Persona x Classroom of the Elite 作:仔羊肉
豪華客船の最上階に近いレストランは、静謐な空気に満ちていた。
バイキング形式というのは要するに、好きなものを好きなだけ皿に載せていいという仕組みらしい。だがこの時間帯には料理というよりもデザートが多く陳列している。
今はまだ閑散としていて何人かのCクラスの生徒がちらほらと食事を取っているだけのレストラン。もう少し時間が経てば、無人島試験を乗り越えて飢えた生徒たちがやってくるのだろう。
過酷な試験であった無人島試験。終了当日くらいはベッドの上に居たいというのが殆どの生徒の本音。だからこそ、四半日も経っていない今、普通に夕食を取っている人間の方が希少なのだ。
外側の大テーブル。詰めれば十人は座れそうな席にオレたちは座っていた。
正面には堀北。背筋はいつも通り真っ直ぐに伸びているのに、こちらに向けられた視線だけがやけに尖っていた。デザートフォークを持つ手が皿の上で止まったままなのは、たぶん食べる気がないからではなく、食べるより先に言いたいことがあるからだろう。
その隣の須藤は困ったように笑っている。笑っているというより、口の端を引きつらせて場をやり過ごそうとしている顔だった。オレと目が合うとすぐに皿へ視線を落とし、山盛りにしたパスタを意味もなく巻き始める。おやつと呼ぶにはあまりにも量が多い。
櫛田はといえば、こちらはもっと分かりやすい。頬杖をついて、氷を溶かしそうなほど冷たい目でオレを見ていた。食欲は完全に戻っていないのかテーブルの上にはスムージーのみ。
そしてオレの隣には坂柳がいた。
「はい……ピヨピヨさん、たくさん、食べて大きくなるのですよ」
坂柳は真面目な顔でそう言い、フォークに刺した肉の塊を、オレの前、テーブルの上に座っていたヒュロポスの顔にぐいと押し当てた。焼きたての鉄板から下ろしたばかりのステーキだ。
「あっづぅ! な、なにを考えているのよ! このちびジャリアンポンタン娘っ! やめっ! 押しつけないで! あづっ!? ひゅぽっー! うわーん! 人間さーん!」
ヒュロポスは羽をばたつかせて跳ね回り、ピンク色の顔を真っ赤にしたままオレの腕に飛びついてきた。目の端にはうっすら涙が浮かんでいる。ガチギレした上に泣きべそまでかくのだから忙しい鳥だ。
その鳥が顔をベタベタにステーキソースで汚して肩の上に乗る。
当の坂柳は悪びれる様子もなく、首を傾げてその姿を眺めていた。
「おや……お口に合いませんでしたか」
合う合わないの問題ではない。そう言いたかったが、ヒュロポスと坂柳の間に入ると話がこじれる気がして黙っておく。
オレの平穏はあまりにも短かった。試験が終わったのだから、せめて昨日、今日くらいは静かに過ごせると思っていたのだが。
「綾小路くん」
堀北の声が低く落ちる。
「試験の結果について話し合う。私もそのつもりでここに来たのだけれど……何故、坂柳さんがいるのかしら」
丁寧な口調なのに、語尾の温度がひどく低い。なんと答えたものか分からず、オレは口を開きかけて、そのまま閉じた。
レストラン前で偶然出会って何故かついてきて、その上、バイキング形式のレストランでわざわざ注文が必要な鉄板ステーキを俺の隣に座り頼んだというのは簡単だが、たぶん火に油を注ぐ。
返答に詰まったオレの代わりに口を開いたのは、問題を持ち込んだ本人だった。
「ふっ……」
開いただけだった。
坂柳は小さく息を漏らし、堀北を真正面から見返した。口元がゆっくりと持ち上がる。勝ち誇った、としか表現のしようがない笑みだった。何に勝ったのかは分からないが、少なくとも本人の中では勝敗がついているらしい。
堀北の口角も同じように持ち上がった。ただしこちらは目が笑っていない。笑みが深くなればなるほど、テーブルの周りの気温が下がっていく気がした。
「ひっ」
須藤の喉から小さな悲鳴が漏れる。巻いていたパスタがフォークからずるりと落ちた。
しばらくの沈黙の後、堀北はふぅと長く息を吐いて姿勢を正した。
「まぁいいわ。それより試験結果について話しましょう。Dクラスが! 勝った! 試験の! 結果について!」
一語ずつ区切って強調するあたり、相当に溜まっているものがあるのだろう。だが肝心の内容が、いつもの堀北の理路整然とした切り出し方とは似ても似つかない。
こいつ、坂柳と関わっていると知能下がるな。
口には出さなかった。出したら間違いなく酷い目にあう。
一方の坂柳は堀北の気迫などどこ吹く風で、ステーキを小さく切り分けて一口分を運んでいた。ゆっくりと噛んで飲み込み、ナプキンで口元を軽く押さえる。それからほとんど手のつけられていない皿を、オレの方へすっと滑らせてきた。
「お腹いっぱいなので綾小路くんにあげます。おやつにステーキは入りませんね。これでまた一つ賢くなりました」
まだ一口しか食べていない。それに今は夕方の四時だ。しかも人の話をまるで聞いていない。知識と賢さはイコールで結びつかない。
ツッコミどころが多すぎる内容に一つだけいえるとするのなら堀北の演説は完全に無視されたことになる。
堀北のこめかみがぴくりと動くのが見えた。櫛田は「うわ」という顔で、須藤は「頼むから何も起きるな」という顔で、それぞれ黙って成り行きを見守っている。オレは皿を受け取るべきか押し返すべきか迷い、結局受け取った。断るほうが面倒なことになる予感がしたからだ。
そんなテーブルの空気を、入口の方から近づいてくる足音が乱した。
数人の生徒がレストランに入ってきたのだ。見覚えのある顔ばかりだった。Aクラスの面々である。
先頭を歩いていたのは神室だった。彼女はテーブルの中に坂柳の姿を見つけると、一直線にこちらへ寄ってきた。歩き方が早い。足取りが心配していたことを隠していない。
そして坂柳のそばで足を止めた神室は、何故かオレを睨みつけてきた。
いや、待ってほしい。オレは何もしていない。むしろこの席で被害を受けているのはオレの方だ。晩飯前なのにステーキを皿ごと押しつけられた側なのだ。
それでも神室の視線は「あんたが何かしたんでしょ」と言いたげで、弁解の余地がなさそうだった。オレは視線を避けて、受け取ったステーキを黙って切り分けることにした。
その後ろから、葛城が歩み出てくる。
腕を組み、いつもの重々しい表情を崩さないまま、葛城は堀北をまっすぐに見据えた。周囲の席のざわめきが少しだけ遠のいた気がした。
「402ポイント……」
低い声だった。
「完敗だ、Dクラス。試験中の発言、撤回させてもらうぞ、堀北」
少し間を置いてから、彼女は静かに口を開いた。
「そう。別に油断していても構わないわ。すぐに追い抜くから」
挑発ではなく、事実を述べているだけの口調。以前の堀北なら、もっと棘を含ませていただろう。良くも悪くも、彼女は変わった。
葛城は表情を変えずに続ける。
「今回の結果を経て、Dクラスを警戒しないクラスは存在しない。Cクラスも、そしてBクラスも、お前たちを明確な敵だと認識しただろう」
その言葉の重さに、テーブルの空気が張り詰める。堀北と葛城の視線がぶつかり、どちらも逸らさない。神室は面倒くさそうな表情を浮かべている。坂柳だけが、ヒュロポスを手招きして遊んでいる。肩がとても香ばしい匂いがする。
一触即発、という言葉が頭をよぎった。ここで誰かが一言でも余計なことを言えば、レストランの真ん中で睨み合いが始まる。
そこへ割って入ったのは、須藤の間の抜けた声だった。
「お、落ち着けって!」
両手を前に突き出して、慌てた様子でぶんぶんと振っている。
「流石に試験終わったばっかだからよ、今日くらいはそういうのいいだろ! な? な? お互い疲れてんだし、そういうのは抜きにしようぜ!」
沈黙が落ちた。
堀北は瞬きを二度して、それから隣の須藤をちらりと見た。葛城も眉間にわずかな皺を寄せたまま、須藤の顔と、彼の皿の山盛りのパスタとを交互に眺めた。
やがて先に肩の力を抜いたのは、葛城の方だった。
「……そうだな。お前の言う通りだ。俺も何か口にするとしよう」
「私としたことが、熱くなりすぎたわ」
堀北も小さく息をついて、握りしめていたフォークを皿の上に戻す。
ぴんと張っていた糸がふっと緩んだ。周囲の席から誰かの笑い声が聞こえて、皿の触れ合う音が戻ってくる。須藤は自分が何をしたのか分かっていない顔で、それでも安堵したように「へへ」と笑った。
オレは坂柳から回ってきたステーキの残りを口に運んだ。冷めかけていたが、悪くない味だった。ヒュロポスが涙目のままオレの袖を引っ張って、「人間さん、ふーふーして、あたしの分を切り分けてほしいのよ」と訴えてくる。
それまで神妙な顔つきをしていた神室は、葛城と堀北の会話が一段落したのを見届けると、当然のような顔で坂柳のとなりの席へと滑り込んだ。
そして、まだその場に立っていた葛城を見上げて、ごく自然な口調で言い放つ。
「牛乳」
「う、うむ……」
威厳に満ちていたはずの葛城が、困惑混じりの情けない声を漏らして小さく頷いた。そのまま素直にバイキングのドリンクコーナーへと向かっていく後ろ姿は、完全に神室のパシリそのものだった。あの重厚な男を一切の躊躇なく顎で使う神室の度胸には、ある種の感心すら覚える。
だが、当然ながら堀北がそれを不快そうに見逃すはずもなかった。眉を思い切りひそめ、信じられないものを見るような視線を神室へと向ける。
「……今から私たちは、今回の試験についての振り返りと反省会をするつもりなのだけれど。外してくれないかしら?」
「あっそ。坂柳、どうする?」
神室は堀北の冷ややかな視線を意に介した様子もなく、バイキングのメニューに視線を遣いながら隣の坂柳へ振った。
坂柳は嬉しそうに目を細め、胸の前で可愛らしく手を組む。
「ふふっ……堀北さんが私たちに聞かせられないとおっしゃるのなら、そうして差し上げましょうか。もっとも、どのような手を使って勝利を収めたのかなど、私にとっては大した問題ではありませんけれど」
堀北を煽る時だけ知能上がるな、坂柳。
「なんですって……?」
堀北の目角が跳ね上がった。氷点下だった雰囲気が一瞬にして熱を帯び、バチバチとした火花が散る。
その光景を目にした櫛田は「あちゃー……」と呟きながら、痛むこめかみを押さえるように額へそっと手を当てた。須藤に至ってはもう話し合いを諦めたのか、「俺は知らねぇ」とばかりに無言でパスタを口へ運び始めている。
坂柳は堀北の怒りを楽しむように、さらに言葉を重ねた。
「それに、開示されたポイントの数値を見れば、おおよその内訳や仕掛けなど予測がつきますもの。必死になって情報を隠そうとする堀北さんを、温かい目で見守り、応援してあげようではありませんか」
「……いいわ、聞かせてあげる」
プライドを激しく逆撫でされた堀北は、低く澄んだ声で言い放った。
……まぁ、オレとしても本当に隠すほどのことではないと思っている。
坂柳の言う通り、提示された最終ポイントを見れば自ずと点数の内訳など察しがつく。それに、他クラスの人間にオレたちの今回の動きを聞かせることは、今後のための有効な布石にもなり得るのだ。
前回の須藤の暴力事件、そして今回の特別試験。
この二つの出来事に共通するのは、相手の内部へスパイを潜り込ませる、あるいは利用するという戦術だ。ここでオレたちの手の内とその帰結を周知させておくことは、今後Dクラス内部へ新たにスパイを送り込もうとする者たちに対する強力な牽制として機能する。
だからこそ──
「面白ぇ話してんじゃねぇか」
低い愉悦の混じった声が響き、レストランの入り口方向から足音が近づいてきた。
振り返ると、そこには龍園の姿があった。その後ろには伊吹、石崎、そして山田といったCクラスの主だった面々を引き連れている。
Cクラスの登場に堀北が警戒の度合いを深めたその時、さらに別の足音が重なった。
「私たちも、混ぜて貰えるかな」
現れたのはCクラスだけではない。一之瀬と神崎を先頭にしたBクラスの面々までが、まるで申し合わせたかのように姿を現したのだ。
「貴方たちまで……」
堀北が椅子から立ち上がりかけ、鋭い警戒心を露わにする。須藤もパスタを喰らう手を止め、いつでも動けるように身体を固くした。櫛田からはいつもの柔和な笑みが完全に消え去り、冷たい刃のような視線で集まってきた面々を見渡している。
「偶然にしては、あまりにもタイミングが良すぎるわね」
堀北の追求に、龍園は鼻で笑った。
「ククッ。あぁ、裏切り者の最後の奉公って奴だろうよ。もっとも、そいつも誰かさんの指示でここに呼び出したみてぇだがな」
龍園の視線が、一直線にオレへと注がれる。
「私たちは龍園くんに呼ばれたからだよ。今回の試験の全貌が聞けるからって……」
一之瀬が困惑と複雑な色を浮かべた瞳で口を開く。だが、その隣に立つ神崎の表情はまるで別物だった。射殺さんばかりの殺気を孕んだ目で、オレを睨みつけている。
神崎は静かに一歩前へ踏み出すと、低く絞り出すような声で問うてきた。
「綾小路……お前はオレたちのクラスを、最初から利用するつもりで声をかけたのか?」
「あぁ」
オレが一切の逡巡もなく短く答えると、神崎の奥歯がぎりっと嫌な音を立てて鳴った。拳が白くなるほど強く握りしめられている。
「お前は……お前はそんな善意を踏み躙るために、Bクラスに──」
「下がれよ、神崎。まだそんな甘っちょろいことを言ってんのか?」
感情を昂ぶらせる神崎の言葉を遮ったのは、龍園だった。底意地の悪い笑みを浮かべ神崎の肩を払うように前へ出る。
オレは深く息を吐き、静かに神崎へと視線を向けた。
「龍園に賛同するのも変な話だが、神崎、お前は利用されたことそのものに怒っているんじゃない。自分たちが成長し、強くなり、一皮剥けたのだと勘違いした──そんなお前たちの甘い勘違いを利用されたことに──」
「ひゅぽーっ!」
オレが言葉を紡ぎ切る前に、鋭い奇声が上がった。
視界の端からピンク色の物体が飛び出してきたかと思うと、わざわざテーブルの上に一旦着地し、美しい三点飛びの要領でオレの額へと勢いよく突っ込んできた。
「……痛い」
「悪い子! 悪い子なのよっ! そういう言い方したら傷つくでしょ! もっと優しく……いや、どんなに優しく言ってもこんなの取り繕えないの……もぅ! それなら『試験中騙してごめんね!』って直球で謝るのよ!」
おでこに痛撃を与えた当人はそのまま空中で華麗に一回転し、オレの肩の上に見事着地した。そして、耳元で羽をバタバタと羽ばたかせながら怒涛の勢いで説教をかましてくる。ステーキソースでベタベタの顔をオレの服に擦り付けながらだ。
一部始終を目撃していた龍園は、不気味な表情を削ぎ落とし、純粋に奇妙なものを見る目でオレの肩の上を指差した。
「おい……そのうるせぇ玩具、どっかにやっておけ……」
「悪いな。これは相棒だからな」
オレが淡々と返した瞬間、肩の上の鳥がピシッと硬直した。
「ひゅ、ひゅぽぽぽっ!? ぷ、ぷ、プロポーズのつもりなの!? だ、駄目なのよ! 復興部はれ、恋愛、恋愛禁止なんだから……んまー、で、でも! 人間さんがそんなにあたしのこと好きならっ! 復興が終わった時にもう一度プロポーズしても構わないのよ!? そ、そんときにもう一度考えてあげるかしら? チラッチラッ!」
ヒュロポスは両羽で真っ赤になった顔を覆いながら、肩の上でくねくねと怪しげなダンスを踊り始め、上目遣いでチラチラとこちらを見てくる。自意識過剰もここまで来ると一種の才能だ。
「なんか急に踊りだして変な鳴き声あげはじめたぞ……」
神崎が引き気味に身を引く。周りにいた龍園や一之瀬たちも、一瞬だけシリアスな空気を忘れて引きつった顔でその光景を眺めていた。
「まぁ、話の邪魔にならないようにはしておく」
オレは羽をパタパタと震わせているヒュロポスを容赦なく掴むと、そのまま胸ポケットへと押し込んだ。ポケッと顔だけを覗かせた鳥が「むーっ」と不満そうな鼻息を漏らしたが、ひとまず騒ぎは収まった。
静まり返ったレストランの空気の中、オレは改めて集まった全クラスの面々に視線を向けた。
「それじゃあ、試験についての──」
「その前にあんた、顔拭きなさいよ」
二つ隣に座る神室が呆れるように呟いた。隣に座る坂柳が「もぅ、清隆くんはしょうがないですね」とハンカチでオレの横顔を吹き始める。
そして、オレは今回の試験について話始める──。
◇ ◇ ◇
今回の特別試験において、オレが想定していた「避けるべき最低ライン」は二つ存在していた。
一つ目は、試験の過程でDクラスの基盤そのものが根底から揺らぐこと。
二つ目は、この試験でクラスポイントを獲得できずに再度として山内のようにプライベートポイント欲しさに裏切り者を作る余地を残すこと。
この二つを回避することこそが、今回の試験においてオレたちが最優先で達成すべき目標だった。
「──まずは、Cクラスの動きから話そうか」
オレは集まった各クラスの面々の視線を一身に浴びながら、静かに語り始めた。
「始まりは、この無人島試験がスタートする前、客船のレストランで龍園がオレたちに向けて放った『裏切り者』の存在を示唆する警告だった。あの時点でオレは、龍園が今回の特別試験において、高確率で山内とは別の『第二の裏切り者』を投入してくると察知していた。そして、龍園の真の目論見が単なるスパイの潜入ではなく、Dクラスを内部崩壊へ導くことにあると予見していた」
その言葉を聞いた瞬間、龍園の顔からニヤついた笑みが消え、舌打ちが小さく響いた。その背後に控える伊吹や石崎は、一切の迷いなく手の内を暴いていくオレの言葉に目を見開いている。
「今回の試験で龍園が設定したターゲット──それはオレではなく、山内春樹。前回の須藤の事件で誤情報を掴まされ、敗北の原因となり、役立たずとなった内通者の粛清をも目論んでいたわけだ。……そしてこの粛清劇は、現役で機能していた『もう一人の裏切り者』──軽井沢恵に対する無言の宣告でもあった。自分を裏切ればどうなるかという見せしめだな」
静まり返るレストランの中に、オレの声だけが淡々と響く。
「だからこそ、龍園にとっては伊吹と軽井沢が一度でも接触できればそれで十分だった。だが、伊吹は予想以上にすんなりとDクラスの陣営内に潜り込むことができた。軽井沢が、恋人である平田洋介の底抜けの善性を熟知していたからだ。軽井沢の目論見通り、心優しい平田の後押しによって無事潜入を果たした伊吹は、龍園の指示に従って軽井沢と接触した……そこから先、オレが注視していたのは伊吹ではなく、軽井沢の動向だ」
もしもここで伊吹と軽井沢を同時に見ていなければならないとなれば難易度は上昇する。だが二人ではなく一人を見張るのならばそう難しくはない。
そしてオレが軽井沢を注目していたことは女子に一つの勘違いを生ませる。篠原や佐藤が言ったオレが軽井沢を好きだという突拍子もない発言は試験始まって以来、軽井沢に向けた視線の多さから出てきた結論の一つなのかもしれない。
そんな軽井沢はCクラスの指示に従い、Dクラスの場を荒らすタイミングを虎視眈々と狙っていた。
そして三日目、彼女は山内の鞄の中に女子の下着を忍び込ませることで、Dクラス内に深刻な男女の分断を引き起こそうとした。
この行動が軽井沢の思いつきか伊吹の考えか龍園の指示までかは判断できなかった。しかし、少なくとも軽井沢は伊吹と作戦を練る程度の接触を行なっていた。それも平田という彼氏が、他クラスから追い出された可哀想な少女である伊吹の面倒を見るという建前があったからこそ、その彼女である立ち位置を利用して接触するのは安易だったのだろう。
「幸いなことに、伊吹の行動にはDクラス側から常時監視がついていた。そのおかげで、外部からの人間として真っ先に疑われるはずの伊吹が容疑者から外れ、事件は『Dクラス内部の人間による犯行』だという強烈な疑惑を生み出した。もし予定通り山内の鞄から下着が見つかっていれば、Dクラスの男女間には亀裂が走り、試験は厳しいものになっていただろうな」
オレは一度言葉を切り、一同の表情を見渡す。
「けれど、オレは事前に山内の鞄から下着を抜き取り、自分自身の鞄へと移しかえた。オレ自身が犯人の疑いをかけられることで、Dクラスのコミュニティから離脱するためだ」
そこまで一気に説明を終えたオレに対し、龍園が鋭い眼光を向けて低く問い詰めてきた。
「……チッ。そこまで読んでたってんなら聞かせてもらおうか、綾小路。どうして軽井沢が裏切り者だと見抜けた?」
「前回の須藤の冤罪事件だ」
オレは揺らぐことなく答えを返す。
「あの事件の際、山内だけを裏切り者として配置するには、Cクラスの策としてはあまりにお粗末すぎる。暴力事件を誘発し、学校の出方を探るような人間が、あのお調子者の単独の情報を鵜呑みにして大掛かりな仕掛けを打つには、あまりにリスクが高すぎるからな。だからオレは、最初から『もう一人の裏切り者』が存在すると確信していた。そして、当時最も怪しかった人物の身辺を洗った」
オレは言葉を続ける。
「当時、CクラスとDクラスの間でトラブルを起こしていたのは須藤だけじゃなかった。生徒会や他クラスにも陳情が耳に入るほどのな。主にCクラスとBクラスの諍いが多かったようだが、その中に一つ、CクラスとDクラスの揉め事もあったようだ。お前がその揉め事を通じて軽井沢の暗い過去を突き止めたように、オレもまた同じ経緯で軽井沢の過去の情報を手に入れていたんだ……だが、オレは須藤の事件が終わるまで、軽井沢を裏切り者として泳がせておくことにした。いつか今回のように、彼女の存在が活きる局面が来ると確信してい──」
その時、胸ポケットから「ぺちん!」と小さな衝撃が飛んだ。
ポケットから顔を出したヒュロポスが、小さな羽でオレのアゴをぺしぺしと叩きながら耳元で憤慨する。
「ちょっと! 人間さん! またそういう女の子を道具みたいに扱う言い方して! そういう冷血なトコがモテない原因なのよ! 配慮! デリカシーってものを持ちなさい!」
「……静かにしてろ」
頭を叩いて引っ込めさせようとするが、ヒュロポスは不満そうに「むふーっ」と鼻息を漏らしている。
オレは何事もなかったかのように再開する。
「だからこそ、今回龍園が軽井沢を切り札として使ってくる展開は織り込み済みだった。そして、オレが表に立たずとも堀北たちなら自力で解決できると踏んだ。だからこそオレはDクラスのメイン陣営を離れ、別の行動に移ることができたわけだ」
オレの言葉を聞いた龍園は、喉を鳴らして可笑しそうに笑った。
「くくっ……あーっははは! よっぽど信頼されてるんだなぁ、Dクラスの『リーダー』様はよぉ」
龍園の皮肉混じりの視線が堀北へと向けられる。
当の堀北は、氷のように冷ややかで鋭い視線をオレへと突き刺していた。
「……綾小路くん。次は無いからね」
「……はい」
その隣では須藤も腕を組みながら深く頷いており、クラスメートである軽井沢を泳がせて利用したオレの手法に対して、この二人からは明確な不満と怒りが伝わってきた。
櫛田はそんなオレと堀北の様子をニヤニヤと見つめている。こっちはそんなに嫌いな手段ではないみたいだ。
「CクラスによるDクラス攻撃の対処は堀北たちが完璧に切って捨ててくれた。だからこそオレは、残るAクラスとBクラスを標的に移すことができた。……もっとも、Aクラスに関して言えば、初日の段階でオレ以外の人物がリーダーを的中させていたため、オレ自身が注力すべき点は少なかったがな」
その言葉に、それまで腕を組んで黙って聞いていた葛城が思わず身を乗り出した。
「な……なんだと!?」
「驚くのも無理はない」
オレは葛城の動揺を受け止めながら続ける。
「試験初日に無人島の大部分のスポットを塗りつぶした挙げ句、Aクラスのリーダーを完璧に見破った人間がいる。──高円寺六助だ」
葛城の表情が凍りつく。
「奴は初日の段階で、Aクラスのリーダーが戸塚弥彦であることを見抜いていた。あるいは、奴のことだ。拠点の設営か更新の瞬間に密かに潜入し、直接その目で見届けたのかもしれないな。そして高円寺はその情報を、堀北へと提示していた」
「そんな……バカな……」
こればかりは運が悪かったと言わざるを得ない。
「勿論、高円寺の言葉に客観的な証拠など存在しなかった。だが、この無人島特別試験において、現物を直接目にするか、カードを更新する瞬間を目撃する以外に、確実性を持ったリーダーの特定手法など存在しない。堀北は高円寺の規格外の観察眼と行動力を信じ、そして高円寺の能力は──その信義に値するほどに圧倒的に高かった、というだけの話だ」
静まり返ったレストラン内に、オレの淡々とした解説が重く響き渡った。
「続きを話そう」
静まり返ったレストランで、オレは言葉を繋いだ。全員の視線が集中するのを感じる。
「オレは次に、Bクラスへの接触を試みた。初日の時点でAクラスのリーダーを探る必要性が薄れていたからな。それ以上に、高円寺の成果によってAクラスにマイナスを押し付けている現状、次はBクラスにマイナスを押し付けることで、Dクラス単独の一位を確実なものにするために狙ったわけだ」
その方法は至極単純だ。
「リーダーであるオレ自身が『下着泥棒としての犯人』の罪を被り、Bクラスに潜り込むことで、内側からBクラスを揺さぶり、挑発することにあった」
その言葉を聞いた瞬間、テーブルの向こうで席についていた神崎が、親の仇でも見るかのような鋭い眼光でオレを睨みつけてきた。奥歯を噛み締める音がここまで聞こえてきそうだ。
「オレが潜入する直前まで、DクラスとBクラスは情報を共有する関係にあった。そこでオレたちは『金田や伊吹がリーダーかもしれない』という推測をそれとなく伝えることで、Cクラスのリーダーがわざわざ他クラスに潜伏してスパイ活動を行っている可能性を示唆したわけだ。もっとも、本当のリーダーはスパイとして送り込まれた金田でも伊吹でもなく、無人島内に身を潜めていた龍園本人だったわけだが」
ここで龍園が、低く不機嫌な声を漏らした。
「……そこだ。そこが一番、腑に落ちてねぇんだよ……。なんで見抜けた、綾小路?」
「別にオレは見抜いたわけじゃない」
オレは平然と答える。
「けれど、DクラスやBクラスによる監視がついていたにも関わらず、A・B・Dの三クラスから遠く離れ、滅多に人が訪れない見つけにくいいくつかのスポットで、Cクラスによる占有権の更新が行われ続けていた。だからオレは、その隠されたスポットには手をつけずにあえて見逃していたんだ」
「……なるほどな。そうなれば、島内のどこかに潜伏して動いているCクラス生徒が確実に存在するってことがわかるわけだ。だが……それだけじゃ確証にはならねぇはずだろ?」
「あぁ。だが、この特別試験における最大のポイントは、100%の確証がなくとも踏み切れるかどうかだ。その最後の一歩を試されていると言ってもいい。論理的推測や状況証拠がどれほど集まろうと、確証がない限り人間は踏み出すことに躊躇う。そういう心理戦の試験。堀北はそれを理解し、踏み出した。それにオレは一クラスは博打を打ってもいい程度には稼がせて貰ったからな」
龍園は忌々しそうに盛大な舌打ちをこぼした。
「……チッ。だからテメェは、あんなに手広くスポットの更新をして回りやがったのか」
「そうだ。Bクラスの拠点に潜り込み、一人の時間を作っては周りを気にしたフリをして、密かにスポットの更新を続けた。おかげで相当な数のボーナスポイントを稼がせてもらった。高円寺やオレが途中でリタイアしたところで、痛くも痒くもないくらいにな」
防衛策に転じて拠点の近場のスポットばかりを更新していたAクラスとBクラス。
潜伏を選んだせいで大きな動きを取れなかったCクラス。
それらを他所に、後半からオレはBクラスの雑用を手伝うフリをしながら無人島中を駆け巡り、着実にスポットの更新を重ねてポイントを積み上げていたのだ。
「……Bクラスの近くにあるスポットを更新したのも、そのため?」
一之瀬の声が小さく耳に届いた。その瞳には落胆と不快感が混ざり合っている。オレは静かに首肯し、説明を続けた。
「Bクラスにとっては、ただでさえ少ないポイント源の近隣スポットを抑えられたのは大きな痛手だったはずだ。その上、オレという異物が内部に居座り続けたことで、不満も同時に膨らんでいった。そして、極めつけは『下着泥棒の犯人』というレッテルだ。そうやって意図的にオレの印象を底まで下げておくことで、同調圧力によって『綾小路という存在を攻撃していい理由』をお前たちに与えた」
一之瀬と神崎の表情が引きつる。
「それと同時に、四日も共に生活していれば、Bクラスの本当のリーダーが白波千尋であることは、オレもCクラスの金田も容易に見抜いていた。それを感づいたお前たちは、『すでにリーダーが割れている』という焦りから、オレたちのリーダー当てに対して躊躇う理由が消えたはずだ。そして、それはCクラスやAクラスも同様だった、オレはリーダーであるということを全クラスに言葉にせずとも意図的に流した。恐らく龍園も軽井沢や伊吹から連絡を受けていた為に確証が強かった筈だ。だからこそ、オレは最終日の点呼前にリタイアをして他の人間にリーダーをすり替えた」
そこまで話すと、オレは今回の各クラスの最終ポイントの内訳を口にし始めた。
「まずはAクラス。リーダーを二つのクラスに当てられマイナス100pt。初期ポイントの余りと坂柳のリタイアを含めて250pt。Dクラスのリーダー指定を外してマイナス50pt。結果として、計100ptといった所だろう」
その内訳を聞いた瞬間、一之瀬が「待って!」と思わず声を上げた。
「なんでそんなにAクラスの初期ポイントがあまっているの!? 一週間も洞窟に籠もって生活していたのに、そんなの計算が合わないよ!」
オレは龍園と葛城に視線を向けたが、二人とも腕を組んだまま固く口を閉ざし、答える気はないようだった。オレは小さく息を吐いて代わりに口を開く。
「それは、CクラスがAクラスに物品をある程度融通したからだ。Cクラスは海岸で豪遊しているように見せかけていたが、その実、長期のサバイバル生活で不要となるテントや生活用品を特別試験のポイントで買い揃え、Aクラスへ横流ししていたんだ。だからこそ、Aクラスは初期ポイントの消費を最小限に抑えて生活できた。……だから、あそこまで厳重に拠点の内部を隠していたんだ。中を見られれば、Cクラスの備品を使っていることがバレるかもしれないからな」
葛城は苦虫を噛み潰したような難解な表情を浮かべ、低く呟いた。
「……よく見抜いたものだな」
「入り口のレジャーシートだ。ただ中を隠すだけなら、あんなレジャーシートである必要性がない。だからこそ外部から流用したと考えた時、Cクラスの拠点に転がっていたレジャーシートが目に留まった。勿論、こんな予想は当たっていようがいまいが試験の勝敗には直結しないから無視していたがな。だがこれによって、CクラスとAクラスの間で密約が結ばれていることをオレは察した」
「クククっ……大正解だ、綾小路。だがなぁ葛城、随分と足元を見られた契約だったがな?」
「ふんっ、買い取っただけでも感謝してもらいたいものだな」
「どうだかな? お前らはこの話をBクラスに持っていかれて、クラスポイントを詰められるのを嫌ったんだろ、たがら俺たちの言い値で結ばざるを得なかったんだろ」
葛城と龍園の視線が交差し、バチバチと火花を散らす。
そう、このCクラスの交渉は最初から龍園が圧倒的優位に立っていた。足元を見られたとはいえ、相当な額のプライベートポイントや取引をふっかけたのだろう。
「今回の特別試験で実質的な二位を決めるとしたのなら、Cクラスだ。Aクラスは100ptの加算となったが、Cクラスとの契約内容次第では、額面通りの勝利とは言えないだろうな」
オレは一呼吸置いて、Cクラスの計算へ移る。
「次にCクラス。Bクラスのリーダー当て成功でプラス50pt。Dクラスのリーダー指定失敗でマイナス50pt。初期ポイントは豪遊と流用で使い切ってゼロ。自クラスのリーダーを当てられてマイナス50ptだが、マイナス計算はないためゼロ。結果はゼロポイントだが……Aクラスとの秘密裏の契約で得た利益を考えれば、今回の試験を乗り切った成果としては数字ほど悪くないはずだ」
龍園はオレの締めくくりを、不機嫌そうな短い舌打ちで返した。
「続いて、Bクラス。リーダー当て失敗でマイナス50pt。さらに二つのクラスからリーダーを的中されてマイナス100pt。残っていた初期ポイントも底をつき、結果はゼロポイントでCクラスと同率だ。一週間の努力が全て水の泡と化したのだから、お前たちにとっては悲劇以外の何物でもないだろう」
神崎は拳を握りしめたまま震えており、一之瀬は言葉を失って俯いていた。
「そして最後に、オレたちDクラスだ。リーダーを全て当ててプラス150pt。オレと高円寺のリタイアでマイナス60pt。残った初期ポイントが170pt。さらには、オレたちが島内を回って稼ぎ出したスポットのボーナスポイントが142pt。……合計で、402ptだ」
レストランを包み込む静寂は、もはや誰も破ることができないほど重く粘り気のあるものへと変わっていた。
「こんな勝ち方があるかっ!」
レストラン内に鈍い重低音が響き渡った。神崎が感情を抑えきれずに力任せにテーブルを叩きつけたのだ。並べられたグラスが小さく揺れ、周りの生徒たちの視線が一瞬でこちらに集まる。
「こんな騙し討ちのような卑怯な──!」
怒号を撒き散らす神崎の言葉を遮るように、龍園がゆっくりと椅子を引いて立ち上がった。視線すら神崎に向けず、背後に控える伊吹や石崎、山田に向かって短く告げる。
「……帰るぞ」
「えっ……でも龍園さん、まだ──」
「これ以上はつまんねぇ話にしかなりそうにねぇからな……答え合わせすれば用はねぇ」
石崎が何か言いかけたのを制し、龍園はポケットに手を突っ込んだまま、興味を失った様子で背を向けた。伊吹と山田、そして石崎を引き連れ、そのまま悠々とレストランを立ち去っていく。
去っていく龍園の後姿を見送りながら、オレは思考を巡らせる。
これで、オレが今回の話し合いで設定していた最大の目的は完了したと言っていい。
これまでCクラスが事あるごとにDクラスを標的にしてきたのは、オレたちを「格下」だと見くびっていたからだ。だからこそ、前回の須藤の冤罪事件に続き、今回の無人島特別試験でもDクラスをターゲットにした大掛かりな仕掛けを平然と打ってきた。
あえて今回の試験の全貌と裏工作の経緯を事細かに説明し、手の内を暴いて見せたのは、龍園に対して明確な「格付け」を提示するためだ。
勿論、今回の一件で龍園の牙が完全に折れるなどとは思っていない。けれど、Dクラスを安易に攻撃対象に選べば、他のどのクラスよりも遥かに面倒で手間がかかり、手痛い反撃を喰らうという強烈な印象は植え付けられたはずだ。
さらには、Bクラスがこの場に同席したことは、オレにとっても望外の収穫だった。
無人島試験で敗北を喫して間もなく、未だ心の整理もついていない状況下で、自分たちが他クラスにどう利用され、嵌められたのかを赤裸々に暴露されたのだ。どれほど普段温厚なBクラスであっても、冷静さを保つのは難しい。
龍園の目にはDクラスよりも、感情的で御しやすいBクラスの方が、今後のターゲットとして扱いやすい相手だと映ったはずだ。
これでしばらくの間はクラス間の抗争に過度な気を割くことなく、フォーラムでの活動に集中できそうだな。
オレは非難の声を上げ続ける神崎を見つめたまま、冷めかけた手元のステーキを淡々とフォークで口へと運んだ。
ヒートアップしていく神崎に対し、隣の櫛田は笑顔を消し、心底冷ややかな白い目を向けつづけている。須藤はといえば、神崎の言い分にも一理あると感じているのか、何とも言えない気まずい表情を浮かべて視線を泳がせていた。
そんな荒れる空気の中、静かに動いたのは堀北だった。
カチャン、と小さく音を立てて手元のデザートフォークを皿の上に置く。それから背筋を真っ直ぐに伸ばし、神崎へ向けて鋭い視線を一直線に射抜いた。
「……そうね、貴方たちの言う事は一理あるわ」
「一理だとっ……!?」
「全員で手を取り合って協力し、一週間を無事に乗り切り、誰一人として騙し合いなど無縁に最終日を迎える。……ええ、そんな綺麗な選択で終えることもできたのかもしれないわね。貴方たちの得意分野で、自分たちが絶対に勝利できるプロセスで、誰の感情も傷つけずに一番になれたのなら、さぞかし気持ちがよかったでしょう」
堀北の口から溢れ出たのは一切の容赦のない辛辣な言葉だった。冷めた正論の刃に貫かれ、神崎の顔が歪み、みるみるうちに青ざめていく。
「けれど、残念なことに私たちDクラスには、まだBクラスほどの圧倒的な団結力も信頼関係もない。Cクラスから仕掛けられる無慈悲な策略をかわすことで精一杯で、今回の結果だって、綾小路くんや高円寺くんという個人の突出した実力が占める割合が大きすぎるのが現実よ。今の私たちには……勝ち方なんて到底、選べる立場にない」
堀北の強い瞳に込められた圧倒的な気迫に押され、神崎は押し黙る。
正論と理想を掲げて敗れ、敗者の弁を撒き散らす神崎を前にしながら──誰の手も汚さない美しい勝利を掴めず、泥臭く他者を利用し、個人の力に頼らざるを得なかった今回の勝ち方に、誰よりも強い悔しさと葛藤を抱いているのは、他ならぬ堀北自身なのだから。
「神崎くんも一之瀬さんも、綾小路くんに騙されたってずっと責めてるけどさ、最初からわかってたわけだよね……。それを騙し討ちだのなんだのって本気で言ってるわけじゃないよね?」
櫛田の言葉に神崎は目を伏せた。そう、一之瀬も神崎もオレが最初から敵として侵入したことに気づいていた。それでも尚、許せなかったのは──正々堂々なら負けていない。
そう思い違いをしているからだ。
「……」
一之瀬は立ち上がり、目の端に涙を貯めて何かを言おうと口を開いたが、全てを飲み込み、そして力なく口にした言葉は。
「そう……だね……」
納得だった。言いたいことも、詰りたいことも、詰め寄りたいことも全てを呑み込んで。
「そう。なら良かった! そうだよね、Bクラスの二人がまさか──自分達はリーダー当てで攻撃しておいて他のクラスには騙されて卑怯だなんだってそんなの本気で言うわけないもんね!」
櫛田の笑顔から投げられた言葉。これでBクラスからの印象は最悪か。だが、Cクラスとは違って能動的に事を起こすクラスではない。放置していても構わないだろう。
だが、あの様子ではCクラスを相手にするのは相当、厳しいだろうな。
◇ ◇ ◇
オレたちは河岸を変えて、レストランの隣にあるバーのカウンターに居た。
坂柳の面倒は神室と葛城に任せた。
オレたちはあの場で出せない情報であるクラスの現状や今回の試験のDクラスの反省点を洗い出すことにする。
「……綾小路くん、今回の試験、勝ったのはいいけれど納得してない部分も多いわ」
「そうだろうな」
「俺も堀北の意見には同感だな、せめて堀北には伝えておいても良かったんじゃねぇか?」
「オレはリタイアすることを言ったぞ?」
堀北は隣から鋭い目で睨んでくる。
「貴方ね……オレは最終日、リタイアするってだけ伝えて後は何でもわかると思わないことよ……」
「向こうの世界で言葉短縮しすぎた弊害が出たな。反省しよう」
オレがポツリと呟くと堀北とは逆の位置に座り腕を折らんばかりで抱きついてくる櫛田が呆れたように言う。
「ヒュロって意外と必要なのかもね」
「ぴょー!? なにを言い出すのこの子! あたしは意外でも何でもなく必要なのよー! あたしが復興部の要なのよ! おわかりー!」
「そうね……さしずめ外付け良心回路ってところかしら。居ないとただのイケメンって呼ばれているわけだし」
堀北の発言に櫛田と須藤が同時に吹き出す。とても酷い言い草だった。
「今回の試験の反省点を述べていきましょう。まずは私から言うわ、一つ目は高円寺くんについて。まぁ、彼がリタイアする気なら止める術なんて限られてくるでしょうけど、それでも初日から消えるなんて想像していなかったわ」
「まぁ、そのおかげてAクラスを当てれたのと、スポットで大量に稼げたんだから強く文句は言えねぇよな……」
須藤の言う通りである。今回の試験で最も役に立ったのは高円寺といっても過言ではない。オレがBクラスに潜入し、大量にボーナスポイントを確保する計画は高円寺のメモを起点に生まれた。
「それで次の反省点は? 須藤くん」
「んー、やっぱ伊吹の件じゃねぇか? 結果として問題は無くなったけど、やっぱ受け入れるのは良くなかったんじゃねぇか?」
「そうね。スパイと分かっていながらも様子を鑑みて受け入れたのは安易だったわ。その結果が軽井沢さんの裏切りに繋がるのだからやはり良くは無かったのかも」
「そうでもないんじゃない? 軽井沢の裏切りって前から続いていたわけじゃん。だから早い段階で膿を出せたのは結果論だけどプラスだと思う」
「そっか……なるほどなー。そういう意味じゃ失敗とも言えねぇのか」
「でもさ、仮に軽井沢が裏切り者じゃなかったとしたらちょっと不味かったかもだよね。標的が山内くんだったなら最悪、ハニトラ仕掛けられてDクラスの首根っこ押さえられたかも」
「なるほど……。ありえそうね」
「は、春樹のやつ、いくらなんでもハニトラとか手を出すとか……しな、しない……しないといいなぁ……」
須藤は信頼というよりも懇願のような声を出して溜息を吐く。
「綾小路くん、貴方はどう思う?」
「オレは伊吹を受け入れるのはありだと思う。この試験の性質上、情報という武器は勝つ上で必要不可欠だった。そういう意味では序盤の防衛策が最終日まで続けば点数的には大きな差は生まれなかったかもな」
「そうね。だからこそCクラスも情報を得るためにDクラスやBクラスに潜入してきた」
「この試験、一週間のキャンプと捉えるのなら悪くはない選択だろう。だが追加ルールがあまりにも影響が大きい。ペナルティのマイナス50ptに加えスポットで稼いだポイントが消滅するというのは全クラスに嫌でも意識を防御に割かなければならなかった筈だ」
「だからこそCクラスの策略は今回の試験で一歩抜きんでていたといっても過言じゃない」
堀北の発言に櫛田と須藤は頷く。今回の試験、初めから攻勢に回っていたのはCクラスのみだった。
「そうだね。Cクラスは表面的にバカンスを楽しんで、さらにはそれを見せつけることで毒をばらまいて、さらには各クラスにスパイを送り込む。それでいて本当のリーダーは島に潜伏する……ところで綾小路くん、さっき龍園くんに言ったのどこまでが本当? 確証が必要ないって言ってたけど……」
「確証がなかったのは本当だ。だがCクラスのバカンス中、龍園がトランシーバーを持っていたからな。ましてや伊吹も金田も同じ型を持っているとなれば本命はスパイとして潜入した生徒ではなくバカンスに装った生徒。その中でもリーダー当てという極めて重要な任務をこなせる人間は多くはない」
「その情報を得ていたから私は龍園くんの名前を書いたけれど……これっきりにしたいわね、心臓に悪いわ」
AクラスもCクラスも博打に近い判断だったことは否めない。けれども外したとしても──。
「綾小路くんの保険があったから踏み切れた。これが無ければ書けたがどうかわからないわ」
保険。この場合はスポットで獲得したポイントのことだろう。オレはリタイアした後に茶柱にランダムに選んだクラスの後任を伝えた。そして選ばれたのは──。
「いや、マジで渡された時、心臓が飛び出るかと思った……一日だけとはいえもうやりたくねぇよ……」
げっそりと呟いたのは須藤。なんの因果かリーダーのカードキーは須藤に渡っていた。本人も自覚があるように腹芸が向いていないタイプであるが、最終点呼の直前ともなれば直接手渡すところを見ていない限りバレることはない。
「所で下着の件はどうやって解決できたのか聞いてもいいか?」
「そうね……綾小路くん、もしも女子が下着を盗まれたらどういった反応をすると思う?」
「……怒る、泣く。そこら辺じゃないか?」
「その通りよ、下着が盗まれたあの日、私たちは軽井沢さんの話をテントの中で聞いていた。彼女は下着が無くなったことに怒りを発していたけれど──貴方の鞄から出てきたと伝えたら、その怒りを引っ込めた」
「そうだね。一番、怪しかったのはそれが理由だよね。あからさまにもういいだとか、見つかったのなら大丈夫、とこの件を無かったことにしようとしてた……軽井沢さんも予定外だったんじゃないかな? 綾小路くんが持っていたことが」
堀北と櫛田の言葉に須藤は「ほへー」と感心したように聞いていた。
「だからこそ、今回の事件、犯人として軽井沢さんを挙げれば盗んだ理由なんて消える。そもそもが本人のものだから、最初の手に入れるという一番難しい手順を飛ばすことが出来た。勿論、他の生徒の可能性もあったからどうやって軽井沢さんの下着を盗んだのかの考証も行なっていたけれど」
「んで、ここからが一番厄介なんだよね。ぶっちゃけて起きた事件で証拠も無いし、軽井沢のやつが怪しいからって犯人には出来ない。だから、一度、この事件については諦めた」
そう。この下着の盗難事件の厄介な所は可能性だけで言うのなら誰にでも出来て、起こってしまったのなら推測は出来れど犯行を証明する術は無いということだ。
「そこで、一度、何故、今回の事件が起きたのかを私は考えた。軽井沢さんが何をしたかったのか。何故、そんなことをしたのか。本当は誰を狙っていたのか。タイミング的に短絡的な行動とは思えない。だからこそ、私たちは罠を仕掛けることにした」
堀北の言葉に肩に乗るヒュロポスがムムムと唸る。そして、羽根でわかったとばかりに打ち合わせて。
「わかったのね! 正直に話せば美味しいものあげるって言ったのね!」
それで吐くやつはこの鳥くらいである。
「……私たちは今回の事件を他クラスからの攻撃だと理解したわ。搦手、内部崩壊、スパイ。手法で言えばCクラスの線がかなり濃いと見た。池くんが言っていたもう一人のスパイっていうのを私たちは現実のものとして考えた」
堀北は一度言葉を切り、深く一息をついてから言葉を続けた。
「私たちは最終日前に、クラスの皆に一つの提案をしたの。それは最終日に打ち上げをすること。多少のSポイントを使って、この過酷な無人島試験を乗り切ったお互いを労おうという提案よ。最初は渋る面々も多かったけれど、そこは櫛田さんや須藤くんが熱心に説得してくれたおかげで、なんとか頷いてもらうことができたわ」
「まぁ、健や桔梗ちゃんが言うならって納得してくれたしな」
須藤が鼻の下を掻きながら笑う。堀北は静かに頷き、手元のグラスに視線を落とした。
「そして私は、そのパーティの準備を池くんと山内くんにお願いしたの。小冊子を二人に渡して、少ないポイントで楽しめる方法を考えてほしいと依頼したわ。その上で──二人には『この小冊子を失くせばペナルティがあるから、くれぐれも気をつけるように』と口に出して念を押しておいたの」
「なるほどな」
オレは静かに相槌を打つ。
「そして、その夜に小冊子の盗難事件が起きたわ。管理していたのは山内くん。結構、杜撰な管理をしていたみたい……。けれども、どこに置いたかを探し回るよりも先に、私は伊吹さんの居場所を探した」
堀北の行動に違和感は無かったのだろう。むしろ、下着の盗難事件が起きた時、同様に伊吹の存在が頭によぎるのは自然な流れだ。
「ええ。そこで私たちは、伊吹さんが森に入っていくのを見たという証言に従い、彼女のあとを須藤くんと一緒に追ったのよ」
堀北の発言を静かに聞きながら、オレは誰が言ったのかを口にする。
「伊吹のことを見たっていうのは、軽井沢か?」
オレが問いかけると、堀北は話の途中で水を差されたと言わんばかりに、ジットリとした視線をこちらへ向けてきた。
「……あなたとミステリー映画を見に行ったら、詰まらなさそうね」
少し拗ねたような、不満げな口調。その様子を横で見ていた櫛田と須藤から、耐えきれなくなったような苦笑が漏れ出た。
「綾小路くん以外で誰がターゲットとして狙われているのか、殆ど目星をつけていた。一人は須藤くん、そしてもう一人は山内くん。だからこそ、池くんと山内くんに最終日のイベントの準備を任せていた。そうすれば須藤くんも自然とそこに混ざり、様子を観察しやすくなるから」
堀北が二人に任せた理由は明白になった。
「そして、私たちが伊吹さんを追いかけている間、別働隊には軽井沢さんの様子を見てもらっていたの」
別働隊という言葉が出た瞬間、オレの隣でぴったりと寄り添っていた櫛田が、可愛らしく手をひらひらと挙げた。
「私たちは伊吹さんが陽動で軽井沢さんが持っていると疑っていた。けれども本当に伊吹さんが持っている可能性も捨てきれなかった。追いかけた私たちは伊吹さんに追いつき問い詰めたけれど、やっぱり彼女は小冊子を持っていなかったわ。そうなれば軽井沢さんが物証を持っていたことになるのだけれど……」
堀北はそこまで言いかけて言葉を呑み込み、チラリと櫛田へと視線を投げかけた。
「あ、そこからは私から説明したほうがいいよね」
櫛田はくすりと笑うと、あっけらかんとした調子で語り始めた。
「まぁ、隠れて捨てようとしていた軽井沢さんをみーちゃんが見つけて、揉み合いになって、松下さんや軽井沢を弁明する佐藤さん、篠原さんがキャットファイト始めて、平田くんがブチギレてて、その平田くんがブチギレたのを波瑠加ちゃんが言い負かして、最終的にはその拍子で軽井沢のお腹の傷が露出して、それを女子に見られて、軽井沢がゲロったって感じかなぁ」
ざっくりとしすぎている上に、かなり荒れた現場の様子だった。
堀北は聞いていなかった現場の過酷さに、「聞いてないわよ……」と呆れ果てた顔で呟く。
「だって、言ったらすぐに解決しようとするでしょ? だから言わなかったの」
櫛田が軽く肩をすくめてそう口にすると、堀北は返す言葉を失ったように押し黙った。
「今回の事件ってさ、そんなすぐに解決していい問題じゃない気がするんだよね。もっと真剣に考えないと、なんでもかんでもすぐに手を付けて、すぐに解決するのがいいとは限んないと思うよ。じゃないと吹っ切れない子もいるし、納得できないまま飲み込んじゃう子もいるだろうし……」
ぽつりと呟かれた櫛田の言葉には、どこか深く重い実感が込められていた。堀北はその言葉を噛みしめるように、少し考える素振りをみせてから呟いた。
「……私には、まだわからないわ」
「そ、そりゃ、鈴音はまだ人間関係一年生じゃん」
櫛田が小さく呟いた。
「……ぇ」
堀北の口から、ポカンとした声が漏れる。
横目で見れば、言葉を口にした櫛田は顔を俯かせていたが、揺れる髪の隙間から見える耳の先が真っ赤に染まっていた。
「そ、そうね……き、桔梗ぅ……さん……」
堀北もまた動揺を隠しきれない様子でぎこちなく返事をし、照れくささを誤魔化すようにじっと海の方を見つめ返した。
その隣で須藤はニヤニヤと笑いを浮かべて二人を見つめていたが、余計な突っ込みを入れてこの雰囲気を壊す度胸はないらしく、それ以上は何も口にしなかった。
「……まぁ。話さなかった理由は、正直に言えば綾小路くん追い出したせいでイライラしてたってもある」
「あ、あなたねぇ……」
堀北はそんな櫛田の様子を呆れたように見ていた。
「……だからあのギャルギャルさんってばみんなによってたかってされてたのね! むむむ! よくないのよ、こんなの良くないのよー!」
ヒュロポスの発言に三人とも、目を向ける。
「……そっちは忘れてた」
櫛田がポツリと呟く。そして深い思考に入っているのかブツブツと呟く声が聞こえた。そして、結論が出たのか顔を挙げて真剣な表情で口にする。
「……堀北、一度、女子に声をかけてた方がいいかもしんない」
「どういうこと?」
「軽井沢ってイジメられてたんだよ。だから──もしかしたら、今までの反動でやり返す人間が出てくるかも、それに彼氏の平田くんがあの調子だと……いや、出てくる」
「まさか……そんな……バレれば退学になるわよ」
初めての特別試験が終わり、他クラスに圧勝したDクラス。だが、その為に支払ったものは果たして安かったのか、それとも高かったのか。
「あんたたち! 動揺しないの!」
ヒュロポスがオレの頭の上に登る。頭の感触からしてなんらかのポーズをとっているのだろう。
堀北も、櫛田も、須藤もヒュロポスへと目を向ける。
「そんな問題、あたしたち復興部にかかればちょちょいのちょいなのよ! 今までだって色んなことあったけど乗り切ってきたのよー? つまりはこの名監督! 名探偵! 名物美少女と愉快な仲間たちにかかれば楽勝なのよー!」
あっけらかんと言い放つヒュロポスに全員が強張っていた力が少しずつ抜けていく。
「ほんとお気楽ね」
「アホ鳥」
「俺はその前向きな感じ、嫌いじゃねーぜ!」
三者三様。どうやら、軽井沢の件に関して手を差し伸べるようだ。
オレは考える。果たしてこの船上で軽井沢の問題を解決していいのか、どうか。
もしも、高度育成高等学校の敷地まで持って帰ればアディトンとして現出するかもしれない芽を刈り取るかどうか。
Dクラス、調和、友情、恋愛、仲間、絆。そんな都合のいい言葉がこの船の上にはあるのだろう。それを肯定するのならば軽井沢の問題には取り組むべきだ。
けれども──オレの興味は今、この船の上には存在しない。ただ、あの荒廃した未知の領域、人の深奥を覗ける墓所。その為に必要なのは──駒。
まだ足りないな。
なればこそ、軽井沢の件は──。
ここまで読んでくださり、まことにありがとうございます。初めまして、もしくは以前はお世話になりました。仔羊肉と申します。
一度区切りが良い場所であとがきとしてご挨拶の場を作らせて頂いてます。本編の裏設定やモチーフなどを一度整理したいと思い、中間あとがきという形で作らせて頂きました。不要でしたら飛ばして頂けると幸いです。
まずは謝意を。みなさんの応援や暖かいコメントのおかげて第一部を完成させることができました。本当にありがとうございます。本来は年内にここまで書く予定だったのですが皆さんのおかげでかなりハイペースな速度でここまで辿り着けました。モチベーションが高く楽しかったです。
拙い表現や腕不足により、物足りなかった部分もあると思いますが、少しずつ精進できるよう誠意邁進させていただきます。
また3ヶ月ほどでおよそ五十万文字。ライトノベル四冊分なのですがスピードを優先するばかりで誤字脱字や表記揺れが非常に多く、推敲をしているつもりでも残っていたり、修整した筈なのに修整が掛かっていなかったりと大変ご迷惑をおかけしています。
また初のAIということで序盤とかなり雰囲気が違うことに戸惑うことがあったかもしれません。初めこそはざっくばらんにシーンだけをAIに指示を出して作っていたのですが途中からAIチャットに自らが書いて、それを補助で添削や修整してもらいつつコピーして推敲してさらにAIに貼ってブラッシュアップしてという形に変化していきました。その為、文体が変わっているかもしれません。ご容赦頂けると幸いです。
最初に本作についてのご説明からさせていただきます。
タグにあるペルソナシリーズとようこそ実力至上主義の教室へのクロスオーバー作品となっていますが、このペルソナシリーズとは何を指すのかという言い訳をさせてもらえると助かります。
特定のペルソナシリーズではなく、アトラス様出典のペルソナシリーズをモチーフにした作品として作成しています。その為、III、IV、Ⅴといったペルソナ過去作ではなく、アトラス世界観におけるペルソナシリーズの二次創作としてタグをつけさせていただきました。
IIIの死生観、IVのもう一人の自分、Ⅴの反逆の意思とあったようなペルソナ使いの素養という部分も設定として作らせて頂いてます。それが『欠点』と『成長または新生』という体で作中に登場させています。
作中において防衛機制=フロアギミックとして連携させてステージを作らせて頂き、またコアシャドウと位置づけたボスに関しましても防衛機制がヒントとなって倒せるように構成させて頂きました。
また防衛機制は人間が自分を守るための防衛本能という位置づけと同時に未熟な防衛機制は問題を引き起こし、破滅へと導くという設定がアディトンとなっています。
その為、防衛機制、コアシャドウは自分の主を守るためにその胸のコアへ収納します。ボス=本人にとっての敵ではなく、ボスからしてみれば本人は守るべき対象となっています。
またフォーラムは市民の広場を意味しており、作中において不特定多数の負の感情が集まる場所として作らせて頂きました。この点におきましてはペルソナⅤのメメントスと設定が似通っているかもしれません。
次に全体の構成についてお話させて頂ければと思います。
全三部構成で『Interlude』までが第一部となっています。そして次からは第二部となるのですが基本的に原作小説よりもアニメの方を使わせて頂くことが多いです。まだ自分だけでは見落としている分も多々とあり、小説の記憶とアニメの設定が混同することもございます。尚、二年生編以降のキャラは登場しない予定となっています。
またよくある質問で綾小路の初期ペルソナと初回戦闘に関しましては意図的に描写から外させて頂いてます。
そして坂柳の件につきましてはイメージとして窓から見ていた頃の坂柳を想定しています。幼さと純粋さを前面に出しすぎているせいかコミカル寄りになりすぎているかもしれません。
また山内くんに関しましては一年分の悪行を前半に詰め込みすぎたせいでヘイトを買いすぎているかもしれません。キャラ解釈としては原作からしてここまではする、これ以上はしないというラインを引いているのですが解釈不一致でしたら申し訳ありません。
コープの段階は日常を切り取っての描写とさせて頂きました。本編完結後や息抜きとして現在進んでいるコープの過去分を描写させて頂ければと思っています。
コープに関しましては既出キャラに関しましてはペルソナの新たな覚醒は致しません。なのでコープキャラ=ペルソナ覚醒者および覚醒しない予定のキャラクターとなっています。過去ペルソナでは恋愛のアルカナはペルソナ覚醒するのが常道だったのですが見落としてまして、大変申し訳ありません……。
さらにコープに関してですが魔術師の分は見ている人によって池くんだったり、山内くんだったり、外村くんだったりと自由に解釈してもらえるように配置しています。
各キャラのアルカナにつきましてはまたいつかあとがきの際にでも詳しく話させて頂けると幸いです。
また再開した際には読んで貰えると嬉しいです。