一番信頼していた幼馴染が実は全ての元凶だったやつ 作:全ての元凶
初っ端からシチュを全開示するスタイル
「魔王! お前はここまでだ!!」
——ようやくだ。
俺達の目標だった魔王討伐が終わるまで、あとほんの少し。
目の前の魔族、魔王は、俺達の決死の攻撃で膝から崩れ落ちた。
相手側の切り札も全て受け止め切り、魔王に残された攻撃手段はもう一つもない。
後は
思えば、ここまでの道のりには数え切れないほどの苦難があった。
幼い頃に故郷を滅ぼされ、幼馴染と魔王討伐のために立ち上がり。
時には、魔王軍の四天王を倒すために仲間を犠牲にして。
そして、ついに——ついにッ!
俺自身の手で、積もるほどの恨みがある魔王を殺すことができる。
母さんと父さんを魔物に殺された時から、コイツを憎まない日はない。
だけど、そんな日も今日で終わる。
コイツさえ倒せば、俺のような人間はもう二度とこの世に現れない。
「……皆、これまで本当にありがとう」
「ハッ! 今更何言ってんだ。お前について行くって決めたのは俺だぞ?」
「そうですよ。早く終わらせちゃいましょう!」
「……貴方がいてくれたから、私はここまで来れたわ。ありがとう」
この仲間達にも随分と世話になった。
盾役としていつも進んで魔物の攻撃を受け止めてくれたケイン。
盗賊として罠を見つけてくれるだけではなく、天真爛漫でいつも場を和ませてくれたサキ。
ヒーラーとしてどんなに俺達が大怪我を負ったとしても治してくれた、セリアーヌ。
——そして。
「ふふっ、何でボクの方を見るのさ」
「そ、そりゃ。子供の頃からお前にはいつも世話になったし……」
「……そんなに言われると照れちゃうな」
最後の仲間、魔法使いとしてパーティを後ろから支えてくれた幼馴染、リアナ。
彼女には、幼い頃からずっと戦闘面以外でも世話になってきた。
思えば両親を魔物に殺されたあの日から、リアナはどんな時も心の支えになってくれたな。
両親が殺されたあの時はもちろん、村が滅びた時も、魔王討伐の旅に出たばかりの時も。
彼女だけはいつも俺の隣にいた。
パーティメンバー以外にも感謝するべき人たちはまだまだいる。
まだ冒険を始めたばかりでお金がなかった俺達を快く受け入れてくれた宿屋のおっちゃん。
四天王との戦いで、自分を命を犠牲にしてでも敵を打ち取ってくれたあいつ。
数えてみればキリがない。
そんな人達のためにも、今日。
俺たちは戦いを終わらせるんだ。
「魔王、言い残すことはあるか」
最後に、今更対話なんてするつもりはないが魔王に言葉をかける。
人類滅亡を企んで、それに失敗した王は何を思うのか。
それだけは、どうしても気になったからだ。
「……ふ……フハハハ!」
「何がおかしい!!」
「当たり前だろう、お主らがあまりにも道化だから笑っているのだ」
だが、問いかけた途端、魔王は気が狂ったかのように笑い出す。
俺の話を聞くつもりは毛頭ないようだ。
やはり、最後まで魔族は話が通じない。
一瞬でも理解しようとした俺が馬鹿だった。
そして、俺が魔王の首目掛けて。
剣を寸分の狂いもなく振り下ろした、その時。
「全く、ダメだよ彼を殺しちゃ。まだ利用価値があるんだから」
「ッッ!?」
突然、魔王の前に強大な気配が現れ。
確かに魔王の首を刎ねようとしていた俺の剣が受け止められる。
「ふぅ、助かりました」
「これで間に合わなくて君の首が飛んでたら笑い物だったね。あははは!!」
「勘弁してください。私にも恐怖心はあるのです」
しかも、その強大な気配に対して、魔王が敬うような仕草を見せる。
おかしい、魔族で一番地位が高いのは間違いなく魔王のはずなのに。
クソっ、マズイ。
俺達は魔王に全てのリソースを使ってしまったばかりだ。
魔王より強いやつがいるなんて、これっぽちも想像していない。
完全に想定外だ。
「リアナ! いつものやつを……リア、ナ……?」
だが、俺達は今まで何度も窮地に陥ってから挽回してきた。
だから、いつものようにリアナのバフで体勢を立て直そうとして、後方に目を向けると。
そこには、驚愕の表情を浮かべる三人の仲間がいるだけで、リアナは、いない。
——それどころか。
「呼んだ? ボクは目の前にいるじゃんか」
「どうして……リアナが……」
リアナは、魔王のそばに立っていて。
俺が知るリアナの魔力量を遥かに超える魔力を身体中から放っていた。
俺の剣を止めた強大な気配の持ち主は、彼女だったのだ。
今、息を呑んだのは俺なのか、それとも後ろの三人の誰かなのか。
おそらく、全員だっただろう。
だって、今目の前で起きていることは。
立ち尽くすことしか出来ないほどに、俺たちにとって衝撃的で。
あまりにも認め難いものなのだから。
「……いつからだ」
「え? いつからって言うのは?」
「いつ裏切った。いつ、どこでお前は魔王に与したんだ」
舌が乾いて、うまく言葉が出てこない。
声が掠れているような気がする。
それでも、俺はなんとか脳内を支配する疑問を口にした。
だが、リアナは。
「うーん……生まれた時から?」
いつもと何も変わらない笑顔で。
昨日、寝る前に明日魔王を倒そうと誓ったときのように。
あまりにも残酷な真実を俺に告げるのだ。
「……は?」
「あ、ちなみにリュークのお父さんとお母さんを魔物に襲わせたのはボクね。あの時はごめん。もう少し生かせばよかったね」
「……人の命を何だと思ってるんだ」
「それはもちろん、リュークを輝かせるための舞台装置? みたいな」
そう言って、次々に俺の周りに起きたことが自分の仕業だと話すリアナ。
どこまでも、普段の延長線上のように彼女は自分が今までにやってきたことを語っていく。
「……俺が、魔王討伐を諦めようとしていた時はいつも励ましてくれたじゃないか! あの言葉は嘘だったのか!?」
「ここで勇者を諦めると困るなー、とは思ってたけど……別にそんな……」
そして、俺は理解した。
いや、してしまったと言うべきか。
リアナは、俺達を、
初めから俺らのことを自分と対等な存在だとは考えていない。
そんな彼女の考えていることを俺達が理解することは絶対に出来ないのだと。
「じゃあ、ボクも正体を明かしちゃったしここからは第二ラウンドね。……あ、でもリューク以外のみんなはもういらない。死んで?」
「ッ!?」
「生かしてもいいかなって思ったけど、やっぱりゼロからスタートする方が面白いからね」
「……やめろ!」
そして、リアナは。
足がすくんで動けないパーティメンバーを次々と殺し始めた。
「やめろ! リアナ!」
「……おっと、お主の相手は我だぞ?」
「ックソ! 邪魔をするな!」
すぐに、俺は仲間の元に向かおうとした。
だが、リアナによって完全回復させられた魔王が邪魔をし、その相手をするのに精一杯。
その間にもリアナは無抵抗の仲間達を一人ずつ殺していく。
仲間達はみんな俺に助けを求めている。
なのに、俺は、勇者は。
仲間達からの助けに、応えられない。
「第二ラウンドはボクを殺すのが目標! 頑張ってね!」
そして、リアナが全員の息の根を止め。
そう言葉を残し、リアナと魔王は魔王城から離れていく。
残されたのは、俺と三人の亡骸。
地面に倒れ伏す皆の顔はどれも驚愕の表情を浮かべていて、現実を信じきれずに死んでいったことが分かる。
……俺のせいだ。
俺が、もっと強ければ。
リアナに頼りっぱなしになっていなければ。
皆を失うことは無かったのかもしれないのに。
「くそっ、くそぉ……」
今更後悔しても、何にもならないことくらい分かっている。
だけど、悔しくて辛くて、悲しくて。
そんな、色々な感情がめちゃくちゃに混ざり合いながら、絞り出した俺の言葉は、誰にも届くことなく消えていった。
◆◆◆
勇者の活躍を隣で見守る黒幕系幼馴染になりてぇ〜。
って、思ってたら神を名乗るおっさんによって異世界に転生させられた。
世界で一番の力を持つ上位存在として。
ついでに転生の時に性別が男から女に変わっていたが、これは何故か気になっていない。
上位存在だからかなのか、自分の性別とかどうでもいいんだよな。
それよりどうやったら人間の命がより輝くのかみたいなことを考えている方が楽しいし。
俺がちょっと力を解放すれば絶滅まで持っていけるほどにか弱い種族なのに。
それが頑張っている姿がなんとも愛おしい。
……さっきのリュークと仲間達のあの絶望した顔とか、本当にたまらなかったなぁ。
記憶を消してもう一度見たいくらい。
「ご機嫌ですね、リアナ様」
「そう? 今話しかけられたから不機嫌になったとか言ったらどうする?」
「ハハハ、ご冗談をッ!?」
「今日はその左腕一本だけで許してあげるけど……次は、ないよ?」
こっちは気分良いいってのに。
やっぱり魔族は空気が読めないんだな。
でも流石に殺しはしない。
一応、リュークに負けるようなクソ雑魚魔王でもまだ使い道はあるのだ。
ほら、例えば魔族の再建とか。
別に俺が新しく魔王になってやっても良いんだけど、見た目が人間、しかも女ってことで舐められてしまうだろう。
そしたら俺を舐める奴が二度と出ないように魔族を殺して回るだけだけど。
そんな面倒くさいことはしたくないからね。
「……気分を害させてしまい申し訳ありません」
「分かったならいいよ。自分の立場は弁えて」
魔王はすっかり萎縮してしまった……ように見えるが、どうせこれはアピール。
コイツ、長いものには巻かれろ精神のプライドが欠片もないタイプの魔王だから……。
良く言えば生存本能が強いんだけど、普通に生き汚いだけとも言える。
魔族達も可哀想だよな、こんな情けない奴が自分たちのトップなんて。
それにしても、リュークのあの顔が忘れられない。
マジであれだけで飯を何杯も行ける。
あんなにも可愛い顔を見せてくれるから、俺はリュークが好きなんだよ。
ああ、思い出しちゃうなぁ。
俺がリュークの両親に魔物をけしかけて殺した時のことを。
あの日、俺は一生リュークを不幸にして生きていくって決めたんだ。