!」

 

海へ来てから二時間ほど経った。

意外にも…と言えば彼女に失礼なのだが…。

元々、運動神経が並外れていることもあってか、最初は嫌々で泳ぎ方がぎこちなかったモミジも少しコツを教えればすぐにしっかりと泳げるようになっていた。

ヤマトが教えたのは基本のクロールと、水中に潜った時の泳ぎ方。それを彼女はこの少しの時間内でほぼ完全にマスターした。

 

「よし、そろそろ上がろう!!」

 

沖の方まで泳ぎに行ったモミジに向け、ヤマトは声を張り上げ言った。

それに対しモミジは片手を挙げて返事し、陸に上がってくる。

 

「はぁ…はぁ…どうかや?」

 

そう息を切らしながら聞いてくるモミジの濡れた髪をヤマトはタオルで拭いてやる。

 

「問題ない、充分戦える動きだ。ただ…」

「ただ…?」

 

ヤマトは、ナバルデウスと戦うことになってからずっと気になっていた疑問をぶつける。

 

「今回の水中戦、お前の虫は使えないだろ?どう攻めるんだ?」

 

モミジの主な武器は下僕として自在に操る触龍虫だ。それが使えないとなると、モミジの力は半減してしまう。

 

「あぁ、それならば問題ない。たしかに下僕が使えないのは痛いがの…今はコレがある」

 

そういってモミジが取り出したのは、以前ドンドルマでのラオシャンロン戦の後、ヤマトが鍛冶屋に制作を依頼し作ってもらったモミジ用の脇差だった。

 

「脇差か…たしかに武器にはなるが…お前それ、使いこなせるのか?」

「わっちとて、コレを貰ってからただ飾ってあったわけではありんせん」

 

そう少し自慢げに笑うと、鞘から剣を抜く。

キイィンと心地の良い音を立て抜き放たれた刃を、モミジは構え目を閉じる━━━

━━刹那。

 

「せぇあっ!!!!」

「……!」

 

目の前の光景にヤマトは息を飲んだ。

それもそのはず。モミジが気合いと共に刀を振り抜いたその動きは、以前ヤマトが【隻眼の悪魔】の異名を持つイビルジョーに向け放った技のひとつ。

東雲流滅龍抜刀術【擊龍連斬】だったのだ。

モミジは剣を振ることが出来ない。そう思ったからあくまで護身用としてこの剣を渡した時、ヤマトは最低限の使い方しか教えなかった。

なのに今目の前にいるモミジは、まだ多少ぎこちなくはあるが、しっかりと刀を振る事が出来ている。

 

「お前…なんで剣が振れるんだ?しかもそれ…」

「うむ。ぬしの…東雲流といったか。あの技を何度も間近で見ていたからの…真似するうちに自然と振れるようになったのじゃ。」

 

見てて振れるようになった。

その言葉に再びヤマトは驚愕する。

ただ近くで見ていただけで、東雲流を覚えるなんて…と。

ヤマトの師であり同時に実姉であったユズカから受け継いだ、この東雲流滅龍抜刀術は完全にユズカのオリジナル流派。

覚えやすく動きが形成されたハンターズギルド公認のギルドスタイルとは訳が違い、独特の癖がある。

それをある程度見ていただけで再現したモミジに、ヤマトは舌を巻く。

 

「流石…だな」

「じゃが…まだ完全体では無い。ぬしよ、少し教えてはくれぬか?」

「…あぁ。勿論…!!」

 

ヤマトはそう言い、腰に下げてある太刀【天上天下無双刀】を抜き放った━━

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

その夜、明日に備えベースキャンプで一夜を過ごしていたレンは、不思議な音で目が覚めた。

 

「これは…金属音…?エリア1からかな…?」

 

眠い目を擦りながらテントを抜け、エリア1への洞穴を潜ると…その音の正体がわかった。

 

「せぁっ!」

「いいぞ、だいぶ良くなってきた!!」

 

真夜中だというのに、ヤマトとモミジが打ち合いをしていたのだ。

昼間、モミジの剣筋を見た時はかなり驚いたが、今目の前でヤマトと打ち合いをしているモミジは、さらに腕を上げ並のハンターと同等…もしくはそれ以上の動きになっていた。

 

「流石…あの二人だな…僕も見習わないと」

 

そう呟いたレンは、体に宿る砕竜の血を呼び覚まして…拳を構えた。

 

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 

迎えた、白海竜との約束の日。

ヤマト達が海岸へ行くと、ラギアクルスは静かに佇み待っていた。

 

『来たか』

「悪ぃ、待ったか?」

『いや、我も今来たところだ』

「そっか、良かった。…で?約束したように、一緒に原因の解明に付き合ってくれるのか?」

『無論。恐らく、大海龍は海底神殿に居座っている。少し潜ることになるが…貴様らは大丈夫なのか』

「あぁ、それなら問題ない。人間には人間のやり方があるからな」

『ならば良し。…渓流の姫よ、君も大丈夫なのかね』

「わっちを舐められては困るぞ、海竜王。問題などありんせん」

『…わかった、ならば行こう。ついてこい』

 

ラギアクルスはそう言うと海へと入り、潜水を開始、それに続いてヤマト、モミジ、レンも海へと潜る。

相変わらず海の中は殆どモンスターの姿は無く、それどころか魚類さえも見受けられなかった。

流石に海中のスピードではラギアクルスに3人とも敵わないが、白海竜はある程度こちらの泳ぐ速度に合わせたスピードで潜ってくれていた。

しばらく泳いでいくと、何やら大きな洞穴のようなものが見えてきた。

あれが、村長が言っていた海底洞窟だろう。

そしてその先には恐らく、大海龍の居座る海底神殿がある。

洞窟前まで辿り着くと、ラギアクルスが一旦停止した。

 

『この先が神殿、大海龍がいるはずだ。…覚悟はいいか?』

 

水中では言葉が話せないため、3人は頷く。

返答を得たラギアクルスはゆっくりと洞窟へと入っていく。

3人も後に続いて洞窟内に入る。

━━すげぇ…

声は出せないが、ヤマトは思わず心の中で感動した。

洞窟の中には様々な色の珊瑚やそこに住む魚類がたくさん生息しており、まるで宝石箱のようにキラキラと輝いていた。横を見るとモミジとレンもその光景に目を見開き驚いている。

 

『見えたぞ、海底神殿だ』

 

しかしラギアクルスの言葉で全員に緊張が走る。

洞窟の出口を見るとその奥に開けた空間がある。空間の上の方まではどうやら水が満ちてなく、ドームのように空洞になっているようだ。これならば浮上して息継ぎも可能だろう。

そしてそびえる石造りの建造物。

はるか昔、モガの村の村長と同じ海の民と呼ばれる人種の先祖が築き上げた神殿━━

と呼ばれているが、実際は対古龍兵器が備わった海底要塞である。

 

そして3人と1匹が洞窟を抜ける。

 

『やはり…目覚めていたか』

 

そこには、神殿の入口を封鎖するように佇む1匹の巨大な龍。

翼を持たず、前足は小さく退化し、尻尾が変化した尾ビレは他の海竜種とは比べ物にもならない程大きい。頭には少し大きさの異なる一対の巨大な角、顔は体に対し比較的小さくその周りを大量の体毛が覆っている。

━━大海龍、ナバルデウス。

はるか昔、煉黒の龍との戦いに敗れ、永き眠りについていた真の海の王である。

 

『…何者ダ』

 

深海から響くような低い声で、大海龍は問う。

最早ここまで来ると古龍が喋ったところでいちいち驚かなくなっている自分がいた。

 

『我は白海竜の王、名をハク。大海龍、この海の生態系を壊しているのは貴様だと分かっている。直ちにその行為を止めろ』

『壊ス…?何ヲ言ッテイルノカ解ラヌナ。我ハ我ニトッテ邪魔ナ存在ヲ排除シテイルダケダ』

『…ふざけるな!!!平和だった海の生態系を壊し、我の仲間まで殺した貴様を我は許さぬぞ!!もう一度言う。直ちにその行為をやめろ…止めないと言うのなら容赦はせぬぞ!!』

『容赦セヌ…?フハハハ!!!貴様ラガコノ我ニ敵ウト思ッテイルノカ??』

 

ナバルデウスは口を大きく開け目を見開く。

龍の顔なのでヤマトにはよく分からなかったが、それが威嚇ではなく挑発である事ぐらいは察せた。

それに対しラギアクルスは低く唸ると、呟くように口を開く。

 

『…もう良い…貴様が止めないと言うのなら…』

 

ラギアクルスの目が怒りに燃える。

 

『殺すまでだ!!!黒狼姫、人間!!覚悟はいいな!!!』

 

━結局こうなるのかよ!!!

ヤマトは内心毒を吐くが、頷く。

それに続きモミジとレンも頷いた。

全員が頷くのを見るか見ないかのタイミングでラギアクルスはナバルデウスに突っ込んで行く。

ヤマトはポーチから小さなボンベを取り出し、そこから伸びる短い管に取り付けられたマスクを口に当てボンベ本体に備わったトリガーを引く。

すると、ボンベの中に入ったアイテム【酸素玉】から供給された空気が口から入り、水中で息継ぎを可能とする。横にいるモミジとレンも同じように息継ぎを行った。

酸素玉は、水中での戦闘を想定した際に浮上しなくても息継ぎができるようにとハンターズギルドが開発したアイテムのひとつ。

今のようにボンベに入れたり、直接口に放り込み噛み砕くと、どうゆう原理かは不明だが中から酸素が溢れ出し、息継ぎが手軽にできるのだ。

そして3人は各自武器を構えナバルデウスに対峙する。

 

『馬鹿ナ者達メ…失セロ…!!!』

 

大海龍がそう言うや否や、その巨体に見合わぬ速度で突っ込んでくる。先行していたラギアクルスはそれをサラリと交わすと溜め込んだ電気を解放、かなり離れているヤマト達にまでピリピリと感覚が伝わるほどの威力を持つ雷撃がナバルデウスに直撃する。

海竜の持つ技のひとつ、『大放電』だ。

しかし━━

 

『効カヌワ!!!』

 

まるで攻撃が効いていないナバルデウスが尻尾でラギアクルスを薙ぎ払い、もろに直撃を受けた白海竜はそのまま吹き飛び神殿に叩きつけられた。

ーーー!!!

それを見たモミジが水中なのにも関わらず叫び声を挙げ、脇差を構え大海龍へと突っ込む。

━━あのバカ!!!

戦闘形態をとることも忘れ、クリーク装備を模した旅装のまま突っ込むモミジをヤマトが全力で追いかける。

レンも察したのか、真剣な表情で追いかけてくる。

 

『人間風情ガ…!!!』

 

大海龍が宙返りをするかの様な動きでモミジを吹き飛ばそうとする…が。

━渓流の姫を甘く見てはいけないようだ。

襲い来る攻撃を抜刀した脇差でいなし、水中でくるりと体を捻ったその勢いのまま横一文字に一閃。

なんと、大海龍の尾ビレが引き裂かれた。

 

『何ッ!?!?』

 

ただでさえ戦闘能力の高いモミジだが、完全な人間の姿をしている時はかなり力を抑えているためそこまで力も強くはない。

だが、蝕竜蟲が使えないとはいえその並外れた身体能力で放たれる剣撃は、並の人間を遥かに超える。

そんな彼女の斬撃は、大海龍のヒレに大きな傷を負わせた。

 

『貴様…タダノ人間デハ無イナ。』

 

その言葉にモミジはニヤリと笑う。

 

『ヤハリカ…ナラバモウ手加減ハセヌ!!!』

 

そう言い放った大海龍は大きく息を吸い込む。

━━否、息を吸い込んだのではない。ブレスだ。

それに気付いたヤマトがモミジの元へ駆け付け、太刀【天上天下無双刀】を抜刀。

レンはそれを見てまさか…と一瞬顔を青ざめたが、覚悟を決めるよう一人頷くと同じように抜刀しモミジを挟んでヤマトと反対側に並ぶ。

 

━グオオオオオオオォオォォォォォォオ!!!!!

 

凄まじい威力で大海龍の口から水流のブレスが放たれた。

そしてブレスが3人を襲う。しかし━━━

 

━━━━━━━!!!!

 

恐らく並の竜程度ならば一撃で仕留めてしまうであろうその攻撃をヤマト達は━━

斬った。

 

『馬鹿ナ!?』

 

明らかに同様するナバルデウス。

そしてそこに追い打ちのように雷撃が襲う。

ラギアクルスだ。

 

『ここで滅びるのは我らでは無い!!貴様の方だ!!!』

 

電力を極限まで高め、全身が光り輝いた白海竜はその体で大海龍へと巻き付き…大放電を放った。

 

『ガアアアアアアアアッッッ!!!!!!』

 

その攻撃にナバルデウスは悶え苦しむ。

そこを逃す選択肢はなかった。

ヤマトはモミジに目配せし、彼女もそれに頷いて答える。

二人同時に泳ぎだし剣を納刀、抜刀の構え。

レンは二人をサポートするため、ポーチから閃光玉を取り出し目の前に浮遊させ、ヴァイパーバイトの刃先で切りつける。もとよりその手順を分かっていたヤマトとモミジが腕で目を覆った瞬間、カッと眩い光がナバルデウスの目の前で炸裂し、視力を奪う。

そして二人が電撃と閃光玉により悶えるナバルデウスの頭を捉える。

 

━東雲流滅龍抜刀術…!!

 

声は出せずとも、まるで投影したかのようにヤマトとモミジの動きが重なる。

動きの止まったナバルデウスからハクが離脱し、入れ替わるように躍り出たヤマトとモミジに向かって尻尾を一振、水流を巻き起こす。その瞬間、うねる水の壁に押され、二人の体がぐんと加速する。

水中においての抜刀術は踏み込む地面が無く威力が大きく減衰するので、普通ならば使えない。だが、レンとハクの協力によりそれが可能となった。

 

━流星剣ッッ!!!!!

 

龍の頭蓋を破壊することを目的とした剣技が二人によって放たれ、ナバルデウスの両目ごと顔を引き裂く。

その一撃は、大海龍の脳まで届いた。

 

ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 

大きな悲鳴をあげたナバルデウスは、一瞬体を痙攣させ…

沈黙した。

 

『やった…か。』

 

安堵したかのようにラギアクルスが息を吐く。ヤマトとモミジも笑顔でハイタッチする。

しかし、異変が起きたのはその時だった。

水中で沈黙し、底へと沈み始めていたナバルデウスの身体が再び大きく痙攣したのだ。

━━何!?

ヤマトは剣を構える。

すると、大海龍がゆっくりと身体を起こし、こちらを見据えた。

その光景に息を呑む。

確実に斬ったはずなのに、顔の傷がほぼ癒えていた。それだけではない。先程まであった瞳が消え、目は白目に。そして口からはどす黒い煙のような息を吐いている。

━思い当たる節は、ひとつしか無い

黒蝕竜ゴア・マガラの持つ狂竜ウイルス。

ナバルデウスも、それに感染していたのだ。

そして大海龍はゆっくりと口を開け…

その様子に呆然としているモミジめがけ、ほぼ予備動作のないままブレスを放った。

━━モミジ!!!

ヤマトは咄嗟に彼女を庇ったが、どうやら遅かったようだ。

モミジを抱えたとほぼ同時に体がバラバラになるのではないかという衝撃が襲い、二人ともそのまま水面へと吹き飛ばされ意識を手放した。

 

 

 

 

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